【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見契約の変更3

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【3】任意後見契約の変更の方法

(4)当事者を変更する場合の変更方法

ア 受任者が数人いる場合で共同代理の定めがあるときに、そのうちの1人との任意後見契約が死亡などで終了したときは、他の任意後見受任者(任意後見人)との任意後見契約を変更する必要があります。
例えば、受任者2人で全部の事項について共同代理の定めのある場合において、そのうち1人が死亡したときには、切り離すことのできない一個の代理権が行使できない状態となり、任意後見契約が終了してしまいますので、生存する受任者との間で改めて新規の任意後見契約を公正証書でもって締結する必要があります。

なお、全部の事項について共同代理の定めではなく、一部の事項について共同代理の定めがある場合において、そのうちの1人が死亡した場合も、結局代理権の行使方法が単独状態に変更することになりますので、同様に、生存する受任者との間で改めて新規の任意後見契約を公正証書をもって締結する必要があります。

ちなみに、この場合には、もう1人の受任者との間で新規の任意後見契約を作成しなければなりませんが、その時点で本人に意思能力がない場合には、法定後見によるほかありません。
そうなると、代理権の行使について慎重を期して、わざわざ受任者を2人にした意味がなくなってしまします。

そこで、受任者を2人として共同代理の定めをする場合において、上記のような結果を回避するためには、受任者の1人が死亡その他の理由により事務を遂行できなくなった場合、残った受任者に新たな任意後見契約を締結する代理権を付与する旨の規定を置いておけば、本人に意思能力がない場合にも、もう1人の受任者はこの代理権を行使して新たな任意後見人と契約を結ぶことができますので、任意後見を継続することが可能となります。

イ 複数の受任者がそれぞれ単独で代理権を行使することができる場合において、そのうちの1人との任意後見契約が死亡などで終了したときは、他の任意後受任者(任意後見人)との任意後見契約を変更する必要はありません。

例えば、受任者2人で単独代理の定めがある場合において、そのうちの1人が死亡したときは、死亡した受任者との間の任意後見契約は終了しますが、生存する受任者との間の任意後見契約には何ら影響がありませんので、改めて新規の任意後見契約を締結する必要などはありません。

ウ 受任者が法人の場合にその法人が包括承継した場合の変更手続きは、受任者などの氏名が婚姻などによって変更した場合の手続きと同様の方法で行うことになります。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見契約の変更2

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【3】任意後見契約の変更の方法

任意後見契約の変更については、法務省民事局長通達が出されており、その変更内容に応じた取扱いをしなければなりません。そして、いずれの変更の場合であっても、公正証書によらなければならないこととされています。

(1)代理権の範囲の変更
ア 代理権を行うべき事務の範囲を拡張する場合
代理権の内容を追加するには、①既存の任意後見契約を全部解除して、新たに追加した代理権を含めた新たな任意後見契約を締結する方法と、②既存の任意後見契約はそのままにして、追加した代理権のみを付与する任意後見契約の公正証書を作成する方法の2通りがあり、いずれかの方法を選択できます。

既存の任意後見契約の代理権の範囲を変更する契約は認められていません。必ず、新たな任意後見契約を公正証書でもって締結することが必要です。
このような取扱いをするのは、新規の公正証書を作成することにすれば、公証人から間違いなく登記の嘱託がされますので、その結果、代理権の範囲を確実に登記に反映させることができるからです。

なお、2つの契約を併存させる②の方法によることは契約関係が複雑になります。すなわち②の方法の場合は、代理権目録を追加するという新たな契約を締結しますので、その登記記録も別になるために、すべての代理権を証明するためには、複数の登記事項証明書が必要となります。したがって、一般的には、①の方法を採ることが多いと思われます。

イ 代理権を行うべき事務の範囲を縮減する場合
任意後見契約の一部解除、一部変更は許されていませんので、委任事項を一部縮減する場合は、既存の任意後見契約を全部解除した上で、改めて新たな任意後見契約を公正証書でもって締結する必要があります。

例えば、当初の契約に代理権の範囲として不動産の処分を入れていた場合に、それを「管理、保全」に縮小しようとする場合は、新たに縮小した代理権目録による契約を締結することになります。

(2)代理権行使の方法の変更(単独代理・共同代理、本人又は任意後見監督人等の同意の要否の変更)

代理権の行使方法を変更する場合には、既存の任意後見契約を全部解除した上で、新規の任意後見契約の公正証書を作成することとなります。

例えば、複数の受任者がそれぞれ単独で代理権を行使する任意後見契約を締結していたものを共同代理に変更する場合、逆に共同代理を単独代理に変更する場合には、既存の任意後見契約を全部解除した上で、改めて新規の任意後見契約を公正証書でもって締結する必要があります。
代理権行使に当たって、任意後見監督人あるいは本人の同意を要する旨の特約を新たに付したり、廃止する場合についても同様です。

(3)報酬額を変更する場合の変更方法

報酬額の変更については、変更する部分だけのいわゆる変更契約の形式が認められていますが、公正証書によらなければなりません。私署証書による契約変更は認められません。
ア 公証役場において作成する締結時の任意後見契約公正証書には、当事者に注意を促す意味で、報酬の変更契約は公正証書によってしなければならない旨が報酬の規定に明記されているのが通例です。

イ 報酬額の変更について、本人が任意後見人と合意することができる状況にあるときは、任意後見監督人をその協議に加えた上で変更することができる旨を規定するのが通例ですが、その趣旨は、本人の意思決定を尊重しつつ、本人の利益を保護することもできるからです。

そして、本人がその意思を表示することができない状況にあるときには、任意後見監督人の同意により変更することができるものとしているのは、任意後見人からの同意を求められた任意後見監督人がその同意、不同意を決するに当たり、家庭裁判所の指導監督を受けることにより、報酬額の変更の適正を図ることができるからです。加えて、任意後見監督人の同意を書面によることとされているのは、同意を慎重に行わせるとともに、将来の紛争を防止するためです。

したがって、報酬の変更契約の公正証書作成の際には、任意後見監督人と協議を行なったことを明らかにするために、当事者作成の協議書あるいは任意後見監督人作成の協議をしたことの証明書などが必要です。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見契約の変更1

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【1】任意後見契約の変更原因

任意後見契約を締結した後において、その契約の効力が生じる前か生じた後のいずれであっても、すなわち任意後見監督人が選任されすでに任意後見が開始されている場合であるかどうか問わず、その締結された任意後見契約を変更するパターンとしては、次のものが挙げられます。

(1)代理権の範囲の変更

任意後見契約の代理権を行うべき事務の範囲(代理権の内容)を
ア.追加(拡張)する場合
イ.縮減する場合(代理権の内容を一部削除する場合)
があります。

(2)代理権行使の方法の変更

複数の受任者がいる場合は、それぞれの受任者が単独で代理ができる(単独代理)か、複数の受任者が共同して代理をする(共同代理)かを決めていますが、単独代理を共同代理に変更する場合と、逆に共同代理を単独代理に変更する場合があります。

(3)報酬額の変更

無報酬から有償への変更や当初の報酬額を変更する場合があります。
当初は報酬額を無報酬と定めても、その後の本人の生活環境の変化に伴い、任意後見人の事務が大幅に増えるなど、将来、無報酬ということが不相当になる場合があります。

(4)当事者の変更

任意後見受任者(任意後見人)が2人以上の場合に、そのうちの1人が死亡するなどして任意後見契約が一部につき終了する場合は、他の任意後見受任者(任意後見人)との関係で当事者の変更の手続きが必要となる場合があります。

また、受任者が法人の場合はその法人が包括承継されたときは変更の手続きが必要です。
なお、受任者をAからBに変更するということは契約の相手方を変更することを意味しますので、当該受任者との契約を解除し、新たな受任者とは改めて委任契約を締結することになります。

【2】任意後見契約の変更の登記が必要

代理権を行うべき事務の範囲を減縮する場合のように、新規の任意後見契約を締結することになる任意後見契約の変更については、変更後の内容につき、公証人による嘱託によって新たな任意後見契約締結の登記がなされますので、自分で、その登記手続きをする必要はありません。
ただし、当事者の変更のケースで、任意後見人が死亡などして任意後見契約が終了した場合は、終了の登記を申請しなければなりません(後見登記法8条2項)。

なお、報酬額の変更の場合は、報酬額は登記事項ではありませんので、公正証書を作り直す必要はありますが、報酬額の変更に伴う登記事項の変更の登記を申請する必要はありません。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見監督人とは5

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【5】任意後見監督人の補充・増員並びに複数の場合の職務及び権限等

(1)任意後見監督人の補充

任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、申立て権者の請求により、あるいは職権で、任意後見監督人を選任します(任意後見契約法4条4項)。したがって任意後見契約が終了することはありません。

任意後見監督人が欠けた場合とは、①任意後見監督人の死亡、②任意後見監督人の辞任、③任意後見監督人の解任、④任意後見監督人の欠格事由の発生などです。
申立て権者は本人、その親族若しくは任意後見人です(任意後見契約法4条4項)。

(2)任意後見監督人の増員

任意後見監督人が既に選任されている場合(任意後見開始後)においても、さらに任意後見監督人を追加選任を行うこともできます。例えば、当初の任意後見監督人は身上監護関係事務の選任とし、別に財産関係を担当する任意後見監督人の選任をしたい場合は、任意後見監督人の追加選任を申し立てることができます。

また、家庭裁判所は、必要あると認めるときは、職権で、さらに任意後見監督人を選任することもできます(任意後見契約法4条5項)。

(3)任意後見監督人が複数の場合の職務及び権限など

複数の任意後見人に対する任意後見監督人として、任意後見監督人選任の審判時において、各任意後見人ごとに任意後見監督人を選任したり、任意後見開始後において、さらに任意後見監督人を追加選任を行うなどして、任意後見監督人が複数となる場合があります。
ア 数人の任意後見監督人の事務の分掌
任意後見監督人が複数の場合、その権限は共同行使が原則と解されています。
しかし、家庭裁判所では、職権で、数人の任意後見監督人が、共同してあるいは事務を分担して、その権限を行使すべきことを定めることができます(任意後見契約法7条4項、民法859条の2第1項)。

したがって、選任と同時に事務の分掌の定めを求めるときは、家庭裁判所の職権発動を促す意味で、申立書にその旨を付記しておけば、家庭裁判所が事務を分掌させる必要を認めたときは、職権で選任審判と同時に分掌の定めをすることになります。

なお、家庭裁判所は、職権で、数人の任意後見監督人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことの定めを取り消すことができます(任意後見契約法7条4項、民法859条の2第2項)。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見監督人とは4

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【4】任意後見監督人の解任・辞任

(1)任意後見監督人の解任

任意後見監督人に不正な行為、著しい不行跡その他監督の任務に適しない事由があるとき、家庭裁判所は、本人、その親族、他の任意後見監督人(任意後見監督人が複数選任されている場合)又は検察官の請求により、任意後見監督人を解任することができます。任意後見人の解任とは異なり、家庭裁判所の職権による任意後見監督人の解任が認められています。

ア 本人への虐待、本人の財産の横領、私的な流用などの財産管理に関する不正など、違法な行為や社会的に非難されるべき行為が「不正な行為」に該当します。
イ 「著しい不行跡」とは、品行がはなはだしく悪いことを意味し、それにより財産管理の監督能力が疑わしいなど、任意後見監督人として不適格ではないかと推認させる場合がこれに当たるとされています。
ウ 任意後見監督人の権限濫用、家庭裁判所から命じられた財産調査の拒否などの家庭裁判所の命令を無視する行為や家庭裁判所への報告の遅滞、未報告などの任務懈怠などは、「その他その任務に適しない事由」となります。

(2)任意後見監督人の辞任

任意後見監督人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(任意後見契約法7条4項、民法844条)。

この正当な事由とは、例えば、任意後見監督事務を遂行することができない遠隔地に任意後見監督人が転居する場合や、任意後見監督人の老齢、疾病、身体障害、過重な負担などにより監督事務の適切な遂行に支障がある場合、また、すでに長期にわたり任意後見監督人の職務をしている場合で、今後その継続が酷と考えられる場合、あるいは本人の親族や任意後見人との間に監督業務の遂行に支障を来すほどの不和などがある場合など、任務を遂行し得ない事情をいいます。

(3)任意後見監督人の辞任・解任と任意後見契約への影響

任意後見監督人が辞任・死亡などによって欠けた場合、あるいは、解任された場合であっても、任意後見契約の存続に影響はありません。
任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族若しくは任意後見人の請求により、あるいは職権で、新たな任意後見監督人を選任しますので、任意後見人が欠けた場合と異なり、任意後見契約が終了することはありません。

なお、任意後見監督人の辞任や解任による後見登記等ファイルの変更登記は、裁判所書記官の嘱託(登記の依頼)によってされますので、任意後見人や新たに選任された任意後見監督人が、前任の任意後見監督人の辞任、解任による変更の登記申請を行う必要はありません。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見監督人とは3

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【2】任意後見監督人の職務

(4)その他の職務

任意後見監督人の主な事務は、任意後見人の事務の監督と任意後見人の事務の家庭裁判所への報告ですが、その他、行わなければならない事務として次のようなものがあります。

ア 急迫の事情がある場合における任意後見人の代理権の範囲内での必要な処分の実行
例えば、任意後見人が長期に不在となる場合や、病気などで後見事務を行うことが困難なときは、任意後見人の代理権の範囲内(任意後見契約に定められた代理権の範囲内)で、任意後見監督人が、本人のために必要な事務を行う必要があります(任意後見契約法7条1項3号)。

イ 任意後見人と本人との利益が相反する行為につき、本人を代表すること
例えば、本人と任意後見人との間で金銭の貸し借りや不動産の売買などの契約を締結する場合は、本人と任意後見人との双方の利益が相反しますので、任意後見監督人が本人を代表します(任意後見契約法7条1項4号)。
また、本人と任意後見人の両者が同じ遺産分割協議の当事者となったりする場合も同様に利益が相反します。任意後見人は利益が相反する行為を行う必要がある場合は、任意後見監督人に報告しなければなりませんし、その行為を行うに当たっては任意後見監督人が本人を代表します。

ウ 任意後見契約が終了した場合における終了の登記の申請義務
任意後見契約が本人の死亡などにより終了した場合は、終了の登記を申請する義務が任意後見監督人にあります。ただし、任意後見人の解任による終了の場合は、解任の審判が確定した場合、家庭裁判所の書記官からの嘱託により、任意後見契約の終了の登記がされますので終了の登記を申請する必要はありません。

(5)任意後見監督人に選任された際に行う業務

まずは、任意後見人と面談するなどの方法で、任意後見人の職務や職責の理解度を確認するとともに、本人から委任された後見事務をどのような方法で行う予定でいるのか聴取するべきでしょう。その際に、当然のことですが、任意後見契約の内容、本人作成の「ライフプラン」や「指示書」などがあれば、その内容も確認する必要があります。
また、本人の意思が直接確認できる場合には、本人から聞く場合もあります。

任意後見人を監督する任意後見監督人も、任意後見人の代理権限の範囲を確認して、以後の監督事務に臨む必要があります。任意後見人の行う後見事務が適正に行われるかは、任意後見監督人の指導・監督にかかっていますので、任意後見監督人に選任された当初に任意後見人と十分に打合せをして、任意後見人が抱く疑問なども解消しておくことが必要でしょう。

特に本人の親族や知人が任意後見人となる場合は、任意後見監督人就任時に、任意後見事務についての事前指導(処理指針の指導、財産管理の指導、財産目録作成の指導、定期報告書作成指導など)を徹底することが必要でしょう。

【3】任意後見監督人の権限

(1)任意後見人に対し事務の報告を求めたり、任意後見人の事務や本人の財産状況を調査する権限

任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、その事務について家庭裁判所に定期的に報告することを主たる職務とし(任意後見契約法7条1項1号、2号)、その監督を実効的なものにするため、いつでも、任意後見人に対してその事務の方向を求めたり、任意後見人の事務又は本人の財産の状況を調査することができます(任意後見契約法7条2項)。

(2)家庭裁判所に対し、任意後見人の解任を請求する権限

任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督する過程において、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があると認めるときは、家庭裁判所に対し、任意後見人の解任を請求することができます(任意後見契約法8条)。

任意後見人を直接監督していない家庭裁判所は、職権で任意後見人を解任することはできませんので、任意後見監督人が解任請求の申立てを検討することになります。ただし、家庭裁判所が、任意後見監督人に対し任意後見人解任の申立てをするよう指示することは可能でしょう。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見監督人とは2

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【2】任意後見監督人の職務

(1)任意後見監督人の職務としては次のようなものがあります(任意後見契約法7条1項)。

① 任意後見人の事務の監督
② 任意後見人の事務の家庭裁判所への定期的報告
③ 急迫の事情がある場合における任意後見人の代理権の範囲内での必要な処分の実行
④ 任意後見人と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること
⑤ 任意後見契約が終了した場合における終了の登記の申請

(2)任意後見人の事務の監督

任意後見人の事務の監督とは、任意後見人が本人から委任された事務を適正に行っているかを直接監督することです。任意後見人が本人から委任された代理権行使に対するチェック、検証、確認などです。

具体的には、事務処理の状況や支出の用途・計算等について、任意後見人から、資料の提出と報告を受け、事務処理が本人の利益のために適正に行われているかどうかをチェックするとともに、随時、必要な事項の報告を求め、調査を行うことになります。

特に、任意後見人が本人の財産の管理を委任されている場合には、支出の用途・計算等について、厳正なチェックが必要となります。
実際の任意後見契約においては、広範囲の財産管理を任されている例がほとんどであり、濫用されやすいのもこの事務です。
したがって、任意後見監督人の職務も財産管理事務のチェックが中心となるでしょう。

任意後見人の任意後見監督人に対する報告の時期については、任意後見契約に「〇か月ごとに書面で報告する」などのように規定されていることが通常ですので、その規定に従って任意後見監督人は報告を求めます。
この定期報告のほか、任意後見人の事務の監督を効果的なものにするため、いつでも、任意後見監督人は、任意後見人に対して事務の遂行報告を求めたり、また、任意後見監督人自ら、任意後見人の事務の内容や本人の財産状況を調査することができます(任意後見契約法7条2項)し、任意後見監督人の監督の過程で任意後見人の事務に「不正な行為」「著しい不行跡」などが判明した場合は、任意後見人の解任なども視野に入れてその後の対応が検討されます。

(3)任意後見人の事務に関しての家庭裁判所への報告

任意後見監督人は任意後見人が適正に後見事務を行っているのか、必要に応じてチェックをし、家庭裁判所に定期的に報告を行います(任意後見契約法7条1項2号)。

家庭裁判所の任意後見監督人に対する監督方法は、原則として、書面照会ですが、家庭裁判所への定期的な報告の具体的な報告の時期・内容について、任意後見監督人選任の審判と同時に指示書が家庭裁判所から交付されます。

通常は、毎年1回、任意後見監督人選任審判が確定した月に、任意後見人による本人の身上監護事務と本人の財産の管理事務の執行状況(出金については使途の正当性・妥当性を含む)についての監督結果を報告するよう指示がなされているようです。

また、任意後見監督人は、定期的な監督事項の報告の他にも、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他任務に適しない事由が認められるときや、本人の判断能力の状況等の変化により任意後見契約によって任意後見人に委託されている事務の範囲では本人の保護が図れないと認められるとき、本人や任意後見人の死亡など任意後見契約が終了する事情が発生したときなどには、その都度、家庭裁判所に報告する必要があります。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見監督人とは1

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【1】任意後見監督人の役割

(1)家庭裁判所と任意後見監督人・任意後見人との関係

ア 法定後見制度では、家庭裁判所が成年後見人等を直接監督しているのに対し、任意後見制度では、任意後見監督人が任意後見人を直接的に監督します。

家庭裁判所による監督は、任意後見監督人からの報告等を通じた間接的な監督をするにとどまることになります。
任意後見監督人は任意後見人の事務遂行を直接的に監督し事務遂行につき報告を求めることができますが、家庭裁判所は、直接、任意後見人に事務の報告を求める事はありません。

イ 家庭裁判所と任意後見人との関係

家庭裁判所が直接任意後見人を監督したり、指導したりすることはなく、自らが選任した任意後見監督人の業務に対して、監督・指導することになります。
しかしながら、任意後見監督人の報告等に基づき任意後見人を解任することができます(任意後見契約法8条)。

ただし、家庭裁判所は、職権で任意後見人を解任することはできませんので、任意後見監督人からの定期的な報告等によって解任事由があることが把握できた場合は、任意後見監督人が解任請求の申立てを検討することになります。

ウ 家庭裁判所と任意後見監督人との関係

家庭裁判所は、任意後見監督人から任意後見人の事務に関し、定期的に報告を受けるとともに、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務の報告を求め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができます(任意後見契約法7条3項)。

このように家庭裁判所は、任意後見監督人からの定期報告によって、任意後見人の仕事ぶりをチェックしますが、定期報告だけではよく分からなければ、いつでも任意後見監督人に報告を求め、あるいは調査を命じることができます。
また、監督の事務について必要な処分を命じることができます。ただし、家庭裁判所が直接任意後見人から事情を聴取したり任意後見人に命令を出すようなことはありません。

また、家庭裁判所には、任意後見人の解任の場合と異なり、職権による任意後見監督人の解任が認められています。家庭裁判所調査官は、任意後見監督人に不正な行為、著しい不行跡その他監督の任務に適しない事由があると判断するときは、その旨を家庭裁判所に報告する義務があり、家庭裁判所の監督機能を強化しています。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見人の職務と義務3

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【4】任意後見事務の報告

(1)報告時期

本人につき、認知症等の症状が現れ、任意後見が開始されたときは、任意後見監督人が選任されます(任意後見契約法4条1項)。その場合、任意後見人は、その事務内容を、家庭裁判所ではなく任意後見監督人に対して報告しなければなりません(任意後見契約法7条2項)。

報告時期は、任意後見契約書には、「任意後見人は、任意後見監督人に対し、〇か月ごとに、本件後見事務に関する次の事項について書面で報告する。」などのように記載されます。通常は3ヶ月に1回くらいの頻度で報告すると規定されているのが一般的です。

しかしながら、報告時期の間隔は自由に定めることができますし、また、例えば6か月ごとの報告と規定された場合でも、任意後見監督人はいつでも、任意後見人に対し任意後見の事務の報告を求め、任意後見人の事務、本人の財産の状況を調査することができるとされています(任意後見契約法7条2項)。

そのため任意後見人は、規定された報告時期以外であっても、任意後見監督人の指示に従って報告や調査に応じ、帳簿や預金通帳の提示などに協力する必要があります。

ちなみに、任意後見監督人は、家庭裁判所に対し、任意後見人の事務に関し定期的に報告する(任意後見契約法7条1項2号)必要がありますが、実務上は、毎年1回任意後見監督人選任審判が確定した月に報告を求められることが多いようです。

(2)報告内容

任意後見人は、身上監護及び財産管理に関する任意後見事務につき行なった内容を報告することになりますが、具体的には次のようなものが考えられます。なお、任意後見監督人の家庭裁判所への報告書や法定後見人の家庭裁判所への報告書の内容が参考になるでしょう。

ア 定期的に報告をする必要がある事項

① 本人の財産の管理状況(処分したり取得した財産内容)
例えば、不動産・有価証券等重要な財産を処分または取得をした場合はその処分または取得の時期・理由・相手方等を報告することになります。
② 本人を代理して受け取った金銭及び支払った金銭の状況
金銭の状況を会計帳簿等に記帳しておくことが必要でしょう。
③ 本人の身上監護について行なった措置
④ 後見事務を処理するために必要とした費用の支出及び使用状況
費用を支出した時期・理由・相手方などその使用状況を会計帳簿等に記帳しておくことが必要でしょう。
⑤ 財産目録及び収支状況報告書
実務は、任意後見監督人選任申立時、任意後見監督人選任時、任意後見監督人が選任されてから1年ごと、任意後見の終了時に作成するのが通例です。

イ 定期的な報告以外のもので報告すべき事項

① 本人や任意後見人の生活環境に変化があった場合
本人が入院した場合や本人の住所が移転した場合など、本人の生活環境に変化が起こった場合には定期報告以外であっても、任意後見人は報告をする必要があるでしょう。
また、任意後見人の住所が移転した場合も後見事務を行うに当たって本人にも影響を与える可能性もありますので、報告をした方がよいでしょう。
② 任意後見人が事故や病気で事務が行なえない場合
③ 任意後見人と本人との利益が相反する行為を行う必要がある場合
例えば、任意後見人または任意後見人が代表する会社などと本人との間で遺産分割協議や売買を行うような場合は、任意後見人と本人との双方の利益が相反しますので、任意後見監督人が本人を代表します(任意後見契約法7条1項4号)。したがって、そのような行為を行う必要がある場合は、任意後見監督人に報告しなければなりません。

ウ 報告事項についての留意事項

親族や友人が任意後見人になる場合、任意後見制度や任意後見人の事務について、必ずしも十二分には理解できていないことが多いので、定期的な報告を含め、報告を適切に行うことに苦慮したり不安に陥ることもあるかと考えられます。

そうしたことを避けるためにも、任意後見監督人が選任された際には、任意後見人は委ねられた事務遂行の権限の範囲やその責任を確認するとともに、金銭出納帳の記帳方法や領収書の整理方法を含めて報告すべき内容などについて、任意後見監督人との話し合いを行うことが望まれます。

(3)任意後見監督人以外の第三者機関などに報告する例
任意後見人(受任者)がリーガルサポート、権利擁護センターぱあとなあ、コスモス成年後見サポートセンター、成年後見支援センターヒルフェの登録会員の場合には、それらの団体に対して定期的に事務処理状況を報告し、必要な場合には、その組織・団体から指導・助言を受けることができることになっていて、契約条項中に、報告することについて本人が同意する旨の規定が置かれている場合があります。

もとより、契約当事者になっていない者に事務処理状況を報告することは、本人の秘密を開示することになりますので、秘密の開示につき、本人に対し、そのような報告する趣旨を十分に説明してその同意を得ることが必要です。

【任意後見制度】任意後見契約の手続 任意後見人の職務と義務2

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約の手続 任意後見人の職務と義務2について考えてみたいと思います。

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【3】任意後見人の義務

任意後見人は後見事務を行なうに当たっては、次のような義務を負います。
(1)善良な管理者としての注意義務(民法644条)
(2)委任事務の状況を報告する義務(民法645条、任意後見契約法7条2項)
(3)本人の意思尊重義務と身上配慮義務(任意後見契約法6条)

(1)善良な管理者としての義務

① 任意後見契約も民法の委任契約の一類型ですから、その性質に反しない限り、民法の委任の規定の適用を受けます。任意後見人は、その事務を行なうに当たっては受任者としての善管注意義務を負うことになります(民法644条、民法869条)。

この注意義務は、職業上や社会通念上、客観的に期待される程度の注意義務で、「自己同一注意義務」よりも重い義務とされています。この注意義務を怠って何らかの損害や損失を与えた場合は賠償責任を負うことになります。

② 預貯金管理と善管注意義務

預貯金口座についても、善管注意義務をもって管理しなければなりません。したがって、例えば、本人の預貯金口座から他の口座に送金する場合に、ATMを利用してキャッシュカードで送金する場合の手数料が、窓口を利用して通帳で送金する場合の手数料よりも安価であれば、金融機関に対して、本人名義の預貯金口座について任意後見人が利用できるキャッシュカード(代理人キャッシュカード)を発行するように請求する必要性が生じると言えるでしょう。

③ 受任者が適切に任意後見監督人の選任請求をする義務について

任意後見を受任した人は、任意後見契約を締結した時点から、善管注意義務の一環として、本人の状況を適宜把握し、適切に任意後見監督人の選任請求をする義務を負っていると解することができますが、そのことは法律に規定されていません。

日本弁護士会連合会からは、実務で普通行なわれている「移行型」の場合における任意代理人の不正行為の防止をし、任意後見制度の趣旨を活かした運用が行われるようにするためにも、任意後見受任者には、本人の判断能力が不十分となったときは適切な時期に任意後見監督人の選任請求をする義務があることを法律に明文で規定する必要がある旨の提言がなされています。

なお、公証実務上は「移行型」の委任契約においては、受任者に本人の日常生活の見守り義務を課す、いわゆる見守り条項を設けることを原則とするように配意されています。「将来型」の場合には、この見守り契約を別途に締結することで、認知症等の病状が始まった時点で速やかに任意後見がスタートするようにすることが適切でしょう。

(2)委任事務の状況を報告する義務

任意後見人は受任者として、本人の請求があるときには、委任事務の状況を報告する義務や受任事務を処理する上で受け取った金銭その他の物を本人に引き渡す義務があります。委任契約を締結した人の当然の義務と言えます。
任意後見監督人に対する報告は別途説明します。

(3)本人の意思尊重義務と身上配慮義務

① 民法858条は「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」と規定していますが、任意後見契約法6条においても、同じように「任意後見人は、任意後見人の事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」と規定しています。
これは「身上配慮義務」といわれています。

この身上配慮義務を任意後見契約の中の特約により加重することはできますが、特約により免除したり軽減することは法の趣旨に反しますのでできません。

② 身上監護に関する事務と身上配慮義務

身上配慮義務は、任意後見人が本人の身上面について負うべき「善管注意義務」の内容を具体化し明確にしたものとされています。さらにこの義務は、本人の身上面に対する配慮を任意後見事務の指導理念とすることによって、身上面の保護に関する任意後見人の職務の実効性を確保しようとするものです。

そのため、身上配慮義務を行うに当たっては、本人の意向を十分配慮し、本人をよく見守る具体的な活動が必要になります。そのためには、認知症等によって判断能力が低下する前、すなわち移行前の財産管理契約において、ライフプランあるいは指示書などによって本人の意向をあらかじめ把握しておくことも必要と思われます。

ちなみに、任意後見人が身上監護に関する法律行為についての代理権を適正に行使するためには、本人、ヘルパーなどの日常生活援助者、主治医その他医療関係者などとの接触を密にして、本人の身上に関する情報を的確に把握することが不可欠の前提といえます。

公証実務上は、次のような任意後見人の身上配慮の責務規定を定めて、本人の生活状況及び健康状態の把握に努めるものとするとされています。

③ 財産管理に関する法律行為と本人の意思尊重義務及び身上配慮義務

身上配慮義務は、身上監護の面だけでなく、財産管理にも及びます(任意後見契約法6条)。
任意後見人は、本人の生活や療養看護の事務を行うほか、本人の財産を本人の利益のために管理しなければなりません。

任意後見契約やそれに関連するライフプランや指示書によって定められた財産管理方法があれば、それに従うことになりますし、管理方法が定められていない場合には、本人の身上に配慮した安全確実な方法でも管理が求められます。

しかし、支出を最小限にすることを原則とする「財産保全型管理」ではなく、本人の幸福追求や福祉及び生活の質の向上のために財産を積極的に消費することも許容した「財産活用型管理」の方法を選択する場合には、リスクも伴いますので、「移行型」の任意後見契約を結び、認知症等で判断能力が低下する前の財産管理契約において、そのような管理を判断能力が低下する前後を問わず、受任者に委託する旨の契約文言上明らかにしておくことが必要です。