世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は、【改正民法債権編】に関して、債権の譲渡性とその制限2について考えてみたいと思います。
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債権の譲渡性とその制限2
譲渡禁止特約のある債権の譲渡が有効とされた
◆譲渡制限付き債権の債務者の供託
譲渡制限付き債権が債権譲渡された場合、債務者としては、誰に弁済を行なってよいかわからなくなることがあります。
そこで、新法では、金銭支払いを目的とする譲渡制限付き債権が譲渡された場合、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託できることとしています(新法466条の2第1項)。
これは旧法にはなかった新たな供託原因を創設するものです。新法では譲渡禁止特約に違反する債権譲渡も常に有効で、譲受人が債権者となります。このため、債務者は旧法で可能であった「債権者不確知」(債権者が誰かわからないこと)による供託ができず、この規定が設けられました。
この定めに基づいて供託をした債務者は、遅滞なく、債権の譲渡人と譲受人に供託の通知をしなければなりません(同2項)。なお、供託された金銭は、債権の譲受人に限り、還付請求をすることができます(同3項)。
また、金銭支払いを目的とする譲渡制限付き債権が譲渡された場合において、譲渡人について破産手続開始決定があったときは、譲受人は、譲渡制限について悪意または重過失があったとしても、債務者に対し、その全額を供託させることができます(新法466条の3)。
これは、債権譲渡後に譲渡人に破産手続開始決定がなされた場合に、債務者が譲受人よりも先に破産管財人に対して弁済する可能性があり、その場合、譲受人の金銭債権の回収が困難になるおそれがあるからです。
◆譲渡制限付き債権の差押え
新法466条3項の規定は、譲渡制限付き債権に対する強制執行をした差押え債権者には適用されません(新法466条の4第1項)。
譲渡制限付き債権が差押えられた場合、仮に、債務者が差押債権者に対して譲渡禁止特約をもって対抗できる(譲渡制限により、差押債権者に支払うのではなく、元の債権者に対して支払いをできる)とすれば、私人間で自由に差押禁止財産を作り出せることになってしまいます。そのため、判例法理では差押債権者に対して対抗することを認めていませんでした。
新法は、このような判例法理を明文化したものです。
また、譲渡制限付き債権であることについて、譲受人等に悪意または重過失がある場合に、その債権者が同債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって、差押債権者に対抗することができます(新法466条の4第2項)。
この規定は、差押債権者に対して、元の権利者(譲渡制限付き債権の譲受人・差押債務者)が有する以上の権利を認める必要がないことから、定められたものです。
◆預貯金債権に関する譲渡制限
前述のとおり、新法は、譲渡制限付き債権が譲渡された場合でも、その債権譲渡を有効としています。
しかし、譲渡制限のある預貯金債権について、悪意または重過失の譲受人等の第三者との関係では、従来通り、債権譲渡は無効となります(新法466条の5第1項)。
これは金融機関は日々、大量の預貯金の払い戻し等の作業が必要で、新法が定める一般原則で債権譲渡を有効にすると、これまで譲渡制限によって回避してきた過誤払いのリスクが生ずること等を考慮したものです。
ただし、譲渡制限付預貯金債権の差押えがされた場合には、譲渡制限をもって対抗できません(新法466条の5第2項)。
これは、譲渡制限付債権の差押えと同様、私人間の合意により差押禁止財産を作り出すことはできないという判例法理を明文化したものです。