世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は、【相続・遺言】に関して、寄与分の認められる範囲について考えてみたいと思います。
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【Q】遺産分割の際に寄与分というものがあると聞きました。
①寄与分とは、どのようなものでしょうか?また、どのような場合に認められるのでしょうか?
②私の父は、長年にわたって寝たきりの状態でしたが、先日、亡くなりました。私は、病気の父の世話をしてきましたが、このような場合に、寄与分は認められるのでしょうか?
③私の亡き父は、自営業者でしたので、私は、父が亡くなる3年程前から父の仕事を手伝っていました。父から給料はもらっていたのですが、その場合でも寄与分は認められるのでしょうか?
【A】◆1.寄与分とは
寄与分とは、共同相続人の中に相続財産の維持または増加に特別の寄与(貢献)をした者がいる場合は、その寄与相当額(維持又は増加分)を法定相続分に上乗せすることで、共同相続人間の衡平を図る制度です。
なお、民法改正により、共同相続人以外の被相続人の親族についても、特別の寄与という制度が新たに創設されました。
一般的に寄与分が認められる類型として、家事従事型(例:被相続人の事業を無報酬またはそれに近い状態で従事するような場合)、金銭出資型(例:被相続人の借金を肩代わりして支払うような場合)、療養看護型(例:相続人が被相続人の療養看護をして医療費などの支出を免れるような場合)、その他扶養型、財産管理型などがあります。
ただしいずれの類型についても「特別の寄与」であることが必要です。特別の寄与であるかどうかは、①被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待できるような態様以上の貢献があったかどうか、②当該行為が無償で行われたかどうか、③当該行為が一定期間継続しているかどうか等の事情から判断されます。
◆2.療養看護型の場合
被相続人である父親の療養看護を行ったことによって寄与分が認められる可能性はありますが、前述の通り、それが「特別の寄与」と認められなければなりません。
療養看護型において、特別の寄与かどうかは、当該行為が親族が当然なすべき配慮の範囲(例:お見舞い、声掛け等)を超えていることが必要であり、老親の介護の場合、被相続人が要介護2以上の状態であることが一つの目安となります。
また、被相続人の療養看護を無償で行い、その期間も数日、数週間程度では足りず、数か月は必要と考えられます。
その結果、本来であれば被相続人の療養看護によって、被相続人がそれらの費用の支出を免れたのであれば、寄与分が認められる可能性はあります。
◆3.家事従事型の場合
被相続人である父親の仕事を手伝っていたとしても寄与分が認められる可能性は低いと思われます。このケースでもやはり当該行為が「特別の寄与」と認められる必要があります。
家事従事型において、特別の寄与かどうかは、当該行為が通常であれば第三者を雇用するであろう行為かどうか(簡単な帳簿付け、店番では特別な行為とまでは言えません。)3~4年以上は従事していること、そして、当該行為の対価が無償、あるいは、著しく低廉の給与であることが必要と考えられます。なお、給与が著しく低廉であっても、被相続人から生活費の負担を受けていたり、被相続人の持ち家に居住している等の場合は、実質的に労務の対価を得ているとして、寄与分が否定される場合もあります。
本件のケースでは、父親から給料をもらっていたということで、相続人が労務に対する相当の対価を得ていたということで「特別の寄与」は該当しないと判断される可能性が高いです。ただし、相続人が得ていた給料が労務に見合ったものかどうか、給料以外に実質的に被相続人から金銭的援助等があったのかどうかなど慎重に見極める必要があります。