世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は、【改正民法債権編】に関して、損害賠償を規定するその他改正について考えてみたいと思います。
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損害賠償を規定するその他改正
損害賠償に関する判例・通説の理解を明文化
◆履行に代わる損害賠償(填補賠償)
債務不履行がある場合で完全履行を求めることができないときには、債権者は本来給付の代わりに損害賠償請求をすることになります。この損害賠償請求を、「履行に代わる損害賠償」あるいは「填補賠償」といいます。
旧法下では、履行不能の場合に履行に代わる損害賠償請求ができることに争いはありませんでした。しかし、それ以外のどのようなケースで履行に代わる損害賠償請求ができるか、解釈が分かれていました。
そこで新法では、履行に代わる損害賠償請求ができる場面を、以下のように明文で規定しました(新法415条2項)。
①債務の履行が不能であるとき(同1号)
②債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確にしたとき(同2号)
③債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、または債務の不履行による契約の解除権が発生したとき(同3号)
③の前段の「契約が解除され」たときの典型例は、契約が法定解除された場合です。③の後段の「契約の解除権が発生したとき」とは、債務不履行の効果として解除権が発生したものの、いまだ行使されていない場合を指します。解除権を行使せずとも填補賠償の請求は可能です。
◆履行遅滞中または受領遅滞中の履行不能
債務者が期限を超えて履行をしていない(履行遅滞の)場合に、債務者の責めによらない事由によって履行不能となった場合でも、債務者はその責任を免れないと考えられてきました(判例)。
これを受けて、新法413条の2第1項は、履行遅滞中に当事者の責めに帰することができない事由によって履行不能になった場合について、「債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす」としました。「みなす」というのは、反対事実を証明したとしても、事実を覆すことができないことを意味しています。
これにより、履行遅滞中の履行不能のケースでは、債権者は債務者に対して損害賠償請求ができることになります。
他方で、債権者の責任で履行が遅れている場合に、債務者にその責任を負わせるのは酷です。たとえば、動産の引渡債務の場合には、債権者が当該動産を受け取らないと履行は完了しません。このように、履行の提供があったのに、債権者の責任で債務の本旨に従った履行が完了しない状態を「受領遅滞」といいます。
新法は、受領遅滞の場合に、「当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。」(新法413条の2第2項)としました。この規定により、受領遅滞中の履行不能の場合には、債権者は契約の解除もできず、債務者の反対給付請求(上記動産の例でいえば、売買代金の請求など)の拒絶もできないことになります。
◆代償請求
履行不能を生じさせたのと同一の原因によって、債務者が履行の目的物に代わる利益を取得することがあります。
たとえば、売主(債務者)Aが、買主(債権者)Bに目的物を引き渡す義務を負っている場合に、第三者Cがその目的物を壊してしまったとします。
この場合、売主Aは第三者Cに対して損害賠償請求ができます。しかし、他方で、買主Bは目的物を受け取ることができなくなってしまいます。
そこで、旧法下でも、判例は、買主Bの損害を限度として、売主Aに対して生じた利益の償還を請求する権利(代償請求権)を認めてきました。
今回の改正では、新法422条の2が新設され、代償請求権が明文で認められました。これは、これまでの判例法理を明文化したものと言えます。