【改正民法債権編】債権譲渡における債務者の抗弁

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、債権譲渡における債務者の抗弁について考えてみたいと思います。

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債権譲渡における債務者の抗弁

異議をとどめない承諾による抗弁の切断を廃止

 

◆抗弁の切断の廃止
旧法では、債務者が債権譲渡を承諾する際、債権の譲渡人に対して主張し得た抗弁を主張せず、単に承諾だけを行なうと(異議をとどめない承諾)、債務者は債権の譲受人に対し、主張し得た抗弁を対抗できないとされていました(旧法468条1項)。

抗弁とはたとえば、当該債権が成立していない、すでに当該債権について弁済をしているなど、債権の成立・存続・行使等を阻害する事由をいいます。
債権が譲渡されたことを単に承諾しただけで、抗弁の喪失という債務者にとって予期しない効果が生じることは、債務者の保護の観点から問題がありました。

そのため新法では、債務者は、対抗要件を具備した時(債務者が譲渡通知を受けるか、または譲渡の承諾をした時)までに譲渡人に対して生じた事由をもって、譲受人に対抗できることとしました(抗弁の切断の廃止、新法468条1項)。

 

◆債権譲渡と相殺
新法において、債権譲渡がなされた場合、債務者は次の①~③のような債権(反対債権)がある場合には、譲受人に対し、相殺の抗弁を主張できることが明文化されました。
①債務者対抗要件具備前に取得した譲受人に対する債権(新法469条1項)
②債務者対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた譲渡人に対する債権(同2項1号)
③譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた譲渡人に対する債権(同2号)

ただし、②と③については、債務者対抗要件具備後に取得した他人の債権である場合には、相殺の期待がないものとして相殺ができません(新法469条2項ただし書)。

【改正民法債権編】将来債権の譲渡・対抗要件

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今回は、【改正民法債権編】に関して、将来債権の譲渡・対抗要件について考えてみたいと思います。

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将来債権の譲渡・対抗要件

将来債権の譲渡について判例法理を明文化

 

◆将来債権の譲渡
債権譲渡は、すでに発生している債権だけでなく、将来発生する債権についても行なうことができます(新法466条の6第1項)。

この将来債権の譲渡は、旧法下でも判例上認められていましたが、新法はこの判例法理を明文化しています。
なお、将来債権の譲渡を行なうにあたっては、債権の発生原因、譲渡の対象となる金額等によって、債権を特定する必要があります。

将来債権の譲渡がなされた場合、将来債権が発生した時点で、債権の譲受人が発生した将来債権を当然に取得するとしています(同2項)。これも判例法理を明文化したものです。

 

◆債権譲渡の対抗要件
(1)債務者対抗要件
債権譲渡は、当事者間の合意によって成立するもので、債務者の承諾等も、契約書や証書等の書類の授受も必要ありません。

しかし、これでは債務者にとって、誰が債権者であるか確定できず、誰に弁済してよいかもわかりません。
そこで、民法は、債権譲渡の譲渡人が債務者に債権譲渡を通知し、または債務者が承諾しなければ、債務者その他の第三者に対抗することはできない(債権譲渡に基づいて、債権の譲受人が債務者に弁済を求めることができない)としています(新法467条1項)。

これは、「債務者対抗要件」といわれており、この債務者対抗要件の制度は、新法でも旧法でも違いがありません。
ただ、新法では、現に発生していない債権の譲渡を含むとされ、将来債権の譲渡の場合も、債権発生前の段階で対抗要件を備えることができるという判例法理が明文化されています。

(2)第三者対応要件
債権譲渡の債務者以外の第三者に対抗するためには、債務者への通知または債務者の承諾を「確定日付のある証書」によって行う必要があります(法467条2項)。
このような「第三者対抗要件」も、新法と旧法で違いはありません。

 

◆将来債権の譲渡と譲渡制限との関係
将来債権の譲渡後、譲渡人と債務者との間で、債務者対抗要件を具備する時までに、譲渡対象となる将来債権について譲渡制限を付ける旨の合意がされた場合、譲受人その他の第三者は譲渡制限が付いていることを知っていた(悪意)とみなされます。そして、その結果、債務者は、譲受人その他の第三者に対し、債務の履行を拒否することができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって、その第三者に対抗することができます(新法466条の6第3項)。

【改正民法債権法】債権の譲渡性とその制限2

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今回は、【改正民法債権編】に関して、債権の譲渡性とその制限2について考えてみたいと思います。

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債権の譲渡性とその制限2

譲渡禁止特約のある債権の譲渡が有効とされた

 

◆譲渡制限付き債権の債務者の供託
譲渡制限付き債権が債権譲渡された場合、債務者としては、誰に弁済を行なってよいかわからなくなることがあります。
そこで、新法では、金銭支払いを目的とする譲渡制限付き債権が譲渡された場合、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託できることとしています(新法466条の2第1項)。

これは旧法にはなかった新たな供託原因を創設するものです。新法では譲渡禁止特約に違反する債権譲渡も常に有効で、譲受人が債権者となります。このため、債務者は旧法で可能であった「債権者不確知」(債権者が誰かわからないこと)による供託ができず、この規定が設けられました。

この定めに基づいて供託をした債務者は、遅滞なく、債権の譲渡人と譲受人に供託の通知をしなければなりません(同2項)。なお、供託された金銭は、債権の譲受人に限り、還付請求をすることができます(同3項)。

また、金銭支払いを目的とする譲渡制限付き債権が譲渡された場合において、譲渡人について破産手続開始決定があったときは、譲受人は、譲渡制限について悪意または重過失があったとしても、債務者に対し、その全額を供託させることができます(新法466条の3)。

これは、債権譲渡後に譲渡人に破産手続開始決定がなされた場合に、債務者が譲受人よりも先に破産管財人に対して弁済する可能性があり、その場合、譲受人の金銭債権の回収が困難になるおそれがあるからです。

 

◆譲渡制限付き債権の差押え
新法466条3項の規定は、譲渡制限付き債権に対する強制執行をした差押え債権者には適用されません(新法466条の4第1項)。

譲渡制限付き債権が差押えられた場合、仮に、債務者が差押債権者に対して譲渡禁止特約をもって対抗できる(譲渡制限により、差押債権者に支払うのではなく、元の債権者に対して支払いをできる)とすれば、私人間で自由に差押禁止財産を作り出せることになってしまいます。そのため、判例法理では差押債権者に対して対抗することを認めていませんでした。
新法は、このような判例法理を明文化したものです。

また、譲渡制限付き債権であることについて、譲受人等に悪意または重過失がある場合に、その債権者が同債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって、差押債権者に対抗することができます(新法466条の4第2項)。
この規定は、差押債権者に対して、元の権利者(譲渡制限付き債権の譲受人・差押債務者)が有する以上の権利を認める必要がないことから、定められたものです。

 

◆預貯金債権に関する譲渡制限
前述のとおり、新法は、譲渡制限付き債権が譲渡された場合でも、その債権譲渡を有効としています。
しかし、譲渡制限のある預貯金債権について、悪意または重過失の譲受人等の第三者との関係では、従来通り、債権譲渡は無効となります(新法466条の5第1項)。

これは金融機関は日々、大量の預貯金の払い戻し等の作業が必要で、新法が定める一般原則で債権譲渡を有効にすると、これまで譲渡制限によって回避してきた過誤払いのリスクが生ずること等を考慮したものです。

ただし、譲渡制限付預貯金債権の差押えがされた場合には、譲渡制限をもって対抗できません(新法466条の5第2項)。
これは、譲渡制限付債権の差押えと同様、私人間の合意により差押禁止財産を作り出すことはできないという判例法理を明文化したものです。

【改正民法債権編】債権の譲渡性とその制限1

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今回は、【改正民法債権編】に関して、債権の譲渡性とその制限1について考えてみたいと思います。

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債権の譲渡性とその制限1

譲渡禁止特約のある債権の譲渡が有効とされた

 

◆債権の自由譲渡性
債権譲渡とは、債権の同一性を保ちながら契約により債権を移転させることです。債権譲渡は、債権取立や担保としても利用され、また、証券化等の手法によってさまざまな金融スキームにも組み込まれているので、現代社会においては資金調達の手段としても重要な地位を占めています。

債権譲渡は、旧法でも、新法でも、原則として自由に行うことができます(債権の自由譲渡性、法466条1項)。ただし、債権の性質がこれを許さないときは譲渡ができません(法466条1項ただし書)。性質が譲渡を許さない債権とは、たとえば、自分の肖像画を描いてもらう債権など、債権者が異なることによって給付内容が異なることになる債権等です。

 

◆債権の譲渡制限
債権譲渡は、当事者が債権譲渡を禁止し、または制限する旨の意思表示を行なうことによって制限することができます(譲渡制限付債権)。
旧法では、債権が譲渡制限に反して譲渡された場合の効力については、「善意の第三者に対抗できない」(旧法466条2項)と規定され、譲受人が譲渡制限を知っていたか(悪意)、知っていたことについて重い過失(重過失)がある場合には、当該債権譲渡は無効とされていました。

しかし、この旧法の規定では、当事者の主観によって債権譲渡の有効性が左右されるため、取引の安定性に欠けるとの指摘がなされていました。
そこで、新法は、債権の流動化を図り、債権譲渡を実効性ある資金調達手段とするために、譲渡制限に反する債権譲渡であっても有効としました(新法466条2項)。

 

◆譲受人に悪意または重過失がある場合
譲渡制限付債権の譲受人が、譲渡制限の存在について悪意か、知らなかったことについて重過失があるような場合には、譲受人を保護する必要性は低い一方で、債務者としては、弁済先が変更されたことによる手間や費用等がかかるという不利益を受けます。

そこで、新法では、債務者は、譲渡制限の存在について悪意または重過失がある譲受人等の第三者に対し、債務の履行を拒絶でき、なおかつ、譲渡制限付債権の譲受人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって、その第三者に対抗できるものとしました(新法466条3項)。

ただし、新法では、債務者が債務を履行しない場合において、悪意または重過失のある譲受人等が、債務者に対して、相当の期間を定めて譲受人への履行の催告をしたにもかかわらず、債務者が当該期間内に債務の履行をしないときには、その債務者に対して新法466条3項の規定は適用しないとしています(新法466条4項)。すなわち、催告後、相当期間内に履行がないときは、債務者は譲受人からの請求を拒めなくなります。

【改正民法債権編】保証人保護の方策の拡充

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今回は、【改正民法債権編】に関して、保証人保護の方策の拡充について考えてみたいと思います。

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保証人保護の方策の拡充

個人保証の一定の制限や情報提供義務を規定

 

・今回の改正では、前述の根保証に関する改正のほか、保証人の保護をより一層拡充する観点から、特に個人が保証をするような場合に、一定の制限を加えたり、保証人に対する一定の情報提供を主債務者や債権者に義務づけたりするルールなども新たに盛り込まれました。

 

◆個人保証の制限
(1)公正証書の作成義務
個人が締結する保証契約のうち、次のものについては、その保証契約の締結の日前1か月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする人が保証の義務を果たす意思を表示していなければ、保証契約そのものが効力を生じないものとされました(新法465条の6第1項)。

①事業のために負担した貸金などの債務(貸金等債務)を主たる債務とする保証契約
②主たる債務の中に、事業のために負担する貸金などの債務(貸金等債務)が含まれる根保証契約
この公正証書の作成方式についても、具体的なルールが定められます(新法465条の6第2項)。

(2)適用除外
上記のように、個人保証には新たな制限が盛り込まれましたが、誰でもこのような制限が適用されるわけではないことに注意する必要があります(新法465条の9)。
たとえば、次のような人については、公正証書を作成していなくても保証契約の効力が生じます。
①主たる債務者が会社のような法人の場合に、その法人の理事や取締役などに就任している個人
②主たる債務者が個人であっても、主たる債務者と共同して事業を行なっている個人や、主たる債務者が行なう事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
要するに、主たる債務者と一緒に事業をしている場合や、法人の役員等がその法人の債務を個人保証する場合には、保証意思が公正証書で明らかにされなくても効力が生じる、ということです。

 

◆情報提供義務の新設
一定のルールに従って保証契約を締結しないと、保証契約そのものが効力を生じないという新たな個人保証の制限に加えて、今回の改正では、主たる債務者や債権者による保証人への情報提供義務も新たに盛り込まれました(新法465条の10、458条の2、458条の3)。

(1)契約締結時の情報提供
主たる債務者が、事業のために負担する債務に関する保証や根保証を他人に依頼するときは、その人に対し、自分の財産の状況等(①財産と収支の状況②他の債務の有無と内容等③他の担保の有無等)について情報を提供しなければならないとされました(新法465条の10第1項)。

そして、このような情報を提供しなかったり、提供していたとしても、その情報が誤っていて、保証を依頼された人が誤解したまま保証契約を締結したような場合に、そのことを債権者が知っていたか、知ることができたときには、保証人が保証契約を取り消せるようになりました(新法465条の10第2項)。

(2)主たる債務の履行状況に関する情報提供義務
保証人が主たる債務者から依頼されて保証をしていたときは、保証人から債権者に対して、主たる債務の内容や返済状況等について情報提供を求めることができるようになりました(新法458条の2)。

(3)主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
主たる債務者が期限の利益を有する場合に、その利益を喪失したときは、債権者は保証人に対して、その利益の喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければならなくなりました(新法458条の3第1項)。

たとえば、借入金に返済期限が定められている(期限の利益を有する)場合に、借入人の財産状態が悪化するなどして、約束した返済期限の到来前に返済を求められる状態に陥った場合(期限の利益を喪失した場合)に、その旨を通知しなければなりません。
そして、この期間内に通知をしなかった債権者は、保証人に対して、一定範囲の遅延利息の支払い等を請求できなくなります(同2項)。

【改正民法債権編】根保証

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根保証

根保証に関する個人の保証人の保護を拡充

 

◆根保証とは
根保証とは、主債務者が継続的な取引について負担する債務を保証することをいいます。
根保証は、保証額の上限や保証期間を定める「限定根保証」とこれを定めない「包括根保証」に区分することができます。

たとえば、建物賃貸借契約の保証も、この根保証(包括根保証)に当たります。賃借人が、将来にわたって継続的に負担する賃料債務や明渡し時の原状回復費用などの不特定の債務を、包括して保証するものといえるからです。

 

◆根保証に関する個人の保証人保護の拡充
根保証は、時に保証人の予想をはるかに超える責任を負担させられる危険があり、社会的にも問題となる事例が少なくありません。

上述の建物賃貸借の例でも、たとえば、大学生になった子がマンションを借りる際に、親が連帯保証人になるケースはよくあります。
その子の火の不始末が原因で火災が発生し、建物や他の居住者に甚大な被害を与えてしまったような場合、もし賃貸人がその建物に火災保険等をかけていなければ、一個人ではおよそ負担しきれない責任を連帯保証人である親が、すべて背負わなければならないという事態に陥ります。

平成16年の民法改正では、借入金等を根保証の対象とする類型に限って、保証上限(極度額)を定めなければ無効としたり(旧法465条の2)、一定の保証期間が経過すると保証金額が確定(元本確定)するなどのルールが新設されて保護が図られました(旧法465条の3等)。ただ、このような保証人保護の要請は、前述の例で示したように、必ずしも借入金等を根保証の対象とする類型に限られないという指摘がありました。

そこで、今回の改正では、平成16年改正で新設されたルールの適用範囲を、広く個人による根保証契約一般に拡大することとされました(新法465条の2、465条の4)。

 

◆残された検討課題(特別解約権の明文化)
根保証をめぐる残された検討課題として、「特別の元本確定請求権(特別解約権)」を明文化するか否かが議論されています。

これは、平成16年の民法改正時から検討されていたもので、根保証契約の保証人は、一定の特別な事由がある場合には、元本の確定を請求できるとする考え方です。

特別の事情とは、たとえば以下のいずれかに著しい事情の変更があった場合をいいます。
①主債務者と保証人との関係
②債権者と保証人との関係
③主債務者の資産状態

判例等の考え方を踏まえた一般的な理解を明文化するものですが、考慮すべきさまざまな要素を的確に表現することが難しいという技術的な問題をクリアできず、今回も改正が見送られることになりました。

なお、この特別解約権は、実務でも確立した考え方として条文がなくても救済が図られていますので、従前の実務に与える影響は大きくないと言えるでしょう。

【改正民法債権編】保証人の求償権

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保証人の求償権

求償権の範囲と保証人の通知義務に関する規定を整備

 

◆保証人の求償権
求償権とは、他人の債務をその人に代わって弁済した場合に、弁済した金額等をその人に対して請求(償還請求)できる権利のことです。
保証人も主債務者の債務を主債務者に代わって返済する立場にあるので、保証人が主債務を返済すれば、主債務者に対して求償権を取得します。

委託を受けない保証人と受けた保証人の求償権には違いがあります。
(1)委託を受けない保証人の求償権
主債務者から「保証人になって欲しい」と委託(保証委託)を受けなくても、債権者と保証人の合意だけで保証人になることはできます。
ただ、主債務者から委託を受けない保証人は、「弁済の当時、主債務者が利益を受けた限度」でしか求償することはできないので、法定利息や返済の費用等の請求まではできません(新法462条、459条の2第1項)。

また、保証人が主債務者の意思に反して保証をしていた場合は、さらに求償の範囲が制限されます。具体的には、求償時点で主債務者が「現に利益を受けている限度」でしか求償することができません(新法462条2項)。

(2)委託を受けた保証人の求償権
これに対して、主債務者から保証委託を受けた保証人は、法定利息や返済に要した費用など、委託を受けない保証人よりも広範囲の求償権(事後求償権)が認められます。また、保証委託契約も一種の「委任契約」(法643条)なので、受任者(保証人)の委任者(主債務者)に対する費用前払請求(法649条)としての「事前求償権」が認められています(法460条)。

ただ、常にこのような前払請求を認めてしまうと、保証人に保証を委託した意味がなくなってしまうので、旧法460条は3つの場合に限って事前求償を認めていました。
①主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき
②債務が弁済期にあるとき
③債務の弁済期が不確定で、その最長期も確定できないまま、保証契約の後10年を経過したとき(新法で削除)
この③は主債務の額が定まらないなどの問題から事前の求償にはなじまないという指摘を受けて、今回の改正で削除されました。
その代わりに、新法では以下の要件が加わりました。
「保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき」

また、旧法では、委託を受けた保証人が取得する事後求償権の範囲が必ずしも明確ではなかったことから、今回の改正によりこれが明確化されたほか(新法459条)、主債務の弁済期前に返済等(期限前返済等)が行なわれた場合の事後求償権の範囲を、委託を受けない保証人の事後求償権と同じ範囲に制限する改正も行われました(新法459条の2)。

 

◆保証人の通知義務
保証人が主債務者に代わって返済等する場合は、主債務者に不測の損害を与えないよう、事前に主債務者に確認(通知)してから行なうルールになっています(旧法463条1項、443条)。

ただ、委託を受けない保証人については、もともと事前の通知をしていても求償できる範囲が制限されるので(旧法462条1項、2項)、事前の通知を義務づける意義が乏しいなどの理由から、今回の改正では、委託を受けない保証人の事前の通知義務が廃止されました(新法463条)。

一方、保証人が主債務者に代わって返済等をした後に、その旨を主債務者に通知するルール(事後通知義務)は、旧法下のルールが維持されます。
また、主債務者の意思に反して保証をした保証人については、求償できる範囲が著しく制限されるので(法462条2項)、事前の通知や事後の通知をしてもしなくても、求償の範囲に差異が生じないことが条文上も明確にされました(新法463条3項参照)。

【改正民法債権編】保証債務

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保証債務

個人の保証人の保護強化と条文の整備を図る

 

・保証債務は、たとえば、お金を借りたいと思う人が、担保に差し入れることができる財産(自分名義の不動産等)を持たない場合に、その人の信用(返済能力)を補う手段として、実務上とても重要な意味(役割)を持つものといえます。

しかし、その一方で、個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の負債(保証債務)の支払いを求められて、生活の破綻に追い込まれたり、最悪のケースでは自ら命を絶ってしまうというような痛ましい事件も生じています。

そこで、今回の改正においては、特に個人の保証人をより一層保護する方策が盛り込まれました。
また、これまでの裁判実務で積み重ねられてきた一般的な理解(条文解釈をめぐる判例等の考え方)を具体的な条項として盛り込むなどの整理も行われました。

 

◆保証債務の付従性の改正
(1)保証債務の性質
保証債務に関する改正内容の説明に入る前に、まず、保証債務の一般的な性質について確認しておきましょう。

保証債務には、一般に、「付従性」「随伴性」「補充性」という3つの性質があるとされています。

①付従性
付従性とは、「主債務を担保するために存するという性質」であると説明されることがあります。
保証債務によって保証人が負担する債務のことを「保証債務」といいますが、保証人が保証する他人の債務を、保証債務との関係で「主たる債務」あるいは「主債務」といいます。

「主債務を担保するために存するという性質」とは、簡略化すれば、「主債務と運命を共にする性質」と言い換えることができます。
たとえば、主債務がないのに保証債務だけが成立することはないですし、主債務が消滅すれば保証債務も当然に消滅するという性質です。

なお、保証人の負担が主債務より重いときは、主債務の限度に減縮することを定めた旧法448条も、保証債務の付従性から当然に導かれる効果の1つであると理解されています。

②随伴性
随伴性とは、主債務が移転すると、保証債務も一緒に移転する(随伴する)と言う性質をいいます。

③補充性
補充性とは、主債務が履行されないときに初めて、(補充的に)保証人が履行しなければならなくなるという性質です。

(2)付従性に関する改正の概要
上記のように、保証債務には3つの性質がありますが、今回の改正では、付従性に関する新法448条(内容における付従性)の第2項として、以下の条項が追加されました。
「主たる債務の目的又は態様が保証債務の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。」

旧法448条は、保証契約の締結時に保証人の負担が主債務より重いときにこれを主債務の限度まで軽くする旨だけを定めていました。今回の改正では、これに加えて、保証契約の締結後に主債務の内容が重くなった場合の一般的な理解についても具体的な条項が整備されました。

また、主債務者が債権者の請求に対して主張(対抗)できる権利等(抗弁)を有している場合について、現在、主債務者の相殺のみを定めている旧法457条2項が、次のように広く抗弁権を有している場合(全般)を対象とする条文に改められました。
「保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。」
この改正も、付従性に関する一般的な理解を具体的な条項として整備したものといえます。

 

◆連帯保証人について生じた事由の効力
連帯保証人とは、保証人が主債務者と連帯して債務を負担する保証のことをいいます。
通常の保証とは異なり、前記の3つの性質のうち「補充性」が認められません。そのため、主債務者よりも先に請求を受けた場合でも、これを拒むことができないという違いがあります。

ほかにも連帯保証と通常の保証とは違いがありますが、連帯保証も保証債務ですから付従性は認められます。
したがって、主債務者について生じた事由(時効の完成など)の効力は、連帯保証人にも効力が及びますが、連帯保証人について生じた事由の効力が主債務者に及ぶかという問題は、付従性の性質からは説明することができません。

そこで、その際のルールを明確にするために、新法458条が連帯債務に関する以下の規定を準用しています。
・新法438条(更改の絶対効)
・新法439条1項(相殺の絶対効)
・新法440条(混同の絶対効)
・新法441条(相対効の原則)

このように、連帯保証人に生じた事由の効力は、連帯債務者の1人について生じた事由の効力と同じ効果が及ぶと理解しておけばよいでしょう。

【改正民法債権編】多数当事者の債権債務

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、多数当事者の債権債務について考えてみたいと思います。

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多数当事者の債権債務

連帯債務における債権者の地位を強化、連帯債権を新設

 

◆多数当事者の債権債務とは
同一債権について、債権者または債務者が複数いる場合を、多数当事者の債権債務といいます。
新法では、多数当事者の債権債務について、新たな種類が設けられ分類が整理されたほか、当事者の一部に生じた事由の他の当事者への効力について改正されました。また、一部の債務者が弁済を行なった場合の当事者間での求償関係についても改正がなされました。

 

◆多数当事者の債権債務の種類
(1)多数当事者の債権関係
同一の債権について複数の債権者がいる場合として、次の3つが考えられます。

①債権の内容が可分である場合
たとえば、2人が共同で100万円を貸した場合、債権の内容である100万円の返還請求権は可分なので、特段の合意がなければ、2人は50万円ずつの返還請求権を有することになります。

②債権の内容が性質上不可分である場合
たとえば、1つの建物を2人で共同で購入した場合、債権の内容の1つである建物の引渡請求権は、性質上不可分です。

③債権の内容が性質上可分であるが、法令の規定ないし当事者の合意によって不可分である場合
たとえば、上記①の事例で、合意により不可分債権と定めた場合です。

旧法では、このうち①を可分債権、②と③を不可分債権としていました。
新法では、③について、連帯債権という新たなカテゴリーを設け、各債権者は、すべての債権者のために全部または一部の履行を請求できると規定しました(新法432条)。

(2)多数当事者の債務関係
同一債務について複数の債務者がある場合も、(1)と同じように、①性質上可分な場合、②性質上不可分な場合、③性質上可分だが法令の規定ないし当事者の合意により不可分である場合、の3つが考えられます。

①は可分債務、②は不可分債務とされるほか、新法では、③について、新たに連帯債務に分類することとし、債権者は、連帯債務者の1人に対し、あるいは同時もしくは順次すべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求できると規定しました(新法436条)。

 

◆一部に生じた事由の他の当事者への効力
債権債務に当事者が複数いる場合、一部の当事者間で生じた事由がどのように他の当事者に影響するかが問題となります。

たとえば、債務者AとBが、債権者に対して100万円の連帯債務を負っているとしましょう。債権者がAだけに対して、「もう返さなくていい」と債務を免除した場合、Bはまだ100万円を返さなくてはならないでしょうか。
Aに生じた事由がBにも効力を有する(Bは100万円を返す必要はなくなる)場合を「絶対的効力」、Bには効力を有さない(Bは100万円を返さなければならない)場合を「相対的効力」といいます。

債権債務ごとの絶対的効力を有する事由

・多数当事者の債権で不可分債権→弁済・履行の請求・相殺

・多数当事者の債権で連帯債権→弁済・履行の請求・更改・免除・相殺・混同

・多数当事者の債務で不可分債務→弁済・更改・相殺

・多数当事者間の債務で連帯債務→弁済・更改・相殺・混同

前述の例からわかるとおり、絶対的効力とされる事由が少ないほうが、債権者の地位は強くなります。

新法では、新設された連帯債権における対外的効力の規定を設けたほか(新法432条から435条の2)、複数当事者の債権関係、債務関係のそれぞれについて、対外的効力の規定が一部改正されました。
特に、連帯債務については、絶対的効力を有するとされていた事由のうち、履行の請求(旧法434条)、免除(旧法437条)、時効の完成(旧法439条)について、相対的効力とされ、概ね債権者の立場が強化されています。

なお、今回の改正で、連帯債務について、絶対的効力事由が減少し債権者の地位が強化された結果、共同不法行為における賠償義務も、明文上の連帯債務の規定が適用されることになると考えられています。

 

◆連帯債務者間の求償
AとBが100万円の連帯債務を負っている場合、AとBの内部では、特段の合意がなければ50万円ずつが自己負担分となります。
それでは、Aが40万円を弁済した場合、AはBに対して、負担率である2分の1の20万円の求償を求めることができるのでしょうか。それとも、自分の負担分である50万円を超えないと、Bに求償できないのでしょうか。

旧法では、この点が明確ではなく、また判例上、共同不法行為における不法行為者の賠償義務(不真正連帯債務)の場合には、事故の負担分を超えた場合に初めて求償できるとされていました。
新法442条1項は、この判例を変更し、連帯債務者の1人が弁済等で共同の免責を得た場合には、免責額が自己の負担部分を超えない場合でも、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた求償権が発生することを規定しました。

 

【改正民法債権編】詐害行為取消権の効果