世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産③(死亡退職金、香典、お墓、位牌、損害賠償請求権)について考えてみたいと思います。
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【Q】◆1.父の勤めていた会社では、労働者が死亡した場合には死亡退職金を支払うとの退職金支給規定があります。この死亡退職金も父の相続財産に含まれるのでしょうか?
◆2.このたび、私が喪主として父の葬儀を執り行ったところ、多数の参列者の方から香典をいただきました。これも父の相続財産に含まれるのでしょうか?
◆3.お墓、位牌、家系図、仏壇も相続財産に含まれるのでしょうか?
◆4.実は父は飲酒運転をしていた自動車に跳ねられて亡くなりました(即死だったようです)。このことによって発生する父の自動車の運転者に対する損害賠償請求権は、相続財産に含まれるのでしょうか?
【A】◆1.死亡退職金
死亡退職金は、お亡くなりになった方への賃金の後払いの側面があり、この点からすれば相続財産に含むと考えるべきと言えます。
しかし、死亡退職金には、遺族の生活保障としての側面もあります。この点からすれば、遺族固有の財産と考えるべきとも言えます。
このように、死亡退職金のどの側面に着目するかで結論が異なることになりますが、実務上は、死亡退職金に関する支給規定(支給根拠)によるべきとされています。
つまり、退職金支給規定の支給基準、受給権者の範囲又は順位などの規定により判断されるべきものとされているのです。
例えば、国家公務員については、国家公務員退職手当法により受給権者を遺族としており、職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的として受給権者を定めたものと解されますので、死亡退職金は、受給権者固有の権利であって、相続財産には含まれないとされています。
民間企業でも、就業規則等で死亡退職金が定められている場合には、受給権者の範囲や順位等が定められている可能性が高いと思われます。
したがって、まずはあなたの父が勤めていた会社の就業規則等の退職金支給規定を確認する必要があります。
◆2.香典
香典は、被相続人の死後、死者への弔意、遺族への慰め、遺族が支出を余儀なくされる葬儀費用などの負担の軽減などを目的として、祭祀主宰者や遺族へ交付されるものです。
したがって、法的には祭祀主宰者や遺族への贈与と評価すべきものでありますので、相続財産には含まれません。
香典は通常は葬儀費用に充てられるものと思われますが、仮に葬儀費用に充てた後で残余があった場合でも、今後の法事の費用等に使用されることが多いと考えられますので、相続人間で当然に分配されるという性質のものではありません。
◆3.お墓、位牌、家系図、仏壇
お墓は墳墓、位牌・仏壇は祭具、家系図は系譜として、すべて祭祀財産です。
これらのものが、遺産分割によって容易に分けられないものであることは当然ですが、法律上も「系譜、祭具及び墳墓の所有権は」、「祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」とされ、祭祀財産は、祖先の祭祀の主宰者に帰属されるとされています。
したがって、これらの祭祀財産は、相続財産には含まれません。ちなみに、祭祀承継者は相続人に限定されません。承継順位は、第一順位が「被相続人が指定した者」、第二順位が「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者と定められた者」、第三順位が「家庭裁判所により定められた者」です。
◆4.相続と損害賠償請求権
交通事故の被害者が、加害者に対して損害賠償請求できることは当然です。逸失利益などの財産的損害や慰謝料(精神的損害)を請求できます。それでは、本件のように交通事故により即死した場合はどうなるのでしょうか。
この点、被害者は死亡により権利主体でなくなるのであるから、損害賠償請求権を取得することができず、相続人は、被害者である被相続人が取得しえない損害賠償請求権を相続することはできないのではないかとも思われます。
しかし、このような結論は、交通事故により数時間後に死亡した場合、被害者が損害賠償請求権を取得し、それを相続人が相続できることと比べても不当です。
この問題については、学説上争いがあるところですが、判例では、財産的損害についても、精神的損害についても、損害賠償請求権が相続財産に含まれるとされています。
したがって、父の加害者に対する損害賠償請求権は相続財産に含まれ、あなたはこれを相続することができます。