【相続・遺言について】様々なケースにおける相続人該当性

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、様々なケースにおける相続人の該当性について考えてみたいと思います。

【Q】前回どのような人が相続人になるのかは分かりましたが、次のようなケースではどうなるのでしょうか?

①:内縁配偶者、事実婚パートナーのケース

②:子が出生前の胎児であるケース

③:子が親より先に死亡していたケース

④:実際には他人の子であるのに、実子として出生届を出しているケース

【A】①:内縁配偶者、事実婚パートナーのケース

内縁とは、婚姻届を提出していないものの、男女が婚姻の意思を持って実際に夫婦生活を営んでいる関係をさします。これと似たものとして、最近は事実婚という言葉が使われることがあります。内縁と全く同じ意味でつかわれる場合もあれば、内縁のうち特に当事者が意図的な選択によって婚姻届を提出しない場合を意味することもあります。

内縁・事実婚ともに、相続の場面では法律上の夫婦と明確に区別され、内縁配偶者・事実婚パートナーは相続人にはなれません。

内縁配偶者も、婚姻届を提出していないだけで、法律上の配偶者と区別する必要はないとして、相続人となることを実質的に認めようという見解もありますが、最高裁判所はこのような見解を明確に否定しています。

ただし、被相続人に相続人が一切いない場合で、内縁配偶者・事実婚パートナーが相続人と生計を同じにしていたような場合には、特別縁故者として相続財産の分与を受けられる可能性はあります。

②:子が出生前の胎児であるケース

民法は、胎児は相続について「既に生まれたものとみなす」と規定し、「胎児が死体で生まれたときは」はじめから相続人とならなかったものとされます。

「既に生まれたものとみなす」といっても、実際に生まれていない胎児が相続人となって遺産を受け取ることはできません。判例実務上は、生きて生まれた場合に相続時にさかのぼって相続人の権利を認め、遺産分割もそのときまで待つという扱いになっています。この場合、生まれたばかりの子は、他の相続人との話し合いなどできませんので、親族や弁護士等が子の代理人となり、話し合いに参加することになります。

③:子が親より先に死亡していたケース

被相続人である親が死亡した場合に、相続人となるべき子が親より先に死亡していたら、その子は親の相続人となることはできません。

しかし、その子に子(親から見たら孫)がいた場合、その孫が親(孫から見た祖父母)の相続人となることができます。これを「代襲相続」と言います。

ただし、子が親の養子で、孫が養子縁組前に生まれていた場合には、代襲相続は発生せず、孫は相続人にはなれません。

また、被相続人より先に、子及び孫が死亡し、ひ孫がいる場合は、ひ孫が相続人となります。これを「再代襲」と言います。

代襲相続は、子が先に死亡していた場合だけではなく、兄弟姉妹が法定相続人となるケースで、その兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していた場合にも発生し、兄弟姉妹の子(被相続人から見た甥や姪)が相続人となります。ただし、このケースでは「再代襲」は認められません。

④:実際には他人の子であるのに、実子として出生届を出している場合

実際には他人の子であるのに、養子縁組の届出をせず、自分の実子として出生届を提出することがごくまれにあります。「藁の上からの養子」と呼ばれるものです。このような出生届は、虚偽の内容を含むものであり、出生届としては無効です。

この点については、実質的には養子縁組とすべき事案であるので、実子としての出生届に養子縁組届としての効力を認めるべきという見解もありますが、最高裁判所はこれを否定し、親子関係は(養親子関係も含めて)認められないとしています。つまり原則として「藁の上からの養子」は相続人ではありません。

ただし、長期間にわたって親子としての生活実体が存続していたような場合には、このような結論が不当となる場合もあります。

最高裁判所も、近時、藁の上からの養子であるXが約55年間にわたって実子として生活してきた場合に、他の相続人Yが、Xと両親との間の親子関係が不存在であると主張することは権利の濫用にあたり許されないとする判断を下しています。つまり、この事案においては、藁の上からの養子が相続人になったのと同じ結論になります。

ただし、単に長期間実子として生活しただけでは足りず、様々な具体的事情(他の相続人が親子関係の不存在を主張する動機、藁の上からの養子が受ける不利益等)を考慮した上での判断ですので、一般化できるものではありません。

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