世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例8 ゴミ屋敷についての記事です。
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【相談内容】
相談者(55歳女性)から、「一人暮らしの叔母(84歳)の家に行ってみたところ、ゴミで足の踏み場がなく、玄関外にもごみが散乱していた。隣近所の人からもなんとかしてと言われたが、私がゴミを整理しようとすると叔母が怒り出し、どうすればよいか困っている」と相談された。
【検討すべき点】
高齢者の一人暮らしの家がゴミ屋敷と呼ばれ、近隣住民が迷惑しているというニュースをよく見るようになりました。ただし、本人が「ゴミ」と思っていなくて、ゴミではないと言い張ると、有効な手段がないのが現状です。令和3年民法改正により、管理不全土地管理命令や、管理不全建物管理命令の制度が新設されましたが、ゴミ屋敷問題の解決には、まだまだ難しい問題が残されています。
【1】ゴミ屋敷とは
① 高齢になると、どうしても物忘れが多くなり(認知症が加わればなおさら)、さっきまで手元にあった物がどこに行ったか分からなくなります。間違えて大切なものを捨ててしまったらたいへんだと思い、部屋に物があふれます。
② たまにゴミをだそうと思うものの、分別収集日は覚えていないし、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ごみ、ペットボトル、紙パック、粗大ごみなど、の分類なんてできるはずもありません。重いゴミ袋を抱えて階段を上り下りするのも一苦労ですし、ゴミ集積所で分類ミスを近所の人に指摘され怒られるのも嫌でたまらず、だんだんとゴミ出しが億劫になってきます。
③ さらに、必要なときに目的のものが見当たらないと、認知症や物忘れだとは認めたくないので、「盗まれた」と言い出します。「盗んだ」と疑われるのは、様子を見に来る家族や訪問介護のヘルパーで、「盗まれたもの」は、通帳や印鑑などに限らず、眼鏡だったり、野菜だったり、下着だったりします。
そして「そんなものは誰も盗みませんよ」といわれると、「じゃあ、私への嫌がらせに違いない」とひとを遠ざけるようになります。
④ さらに高齢者は「頼れるものは金しかない」という感覚に陥りがちです。そこで、手元に現金を置いて見せびらかし、家族や知人の関心を引こうとすることがあります。ところがその現金を誰かが狙っている気がして、家の中のあちらこちらに隠します。そしてその隠し場所を忘れてしまうので、なおさら物が捨てられなくなります。そんなタイミングで誰かが「整理しよう」と声をかけると、現金を狙っているとしか思えなくなり、極めて強い拒否反応(怒り出す)を示します。
⑤ このような背景で、高齢者の一人暮らしの場合はかなりの確率で、屋内は足の踏み場もない状態になっているという印象です(屋外までゴミがあふれているのは末期症状です)。
【2】ゴミ屋敷の解決方法
① このような傾向が進行すると、やがて玄関外にもゴミがあふれ、異臭がしたり、害虫が発生したり、景観や通行を害したりするようになります。この段階でようやく近隣からのクレームで「ゴミ屋敷」と認識されます。しかし、本人が「これはゴミではない」と言い張る限り、それをゴミとして撤去する方法はありませんでした。
② 横浜市や大阪市など地方自治体によっては、相談窓口を設けて、指導・勧告・命令・代執行を内容とする条例を定めて取り締まろうとする動きがありますが、再発防止が保証できないことや強権的な措置には馴染まない面もあり、難しい問題に違いありません。
③ なお、居住空間に価値のない大量の商品を度を越して収拾することにより、著しい苦痛や不全を起こすことは、近年「強迫的ホ―ディング」(ためこみ症)とよばれる精神疾患と分類されるようになりましたが、薬物療法や認知行動療法が採られるケースもあるようですが、すぐに寛解するような有効な治療法は見つかっていません。高齢者には片付ける気力も体力もない場合が多いので、家族としては、高齢者の気持ちをなだめて一緒に片付けようと提案する程度のことしかできないのが実情です。
【3】管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令
① 令和3年民法改正の一環として、相続時の登記の義務化などが規定されましたが、同時に、管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令の制度が設けられました。施行日は令和5年4月1日です。施行後はこの制度によってゴミ屋敷問題は対応ができる可能性があります。
② 概要としては、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは利害関係人の請求により、当該土地を対象として管理不全土地管理人による管理を命ずる処分(管理不全土地管理命令)をすることができ(改正民法264条の9第1項)、その効力は対象土地にある動産に及びます(同条2項)。
③ また、管理不全建物についても、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人による管理を命じる処分(管理不全建物管理命令)ができるようになりました(同法264条の14第1項)。
④ しかし、この改正法によるとしても、相談者(姪)自身は申立権者たる利害関係人に当たらない可能性があること、申立人は予納金を負担させられること、戸外のゴミについては管理不全土地管理命令によってある程度は片付けられるかもしれないが、屋内のゴミはそのままとなり、やがて元の木阿弥になる可能性があるなどの問題があります。
⑤ したがって、管理不全土地管理命令などの運用が不明である現時点では、相談者に対しては、できる範囲で叔母を説得すべきであるものの、最終的には行政対応に任せ、大きな荷物を背負い込まないようにアドバイスすることになると思います。