世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。今回は、【改正民法債権編】に関して、賃貸借の成立等について考えてみたいと思います。
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賃貸借の成立等
賃貸借の成立、存続期間、修繕等に関する規定を整備
◆賃貸借の成立
賃貸借の成立にあたって、「引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還すること」の合意も必要であることが新たに明記されました(新法601条)。
不動産賃貸借の場合、たとえばオフィスの賃貸借契約では、鍵の返還後に、数週間にわたって原状回復工事がされるケースがあります。
このような場合、賃貸人としては、原状回復工事が終わるまで他のテナントに貸せないため、鍵の返還と現状回復工事の終了のいずれをもって返還したといえるのかを契約書に記載しないと、賃料が発生する期間をめぐって争いが生じかねず、注意が必要です。
動産賃貸借の場合、たとえば動産リースにおいては、目的物の返還がされない場合が少なくありません。動産リースは、そもそも金融的な側面も強いことから、賃貸借と位置づけるかについて争いがありますが、賃貸借の規定が適用されると考えた場合、返還することの合意をしなくてはいけないとする新法との整合性については疑義が生じるところです。
◆賃貸借の存続期間
賃貸借の存続期間は、これまで上限が20年に制限されていましたが、50年に延長されました(新法604条)。
不動産賃貸借の場合、建物所有を目的とする借地や借家であれば、借地借家法により上限なく長期の賃貸借を締結することができますし、農地であれば上限50年とされていましたが、たとえばゴルフ場の敷地を目的とする賃貸借は上限が20年とされてきました。また、近時では、太陽光発電・風力発電といった再生可能エネルギーの用地を不動産賃貸借によって調達するニーズも高まっています。
これらの安定的な経営を図る上で、旧法の20年という上限が支障になっていました。
そこで、賃貸借の存続期間の上限を撤廃することも検討されましたが、例えば借地上の老朽家屋が空家のまま長年放置されて社会問題化していることからもわかる通り、あまりに長期にわたる賃貸借には弊害もあります。
そのため、耕作地などを借りる権利である永小作権の存続期間が上限を50年としていることを参照し、賃貸借の存続期間の上限を50年に延長することになりました。
◆賃貸人・賃借人による修繕等
(1)賃貸人による修繕等
賃貸人による修繕等については、賃借人に帰責事由がある場合、賃貸人が修繕義務を負わないことが明記されました(新法606条1項ただし書)。
(2)賃借人による修繕等
賃借人による修繕等については、次のいずれかの場合には、賃借人に修繕権があることが明記されました(新法607条の2)。
①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき(同1号)
②急迫の事情があるとき(同2号)
問題となるのは、上記①で修繕の必要がどのような場合に認められるかです。
たとえば、賃貸人が建物賃貸借の更新拒絶をし、その正当事由として、建物老朽化に伴う建替えの必要性等を主張したとします。この場合、期間満了までの間に賃借人が通知をした上で、必要な修繕工事をすることができるとすると、賃貸人はすぐに建て替えるつもりであるにもかかわらず、老朽化した建物に多額の修繕費用の支出を強いられる可能性もあります。
そのため、契約書で賃借人に修繕権が認められる範囲や時期を具体的に定めておくことが望ましいといえます。
ただし、アパートやマンションなどの居住用建物については、賃貸人に有利な条項を契約書で定めても消費者契約法により無効とされる可能性があるので注意が必要です。