遺留分制度に関する相続法改正について

世田谷区砧の書庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

令和元年7月1日から施行される民法相続編の改正について、今回は遺留分制度に関する改正について解説していきたいと思います。

【要点】
⑴ 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。
⑵ 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。

【1.見直しのポイント】

① 遺留分減殺請求権から生ずる権利を金銭債権化する
② 金銭を直ちには準備できない受遺者又は受贈者の利益を図るため,受 遺者等の請求により,裁判所が,金銭債務の全部又は一部の支払につき 相当の期限を許与することができるようにする。

【2.現行制度】

① 遺留分減殺請求権の行使によって共有状態が生ずる。 ← 事業承継の支障となっているという指摘

② 遺留分減殺請求権の行使によって生じる共有割合は,目的財産の評価額等を基準に決まるため,通常は,分母・分子とも極めて大きな数字となる。 ← 持分権の処分に支障が出るおそれ

(事例)

経営者であった被相続人が,以下の内容で相続させる旨の遺言をし,死亡した (配偶者は既に死亡)。

①事業を手伝っていた長男に会社の土地建物(評価額1 億1123万円)

②長女に預金1234万5678円

これに対して、遺言の内容に不満な長女が長男に対し,遺留分減殺請求。

長女の遺留分侵害額 1854万8242円={(1億1123万円+1234万5678円)×1/2×1/2-1234万5678円}
(現行法) 会社の土地建物が長男と長女の 複雑な共有状態に。

➡持分割合

長男 9268万1758/1億1123万

長女 1854万8242/1億1123万

【3.制度導入のメリット】

① 遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に生ずることを回避することができる。

② 遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重する ことができる。

(改正後) 遺留分減殺請求によって生ずる権利は金銭債権となる。 同じ事例では,長女は長男に対し, 1854万8242円 請求できる。

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