【終活・遺言・相続相談】相談例19 家族信託

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例19 家族信託についての記事です。

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【相談内容】
相談者(54歳男性)から「先日参加した終活の講演会で、成年後見の問題点と家族信託の利点を教えてもらった。私の母(87歳)も認知症気味なので、家族信託を利用しようと思うが、どうだろう」と相談された。

【検討すべき点】
家族信託は民事信託の一種で、高齢者の認知症対策(成年後見の代替案)の一つとして注目されています。家族信託は、その家庭の事情に応じたオーダーメイドとなるので、信託行為の内容をどのように定めるかは財産管理契約と比べても難しく、専門家によるコンサルティングが不可欠です。相談者には家族信託の内容を説明し、家庭の事情を詳しく聞き取る必要があります。

【1】信託の基礎知識

① 信託とは、委託者が受託者に財産権(所有権など)を移転し、受託者が信託目的に従って受益者のために信託財産を管理・処分する制度です。
② 信託財産の権利が帰属するのは受託者ですが、経済的利益は受益者に帰属し、両者が分離しているところに特徴があります。また、信託目的・信託行為・信託財産・委託者・受託者・受益者が信託の要素とされます。
③ 他の制度との違いとして、以下の点が挙げられます。
●信託は、委託者ではなく受益者にに効果帰属する点と死亡により終了しない点で(財産管理契約などの)委任契約と異なる。
●財産権が受託者に移転する点で寄託契約と異なる。
●事実行為である身上監護を目的としない点で後見と異なる。
●相続開始前に発効する点、相続開始後の定期的給付を定めることができる点(遺言代用信託)、二次的承継を指定できる点(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)などで遺言とも異なるとされています。
④ 信託は、商事信託と民事信託に分類されます。商事信託は、信託銀行などの受託者が営利目的で信託報酬(手数料)を得るもので、投資信託、後見制度支援信託、代理出金機能付信託などがこれに当たります。
⑤ 民事信託は信託報酬を目的としない信託で、平成18年の信託法改正により、営利目的でなければ、信託業免許を持たない法人や個人も受託者になれるものとされました。家族信託は営利を目的としない家族が受託者になる民事信託の一種です。
⑥ 信託を設定する方法としては、信託契約・遺言信託・自己信託があります(信託法3条)。ここでいう遺言信託は、金融機関の宣伝している遺言信託とは違い、遺言で信託内容を決める方式のことを差します。

【2】家族信託

【2-1】家族信託とは

① 「家族信託」とは、高齢者が信頼できる家族に財産を預ける信託のことで、民事信託の一種であり、通常、その方式は信託契約です。法令上、家族信託という用語は見当たらず、いわゆる「家族の中で完結する信託」という意味で用いられています。
② 家族信託は、高齢に差し掛かった委託者が、将来の判断能力の衰え(認知症)に備え、家族の生活の安定や相続紛争の防止、相続税対策、事業承継等の目的で、資産を活用する方法だと言えます。
③ それだけに、信託の内容も各家庭の事情により様々で、家族信託に明るい専門家の協力なく実現は困難であると言えます。
④ それゆえに、専門家に対する報酬(初期費用)や受託者の実質的なランニングコストがかさむため、ある程度の資産がある高齢者でなければ、選択肢の一つにはなりえません。

【2-2】家族信託の利点

① 家族信託の利点としては、次のような項目が挙げられます。
●認知症対策としてすぐにスタートできる
●財産管理と財産承継(相続)を同時に行なえる
●他界しても預金の封鎖といえる金融資産の凍結が避けられる
●財産管理に透明性が期待できる
●遺言の代わりになる
●遺言ではできない内容の承継方法を定めることができる
●財産管理を次代に承継できる
●相続税対策を委託者が認知症になった後も行うことができる
●家族以外の物が関与しない場合、管理費がかからない
② 家族信託ならば上記の項目すべての恩恵が受けられるわけではなく、それぞれの事情に応じて、信託契約の内容を検討することになります。

【2-3】

家族信託の問題点

① 家族信託の問題点としては、次のような項目が挙げられます。
●設定行為(信託行為)が専門的かつ複雑になる
●安心して財産を預けられる家族が見当たらない場合家族信託ができず、手数料がかさむ信託銀行などに受託者を任せざるを得ない
●不動産に関して信託登記の費用が発生する
●財産の信託なので、身上監護を盛り込むことができない
●受託者の義務(善管注意義務・忠実義務・計算書類の作成・報告等)が複雑で面倒である(信託法29条以下)
●受託者である推定相続人とそうでない推定相続人間での争いの種になり得る
●意思能力が十分で信託契約ができる程度の高齢者が、形式的な名義変更であっても、財産の名義が移転することを拒絶するなど
② 上記以外の点として、信託終了事由や帰属権利者の確定、税金対策(受益者に課税される)、遺留分対策には注意が必要です。
③ 投資信託はそもそも信託なので、さらに家族信託の信託財産にする体制が、信託銀行や証券会社もそこまでの制度を構築できていません。
④ 受託者の横領、信託形式の悪用(強制執行の回避手段にする)にも注意が必要です。

【3】特殊な信託

家族信託だけでなく、以下のように相続対策として注目されている信託類型があります。

【3-1】遺言代用信託

① 遺言代用信託とは、委託者の死亡により受益権を取得する旨の定めがある信託のことです(信託法90条)。
② 例えば、委託者が生前の信託契約によって受託者(金融機関など)に資産(信託財産)を信託し、委託者が死亡した死亡した場合には認知症の配偶者や障害のある子(親亡き後問題)を受託者として、定期金を与えるという内容が考えられます。
③ 委託者の死後の財産処分につき遺言の代わりになることから、遺言代用信託とよばれます。

【3-2】後継ぎ遺贈型受益者連続信託

①後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは、受益者の死亡により当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託のことです(信託法91条)。
② たとえば、委託者が生前の信託契約や遺言によって受託者に資産を託し、その受益者(例えば配偶者)が死亡した後は、前妻の子である長男に受益権を与える(受益者を変更する)といった場合に利用できます。
③ 最初の信託契約では委託者が受益者になり、委託者が死亡すれば受益者を配偶者に変更し(この部分は遺言代用信託です)、さらに配偶者が死亡した場合には、受益者を子に変更するといった、複数の承継先を決めておくことができます。通常の遺言では、受遺者が死亡した場合の遺産の承継先までは決められないとされており、その点で意味があると言えます。
④ なお、信託契約で、家族信託と同時に、遺言代用信託や後継ぎ遺贈型受益者連続信託を設定することも可能ですが、契約内容が複雑になればなるほど、遺留分侵害、課税関係、信託の終了事由など様々な関係を整理する必要があります。

【3-3】空き家防止信託

① 空き家防止信託とは、高齢の親(委託者)が、信託契約によって実家(信託財産)を子(受託者)に信託し、子は親の認知症が進行した場合には自ら実家を修繕するなどして管理し、親が施設に入所して実家が不要になった場合には実家を処分することができるとするものです(受益者は親です)。
② これも家族信託の一種で、社会問題化している空き家問題の防止に効果があると説かれています。

【4】相談者へのアドバイス

① 任意後見契約や財産管理契約と同様に、家族信託が推奨されていますが、信託契約が複雑であることやコストがかかることから、家族信託にも利用しにくい面があります。
② また、高齢者に十分な事理弁識能力があることが前提ですから、既に本人の認知症が進行しているなら、家族信託を利用することは難しく、成年後見制度の一択となります。本人の健康状態をよく伺ったうえで、各方法の長短を検討していただくべきです。