遺産分割協議について

相続手続きについて前回ご説明いたしましたが、今回は「遺産分割協議」というものを今少し詳しく見ていきたいと思います。

遺産分割を行うにあったては、①相続人の確定、②遺産の範囲と評価の確定、③各相続人の具体的相続分の確定をする必要があります。

①相続人の確定につきましては前回のブログでもお話し致しましたが、被相続人(お亡くなりになった方)の「出生から死亡までの戸籍謄本」を取り寄せ、相続人を確定していきます。遺産分割の話し合いはすべての共同相続人が参加して行われなければ無効です。慎重に戸籍から相続人を確定する必要があります。

②遺産の範囲と評価の確定ですが、分割するべき相続財産の範囲が決まらなければ、分割することは困難となります。もし争いがあり話し合いがつかなければ、家庭裁判所の審判や通常の民事訴訟で争われることになります。遺産の評価についてよく問題となるのは不動産です。遺産分割の協議の段階では、実際の取引の売買価格を不動産業者から聴く方法が一般的です。相続人間で評価額について合意できないときは、不動産鑑定士に正式な鑑定を依頼することになります。

③各相続人の具体的相続分の確定について、相続分は法定されていますが、遺産分割の話し合いでは、相続人全員が合意すれば法定相続分に関係なく自由に相続分を決めることができます。法定相続分を修正するために、特別受益や寄与分の制度を主張するなどあらゆる事情を話し合いの場に持ち出すことができます。

民法は「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定め遺産分割の指針としています。たとえば遺産に「農地や居住用の土地建物、あるいは営業用資産」がある場合、農地は農業を継承する者に相続させ、居住用の土地建物については現に居住している者の利益を考慮する必要があります。営業用資産はこれを分割すると営業の継続ができなくなるため、できるだけ一体として扱うなどの考慮が必要となります。したがってこれらの遺産を細分化せず、できるだけ一括して相続人が取得できるものとし、他の相続人には代償金を支払うなどの方法で分割し相続人の間の公平を図ることはこの指針に沿った方法と言えます。

遺産分割の話し合いがまとまったときは、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。後日の紛争を未然に防止するという目的のほかに、以下のような見地からも作成が必要になります。

遺産の中に不動産があり遺産分割により所有権を移転する場合、所有権移転登記の申請の際に原因証書として遺産分割協議書が必要になります。また、相続税の申告の際、法定相続分と異なった遺産分割をしたときや、相続税の配偶者控除を利用するときなど遺産分割協議書が必要になります。遺産の中に銀行預金があり遺産分割によりこれを相続する人が銀行から遺産分割協議書の提示を求められることがあります。

遺産分割協議を行う際注意することがあります。相続人の中に以下のような方が含まれている場合、遺産分割協議を行う前に手続きが必要となることがあります。

相続人に未成年者が含まれる場合。この場合は親権者が未成年者のために「特別代理人」を選任することを家庭裁判所へ請求しなければなりません。未成年者が複数いる場合はその人数分特別代理人の選任を家庭裁判所へ請求しなければなりません。判例によりますと、親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、親権者の意図や親権者の代理行為の結果のいかんにかかわらず利益相反行為に該当するとされています。未成年の子がいるにもかかわらず、特別代理人の選任をしないでなされた遺産分割協議は無権代理行為として未成年の子が成人に達した後に追認しない限り無効となります。

相続人に認知症などで通常の日常生活が送れない方が含まれる場合。この場合は家庭裁判所へ後見開始の審判を申立てて成年後見人を選任してもらい、成年後見人と遺産分割協議を行う必要があります。

相続人に行方不明者がいる場合、大きく二通りに分かれます。

①7年以上生死が不明な場合。利害関係人からの請求で家庭裁判所で失踪宣告をしてもらう方法があります。失踪宣告がなされますと生死不明になったときから7年間の期間満了の時に死亡したとみなされます。死亡したとみなされたのが被相続人が死亡する前であれば、失踪宣告を受けた者の子があれば代襲相続者として遺産分割協議に参加します。死亡したとみなされたのが被相続人が死亡した後であれば、失踪宣告を受けた者がいったん相続をした後に失踪宣告者について相続が発生することになります。

②生死不明がまだ7年以上続いていない場合やどこかで生きているといううわさなどがあるときは、失踪宣告の申し立てはできません。このような場合、利害関係人が家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任してもらうよう請求する方法があります。財産管理人は不在者の財産について現状に変更をきたさない保存行為や利用・改良行為は自分の権限でできます。これを超える処分行為をするには家庭裁判所の許可が必要です。遺産分割は不在者の財産に対する処分行為の一種と考えられますので、財産管理人は遺産分割の協議や調停をするには家庭裁判所の許可が必要になります。よって不在者の財産管理人が家庭裁判所の許可を受けて遺産分割協議に参加することになります。

このように遺産分割協議を行う際には、注意しなければならない点がいくつもあります。相続手続きの際不安に思うことや心配な点があれば専門家にご相談ください。

相続手続きについて

相続の手続きについて考えてみたいと思います。

被相続人の死亡により相続が開始されますが、ご遺族の方はどのような手続きを行う必要があるのでしょう。

まずご遺族の中で「どなたが相続人」であるのかを確定しなければなりません。この相続人の確定は、被相続人の「出生から死亡までの戸籍」を収集することから始めます。

「出生から死亡までの戸籍」は被相続人の本籍地を管轄する市区町村役場へ請求して入手します。まず被相続人の「住民票の除票」を最後にお住まいであった市区町村役場へ請求します。この際「本籍記載あり」で申請してください。

これで住民票の除票を見ることで「被相続人の本籍地」が判明します。次にその本籍地の市区町村役場へ「出生から死亡までの戸籍」を請求します。

この時被相続人が生まれてから死亡するまで同じ市区町村役場に戸籍があった場合には必要な戸籍は全部揃うことになります。しかし被相続人が結婚などで本籍地を移動させていた場合には全部は揃いません。その場合には以前の戸籍を入手しなければなりません。戸籍には移動前の本籍地について記載されており、その記載されている「以前の本籍地」を管轄する市区町村役場へ、再び被相続人の「出生から死亡までの戸籍」を請求することになります。

戸籍は法律により記載要領が変更されたことに伴い、何度も改製されております。「出生から死亡までの戸籍」と言いましても1通の戸籍で済むことはほぼないでしょう。このように最後の住所地を管轄する役場から本籍地を辿り、それ以前の本籍地があればまた戸籍を請求することを繰り返すことで「出生」までさかのぼることができます。

被相続人の「出生から死亡までの戸籍」をすべて入手し終えましたならば、その記載内容をよく読み込み確認します。被相続人の結婚や離婚、子の出生や認知、または養子縁組等人生において重要な事項が記載されております。その内容をもとに相続人を確定することになります。

相続人は誰が該当するのかは以前当ブログでもお話ししましたが、この戸籍を見ることで初めて知る相続人が記載されている場合もあります。離婚経験のある方の場合前婚時にお子様がいれば当然相続人になりますし、養子縁組をしていれば養子も相続権はあります。

お子様がいらっしゃられず、配偶者と二人暮らしであった場合、相続人は配偶者と被相続人の直系尊属(ご両親)になりますし、その直系尊属も他界されている場合には兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が相続人となる場合は、すでにお亡くなりになっている被相続人の直系尊属(ご両親)の「出生から死亡までの戸籍」も必要になります。ご両親の戸籍を見ることで相続人になる兄弟姉妹が何人いるか確定させます。

相続手続きの最初はこの「出生から死亡までの戸籍」収集から始まります。被相続人様分の戸籍を収集することも場合によっては役場を何か所も回らねばならず、まして直系尊属の分もとなると非常に困難が予想されます。専門家がお手伝いできることでもありますので、活用をご検討いただくことをお勧めします。

さて、「出生から死亡までの戸籍」により相続人を確定することと並行して相続財産(遺産)の調査が必要になります。不動産や銀行郵便局の口座、生命保険や株などの有価証券、自動車や骨董品に美術品等金銭に換価できる全てのものが対象になります。そして負債も相続されることになりますので注意が必要です。

不動産に関する調査は、納税通知書や不動産が所在する市区町村役場で土地の名寄帳を閲覧し存在を確認して、登記事項証明書や固定資産税評価証明書を入手して確定します。

銀行や郵便局は通帳などから確定することが基本ですが、故人の書斎などで取引の書類が見つかる場合や近所の金融機関へ問い合わせて初めて口座があることが判明する場合もあります。

生命保険や株式なども同じく生命保険会社や証券会社へ問い合わせを行い相続財産を確定し、骨董美術品なども専門業者などに査定を行ってもらい資産価値を確認します。

これらの財産調査結果を「相続財産(遺産)目録」等一覧表にまとめます。この調査も被相続人が記録をあまり残していなかった場合など、困難になることが多々あります。専門家がお手伝いできる範囲でございますので、ご検討いただければと思います。

この時点で、確定した相続人全員で「遺産分割協議」を行います。この「遺産分割協議」とは被相続人の遺産を「どなたが何をどれだけ相続するか」を話し合い、全員で合意することです。この合意を証明するために「遺産分割協議書」を作成します。

不動産相続登記や銀行や郵便局での手続き、自動車や有価証券などの手続き時にこの「遺産分割協議書」の提出を求められます。相続税の申告時に必要になることもあります。

「遺産分割協議書」は決まった様式はございません、法務局のホームページを始め市販の相続関連本にも記載例は多数ありますので、ご自分で作成することもできます。注意点として「遺産分割協議書」の記載は具体的に正確な表現で記載することと、相続人全員の実印が押印され、印鑑証明を添付することが必要です。作成についてご不安やご質問がある場合には専門家へご相談ください。

遺産分割協議は相続人全員でよく話し合って合意していただくのですが、合意できなかった場合には、家庭裁判所での調停や審判による分割になります。

遺言書が残されていた場合には、遺産分割は遺言書に記載のとおりとなることが基本ですが、相続人全員による遺産分割協議によって遺言とは異なる遺産分割も可能です。また遺言に記載のない遺産が判明した際には、その遺産について遺産分割協議が必要になります。

このような相続に必要な手続きを相続の開始があったことを知ったときから10ヶ月以内に行い、相続税の申告納税を行わなくてはなりません。分割協議に参加する相続人が多かったり、遠方にお住まいでなかなか協議が進まないことや相続人に認知症などを患い成年後見人を付けなければならない場合や、未成年者が含まれていると家庭裁判所に特別代理人選任の申請が必要な場合など、時間を要する事情があると10ヶ月という期限は短いものです。

相続手続きはご自身で行えることが多いのですが、煩雑な手続きや時間を要することも多いのが現実です。相続の手続きについてお悩みや疑問がありましたならばお気軽に専門家へお問い合わせください。それぞれのご事情に合ったお手伝いができると思います。

相続について

相続とは、お亡くなりになられた方(被相続人と言います)の一定の親族関係にある者が被相続人の財産に属する一切の権利義務を承継することをいいます。

相続の開始原因としては「死亡」があるのみで戦前のような「家」制度のもとで認められていた隠居を開始原因とする家督相続のような生前相続は、現在ではありません。相続が開始する時期は被相続人の死亡時です。相続開始時は相続をめぐる様々な法律関係を処理する上で基準となりますので、明確にしておく必要があります。

「自然的死亡の場合」医者が死亡と診断した時点ということになり、死亡届出時ではないので注意が必要です。

「失踪宣告の場合」生死が7年間分明でない不在者の場合を普通失踪と呼びますが、この場合最後にその者の所在が確認できる日から7年の期間が満了した日に死亡したものとみなされます。また特別失踪(死亡の原因となる危難に遭遇してから1年間生死が分明でない不在者)については、その危難が去った日に死亡したものとみなされます。いずれの場合も失踪宣告の審判が確定した日ではありません。

「認定死亡の場合」地震や水害のような天災地変があり死亡したのは確実といえるも死体の発見ができないという場合、その取調べを行った官公署が死亡地の市区町村長に死亡の報告をし戸籍上死亡という記載がなされることを認定死亡と呼びますが、この場合は戸籍記載の死亡時において死亡したものと認められます。

法律によって被相続人の権利義務を承継する者のことを相続人と呼びます。では誰が相続人となるのでしょうか。民法に相続人の定めがなされており、第一順位は「被相続人の子またはその代襲者」とされています。非嫡出子(婚姻関係にない男女間の子)も当然含まれ、胎児も相続に関しては出生したものとみなされ相続人になります。そして他家へ養子に行った子も含まれます(普通養子の場合)。次の順位に「直系尊属」最後に「兄弟姉妹またはその代襲者」となっています。

配偶者はこれら血族相続人と常に同じ順位の相続人(すなわち常に順位は第一位)となるとされています。

代襲者とは被相続人の子や兄弟姉妹が死亡やその他相続権を失った場合にその相続権を得た子のことであるとされています。(例として、被相続人の子がすでに死亡している場合、その子すなわち被相続人の孫が代襲者として相続する。)

相続人はどうすれば「相続」ができるのでしょう。相続が開始すると、何もしない限り相続人は相続財産を承継します。これを「単純承認」と呼びます。しかし、相続人の意思で承継を拒否したり制限したりすることができます。相続そのものを拒否することを「相続放棄」と呼びます。限定的な相続を「限定承認」と呼びます。この限定承認は借金などで相続財産がマイナスになりそうな場合、相続財産限りで債務を清算しなおプラスがあれば承継することを言います。

この「相続放棄」と「限定承認」は自己のために相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述することと定められています。「限定承認」は相続人全員で行うこととされています。被相続人の相続財産をよく調べ、積極財産と借金などの消極財産を比較して、「相続放棄」するのか「限定承認」するのかあるいは「単純承認」とするのかを決めることが大切になります。

相続人は誰がなるのか、相続財産には何があるのか。相続の開始から3ヶ月以内に調査しなければならないことがよくご理解いただけたと思います。相続人の調査は被相続人の出生から死亡までの戸籍を辿ることで行います。相続財産についてはそれぞれ調査先が異なります。不動産は市町村などへ課税証明などの照会、預貯金は各金融機関、株式や国債や社債等は証券会社等、保険は各保険会社等、借財についてもクレジット会社や金融機関、被相続人の取引関係先などから調査します。

相続人に養子へ行った子や非嫡出子が含まれる場合や子がなく相続人が配偶者と疎遠になっている兄弟姉妹しかいないという場合など、関係が複雑なケースや、被相続人が事業を営んでいた場合や資産が預貯金のみでなく不動産や株式など多種にわたる場合などの調査は非常に煩雑で困難なケースも多く見受けられます。

相続人や相続財産の範囲についてお悩みの方がおられましたならば、弁護士や司法書士、税理士や行政書士へのご相談をお勧めします。相続に関する手続きは皆様ご自身でできることですが、非常に複雑煩雑なことが多いのも事実です。お仕事などで調査に時間をさけない事情の方も多いことと思います。専門士業をご利用されることも一つの選択肢としてぜひご検討ください。

ご家族がお亡くなりになった後の手続き

東京都世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

ご家族がお亡くなりになった後の手続き

ご家族がお亡くなりになり悲しみに包まれているとき、故人を想い他に何も考えられない状態になる方も多いと思います。

遺されたご家族をサポートしてくれる様々な職業の方がいらっしゃいます。故人の最後を診断してくれた医師や最後まで懸命の看護を尽くしてくれた看護師。そして病院の紹介で駆けつけてくれる葬儀社の社員。死亡から遺体の引取り・葬儀・法要・火葬・納骨の段取りと遺族は悲しい気持ちと共に非常にあわただしい時間を過ごすことになります。

この間に医師により「死亡診断書」が作成されます。この死亡診断書の左側が「死亡届」になっており、7日以内に届け出る必要があります。
死亡届と同時に「火葬許可申請書」を提出し、「火葬許可書」の交付を受けます。
火葬の許可は、死亡から24時間を経過していることが条件です。
火葬場にこの許可書を提出し、火葬後に証印をもらうと自動的に「埋葬許可書」になります。
ここまでは葬儀社の方で手続きを手伝っていただくことが多いと思います。

亡くなられた方が世帯主であった場合は「世帯主変更届」を14日以内に市町村役場へ提出しなければなりません。
保険証の返却・資格喪失届も必要になります。国民健康保険の場合は14日以内に市町村役場へ。
健康保険組合・協会けんぽが保険者の場合は速やかに届けることになっております。

年金の手続きは速やかに「年金受給権者死亡届」を提出しなければなりません。故人と生計を一にしていた遺族の方は「未支給年金」を取得できますが、14日以内(厚生年金は10日以内)に手続きが必要です。

そして故人が国民年金被保険者(第1号被保険者)の場合「遺族基礎年金」「寡婦年金」「死亡一時金」のうち一つを受けることができますが、市町村役場(年金事務所)への届出が必要です。

また、故人が厚生年金被保険者(第2号被保険者)の場合「遺族厚生年金」「遺族基礎年金」「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」のうち該当するものを受給できますが、これも年金事務所へ届出が必要となります。

会社関係の手続きでは、会社への「死亡退職届」の提出と身分証明書などの返却が必要になります。
最終給与や死亡退職金などを受け取ることになります。
会社を経営していた場合には「役員の変更登記」を2週間以内に行わねばなりません。
仕事が原因で亡くなられた場合「遺族補償年金」「遺族補償一時金」が支給されます。
手続きは故人が勤務されていた事業所を管轄する労働基準監督署です。

これらの手続きと同時に行うことになるのが「公共料金・生命保険・お住い・会員権」などの手続きです。
「電気・ガス・水道・NHK」等の解約や契約名義変更の手続きを各会社へ行います。
故人の所有していた「携帯電話やクレジットカード」の解約や精算も必要です。生命保険などに加入していた場合、保険会社へ連絡が必要です。
お住いが故人名義での契約による賃貸や借家である場合は貸主への連絡が必要です。
ゴルフの会員権やサークルなど様々な団体の会員であった場合、それぞれの団体へ連絡することが必要になります。

四十九日の法要を行い終わった後には死亡から4ヶ月以内に「準確定申告」を行わなければなりません。
この準確定申告ですが、1月1日から死亡の日までの所得を申告するもので、故人の住所地を管轄する税務署が窓口になります。

その後に死亡から10ヶ月以内に「相続税」の申告を行うことになります。相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を遺産が超える場合のみ必要になります。

相続税を申告するまでに故人の遺産をどのように相続するか法定相続人の皆様で決められていると思います(話し合いで決まらない場合は家庭裁判所の関与により決めることとなります)。
「預貯金」などは口座のある銀行やゆうちょ銀行が窓口です。
「自動車」などを相続された方は陸運支局へ届出が必要になります。
土地と建物を相続される方は法務局への変更登記が必要になってきます。
故人の遺産を相続する手続きには、通常、故人「出生から死亡までの戸籍」が必要になります。まずは死亡時の戸籍や住民票の除票を市区町村役場で入手し、その記述から、出生までさかのぼって調査していく必要があります。

概要のみですがご家族がお亡くなりになった後の手続きを見てまいりました。
故人を偲びゆっくりと過ごしたいというのが、どなたにとっても本心ではないでしょうか。
しかし、故人が生前結んでおられた関係を整理する上記のような手続きも行わなければならないものであります。
ご家族だけで抱え込まず様々な専門家のサポートを求めてください。
一番最初に頼れるのは葬儀社の方でしょう。
そして市町村役場なども問い合わせれば親切に教えてくれます。
我々行政書士もお手伝いできることがあると思います。

遺言内容の実現のために。遺言執行者の選任

遺言書には法的効果があると申し上げましたが、その遺言内容を実現するためには「行為」が必要となる場合があります。この遺言内容を実現する行為をするのが遺言執行者です。遺言執行者は遺言に記載して選任する場合や利害関係人から家庭裁判所へ請求をすることで選任されます。どのような遺言内容を実現する際に遺言執行者が必要になるのでしょう。

遺言内容が相続分の指定・遺産分割方法の指定・未成年者の後見人の指定など、遺言の効力が発生すると同時に遺言内容が実現され、遺言執行の余地のないものがあります。このような場合は遺言執行者は必要ありません。

これに対して、遺言認知(遺言書の中で認知することを書く)や推定相続人の廃除(相続人のある人の相続権をはく奪すること)や遺贈する場合などは遺言執行者が遺言内容を実現する「行為」が必要になります。遺言執行者がいない場合、相続人が遺言内容の実現を望まない時に実現のための「行為」を行わない可能性があります。

遺言認知の場合は遺言執行者が戸籍法に従い市町村役場へ遺言書の謄本を添えて届け出ることが必要になります。そして推定相続人の廃除の場合は遺言施行者が家庭裁判所に廃除請求をします。遺贈の場合遺言執行者がいることで遺言内容を正確に実現することができます。

このように遺言書に記載した内容によっては遺言執行者を選任しておかなければ遺言内容が実現しないこともあることはご理解いただけたでしょうか。遺言執行者は財産の管理その他執行に必要な一切の行為をする権限と責任を持っています。相続人は遺言執行者の処分その他遺言の執行を妨げることはできません。

遺言執行者はまず、遺言書の検認が必要な場合(公正証書遺言以外の場合)家庭裁判所へ検認の申し立てを行い、相続人や代理人の立会いのもとで開封します。遺言書の有効性を検討し確認次第、不動産の権利書や預金通帳・株券等を預かり就任後遅滞なく財産目録を調製します。そして前述のように認知に関しては市町村役場へ届出を行い、推定相続人の廃除は家庭裁判所へ審判申立てを行い遺贈について目的物の引渡しを行います。

遺言執行者がいることで遺言書記載内容に従って遺産の分割を行ってくれます。相続人の一人が遺言内容と違う遺産処分をしてもその行為は無効という判例もあります。せっかく相続争いを防ぐために遺言書を残してもかえってもめごとの種となってしまっては元も子もありません。遺言書の中に遺言執行者を選任することでそのもめごとを防ぐことができるのです。

エンディングノートの内容を実現させる方法

エンディングノートには法的効果がないことは述べましたが、せっかく自分の将来を考え希望をまとめたのですから、エンディングノートに書いた希望をかなえたいですよね。

エンディングノートに書き込んだ内容のうちいくつかは実現させる方法があります。たとえば、けがや病気で身体が不自由になった時や認知症になり病状が進んだ後のことや自分が最後を迎えた後のことなどです。

【財産管理委任契約】けがや病気などで体が不自由になり銀行へ行くことや日常身の回りのことにも不自由な状態になると自分自身で財産を管理していくことが困難になります。このようなときに【財産管理委任契約】を利用しましょう。

この契約を結ぶことにより、財産管理を信頼できる人に任せることで、不動産や預貯金に関する手続きを滞りなく進めてもらうことができます。また、任せた人から定期的な報告をもらうことでその財産管理が適正になされているのかがはっきりします。体の不自由な親御さんの身の回りの世話を行うお子さん等とこの契約を結ぶことで、親御さんのために財産管理していることが明白となり、使い込みをしているのではなどの誤解や親族間のもめ事を防ぐこともできます。

【見守り・任意後見契約】病気や加齢などにより認知症になり症状が進んだなど自分の判断能力に衰えが始まった後のことを任せるのは【見守り・任意後見契約】を利用しましょう。

この契約を結ぶことで、自分自身の判断能力がしっかりしている間は契約を結んだ人と定期的な面談訪問などで変わりがないかを確認してもらえます。判断能力が衰えてきたと判定された際には、契約を結んだ相手が家庭裁判所に任意後見監督人の選定を申立てることでご自身の代理人として財産管理等を行うことができるようになります。

この制度は【法定後見制度】に非常に似ていますが、【任意後見契約】はご自身の判断能力がはっきりしている時に結ぶことができ、その後見内容も自分で判断することができます。何よりいざ判断能力が衰えてから家庭裁判所にて選定される法定後見よりも事前に契約することで万が一に備えておくことができ、後見人も自分で選ぶことができる点が特徴です。この任意後見契約を結んだ相手も任意後見監督人への報告などが義務付けられており適正な任意後見がなされるようになっております。

【尊厳死宣言書】自分の最後をいかに迎えるのか終末期医療の在り方についてですが、【尊厳死宣言書】を活用されたらいかがでしょう。これは不治の病にかかった時にどのような医療を望むのかをはっきりと意思表示しておくものです。

苦痛の中回復の見込みなく死期が近づく状態で病院のベッドに管に繋がれただ生を永らえるためだけの延命措置を望まず、安らかな最期を迎えたいと考えている方に有効なものです。実際にそのような状態で正常と認められる延命措置の拒否という意思表示ができるのかは疑問であります。家族や治療を行う医師に対し、延命措置を望まない自分自身の意思表示をあらかじめ残すことで周りの方々を悩みや混乱から助けることにもなるでしょう。

【生前契約・死後事務委任契約】自分の死後どのような葬儀を行ってほしいか、飼っていたペットのことや残した病院などへの支払いや家財道具の整理などの希望は【生前契約・死後事務委任契約】はいかがでしょう。

この契約は、生前に自分の死後行われる様々な手続きや儀式について自分の意思表示をすることで希望がかなえられ、残された家族などが迷い・もめることがなくなります。契約にすることで、自分の希望を示すのみではなくその内容を現実に実行してくれる人が存在することになります。

見てきましたような契約を結び活用することで、エンディングノートにまとめた自分の希望が実現することになります。どの契約書も【公正証書】で作成することでより法的に保護され確実な実現に近づきます。(任意後見契約は公正証書で作成することが法定されています。)

ご自分の将来と死後のことを考えることは今を見つめよりよく生きるためでもあります。この機会にぜひともご検討されてはいかがでしょうか。

 

エンディングノートと遺言の種類

エンディングノートと遺言をおなじものとかんがえている方が多くいらっしゃるようです。このよく耳にするエンディングノートと遺言の違いと注意点を見ていきましょう。

エンディングノートと呼ばれるものは、生前に自分の身の回りのことをまとめ整理し、死を迎える際にどのような医療を望むか、どのような葬儀や埋葬を望み、自分の財産をどうしたいか等を表明するものです。しかしこのエンディングノートには法的効果はなく、あくまでも自分の生前の意思を表明することで、残された方々に自分の希望を伝える効果しかありません。

一方遺言とは民法に規定のある法的効果があるもので、自分の死後財産をどのようにするのか等を意思表示することで、実際に死を迎えたのちに自分の財産を分配相続される際に記したことが実現するものです。この遺言を行うには法律の決まりに従って行わなければ無効となってしまい却って残された方々が混乱してしまいます。

ではどのような場合に遺言がよくて、どのような場合にエンディングノートが役立つのでしょう。これはどちらか一つというよりは全体としての意思表明にエンディングノートを活用し、法的に効果の認められた内容である財産の分与や子供の認知等身分関係については遺言ではっきりとして法的効果を発生させるようにした方がよろしいと思います。

遺言は書面に残さなければ当然自分の死後に法的効果は発生しません。この書面にしたものが遺言書になりますが、3種類に分類されます。自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つですが、それぞれにメリットデメリットがあります。

自筆証書遺言は全文を自書し押印が欠かせません。パソコンで作成したり、代筆してもらった場合は無効になります。自書は本文のみでなく、日付(〇月吉日は無効)氏名まですべてです。しかし、平成31年1月13日より施行された改正相続法の規定により、「財産目録」についてはパソコンでの作成や、登記簿謄本、預貯金通帳のコピーを添付することが認められました。この添付の際には、各財産目録ごとに、「署名して、押印」することが必要になります。この方式は自分のみで作成でき一番時間も費用も掛からない方式と言えます。しかし、自筆証書遺言が作成後改ざんされたり、紛失や破棄されてしまうことや、本当に本人が自書したか死後にもめる可能性があります。また、残された人が遺言内容を確認するには家庭裁判所に「検認」を申請する必要があります。

公正証書遺言は本人と証人2名が公証役場へ出向き(場合によっては公証人が出張することもできる)遺言内容を口述し、公証人が公正証書に記載します。この方式ですと、死後に残された方が家庭裁判所へ「検認」を申請する必要はありません。公正証書遺言作成時に公証人にて本人確認をしますので、確実に本人の遺言と証明されます。また公証役場にて正本を保存しますので紛失や破棄なども起こりません。しかし公証人の手数料や証人の日当等自筆証書遺言より費用が掛かることになります。

秘密証書遺言は遺言証書を封筒に入れ、遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封筒に押印する。そしてその封筒に公証人が本人の申述した住所氏名と自分の遺言を封入した旨を記載する。最後に公証人と証人が封印された封書に署名押印を共にするもので、遺言内容を他人に知られることなく遺言を残したことを公証してもらえる。この秘密証書遺言の場合には、自書でなくてもパソコンで作成したり代筆をしてもらった遺言書でも有効とされる。これは自書できない方にはよい方式であるが、やはり「検認」の申請は必要になり、封印した遺言書の紛失や破棄の危険は残る。

費用の面に検討材料は残りますが一番確実な方法は公正証書遺言であると言えるのではないでしょうか。

見守りサービスからの任意後見契約・法定後見制度との違いについて

見守りサービスには様々な形態があることをお話し致しましたが、定期的に(月に1~2回)ご自宅などを訪問しサービス対象であるご本人様と面談を行う形態からのサービスについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

定期訪問でご本人様と面談を行うことで安否の確認を行うのみではなく、ご本人様の「心身の状態」「生活状況」を確認させていただきます。これはご本人様の「判断能力」の状態を判断する必要があるのです。

「判断能力」(事理を弁識する能力」)が不十分な方の法的保護の制度として後見制度があります。この法的保護が必要な状態か否かを見守りサービスで確認していくのです。

我々行政書士や弁護士・司法書士等が見守りサービスを行う際には、「任意後見契約」を締結しているケースがほとんどであると思います。法的保護が必要な状態であると思われた場合に家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申し立てをすることで、ご本人様が被害に遭うことを予防することができます。

【任意後見契約】とは任意後見人がご本人様の代わりに代理人として様々な契約や手続きを行う契約です。契約ですのでご本人様の判断能力が十分なうちに自分自身の将来を任せる人を選べることができます。

一方【法定後見制度】は「判断能力」(事理を弁識する能力)が不十分になった際、その度合いに応じて家庭裁判所が審判にて後見人(保佐人・補助人)が決定されるものです。

いずれの制度もご本人様の意思を尊重しその法的保護を図ることが目的ですが、いざ判断能力が不十分になってから慌てるのではなく、ご本人様やご家族様がよくよく話し合いをお持ちになられ、将来どのような自分でありたいかを考えるとき【見守りサービスや任意後見契約】という選択が浮かび上がるのではと思います。

このことはご自身の人生の終幕をいかに迎えるか、その後残されたご家族に何を残したいのかをご検討いただくことにもつながることかと思います。

ホームセキュリティと見守りサービス

TVコマーシャルでもよく目にされると思いますが【ホームセキュリティ】と【見守りサービス】。

同じものと思われている方が多いと思いますが、警備業法という法律から見ますと別物なのです。

【ホームセキュリティ】は各御家庭に設置する警備機器が異常を感知した際に、警備会社の基地局といわれる監視センターへ情報を送信します。センターに勤務する管制員がその異常情報を待機している警備員へ伝達することで皆様のお宅へ警備員が駆け付けることになります。警備業法上必ず警備員が現場へ駆けつけなければいけないことになっています。

【見守りサービス】は警備会社以外にも様々な事業者により提供されているサービスですが、その内容も事業者ごとに様々なものがあります。ホームセキュリティと同じような機器を設置しその異常情報を受信する形態もありますが、その先が大きく異なります。現場へ事業者の係員が駆け付けることなく、異常情報をあらかじめ取り決めた緊急連絡先へ伝達するサービスとなることが多いです。

現場へ駆付けたのちにその場で盗難等異常の発生を警戒防止する業務や人の身辺で負傷等の警戒をすることになると警備業法上の警備業務となり公安委員会の認定を受けなければ行うことができません。

しかし警備会社でなければ現場へ行けないかと申しますとそうではなく、異常情報に基づく警備警戒でなければ他の事業者も行うことができます。すなわち戸別訪問を行い居住者の方と面会することで無事を確認するサービスです。

【見守りサービス】には異常情報を提供してもらうものや戸別訪問によりお住いの方の安否を確認するもの、警備業務として現場対応を行うものも含まれます。

見守りサービスは弁護士や司法書士そして行政書士もご提供しているサービスです。士業は見守りサービスのみでなく、任意後見契約サービスもご提供しています。独居高齢者のご不安に寄り添えるそして離れて暮らすご家族の方々に安心をご提供できるサービスとなっております。

 

セキュリティコンサルタントとは

セキュリティコンサルタントとは、(一社)全国警備業協会認定資格です。全国警備業協会のセキュリティコンサルタントについての説明を抜粋致しますと、

コンサルティングの対象となる顧客を取り巻く様々なリスクを広く把握しながら、企業経営や国民生活にかかわる防犯・防災等に係る合理的な対策の策定、実行を支援することによって、リスクを低減させ、もって社会公共の安全に寄与する者をいいます。

つまりセキュリティ・コンサルタントの役割は、企業や個人を取り巻く様々なリスクを高所から捉え、警備業の範ちゅうに限定されない様々な知見をもって多方面の専門家とともに顧客のリスク低減策を立案・実行するための支援や助言を行うことです。

このような説明がなされております。企業や個人の抱えるお悩みや不安をセキュリティの面からサポートすることが使命です。