【改正民法債権編】意思表示の合致

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、意思表示の合致について考えてみたいと思います。

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意思表示の合致

判例法理が反映された意思表示に関する規定

◆意思能力
「法律行為」という言葉があります。これは、当事者がその意思に基づいて一定の法律効果の発生を求めて行う行為を意味します。
例えば、コンビニでお弁当を買ったり、家を賃貸したりするのもすべて法律行為です。
法律行為が有効に成立するためには、旧法下では判例により、法律行為の当事者に意思能力(法律行為の結果を弁識し、有効に意思表示をする能力)が必要とされていました。
新法では、この点を「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。」(新法3条の2)と明記しました。

 

◆意思表示の合致・意思表示の受領能力
申込みと承諾があれば意思表示の合致となり、契約が成立します。
新法では、旧法にあった「隔地者に対する」という文言を削除し、意思表示は相手方へ到達したときに効力が発生する到達主義を維持しました(新法97条1項)。また、相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げた場合には、その通知が通常到達すべきであった時に到達したものとみなす旨を、新たに規定しました(同2項)。

意思表示の受領能力については、未成年者、成年被後見人のほか、意思能力を欠いている者(新法3条の2)も加え、それらの者(相手方)へした意思表示は、相手方に主張できない旨も明記しました(新法98条の2)。
なお、例外的に、①相手方の法定代理人、②意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方が、その意思表示を知った後は、その相手方ないし法定代理人は内容を理解できるので、有効な意思表示になりますが、その旨も明記されました。

 

◆条件・期限
たとえば、ある物を贈与する場合には、「2022年8月10日に」と書いてあれば、必ず来るので期限です。これに対して、「1USドルが60円になったならば」と書いてあれば、必ず実現するとはいえないので条件です。
新法では、判例法理で認められていた不正な条件成就につき、「条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。」と規定しました(新法130条2項)。

 

◆無効と取消し
契約は、前記のように意思能力がない場合や、瑕疵がある場合に無効や取消しになります。旧法では、無効の効果についての規定はありませんでしたが、新法ではそれを規定しました。
まず、取消しの効果は、旧法と同じく「初めから無効」です。そして無効の効果としては、「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。」(新法121条の2第1項)ことになります。

この原状回復義務には2つの例外があります。
【例外1】・・善意の無償行為
「善意」とは、法律用語で「ある事実を知らないこと」をいいますが、下記の場合には、現存利益を返還すれば足ります(同2項)。
①無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者で、給付を受けた当時その行為が無効であることを知らなかったとき
②給付を受けた後に取消しにより初めから無効とみなされる行為で、給付を受けた当時に取り消しうることを知らなかったとき
現存利益の返還とは、たとえば取引で1000万円受領しても300万円浪費してしまった場合には、700万円を戻せばいいというものです。

【例外2】・・意思無能力者等の行為
行為時に意思能力を有しなかった者や行為時に制限行為能力者(未成年者、成年被後見人等)であった者も、現存利益の返還で足ります(同3項)。
なお、取消しは無効と異なり、期間制限があります。取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、あるいは行為の時から20年経過したときは、時効によって消滅します(新法126条)。