【成年後見制度について】任意後見制度の落とし穴「任意後見制度利用上の注意事項」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「任意後見制度の落とし穴。任意後見制度利用上の注意事項」について考えてみましょう。

【Q】私の隣に住んでいるAさん(70歳)は、一人暮らしの上に、足が不自由で外出が難しいこともあり、日常の支払い等を含めた将来にわたる財産管理を、Eさんに任せることにしました。Aさんは、公証役場で、Eさんを受任者とする委任契約及び任意後見契約を結び、通帳などの管理を含めた財産管理全般をEさんに任せました。

契約当初は、何も問題はなかったようですが、Aさんが認知症を患い、判断能力を失ったところで事件は起きました。委任契約及び任意後見契約では、本人が判断能力を失ったときに、受任者が、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求することになっていたそうです。ところがEさんは、Aさんが判断能力を失っても、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求しませんでした。そして、Aさんが何も分からない状態であるのをいいことに、Aさんの定期預金1000万円を勝手に解約して使ってしまいました。この事実は、Eさんの行動を不審に思ったAさんの親族が、いろいろ調べた結果分かったことです。

委任契約及び任意後見契約は、利用する側にメリットがあると聞きますが、受任者の権限濫用によって本人が不利益を受ける場合があることを、Aさんの例で知りました。任意後見制度の利用に際して、本人が不利益を受けないためには、どのような点に注意すればよいでしょうか。

【A】任意後見制度は、判断能力が不十分となったときに備えるために創設された制度ではありますが、判断能力が衰える前から信頼できる人に財産管理を依頼して、本人の判断能力が不十分となった時点で、その同じ人が引き続き任意後見人に就任するという例が多くみられます。これは、財産管理を依頼する側にそのような要望があることと、本人の判断能力に関係なく同一人物が対応することで財産管理が円滑になるというメリットがあるからです。

判断能力に問題がない時点で第三者に財産管理を任せる質問のような例では、公証役場において、委任契約及び任意後見契約を結ぶことになります。ただ、委任契約及び任意後見契約では、質問の場合のように、受任者(任意後見人)に選んだ相手に不行跡があると、本人が著しい不利益を受けます。現実に、月額3万円の報酬で財産管理業務を行う契約をしたにもかかわらず、受任者が日当などと称して498万円の報酬を請求・受領した例や、預貯金の2割とそれ以外の財産を受任者の夫に遺贈する遺言を本人に作成させ、本人死亡後に347万円の遺贈を受けたという例もあります。

委任契約及び任意後見契約は、便利である反面、このようなリスクもありますので、注意が必要です。受任者(任意後見人)を決める際には、本当に信頼できる人を選ぶことが大切ですし、判断能力が衰えてきたと思われる場合には、任意後見監督人の選任を申立てて、確実に任意後見契約を発効させることが重要です。

そのためには、委任契約及び任意後見契約を締結した事実を受任者以外の親族等にも知らせ、任意後見契約発効の時期を失することがないよう、見守りの体制を整えるとよいでしょう。また、任意後見契約には任意後見人の報酬についての定めがおかれていますが、任意後見監督人の報酬は、裁判所が決めることになっているため契約上にはあらわれてきません。そのため、契約締結後に任意後見監督人の報酬が発生することまで考えずに任意後見人の報酬を決めてしまい、後で経済的に苦労するということも起こりえますのでこの点にも注意が必要です。

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