【相続・遺言について】遺言能力

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺言能力について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】①父が遺言書を作成しようとしているのですが、遺言書は誰でも作れるのでしょうか?

②父に視覚機能障害がある場合、遺言書を作成することはできるのでしょうか?
また、言語機能障害や聴覚機能障害がある場合はどうでしょうか?

③父も高齢になり、認知症が進行して、1年前、後見開始の審判を受けました。父は遺言書を作成することはできないのでしょうか?
仮に父が後見ではなく、保佐開始や補助開始の審判を受けていた場合であれば、遺言書作成に関して、何か違いがあったのでしょうか?

【A】◆1.遺言書を作成できる者
遺言を作成するには、民法上遺言作成能力が必要とされており、法律上は、満15歳になった者は遺言を作成することができるとされています。
もっとも、遺言をするときに、判断能力(法律上は意思能力という)がなければならないと規定されています。そのため、判断能力がない状態で遺言を作成しても、その遺言は無効となります。
したがって、ご質問のお父さまは判断能力に問題がなければ、有効に遺言を作成することができ、判断能力がないときには遺言が作成できないということになります。

◆2.視覚機能障害、言語障害、聴覚障害のある場合
①お父さまに視覚機能障害がある場合
普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

ア)自筆証書遺言は、遺言者が遺言書全文を自書しなければなりません。ここで、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力を自書能力といいます。
視覚機能障害がある方でも、自分で字が書ける場合であって、遺言書のすべてを自書した場合には、遺言は有効に成立すると言われています。

イ)公正証書遺言は、遺言者が遺言内容を口頭で、公証人へ伝え、公証人がこれを筆記し、公証人がその内容を遺言者に読み聞かせ、または閲覧させることで、内容を確認してもらうことで作成されます。そのため、視覚機能障害がある方でも、遺言の内容を公証人へ伝え、公証人から遺言の内容を聞いて、内容を確認する能力があれば、遺言書は有効に作成することができます。

ウ)秘密証書遺言は、公証人1人および証人2人の前に封印した遺言書を提出して、遺言の存在は明らかにしながら、内容は秘密にして遺言書を保管することができる方式です。この場合遺言者は、公証人と証人の前に遺言書に使用した印と同じ印を使用して封印した封書を差し出し、自己の遺言である旨と、遺言者の住所と氏名を述べなければなりません。
この秘密証書遺言の場合、封印した遺言書には遺言者の署名と押印が必要ですが、それ以外の記載には法律上制限がありません。そのため視覚機能障害がある方が、全文自書された場合やパソコンで本文を作成されても、又は、他人に代筆を頼んで作成しても、遺言能力があれば、これは有効なものとなります。

②お父さまに言語障害、聴覚障害がある場合

ア)ます、自筆証書遺言は自書能力があれば、有効に作成することができます。

イ)公正証書遺言は作成につき、遺言者は遺言内容を口頭で公証人に伝えなければなりません。しかし、遺言者が言語障害や聴覚障害の方の場合、口頭で伝える代わりに、通訳人の通訳(手話通訳等)により申述し、又は筆談で公証人に伝えることで、遺言書を作成することができます。
公証人が作成した遺言書を読み聞かせなければなりませんが、これも通訳人を介して行えば問題はありません。

ウ)秘密証書遺言の場合、遺言者が自書やパソコンで遺言書を作成できれば、有効な遺言書が作成できます。
公証人と証人に遺言者が遺言書を作成した旨と、氏名と住所を申述しなければなりませんが、通訳人を介して申述するか、封印をした封筒に自書することで有効に秘密証書遺言を作成することができます。

◆3.判断能力に問題がある場合
①お父さまが後見開始の審判を受けている場合
判断能力が常にない者に対して後見開始の審判話されます。そのため、後見開始審判を受けた者(成年被後見人)は、原則として遺言を作成しても、有効なものと判断されません。
一時的に判断能力を回復した時に遺言を作成する場合には、医師2名の立ち会いがあれば、有効に遺言を作成することができます。
成年被後見人が遺言を作成する場合、その後見人や後見人の配偶者や子に対して利益となる遺言を作成しても無効と規定されています。もっとも、後見人などが、成年被後見人の配偶者や直系血族や兄弟姉妹であった場合にはこの規定は適用されず、遺言は有効となります。

②お父さまが保佐開始の審判、補助開始の審判を受けた場合
判断能力が低下した場合、その判断能力を補うために、保佐開始の審判や補助開始の審判がなされることがあります。その場合、一定の行為について、保佐人や補助人の同意が必要となることがあります。同意がない行為は保佐人や補助人によって取り消されることとなります。
しかし、法律上被保佐人や被補助人が遺言を作成するときには、保佐人や補助人の同意は必要ありませんので、被保佐人や被補助人は有効に遺言を作成することができます。

 

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