世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は後見制度に関して、「任意後見制度ってどんな制度?任意後見制度の内容」について考えてみましょう。
【Q】判断能力等が低下してきた場合に利用できる制度には、法定後見制度だけではなく、任意後見制度があると聞きました。それは、どのような制度でしょうか。
【A】法定後見制度は、家庭裁判所への申立てによって始まり、本人の保護・援助の内容は、法律と家庭裁判所の判断に従って、客観的な視点から決定されます。そのため、補助の場合を除いて、保護・援助の内容に、本人の要望が必ずしも反映されません。
その一方で、「判断能力が低下したときの援助の内容は、自分自身で決めておきたい。」「将来の財産管理は信頼している人に託したい。」と考える人も多いと思います。そこで定められたのが任意後見制度です。この制度では、何らかの援助が必要となった場合においても、自分のことは自分で決める、即ち、自己決定権の尊重を基本理念としています。
この制度の具体的な内容としては、まず本人の判断能力に問題がない段階で、本人と本人が将来任意後見人になって欲しいと考えて選んだ人(受任者)との間で、任意後見契約を締結します。この契約の中で、本人の判断能力が不十分となった際に、任意後見人に任せる事務の内容や範囲等について、決めておきます。ただし、この契約については、本人の真意に基づくことを明確にするため、法務省令で定める様式に従った公正証書とする必要があります。
また、任意後見人を誰にするかについても、本人の意思が尊重されます。親族でも、弁護士・司法書士・行政書士といった専門職の人でも、友人・知人でも、就任の承諾さえあれば誰でも構いません。
その代わり、任意後見人は、家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督を受けることになっています。この監督の目的は、任意後見人の権限濫用を防止して、本人の保護を図ることにあります。そのため、任意後見人(受任者)の配偶者、直系血族(親・子等)及び兄弟姉妹は、任意後見監督人になることができません。そして、任意後見契約は、家庭裁判所が、この任意後見監督人の選任をしたときから効力が生じます。その選任方法は、本人の判断能力が不十分となった際に、受任者が、任意後見契約に基づき、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求するというのが一般的です。
このように、任意後見制度は、判断能力に問題がない段階での自らの意思を、将来、判断能力が不十分となった際の財産管理等に反映させたいと考えている人によって利用されることを、予定しています。自らの意思を反映させるということから、任意後見契約は、公証役場において、自由に解約をすることができます。ただ、任意後見監督人が選任された後の解約は、正当な理由と家庭裁判所の許可が必要です。
任意後見制度を利用することで、信頼できる人に任意後見人への就任を依頼し、その人との間で任意後見契約を結んで、例えば、福祉施設への入所契約、介護契約、預貯金の取引、不動産管理や税金の申告などを委任しておくことが可能ですので、判断能力が不十分となったときの不安を払拭できるものと考えられます。
このように、任意後見制度は、自分自身で内容を決めることができるため、制度創設当初は広く普及するものと考えられていましたが、利用数は伸び悩んでいるのが現状です。そのため、平成28年4月、政府は、任意後見制度が積極的に活用されることを目指して、同制度の利用状況の検証や必要な制度の整備などの各施策を実施することになりました(成年後見制度の利用の促進に関する法律第11条)。