【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q54 管理料における管理の内容

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【Q54】毎年管理料を支払っているのに、私の墓所内はいつも草が生えています。お参りするたびに草取りをしなければなりません。私も老いてきて草取りするのもつらくなりました。これは、管理不行き届きではありませんか。

【POINT】
① 管理料の法的性質(一般論)
② 個々の契約における管理料既定の内容

1⃣ 管理料の発生根拠
⑴ 概説
① 墓地の管理料とは、墓地内の共同使用部分や共益施設などの維持保全、清掃、環境の整備、事務などに要する管理費について、墓地使用契約に基づいて、墓地使用者が墓地管理者に対して定期的に支払う金員を意味します。
② 管理料と一口に言っても、その内容は各墓地使用契約ごとに異なりますので、ここでは、最も平易な例を用いて説明します。

⑵ 条例および規則の規定
① 地方公共団体が経営する公営墓地の場合、条例および規則において「条例の定める額の範囲内において、規則の定める額の管理料を徴収する」と定められていることが通常です。
② 公益法人が経営する事業墓地(いわゆる霊園墓地)の場合、墓地使用規則において「使用者は、別に定める管理料を所定の時期に納入する」と定められていることが通常です。
③ 寺院が経営する民営墓地の場合、墓地使用規則において「墓地使用者は、当寺の檀徒として墓地を使用でき」、「毎年、当寺が定めるところによる管理料を納入する」と定められていることが通常です。
④ 墓地の使用者は、これらの定めに従って、管理料を支払う義務を負っているのです。

2⃣ 管理料の内容
⑴ 問題の所在
① 以上のように、条例や規則において管理料について定められているのが通常ですが、その使途(内容)については、必ずしも明確にされていないようです。
② そこでご質問のように、「自分が使用している墓所区画内の清掃や除草」をすることが管理料の内容に含まれるのかが問題となります。

⑵ 墓地管理料の使途
① 墓地管理料は、園内通路や植栽、水場や休憩所などの各種設備や施設の維持管理の費用に充てられます。したがって、これらの費用と、埋葬や改装、分骨等に伴う事務処理のための人件費などを基礎にして、墓地管理料の舞台的な金額が算定されているというのが実情です。
② すなわち、墓地管理料を支払うということは、墓地使用者の共用部分や共益施設について発生する「共益的費用」を分担することを意味します。
③ ここで気をつけなければならないことは、墓地を使用することの対価ではなく、あくまで永続継続して墓地使用するという用益的な関係において定期的に支払うべき金員であるという点です。

3⃣ 結論
① 以上の説明に基づきますと、まず、管理料には「自分が使用している墓所区画内の清掃や除草をするための費用」は含まれません。
② 上記2⃣のような管理料の性質に照らせば、墓地管理料とは、あくまで墓地「全体」を管理するために求められている負担であって、個々の墓所区画内の管理をするために求められているものではないからです。
③ したがって、ご自身が使用している墓所区画内の清掃や除草がされていないことをもって、管理不行き届きであると主張することは難しいように思われます。仮に使用する墓所の面積を基に管理料を計算する方法をとっていたとしても、個々の区画の管理を前提としているとは必ずしも言えないでしょう。
④ 冒頭で説明した通り、あくまでこれは一般論です。規則において「墓地管理料には、個々の区画の清掃や除草の費用を含める」というような規定が存在する場合には、当然、管理不行き届きと主張することも可能となってくるでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q53 霊園管理料の値上げ

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【Q53】霊園から管理料値上げの通知が来ました。比較的最近に値上げがあったばかりなのに、また値上げとは納得できません。管理料は霊園の都合で勝手に値上げできるものでしょうか。

【POINT】
① 管理料値上げ条項に基づく相当額までの値上げ
② 事情変更の法理による管理料の値上げ

1⃣ 霊園管理料の定め
① 霊園管理料は、名前の通り、霊園の環境保全、整備、管理等に要する費用であり、通常、霊園使用者から、その支払いが行なわれています。
② 具体的には、霊園の使用規則や管理規則の中に、「使用者は毎年いくらいくらの管理料を納入しなければならない」旨の定めがあり、これを承諾して霊園を購入することにより成立する管理契約に基づき、管理料が支払われることになります。

2⃣ 管理料の値上げ条項がある場合
① 霊園使用規則の中には、「物価の上昇その他経済事情の変動等により、管理料の額が不相当になったときには、これを改定することができる」との条項が設けられていることも少なくありません。
② その旨の条項がある場合には、霊園使用者として相当額までの管理料の改定に応じる義務があります。しかし、そのことは、霊園側からの値上げ要請額を無条件で承諾しなければならないことを意味するものでもありません。
③ 管理料の額が不相当になったといえるか、いくらに改定することが相当なのかについて、霊園側に説明を求め、納得のいくところで合意するのが望ましいでしょう。
④ どうしても合意に達しなければ、裁判所における調停や訴訟により、増額の当否を決めてもらうことになります。
⑤ しかし、裁判に勝訴しても費用倒れになることが多いでしょうし、霊園との間で裁判することはあまりお勧めできることでもありませんから、それ以前に話し合いによって解決することをお勧めします。

3⃣ 管理料の値上げ条項がない場合
① 霊園使用規則の中に、上記のような管理料改定についての条項がない場合には、管理料の値上げが一切許されないかというとそうではありません。
② 常識的に考えても、たとえば、諸物価が高騰し続けた場合に、改定条項がないからといって使用料が永久に不変であるというのは不合理であることは明らかです。
③ そこで法律の世界には、「事情変更の法理」という理論があります。これは「契約は、双方が慎重に協議検討のうえ締結されるものであるから、その一方的変更をみだりに許すべきではないが、契約締結当時予想できなかったような大きな事情の変更があり、契約をそのまま存続させることがかえって公平・正義に反すると考えられるような場合には、契約の変更ないし解除を認めるべきである」という法理です。
④ この法理は、借地借家法に採り入れられ、物価の変動に応じた地代家賃の改定が認められていることは、広く知られているところです。
⑤ ただし、一定期間改定をしないという特約があるとか、比較的最近改定したばかりであるというような場合には、裁判所は、法的安定性維持の立場から事情変更の法理に基づく改定を認めないことがあります。

4⃣ 結論
① 結論としては、無条件で霊園管理料の値上げ請求に応じる必要はありませんが、上記のような観点から値上げ請求の合理性の有無を判断し、合理性のある範囲でこれに応じるという姿勢で弾力的に霊園側と話し合うことをお勧めします。
② なお、物価が低下したときには、逆に、同じ法理によって管理料の値下げを申し入れることも可能です。

5⃣ 寺院墓地の場合
① 寺院墓地の場合も、墓地管理料の値上げについては、以上に述べたところと同様に考えることができます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q52 永代使用権の更新

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【Q52】先日、お寺から、「三十三回忌がきたので、今年4月1日で永代使用期間が切れる」という通知が来ました。更新するか、終了するかを決めるようにとのことです。永代というのに、このようなことがあるのでしょうか。

【POINT】
① 墓地購入の法的性質
② 永代使用と永代供養の違い

1⃣ 「墓地を買う」とは
① 私たちは、日常的に「お墓を買う」とか、「墓地を購入する」という言い方をします。電話で「お墓を買いませんか」などと勧誘を受けたりチラシをご覧になることがあると思います。
② 「永代使用」の意味を理解する前提として、そもそも「お墓を買う」とは法律上どのような意味を持つのでしょうか。
⑴ お墓とは
① お墓に関する事柄を規律する法律である墓地埋葬法には、「墓」という漠然とした概念はなく、「墳墓」「墓地」「納骨堂」と分けて、それぞれ定義規定が置かれています。
② すなわち墳墓とは、死体を埋葬し、または焼骨を埋蔵する施設であり、墓地とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事等の許可を受けた区域をいい、納骨堂とは、他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設を指します。
③ 日常用語である「お墓」からイメージするものは、人それぞれ違いがあるかと思いますが、お墓を買うといった場合、その対象は、通常「墓地内の一定の区域区画」を意味します。永代使用という言葉は、一般的には「墓地」について使われますが、「納骨堂」についても永代使用という形式をとる霊園もあります。
⑵ 「買う」とは
① 「買う」という言葉は、通常、その目的物の所有権を取得することを意味します。しかし、お墓の場合には、「指定された区域区画について、墳墓を設けるために排他的、永続的に使用する権利(墓地使用権)を取得すること」を意味するだけであって、決して、その区域区画の所有権を取得することではありません。所有権はあくまでも、霊園・寺院側に残ります。

2⃣ 永代使用とは
① 「永代使用」という言葉は法律上の用語ではなく、祭祀承継者がいる限り期限を定めずに代々承継して使用できるという墓地の一般的な使用権を示す意味で使われているにすぎません。したがって、すべての墓地使用権は永代使用権であるとも言えます。
② しかし、永代使用権であることと、更新手続きが必要であるかどうか、更新料を支払う義務があるかどうかは、別問題です。墓地をめぐる法律関係は、各地の慣習によるところが大きく、一概に論じることはできません。
③ 伝統的な寺院墓地における墓地使用権は、通常、更新という概念もなく、更新料の支払を要しないことが多いでしょう。その代わり、諸法要の際に相当のお布施を納めなければなりませんし、護持会会費や本堂改修費用等を寄付する必要もあるでしょう。
④ これに対し、霊園墓地においては、永代と言っても長期というほどの意味しか持たないのが通常であるといえるでしょう。
⑤ 最初に一時金として永代使用料を支払って墓地使用権を購入し、その後定期的に定額の「管理料」を払い続け、墓地購入契約により定められた一定時期が来るたびに更新することによって、使用権を承継し続けることができるというものです。
⑥ したがって、永代使用の具体的な期間・内容については、霊園との契約に定められた内容によって決まります。長い年月をかけて承継されていく途中で、承継者がいなくなることもありますし、別の埋葬方法を選択することも想定されます。
⑦ そこで実際には、三十三回忌までなどの有期契約とし、期間満了時に契約更新といった方法をとることが多いようです。このような有期使用権は、使用者にとっては、契約時に支払う使用料を軽減できますし、霊園にとっては、更新がない場合の土地の再利用が可能となるなど、双方にメリットがあります。
⑧ そこで、このように、永代と言っても「長期」という程度の意味しかもたない場合がありえるのです。もっとも、近年、「永代」という概念が明確でなく、誤解を招くことから、単に「使用権」という言葉を使う霊園もあります。
⑨ なお、墓地使用権は墓地管理規則等に規定がある場合はもちろんのこと、規定がない場合であっても、永代と称するか否かにかかわらず、第三者に転貸したり、売却することはできません。
⑩ 途中で、墓地を移転したいとか、不要になった等の理由で解約しても、墓地購入代金や永代使用料の払戻しを受けることはできません。祭祀承継者がいなくなり、無縁墓地となれば、墓地使用権は消滅すると考えられます。

3⃣ 永代供養とは
① 「永代使用」と似た言葉に「永代供養」があります。永代供養は、少子化や未婚者の増加、子供のいない夫婦や子供がお墓の承継を望まない場合など、お墓の面倒を見てくれる人がいない場合に、お寺などが代わりに管理・供養してくれるものです。
② この場合にも、三十三回忌などを契機に合祀墓へ合祀する霊園もあるようですが、供養自体は継続して行ってくれますので、「永代」という言葉本来の意味に近いかもしれません。

4⃣ 結論
① ご質問のケースにつきましては、まず、寺院の慣習や霊園との間で交わした墓地使用に関する契約書や関連する書類を確認してください。
② 「永代使用」の具体的内容は、各霊園・寺院との契約内容や慣習によって決まるからです。実際には、祭祀承継者の不存在等を考慮して、三十三回忌までなどの有期契約とし、期間満了時に契約更新という方法がとられていることも多いようですが、寺院墓地では慣習によるところが大きいようです。
③ 有期の墓地使用契約であれば、たとえ「永代」という名称をつけていても、契約に定められた期限が来れば終了し、あとは更新するかどうかの問題となります。
④ あなたが更新を希望するのであれば、寺院・霊園は正当な事由がない限り、更新を拒絶することはできません。寺院・霊園側からいえば、紛争の予防のためには、「墓地使用規則」などのルールを定め、使用者に墓地の使用方法等を理解してもらう必要があります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q51 墓地管理料の使途についての会計報告

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【Q51】私は菩提寺に対して、毎年、墓地管理料を支払っていますが、どのように使用されているのか会計報告がありません。これを知る方法はないでしょうか。

【POINT】
① 収支計算書の記載事項と閲覧請求権
② 墓地管理料収入台帳の記載事項と閲覧請求権

1⃣ 宗教法人の会計書類と閲覧
① 宗教法人法は「宗教法人は…毎会計年度終了後3月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない」旨を定めていますので、これを受けて、各寺院は、その寺院規則において、毎会計年度、決算を行うものと定めています。
② 次いで、同法は、宗教法人は、その事務所に「財産目録及び収支計算書」を備えなければならない旨を定めています。さらに同法は、宗教法人は「信者その他の利害関係人であって」、財産目録および収支計算書を「閲覧することに正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者からの請求があつたときは、これを閲覧させなければならない」旨定めています。
③ 檀信徒が、ここに言う利害関係人であることは明らかであり、かつ自己が納めた墓地管理料がどのように使われているかを調べることには、特段の事情がない限り、正当な利益と目的があると言えますので、あなたには、墓地管理料の使用状況を知るために、寺院に対して収支計算書の閲覧を請求する権利があります。

2⃣ 墓地管理料の台帳の閲覧
① 墓地管理料は、特別会計を用いて大きな墓地を経営しているような寺院を除き、一般の寺院では、上記収支計算書の収入科目のうちの「布施収入」として、葬儀料、戒名料、読経料などと一緒に集計されています。
② 墓地管理料については、支払があったかどうかを管理するため、各寺院において「墓地管理料収入台帳」が作成されているでしょうが、檀信徒には財産目録や収支計算書の閲覧請求権があるものの、その他の帳簿閲覧請求権まではありませんので、寺院に対し墓地管理料収入台帳の閲覧を請求することはできません。
③ したがって、寺院の墓地管理料の収入総額は、自分の支払っている墓地管理料の額と、檀家数もしくは墓地の個数から推測するほかありません。

3⃣ 墓地管理料の使途
① 墓地の管理料がどのように使われているかも、収支計算書からは把握できません。なぜなら、収支計算書の支出の部には「墓地管理費」という科目はなく、墓地に関しては、例えば、墓地周辺の整備費用は「修繕費」として、墓地の清掃のための日当は「人件費」として、墓地使用権者への連絡費用は「事務費」としてそれぞれ支出されていますので、檀信徒から受け入れた墓地管理料の支出総額や明細は、これも各種帳簿を詳細に閲覧しない限り把握できません。
② 結局は、墓地管理料の増額などの機会に、住職に質問して大略を知るよりほかはないと思います。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q50 墓地・墓石と税金

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【Q50】我が家には家墓がありませんので、墓を購入しようと思いますが、墓の購入には税金がかかるのでしょうか。また、私が死亡して子供が墓を承継する場合、相続税はかかるのでしょうか。

【POINT】
① 墓の購入と消費税等
➁ 墓の管理と消費税等
③ 墓と相続税

1⃣ 墓の購入と税金
⑴ 墓購入時の税
① 一般的に墓を新規に購入する場合、その寺院に納める墓地代(永代使用料)と石材業者に支払う墓石代および工事費が必要になります。
➁ 墓地代(永代使用料)は消費税等が非課税となり、墓石代および工事費には10%の消費税等が課税となります。
Ⓐ 墓地代(永代使用料)
① 「永代使用料」は、一般的に、永代にわたりその墓地を使用する権利の代金のこととされています。墓地として土地を購入するのではなく、あくまで使用する権利の代金です。
➁ つまり寺院からみれば、永代使用料を受領して行う墳墓地の貸付けということになります。消費税法上は「土地の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の一定の場合を除く)」を非課税取引と規定します。
③ それゆえ墓地代(永代使用料)は原則として、消費税法において非課税とされるのです。

Ⓑ 墓石代および工事費
① 墓石代および工事費は、消費税の非課税取引として規定されていません。
➁またこの墓石代および工事費は、国内において事業者が行なった資産の譲渡等に該当するため課税対象外(不課税)取引にも該当せず、課税対象取引として消費税の課税対象となります。

⑵墓の管理と税
① 墓地代(永代使用料)と墓石代および工事費は、墓の購入時にのみかかる費用です。しかし、その後、墓の「管理費」を継続して支払うことが求められます。
➁ この「墓地、霊園の管理料」は、非課税取引、課税対象外(不課税)取引のいずれにも該当しません。したがって消費税が課されることになります。

2⃣ 墓の承継と税
⑴ 墓と相続税
① 墓を承継すると税金はかかるのでしょうか。相続税法は非課税財産として、「墓所、霊びよう及び祭具ならびにこれらに準ずるもの」と規定します。ですから墓を相続しても相続税はかかりません。
➁ これは墓が「祭祀財産」とみなされるためです。「祭祀財産」とは、一般的に神や祖先をお祀りするためのものをいい、民法では具体的に系譜、祭具および墳墓を挙げ、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承する」と規定します。
③ つまり、これらを一般財産とは切り離し、別個に承継されるべき旨を規定するのです。相続税法は、「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」を相続税の非課税財産としているのです。
④ 系譜とは一体何でしょうか。一般的に系譜とは、血縁関係、系統関係のつながりをいい、これを図式的に記したもので家系図などがこれにあたります。
⑤ 祭具とは、祭祀に用いられる道具のことです。墳墓は、遺体や遺骨などを埋めて供養する墓所のことといわれます。墓石のほか、その敷地となる墓地もこれに含まれます。
⑥ 相続税法では、「これらに準ずるもの」とは、「庭内神し、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているもの」がこれに該当するものとして扱われています。
⑦ 「墓所、霊びよう」についても「墓地、墓石およびおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件を含むもの」として取り扱いを定めています。
⑧ ただし、「これらに準ずるもの」、すなわち、庭内神し、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものであっても、商品、骨とう品または投資の対象として所有するものはこれに含まれず、相続税の課税対象となる場合があるので、注意が必要です。

⑵ 墓の購入費用に係る借入金
① 相続税法は、相続税額の計算にあたり、「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む)」を債務控除として、控除することを認めています。
② では、生前に墓を金融機関からの借入金により取得し、相続開始の時点でこの借入金に残高がある場合、この借入金残高は債務控除として控除できるのでしょうか。
③ 墓は相続税の非課税財産でした。このような生前に被相続人が購入した墓の借入金などといった相続税の非課税財産に関する債務は、相続税の計算上、債務として差し引くことができません。
④ 債務控除の規定では、「被相続人に係る葬式費用」も控除の対象としています。しかし、葬式費用には、墓碑および墓地の買入費並びに墓地の借入料は含まれません。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q49 異なる宗教の霊園の墓地購入

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【Q49】私は、キリスト教を信仰しています。「過去の宗旨宗派は問いません」という広告を見て、霊園の墓地を見学しました。その霊園では、霊園を経営する寺院の信者にならなければならないと聞かされました。墓地は公共性が強いものなので、このようなことは許されないと思いますが、いかがでしょうか。

【POINT】
① 墓地の経営母体による違い
➁ 寺院の信教の自由との調和

1⃣ 墓地の種類
① 「墓地」と一口に言っても、現実にはいくつかの形態にわけることができます。例えば、墓地の経営母体に着目して分類すると、まず、⑴国や地方公共団体が経営する「公営墓地」、⑵それ以外の「民営墓地」に分けられます。
➁ そして、民営墓地についてさらに、㋐寺院が経営する「寺院墓地」、㋑その他宗教法人や公益法人が経営する「公益法人墓地」とに分けることができます。
③ 墓地を経営する主体がこれらのうちのどのような団体であるかによって、ご質問のような条件を付すことについての可否は異なります。

2⃣ 公営墓地
① 公営墓地の場合は、宗旨・宗派による制限は一切ありません。経営主体である国や地方公共団体が特定の宗教と結びつくことは、憲法によって禁じられています。
➁ したがって、公営墓地について、墓地使用権者を宗旨・宗派により限定することは、憲法上の問題が生じ、許されません。

3⃣ 寺院墓地
① これに対し、伝統的な寺院墓地では、その寺院の墓地使用権者になるためには、当該寺院の檀徒となることが必要とされているのが一般的です。
➁ その背景として、江戸時代幕府がすべての者をいずれかの寺院に所属させる寺請制度を採用し、宗門人別帳を一種の戸籍のように用いたことから、寺院ではその寺院に帰依する檀信徒のみが埋葬されてきました。その慣行が現在まで存在しているのです。
③ もう一つに、寺院には信教の自由が保障されていることがあります。墓地の使用を、自寺院の檀信徒のみに限定することは、信教の自由すなわち寺院の宗教活動の自由に含まれると考えられます。
④ そこで、寺院が自寺院の檀信徒のみに墓地の使用を認めることについては、法律上何ら問題ありません。ご質問のような条件を付することは違法ではありません。

4⃣ 公益法人墓地
① 伝統的な寺院墓地を除いた寺院経営墓地やその他の公益法人経営墓地(俗に霊園墓地と呼ばれることが多い)では、宗旨・宗派を問わないのが一般的です。
➁ 墓地の経営母体が寺院であっても、自宗派以外の者に対し、墓地の使用を認めることもまた信教の自由、寺院の宗教活動の自由に含まれるからです。その他の公益法人の場合には、特定の宗教団体が母体ではないからです。
③ もちろん、このような霊園墓地においても、霊園使用権者を霊園経営主体の宗旨の信奉者に限るとするものもありますが、墓地購入者を広く募集するという観点から、宗旨・宗派を問わないとする場合が多いように見受けられます。

5⃣ 墓地購入後に改宗した場合
① もっとも、当初、ご質問のような条件に同意して墓地を購入し、当該寺院の信者となったものの、その後、他の宗教を信仰するに至り改宗した場合には、前記寺院墓地といえども、埋葬自体を拒否することはできません。
➁ これは「埋葬拒否」の正当理由の有無という形で争われました。裁判例では、寺院の信教の自由よりも墓地使用権者の信教の自由が優先すると考え、寺院は改宗者の埋葬そのものを拒絶できないとしています。公衆衛生の観点からも埋葬拒否は許されないと考えられます。
③ 一方、埋葬の際に行う典礼に関しては、裁判例は、反対に寺院の信教の自由が優先し、墓地使用権者が他宗派による典礼を望む場合でも、寺院はこれを拒否することができるとしています。

【墓地・葬儀のトラブルQ&A】Q48 墓・納骨堂の種類

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q48 墓・納骨堂の種類についての記事です。

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【Q48】現在、妻と二人で「墓探し」をしています。墓・納骨堂にもさまざまな種類があるようですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

【POINT】
① 経営主体による違い
➁ 外形・納骨方法による違い
③ 管理・供養システムによる違い

1⃣ 経営主体による違い
① 一般の墓所、樹木葬、納骨堂問わず、遺骨を永続的に納めることを目的につくられるものは、墓地埋葬法の規定に基づき、都道府県知事の許可が必要です。
➁ 墓地、霊園の経営については永続性・非営利性が求められるため、株式会社等の営利法人による経営は許可されていません。
③ 現在販売されている墓地を経営主体に分けると、都道府県や市区町村などの自治体による「公営墓地」、寺院の境内もしくは隣接する場所にあり、檀信徒加入契約が必要になる「寺院墓地」、経営主体の名義は宗教法人等であっても石材店や開発業者が開発・販売に携わっている「民間墓地」に大別できます。
④ 「公営」に対して「民営」ではなく「民間」と称されるのは、民間業者は経営主体ではなく、あくまで開発・販売に参画している事業者であるという位置づけの為です。
⑤ それぞれの特徴を整理すると次のようになります。
⑴ 公営墓地
(メリット)
・経営・管理体制が比較的安定している。
・墓地使用料に割安感がある。
・宗教・宗旨・宗派不問。
・自分で石材店を選ぶことができる。
(注意点)
・募集数が少なく、募集時期が限られている。
・申込み資格に制限がある(遺骨の有無、在住歴など)。
・新規販売の区画ではなく、過去に別の墓があった区画が整地され販売されることも多い。
・墓石の形に制限があることもある。
⑵ 寺院墓地
(メリット)
・日々の勤行によって供養の空間が完成されている。
・都市部では比較的立地の良い場所にある。
・管理が行き届いている。
・管理規約等によらない融通が利くこともある。
(注意点)
・宗教・宗旨・宗派が制限されている。
・寺院との相性、住職の人柄などに左右される場合がある。
・石材店を指定されることがある。
・墓地使用規則がなかったり、墓地使用料、管理料などが明確にされていない場合もある。
⑶ 民間墓地
(メリット)
・販売数が多いので入手しやすい。
・申込みの資格制限が緩やかで、条件を気にせず選ぶことができる。
・墓石のデザインの自由度が高いところが多い。
・宗教・宗旨・宗派不問。
(注意点)
・墓地使用料・管理料は公営に比べて割高。
・石材店は指定業者制になっている。
・公共の交通機関を利用しにくい場所にあることも多い。
・管理や運営に差がある。
⑥ 地方に行くと、田畑の一角、山の一角、自宅の一角などに墓地を目にすることもありますが、これは「墓地埋葬法」が制定される以前(1948年以前)に作られたものです。
⑦ これらは法律施行以前に使用されている墓地または墓地経営の許可を受けたとみなされる者が経営している墓地で、「みなし墓地」と言われています。
⑧ みなし墓地については墓石の建替えや区画のリフォームは可能ですが、土地の使用権が複雑だったり、そもそも地目が墓地となっていないこともあり、新規で売り出されるケースはそう多くありません。

2⃣ 外形・納骨方法による違い
① お墓を見た目による違いで分類します。墓石を使用するタイプを一般墓とすると、樹木をシンボルとする墓所を樹木葬墓地といい、屋内にある遺骨の収蔵施設のことを納骨堂といいます。
➁ 墓石の形について、かつては縦長の和型の墓石が主流でしたが、近年建墓される墓の約4割は洋型といわれる横長タイプになっています。
③ 洋型の墓石には、「○○家」といった家名ではなく、「夢」「絆」「愛」「偲」といった文字が刻まれていることも多く、オブジェのようなお洒落な墓石も増えています。
④ 樹木葬墓地というと、「遺骨が自然に還る」「墓石が不要なので安い」というイメージをもつ人が多いのですが、骨壺を利用して納める場合もありますし、複数人分となると従来の墓石型墓地より割高になってしまうケースもあります。
⑤ 都市型の樹木葬墓地の場合は、墓石やタイル状のプレートをセットで購入しなければいけないところもあったり、そもそも樹木がほとんどない墓地でも樹木葬と称されていることもあり注意が必要です。
⑥ 納骨方法は、前述のように陶器等の骨壺に納めるケース、土に還るタイプの骨壺に納めるケース、遺骨をパウダー状にして土に納めるタイプなどなどさまざまです。承継を前提とするのか、また永代管理・永代供養システムの有無なども墓地によって異なります。
⑦ 一般墓と樹木葬の間をとったような外形をしているのが、芝生墓地です。各区画に外柵を造らず、芝生に背の低い墓石を置くシンプルなタイプですが、そこにシンボルツリーが植樹されていると樹木葬墓地と称されることもあります。
⑧ 納骨堂は都市部を中心に年々増加しています。納骨堂には納め方や参拝方法により、棚に並べて納める「棚式」、鍵付きロッカーに納める「ロッカー式」、仏壇と納骨堂が一体となった「仏壇式」、屋内に設置した墓石の中に納める「墓石式」、近年急速に増えている「自動搬送式」等があります。
⑨ 納骨堂は草むしりや清掃などメンテナンスの必要がなく、セキュリティ完備、立地条件等交通至便な場所に多く、購入費用も墓石を建てるよりリーズナブルです。
⑩ 特にカードをかざすと、遺骨を納めた納骨箱(厨子といわれる)が目の前に出てくる「自動搬送式」納骨堂は、高級感あふれる設備や共用スペースの充実度から注目を集め、近年都市部を中心に急増しています。

3⃣ 管理・供養システムによる違い
① 近代の日本の墓システムは「継ぐこと」を前提とする承継墓が主流でしたが、最近はそれを前提としない「永代管理」「永代供養」というシステムが注目されています。
➁ 「永代」とは、「承継者がいる限り永代にわたり」という意味です。「管理」は字のごとく管理をすることで、「供養」は仏教から派生した言葉なので、管理に加えてそこに宗教儀礼が伴うことを意味します。
③ つまり管理者が承継者に代わって管理・供養をするシステムのことで、墓の形やタイプを問いません。墓石を使用する一般墓であっても、近年は「期限付き墓地」として販売されるところもあります。このようなタイプは、一定期間を過ぎると遺骨を取出し別の合葬墓などに移して永代供養されます。
④ ご質問のようにご夫婦二人で入るお墓をお考えの場合、墓守がいない状況なら「永代管理」「永代供養」システムのあるお墓を選ぶとよいでしょう。
⑤ ただし、「供養」といってもその定義はまちまちで、何をもって供養とするかは寺院によって異なります。例えば毎年、個々に法要を行うことを供養とするのか、年に一回の合同法要を供養とするのかでも異なりますので、永代供養墓を購入する際は確認をしておくと良いでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q47 受け取った香典の帰属

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【Q47】父が亡くなった際、家族で相談のうえ、母が喪主になり葬儀を執り行いました。父の会社関係者のみでなく、兄や姉、自分の知人からも多額の香典を受け取りました。
葬儀の際の会計帳簿は母を補助していた兄が作成しましたが、母と兄は「香典は葬儀費用に使用した後、香典返しや法事の費用に使うつもりだ」と、収支を明かにしてくれません。香典の残額は遺産として相続人間で分割すべきではないでしょうか。

【POINT】
① 香典とは、どのような性質を持ているのか
➁ 香典を葬儀費用に充てた残額は、遺産に準じて扱われるべきか

1⃣ 香典の性質
① 香典は、葬儀の際に喪家に送られる金銭や物品などの贈与品を指しますが、現在では金銭による香典が一般化しています。
➁ 元来、香典には社会習俗・慣行に根差したもので、その意味合いも一様ではありませんが、香典には葬儀という不時の出費に対して喪家の負担を軽減し、同時に他日の援助を期待する相互扶助の意味合いもあるようです。
③ 葬儀への参列も死者や遺族との日頃の付き合い関係を表明する重要な機会であり、香典はその際に喪主や家族への見舞いとして贈られる儀礼的な意味合いをもつものです。さらに、忌中明けなどに、香典の半額程度の品物を返礼として贈る香典返しという慣習も存在します。
④ このように、香典は、慣習的に行われてきた一種の贈与と言えますが、誰に対する贈与、つまり受遺者は誰と考えたらよいのでしょうか。
⑤ 香典は直接的には、亡くなった父(被相続人)やあなた方兄弟姉妹との人間関係に基づいて送られたわけですが、死者には権利が帰属することはありませんので、被相続人は受遺者にはなりません。
⑥ また、あなた方と香典の送り主(贈与者)との人間関係は、香典を贈る動機の一つには含まれるでしょうけど、香典を贈る目的は、葬儀費用の一部に充ててもらうことにより、遺族の負担を軽くすることにあります。
⑦ そこで、香典は、葬儀の主宰者として、葬儀の準備や手配を行い、葬儀を実施する責任を負う喪主に対して贈られたものと考えられます。したがって、香典の受贈者は喪主であり、葬儀費用に充当されるべきということになります。

2⃣ 葬儀費用に充当した香典の残額がある場合
① 香典は、葬儀に関連する出費に充当されることを目的に支払われたものであれば、慰霊金といった名称が使用されていても同様に扱われます。
➁ したがって、これらを含む香典を、喪主が葬儀費用に充当すること、さらに、香典返しなど、葬祭に関連する諸費用に充てることも問題はありません。
③ それでも、香典が残った場合は遺産に準じて扱うべきでしょうか。この点については、喪主が葬儀を主宰し、葬儀費用を負担する以上は、香典は喪主に帰属しこれを葬儀費用に充当した余剰があったとしても、香典の残額も喪主に帰属すると考えられています。
④ したがって、香典の残額について、喪主は裁量によって、今後の祭祀費用に用いたり、福祉事業に寄付したり、あるいは、相続人に分配することもできますが、相続人側から遺産として分割を要求することはできません。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q46 葬儀費用の負担者

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q46 葬儀費用の負担者ついての記事です。

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【Q46】父が亡くなり、相続人は兄、私、妹の3人で、実家の地元に残り父のそばにいた次男の私が葬儀社と契約を行いました。実家は寺の代表的な檀家で伝統ある旧家ですので、葬儀社に任せる形で旧家にふさわしい大掛かりな葬儀を行い、高額な費用が掛かりました。
喪主は長男が務め、葬儀費用は私が立て替えのつもりで葬儀社に支払いました。ところが兄は、私が勝手に契約した葬儀だといい、立て替えた費用を支払ってくれません。葬儀費用は喪主が負担するものではないのでしょうか。

【POINT】
① 葬儀費用は誰が負担するべきか
② 葬儀費用として負担者に請求できる相当な金額は

1⃣ 葬儀費用と葬送の変化
① 国や時代を問わず、人間は葬送の儀式を営んできました。葬儀という死者との別れの儀式は、愛する者を失った生者のグリーフケアに必要な喪の作業ともいえるでしょう。
② 民法306条、309条は「葬式の費用のうち相当な額」について先取特権を認めています。貧しい人であっても葬儀が必要だと判断されているからです。
③ この「葬式の費用」の内容については、立法段階の議論を参照して、追悼の儀式と埋葬の費用が含まれると解されています。ただし、埋葬の費用には、墓地や墓石を購入する費用は含まれません。
④ また、通常、葬儀費用とは死者を弔うのに直接必要な儀式費用をいい、参列客への飲食の接待費用は含まれません。さらに、通夜と葬儀当日の費用のみで、四十九日や一周忌の法要の費用は含まれないとされています。
⑤ 日本の葬送産業においては、設備費と人件費を足してコストを計算し、しかるべき利潤を加えて対価を算出してそれらを対比するという通常の産業における競争原理がなかなか働きません。
⑥ 葬儀費用には、ある種の不合理な費用、すなわち「穢れ」に関与する対価、遺体に触れる作業をしてくれる人への感謝を金銭で表現したい、対価をけちると供養にならないという考えが働き、そのような考えが葬儀費用に含まれる傾向にあります。
⑦ 葬儀のあり方も多極化しています。孤独死された方の腐乱した遺体を処理し、その悪臭対処を行う業者も生まれています。
⑧ 葬儀をする場合でも、家族だけの直葬の場合から、参列者の目を意識した大規模な行事とする場合まで、選択肢の幅は非常に広く、よって、いわゆる「相当な」葬儀費用の設定が難しくなっています。どのような葬儀をするかで遺族の意見が相違している場合、慌ただしく葬儀が行われた場合には、費用負担でもめる危険性も高いでしょう。

2⃣ 葬儀費用の負担者
① 誰が葬儀費用を負担するかについては民法に規定はありません。先述の民法306条、309条も債務の負担者を定めているものではありません。
➁ この点について、学説と判例は多岐に分かれています。共同相続人全員で負担するとする説(葬儀費用は相続債務となり、相続人に分割帰属することになる:盛岡家裁昭和42年5月3日)。
③ 相続財産が負担するとする説(葬儀費用は民法885条の相続財産に関する費用に含まれる:盛岡家裁昭和42年4月12日)。
④ 喪主の負担とする説:東京地裁昭和61年1月28日。
⑤ 慣習ないし条理によるとする説:甲府地裁昭和31年5月29日。
⑥ 相当な費用は相続人の共同負担であるがそれ以上の支出は喪主の負担とする説。
⑦ これらのうち最近の有力説は喪主の負担とする説です。理由の一つは、葬儀費用でもめているケースは、遺産分割協議でももめていることが多く、遺産の中に含めて解決しようとすると、遺産分割協議が一層困難になるので、葬儀費用は遺産分割の枠外で処理した方がよいという判断です。
⑧ さらに現代では葬儀のあり方が多様化しているので、どのような葬儀が相当かということが言いにくく、「葬儀を自己の責任と計算とにおいて手配等して挙行した者(原則として喪主)の負担となると解すべき」(神戸家裁平成11年4月30日)であるという判断があります。
⑨ この場合の喪主は実質的に葬儀を自己の責任と計算とにおいて手配等した者とするべきで、形式的な喪主にその負担を負わせるのは妥当とは言えません。
⑩ 被相続人の実家家族と相続人である妻子が対立して実家家族が妻子を排除して葬儀を行い、形式的な喪主となったのは前妻の若年の子であったという前掲東京地裁昭和61年1月28日判決のケースでは「葬式を実施した者とは、葬式を主宰した者、すなわち、一般的には、喪主を指すというべきであるが、単に、遺族等の意向を受けて、喪主の席に座っただけの形式的なそれではなく、自己の責任と計算において、葬式を準備し、手配等して挙行した実質的な挙式主宰者を指すというのが自然であり、一般の社会通念にも合致するというべきである。したがつて、喪主が右のような形式的なものにすぎない場合は、実質的な葬式主宰者が自己の債務として、葬式費用を負担するというべきである」として、被相続人の兄から妻子への葬儀費用の請求を認めませんでした。
⑪ 喪主負担説に立って考えると、質問のケースでは、長男である喪主が「弟に葬儀契約締結を任せる」と事前にはっきりと委託していたのならば、喪主として単独で、あるいは少なくとも弟と共同主宰者として費用負担するべきでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q45 葬儀とグリーフケア

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q45 葬儀とグリーフケアついての記事です。

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【Q45】大切な家族を亡くした人は、死別の悲しみを体験するといわれていますが、この死別の悲しみは残された家族にどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、葬儀によって遺族の悲しみを癒すことはできるのでしょうか。

【POINT】
① 死別による悲嘆とは
② グリーフケアとは
③ 葬儀とグリーフケア

1⃣ 死別による悲嘆とは
1 悲嘆(グリーフ)
① 死別によって経験される「悲嘆(グリーフ)」は、一時的な反応であり、誰しも経験しうる正常な反応です。
② 通常の悲嘆は、ⅰ悲しみ、怒り、いらだち、不安、恐怖、罪悪感、絶望、孤独感、喪失感などの感情反応、
③ ⅱ否認、非現実感、無力感、記憶力や集中力の低下などの認知反応、ⅲ疲労、泣く、動揺、緊張、引きこもるなどの行動的反応、ⅳ食欲不振、睡眠障害、活力の喪失、免疫機能の低下などの生理的・身体的反応の4つに分類されます。
④ 悲嘆反応の種類や強さに関しては個人差が非常に大きく、同じ人でも時間とともに変化します。悲嘆が軽減されるのに必要な時間は、人によって大きく異なります。
⑤ 時間の経過に伴い、悲嘆は必ずしも直線的に軽減していくのではなく、気持ちや感情は波のように大きく揺れ動きます。
⑥ 故人の命日や誕生日、結婚記念日などが近づくと、故人が生きていた頃の記憶がよみがえり、気分が深く落ち込む「記念日反応」がみられることもあります。
⑦ 死別に伴う通常の悲嘆は決して病的なものではないですが、一方で新たな身体疾患や精神疾患、自死につながることもあります。
⑧ 配偶者との死別の場合には、「後を追うように亡くなる」といわれるように死亡のリスクが高まることが知られています。

2 通常ではない悲嘆
①死別による悲嘆は基本的に正常な反応であるものの、病状の持続期間と強度が通常の範囲を超え、日常生活に支障が出るような「複雑性悲嘆」と呼ばれる状態に陥ることもあります。
② 一般人口での有病率はおよそ2.4%~4.8%とされ、危険因子として、突然の予期しない死別、自死や犯罪被害による死別、同時または連続した喪失、遺体の著しい損傷、子どもとの死別など故人との間に深い愛着関係、過去の未解決の喪失体験や精神疾患歴、経済的な困窮、サポート・ネットワークの不足、訴訟や法的措置の発生などが挙げられています。
③ 複雑性悲嘆は、従来、精神疾患とは認められていませんでしたが、「遷延性悲嘆症」という疾患名が冠され、新たな精神疾患として位置づけられることになりました。

2⃣ グリーフケアとは
1グリーフケアの目的
① グリーフケアに関する厳密な定義は定まっていません。死別後の心理的な過程を促進するとともに、死別に伴う諸々の負担や困難を軽減するために行われる包括的な支援ととらえることができます。
② 死別による悲嘆は基本的に正常な反応であるものの、ときに複雑性悲嘆や、精神疾患や身体疾患への罹患、自死、死亡につながる危険性をはらんでいます。
③ このようなリスクの低減を図るため、元の正常な心身の機能を回復させることがグリーフケアの目標になります。
④ また、現実生活の困難や今後の人生設計など、故人亡き後の生活や人生をどう立て直していくかという課題にも死別に伴い直面します。必要に応じて、生活上の困難に対する問題解決的な支援も求められます。
⑤ 遺された人の抱えるニーズやリスクは多様であり、すべての人に同様の支援が必要なわけではありませんが、各人のニーズやリスクに応じた多層的な支援が望まれます。

2グリーフケアの分類
① グリーフケアは、提供される援助の内容に基づき、ⅰ情緒的サポート、ⅱ道具的サポート、ⅲ情報的サポート、ⅳ治療的介入に分類されます。
② 情緒的サポートとはいわゆる心のケアのことで、当事者の思いを尊重し、心の声にじっくりと耳を傾けることが大切です。
③ 家事や育児、経済的問題、法律問題など、目の前の現実的な困難に直面している人に対しては、問題の解決を手助けする直接的かつ具体的な支援、いわゆる道具的サポートが必要となります。
④ 情緒的サポートとは、悲嘆反応や対処方法などについての知識を提供することや、法律相談窓口や当事者団体といった各自のニーズに対応可能なサービスを提供している公的機関や民間組織など、社会資源に関する情報を提供することです。
⑤ 治療的介入とは、精神科医やカウンセラーなどによる専門的な治療のことで、うつ病や不安障害といった精神疾患が認められる場合には、薬物療法を含む精神科的治療が必要となります。
⑥ このように一般的には、故人亡き後の遺族への直接的、意図的なサポートがグリーフケアと考えられています。
⑦ 一方で、たとえば最後に故人との良い時間を過ごせたことや、故人らしい葬式を挙げられたことなど、遺族にとって少なからず救いや助けになる事象全般を広義のグリーフケアととらえることもできます。

3⃣ 葬儀とグリーフケア
1葬送儀礼や法事・法要
① 葬儀を含む死に関わる儀礼や慣習は、死者のためだけの行事ではなく、遺族にとっても重要な意義があります。葬儀や通夜といった非日常的な一連の儀式は、死を現実のものとして受け入れる手助けとなります。
② 日本独特の儀礼である拾骨儀礼、いわゆる骨揚げも死の現実を受容するための重要な手段といわれています。
③ 葬儀や通夜の場は、悲嘆の感情を公に表すことが許された社会的な機会であり、参集した親戚縁者は、故人にゆかりのある人々などと、故人の思い出やきもちを共有することは遺族の支えになります。
④ 葬儀後には各宗教儀式に則り、法事・法要が行われます。こうした儀式は、悲しみを共有する場を提供するだけでなく、記念日反応が懸念される節目の時期に行われ、加えて長期にわたって実施されるという点でグリーフケアとしての要素もあります。

2湯灌やエンバーミング
① 湯灌とは、臨終後に遺体を洗い清めることで、現在では主に葬儀社によって行われます。遺族は湯灌に立ち会い、協働するなかで、現世での故人の苦しみを洗い流せたと思えたり、死化粧を施されて穏やかにみえる故人の顔を眺めて安堵の気持ちを抱いたりします。
② 限られた時間ですが、故人を前にして、遺族同士で思い出を振り返り、思いを分かち合える機会でもあります。
③ 一方エンバーミングでは遺体の長期保存が可能となるため、急いで葬儀を行う必要がなくなり、落ち着いて準備を進めることができ、故人と顔を合わせる最後の時間をゆっくりと過ごせるようになります。
④ 死亡時の外傷や、長い闘病生活や薬の副作用によるやつれをなおし、生前の故人の顔に近づけることができます。
⑤ こうした湯灌やエンバーミングを通じて、故人が喜んでくれていると思えることが、辛い気持ちを少し楽にしてくれるかもしれません。

3墓や仏壇
① 遺族は故人のことを忘れて、新たな人生を歩み始めるのではなく、姿形はなくとも、故人とともに生きています。故人の写真を持ち歩き、ことあるごとに故人に語りかけたり、墓や仏壇の前で故人と対話したりします。朝の出かけに、夕方帰宅時に仏壇に話しかけることが日常になっている遺族も少なくありません。
② 肉体はなくとも、聞き役や相談役として故人の存在や役割は維持され、墓や仏壇は遺族が故人と向き合う窓口のような働きを有していると思われます。
③ 従来、お盆などの行事を通して死者と交わり、そして墓や仏壇を媒介として故人との強いきずなを維持し、亡き人とのつながりが、遺族の心のよりどころとなってきたのかもしれません。