【相続・遺言について】遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲について考えてみたいと思います。

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【Q】父が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人のみです。父の遺産は、3,000万円の不動産と1,000万円の預金です。兄は父が亡くなった後、自分の不動産の持ち分2分の1を第三者に売却してしまいました。遺産分割に当たり、兄が売却した不動産の持分はどのように扱われるのでしょうか?

 

【A】◆遺産分割とは、遺産分割時に存在している相続財産を対象として、相続開始時を基準にして算定された具体的相続分(率)を参考に個別財産を公平に分割する手続きをいいます。したがって、遺産分割の対象は、遺産分割時の相続財産であって、相続開始時の相続財産ではありません。

他方、相続人は、相続開始の時点から被相続人に属した一切の権利義務を承継し、複数の相続人(共同相続人)は、各自の相続分に応じて相続財産を共有するものとされていますので、共同相続人が、遺産分割前に、自己の有する共有持分を処分すること自体は禁じられていません。

そうすると、相続開始後、遺産分割前に遺産に属する財産が共同相続人によって処分された場合、その財産(処分財産)を遺産分割時に考慮しないとすると、共同相続人間に不公平な事態が生じてしまいます。ところが、これまで、遺産分割において、その処分財産をどのように処理すべきかにつき、明文規定や関連裁判例がありませんでした。

そこで平成30年の法改正により、共同相続人によって相続開始後に処分された財産についても、下記①ないし③の要件を充たせば処分財産が遺産分割時に遺産として存在しているものとみなすという条文を新設し、遺産分割の枠組みのもとで共同相続人間の公平を実現する制度が採用されました。なお、共同相続人ではなく第三者によって処分がされた場合についても、共同相続人全員の合意があれば遺産分割時に遺産として存在しているものとみなされるという条文が新設されています。

まず、①処分財産が相続開始時に被相続人の遺産に属していたことが必要です。例えば、被相続人名義の土地が相続人の1人や他人の所有物であった場合に、本制度の適用はありません。

次に、②処分財産を共同相続人の1人または数人が処分したこと。

さらに、③処分財産を処分した共同相続人以外の共同相続人全員が、当該処分財産を遺産分割の対象に含めることに同意していることが必要です。

本件について検討してみます。仮に、新設規定を考慮せずに計算すると、お兄さんが売却した不動産の持分は遺産分割の対象となりませんから、あなたの具体的相続分は((3,000万円-1,500万円+1,000万円)×1/2=1,250万円となります。ところが新設規定を考慮すると、お兄さんが売却した不動産の持分相当額も遺産分割の時に遺産として存在しているものとみなされますから、あなたの具体的相続分は、(3,000万円+1,000万円)×1/2=2,000万円となることになります。

以上のように、お兄さんが売却した不動産の持分は、平成30年の法改正によって、あなたの同意の意思表示があれば、遺産分割において、遺産として存在するものとみなされるようになりました。

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