【改正民法債権編】中間利息控除

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、中間利息控除について考えてみたいと思います。

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中間利息控除

中間利息控除の明文化と適用利率、変動制への移行

 

◆中間利息控除とは
中間利息控除とは、不法行為等に基づく損害賠償額の算定にあたり、将来の逸失利益や出捐(支出、費用)を現在の価値に換算するため、損害賠償額算定の基準時から将来の利益を得られたであろう時点までの利息相当額(中間利息)を控除することをいいます。

本来であれば将来受け取るべき金銭を現在受け取るため、その調整をするということです。
これは、交通事故における損害賠償請求訴訟等で、実務上広く行われていますが、旧法には中間利息控除の定めはありませんでした。

 

◆中間利息控除に用いる率
旧法下での裁判実務においては、中間利息控除を行ない、その際の利率として法定利率の5%を用いるのが通常でしたが、これより低い利率を用いる裁判例も見られました。
中間利息控除に用いる利率は逸失利益の算定に多大な影響を与え、損害額が多額の場合、利率の変更により、損害賠償額に数千万円単位での差異を生じさせます。同一内容の損害である場合でも、裁判官によって、用いる利率が異なり、損害賠償額に大きな差異が生じるのは、交通事故における公平の観点からも好ましくありません。

そこで、平成11年に東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の各交通部より、原則として、中間利息控除の際の利率は、年5%を採用するとの共同提言が行なわれました。しかし、この提言の後も、市中の低金利を理由に年5%よりも低い利率を採用する裁判例がありました。
そのような中、平成17年、最高裁は、中間利息控除の際に用いる利率は、民法所定の法定利率である年5%を用いるべきであると判断しました。この判例では、中間利息控除に法定利率を用いる理由として、次のような点を指摘しています。

①法定利率が、我が国の一般的な貸付金利を踏まえて定められたものであること
②将来の請求権を現在価値に換算するにあたって、法的安定と統一的処理が必要とされていること
③被害者の将来の逸失利益を現在価値に換算する場合にも、法的安定と統一的処理が要請されること
このような経緯により、裁判実務上、中間利息控除に際しては、年5%の法定利率が用いられてきました。

 

◆変動制への移行
改正により法定利率は変動制となりましたが、中間利息控除は法定利率によるべきという上記裁判例の考え方は、引き続き維持することが可能です。
そこで、新法では、417条の2が新設され、損害賠償額の算定において中間利息控除をするときには、損害賠償請求権が発生した時点の法定利率によることが明記されました。不法行為による損害賠償についても同様です(新法722条1項)

また、実務における中間利息控除は、①将来において取得すべき利益(たとえば、被害者が事故に遭わなければ将来取得していたであろう収入)についての損害賠償額を定める場合のみならず、②将来において負担すべき費用(たとえば、被害者が将来負担することになる介護費用)についての損害賠償額を定める場合にも行われています。

そのため、将来の積極損害(現実に支出を要する損害)の損害賠償額の算定で中間利息控除を行なう場合にも、同様の規律によることとされました。
このように、改正後、中間利息控除を行なう場合の利率は、法定利率の3%を用います。その結果、中間利息控除を行なう損害に関しては、旧法での法定利率5%の場合より、賠償すべき損害額が増加することに注意が必要です。

このように、法定利率の変動に伴って、交通事故等において賠償すべき損害額が変動すると、損害保険の内容の見直しが必要になる可能性があります。これにより、交通事故等を対象とする損害保険の保険料に影響を与える可能性があり、実務に与える影響は大きいと考えられます。

 

◆基準時について
金銭債務の不履行の損害賠償(遅延損害金)の利率は、金銭債務の遅滞の時の法定利率によるとされ、中間利息控除に用いる利率は、損害賠償請求権が生じた時の法定利率によるとされています。

そして、不法行為に基づく損害賠償請求権については、一般に、不法行為の発生と同時に、直ちに遅滞に陥ると考えられています。
そのため、損害賠償額の算定と中間利息控除との両方に、不法行為時の法定利率が適用されます。
なお、後遺症による逸失利益を算定する場合には、その症状が固定した時点での損害額の算定が可能になります。
仮に、このような場合に症状固定時が基準時となるとすると、症状固定時がいつであったかをめぐって深刻な紛争を生じるため、一律に不法行為時とするのが適切であると考えられたのです。

他方、契約に基づく安全配慮義務等の違反に基づく債務不履行責任は、事故発生時に損害賠償請求権が生じ、安全配慮義務等の違反に係る損害賠償額の中間利息控除に用いる法定利率は、事故発生時のものとなります。
もっとも、安全配慮義務等の違反を含む債務不履行責任に基づく損害賠償請求権は、期限の定めのない債務と解されているので、債権者が履行の請求をした時から遅滞となります。

この場合、中間利息控除に用いる法定利率は事故発生時のもの、損害賠償額の算定に用いる法定利率は債権者の請求時のものとなり、両者が異なる可能性が生じることに注意が必要です。

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