【改正民法債権編】詐害行為取消権

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、詐害行為取消権について考えてみたいと思います。

持続化給付金・家賃支援給付金、申請サポート業務受付中。
【090-279-1947】までご連絡を。

東京都世田谷区の車庫証明は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・遺言・終活は【090-2793-1947】までご連絡を

 

詐害行為取消権

要件、効果、適用範囲等をより詳細に規定

 

◆債権者代位権との共通点・相違点
詐害行為取消権は、債権者代位権と同じく、強制執行の引当てとなる債務者の財産を確保するための制度です。
債権者代位権は債務者が財産の減少を放置する場合に、債権者が債務者に代わって財産の減少を防止するものですが、詐害行為取消権は、債務者が財産を積極的に減少する行為をした場合に、債権者が債務者の財産減少行為を取り消して、財産の減少を回復させるものです。

 

◆詐害行為取消権の内容
債権者Aが、債務者Bに対して債権(被保全債権)を有している状態で、次のような行為が行われたとします。
・BがC(Cを受益者と言います)に対してBの財産を逸出させて、Aを害する(Aが満足な弁済を受けられなくなる)行為を行なった場合
・さらに、CがBから得た財産をD(Dを転得者といいます)に移転させた場合

詐害行為取消権は、このような行為が行われた場合に、AがB・C間の行為を取消して、その逸出した財産を受益者Cまたは転得者Dから取り戻す制度です。

●詐害行為の具体例
債権者Aは、債務者Bに1000万円を貸し付けている。500万円の土地がBの唯一の財産である状態において、BはBの経済状態をよく知る友人C及びDと相談し、B・C間で贈与契約を締結して土地を贈与し、さらにC・D間で贈与契約を締結して土地を贈与した。
この場合に、AはB・C間で行われた贈与契約を取消し、CまたはDに対して、土地または土地の価値である500万円の返還を求めることができる。

 

◆新法での改正点
詐害行為取消権は、受益者や転得者を巻き込んで行使され、さらに、その効果も債務者が行なった行為を取り消して、財産状態を元に戻すものなので、権利行使が与える影響は債権者代位権に比べて大きいと言えます。
しかし、旧法では、詐害行為取消権について、わずか3か条だけしか規定を置いていなかったため、詐害行為取消権の要件や効果が不明確であり、多数の判例や解釈によって補充されて運用されてきました。

新法では、旧法下での判例や解釈の蓄積を踏まえて、詐害行為取消権の要件、効果、適用範囲等について、15か条の規定を置いて、より詳細に規定しています。
なお、詐害行為取消権と似た制度として、破産法上の否認権という制度があります。新法では、否認権に関する条文を参考にして、詐害行為取消権の条文が規定されているところもあります。

 

◆詐害行為取消権の要件
(1)受益者に対する詐害行為取消権の要件
詐害行為取消権は、債務者が受益者との間で行った行為を取り消し、受益者から財産の返還を求めるという大きな効果を生じさせるものです。

そのため、債務者や受益者との利益調整の観点から、新法424条において厳格な要件が規定されています。
詐害行為取消権は、強制執行のための財産を回復させるための制度であることから、詐害行為は、財産権を目的とした行為(たとえば、贈与契約、弁済)に限られ、被保全債権は強制執行により実現できる権利(たとえば、金銭債権)であることが必要となります。

また、債務者の財産管理の自由と債権者保護の調整の観点から、被保全債権は、詐害行為の前に存在した原因から生じた債権であることが必要です。なお、被保全債権自体が詐害行為の前に生じている必要はなく、被保全債権を発生させる「原因」が詐害行為の前に生じていればよいとされています。

そして、詐害行為によって利益を得た受益者の利益と債権者保護の調整の観点から、債務者は自己の行為が債権者を害することを知っている必要があり(詐害意思)、受益者も詐害行為によって債権者が害されることを知っていることが必要となります。この知っていることを「悪意」といいます。他方、知らないことを「善意」といいます。
詐害行為取消権を受益者に対して行使する場合、以下の要件をすべて満たす必要があります。

【受益者に対する詐害行為取消権の要件】
①債務者が債権者を害することを知って行為を行なうこと(詐害行為)
②受益者が債権者を害することを知っていたこと
③詐害行為が財産権を目的とする行為であること
④債権者の債権(被保全債権)が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものであること
⑤被保全債権が強制執行により実現できる権利であること

(2)転得者に対する詐害行為取消権の要件
詐害行為取消権を転得者に対して行使する場合、受益者に対する詐害行為取消権の要件をすべて満たしたうえで、さらに、下記の要件を満たす必要があります(新法424条の5)。
なお、詐害行為取消権の対象となる転得者が、受益者から財産を転得した者である場合か、受益者から財産を転得した者からさらに財産を転得した者である場合かによって、要件が異なります。

【転得者に対する詐害行為取消権の要件】
①転得者が受益者から財産を転得した者である場合
転得者が、転得の当時、債務者が行なった行為が債権者を害することを知っていたこと。
②転得者が他の転得者から財産を転得した者である場合
当該転得者とその前に転得したすべての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者が行なった行為が債権者を害することを知っていたこと。

(3)裁判所に対する訴えによること
詐害行為取消権は、受益者に対して行使する場合であっても、転得者に対して行使する場合であっても、裁判所に訴訟を提起する方法でしか行使できません。
債権者代位権は裁判外で行使することができますが、詐害行為取消権は関係者に与える影響が大きいため、裁判上でしか行使できないよう規定されています。

 

◆詐害行為取消権の出訴機関の制限
詐害行為取消権は次のいずれかに該当すると、訴訟提起することができなくなります(新法426条)。
①債務者が債権者を害することを知って詐害行為を行なった事実を債権者が知った時から2年が経過した場合
②詐害行為の時から10年経過した場合
このような出訴期間の制限が設けられているのは、長期間にわたって債務者の行為や財産が逸出した状態を放置した債権者に詐害行為取消権を行使させて、現状の法律状態を変動させる必要性は乏しいという理由によります。

コメントを残す