世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。今回は、【改正民法債権編】に関して、定型約款についてのみなし合意について考えてみたいと思います。
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定型約款についてのみなし合意
定型約款の法的拘束力の根拠としてのみなし合意を規定
◆みなし合意の要件
旧法では、約款に法的拘束力が生じる根拠が明確ではありませんでした。
新法では、定型取引を行なう合意をした者は、一定の要件を満たす場合には、定型約款の個別条項についても合意したものとみなす旨を規定し(新法548条の2第1項)、定型約款の法的拘束力の根拠がみなし合意にあることを定めました。具体的な要件としては、以下のいずれかに該当する場合に、合意がみなされます。
【みなし合意の要件】
①定型約款を契約内容とする旨の合意をしたとき(新法548条の2第1項1号)
②定型約款準備者が、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき(同2号)
上記①のケースとしては、定型取引に合意した者が、定型約款準備者と面談やインターネットを通じたやりとり等によって定型約款を契約の内容とすることに合意した場合が該当します。
なお、合意を得る方法として、ウェブページでも、定型約款を契約内容とすることに同意する旨のボタンをクリックしてもらう方法も可能です。
上記②のケースは、定型約款準備者が、相手方に定型約款を契約内容とする旨の記載ある書面や電磁的記録等をあらかじめ提示・提供する方法によるものです。この場合には、相手方が当該定型約款を契約内容とすること自体に合意をしていなくても、定型約款の内容が法的拘束力を持つことに留意が必要です。
なお、電車やバス等の旅客運送取引、高速道路等の通行取引等については、定型約款準備者が定型約款を契約内容とすることの「表示」すら困難といえます。
そこで、このような定型約款準備者による相手方への表示すら困難であり、かつ、取引自体の公共性や定型約款の契約内容化の必要性が高い取引に関しては、特別法(鉄道営業法、道路運送法等)において、あらかじめ定型約款を契約内容とする旨の「公表」をしていれば足りるとする旨の特例規定が設けられます。
◆不当条項規制
上述した通り、定型約款を契約内容とする旨の表示を相手方が見ていなかった場合でも、表示があればみなし合意が成立するという点で、定型約款の法的拘束力は強いものといえます。
ただし、どんな内容であっても契約内容とする旨の合意や表示をすれば法的拘束力が認められるというものではなく、相手方の利益を一方的に害する条項については規制が定められています。
具体的には、定型約款に含まれる条項のうち、
①相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、
②その定型取引の態様およびその実情ならびに取引上の社会通念に照らして信義則(法1条2項)に反し、相手方の利益を一方的に害すると認められる条項
については、当該定型約款の個別の条項について合意をしなかったものとみなされます(新法548条の2第2項)。
条項の内容の不当性については、取引の実情や取引上の社会通念に照らして判断しますが、ここで重要なのは、信義則に反するか否かの判断にあたっては、当該条項そのものだけではなく、取引全体に関わる事情を取引通念に照らして広く考慮することです。
したがって、当該条項そのものは相手方にとって不利であっても、取引全体を見ればその不利益を補うような定めがあれば、全体としては信義則に反しないと解されます。
なお、新法548条の2第2項によってみなし合意から除外される条項がある場合でも、除外対象以外の条項については、みなし合意が維持されることに留意が必要です。