【孤独死をめぐるQ&A】Q44 遺言② 遺言の執行

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【Q44】おひとり様から遺言執行者になるように依頼され、遺言執行者に指定されています。
遺言では、慈善団体に寄付をするとの内容になっています。おひとり様の遺言の執行者として特に気を付けておかなければいけないことを教えてください。

【A】おひとり様が慈善団体に寄付をするという遺言の場合、遺産を換価して現金化してから寄付をするといういわゆる清算遺贈の執行になることが想定されます。清算型の遺言執行は、登記変更や税金など気を付けなければならないことが多いので、専門家の助言を受けながら進めることをお勧めします。
また、遺言者が死亡した場合に、きちんと連絡が来るための工夫も必要です。

【解説】

1 財産処分の公平性
① 清算型遺言執行の場合、不動産を換価するという業務が発生することが多くあります。また、不動産に限らず、資産性の高いものを売却することになります。
② その際、遺言執行者の知り合いの業者に安値で売却するなどしたら、当然、遺族や関係者から疑念の目で見られることになります。
③ 複数業者に見積もりを取る、不動産を売却する場合、多数の不動産業者に声を掛けて一番高い不動産業者に売却する入札方式を採るなど、売却先や売却金額が公正であることを担保する方法を採用することをお勧めします。

2 遺留分への配慮
① 相続人に遺留分権者がいる場合、遺留分権者に連絡をし、遺留分を精算してから寄付することをお勧めします。
② そうしないと、寄付を受けた慈善団体が遺留分権者との間で紛争を抱えることになる可能性があるからです。
③なお、遺言執行者を業として行っている方もいます。その場合、遺言執行者と言えども、遺留分をめぐる紛争に関与すると非弁行為(弁護士法72条違反)に該当する可能性があります。

3 登記について
① 清算型の遺言執行において、遺言執行者が不動産を売却することは可能です。
② ただし、移転登記には注意が必要です。まず、死者である被相続人から直接買主に移転登記をすることはできません。いったん、法定相続人名義の登記に法定相続分の登記をし、それから買主への移転登記をすることになります。
③ この相続登記は、遺言執行者が単独で申請することができるので、相続人の協力は不要です。(昭和45年10月5日民事甲4160号民事局長回答)
④ 相続人が不存在の場合には、相続財産は法人となりますので、いったん相続財産法人への名義人表示変更登記を行うことになります。

4 譲渡所得税について
① 不動産の売却により不動産譲渡所得税が発生する場合、法定相続人に不動産譲渡所得税が課せられてしまいます。
② そのため、不動産譲渡所得税の発生の有無を確認し、不動産譲渡所得税が発生する場合、その分はあらかじめ控除して第三者への遺贈を実行する必要があります。
③ また、不動産売却に先立ち、相続人に連絡をし、税務署からのお知らせが来る可能性があることなどを相続人に伝えておいた方がよいでしょう。
④ 自らが取得したわけではないのに課税されたり、税務署からお知らせが来る可能性があることを知らなければ、感情的になることが予想されます。
⑤ この点東京地裁の判決では、遺言執行者が相続人に事前通知することなく不動産を処分したことにつき、相続人から遺言執行者への損害賠償請求を認めたものがあります。
⑥ また、遺言執行者が不動産譲渡所得税を控除することを失念して第三者に遺贈してしまった場合、不動産譲渡所得税を納税した相続人から求償される可能性があります。

5 遺言執行者への連絡の確保
① 遺言執行者を選任しておいても、亡くなった後、すぐに遺言執行者に連絡が来なければ故人の希望尾がかなえられない可能性があります。
② 病院に入院していて死亡するような場合、本人が病院に伝えていたり、入院した時点で連絡がきたりするので、亡くなった場合でも把握はしやすいと言えます。
③ しかし、自宅や外出先で亡くなってしまった場合、遺言者が死後事務まで依頼していることをすぐに周りが把握できず、遺言執行者に連絡が来ない可能性もあります。
④ 同居人がいる場合、同居人に伝えておけばよいでしょうし、親しい親族がいる場合、その人に伝えておけばよいでしょう。
⑤ ただ、死後の事務も含めて遺言を残しておきたいという場合、同居人や親しい親族がいないということもあり、工夫が必要です。
⑥ おひとり様の作成した遺言の遺言執行者に選任されている場合、遺言執行者宛の連絡依頼カードを作成して、遺言を書いた方に渡すとよいでしょう。
⑦ カードは名刺サイズで、ラミネート加工します。最低3枚渡しており、1枚は財布の中に入れてもらいます。外出先で亡くなった場合、身分確認で財布の中は確認されるはずです。
⑧ もう1枚は冷蔵庫に貼ってもらいます。自宅で亡くなった場合、冷蔵庫に貼って有れば、物に埋もれることはありません。
⑨ そして最後の1枚は、信頼できる友人や親族に渡しておいてもらっています。

【孤独死をめぐるQ&A】Q43 遺言① 遺言の作成

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【Q43】私には、相続人もおらず、交流している親族もいません。私が死んだら、遺産は寄付をしたいのですが、遺言を書く際にどのような点に気を付ければよいでしょうか。
また、私が死んだ後の葬儀や納骨について、遺言に書いておくことはできるのでしょうか。

【A】遺言は公正証書遺言で作成することをお勧めします。寄付をしたい団体に事前に寄付の受付の有無などを問い合わせるようにしてください。
遺言で葬儀や納骨について記載することは可能ですが、その実効性確保のためには工夫が必要です。

【解説】

1 おひとり様の場合は公正証書遺言がよい
① 遺言には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言とがあります。秘密証書遺言は、実務上ほとんど使われていません。
② 自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があればすぐに作れます。特に費用もかからず、手軽です。
③ しかし、おひとり様が遺言を作成する場合、次の理由から自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作成することをお勧めします。
④ 1点目は、公正証書遺言は検認が不要であり、すぐに遺言執行ができるということです。検認が必要となる場合、裁判所での手続きに1~2カ月かかるため、すぐに遺言執行をすることができないというデメリットがあります。
⑤ この点、自筆証書遺言も法務局に預けた場合には検認が不要になりました。ただ、遺言書内容の証明書を取得するには、相続人が確定する戸籍を添付するか法定相続情報一覧図を添付する必要があるため、その取得までの間、遺言書内容の証明書の発行が受けられないというタイムロスが生じます。
⑥ おひとり様の遺言の場合、葬儀や埋葬方法などすぐに遺言通りに行って欲しい事態が生じますので、すぐに執行できるというのは、公正証書遺言のメリットの一つです。
⑦ 2点目は、信用性の高さです。公正証書遺言の場合、遺言者がその遺言書を作成したことが公証されており、信用性が高いと言えます。財産処分以外の事実上の内容を記載していた場合、公正証書遺言に書いてあるからとその意を汲んでもらえることがあります。この点からも、おひとり様の遺言については、公正証書遺言をお勧めします。

2 遺言による寄付の注意点
① 遺言で相続人以外に寄付をするということは可能です。遺贈という扱いになります。
② 遺言で団体に寄付をしようとする場合、対象と考えている団体に寄付の受け入れをしているか確認をした方がよいでしょう。団体によっては寄付を受け入れていないことがあります。
③ また、寄付は現金のみで受け付けており、不動産では受付けていないということもあります。亡くなってから寄付を受付けていないことが判明したのでは、最後の遺志である遺言が実現できなくなります。
④ 遺贈による寄付という思いが実現できるよう、対象と考えている団体に受け入れの有無や寄付の対象について事前に確認することが重要です。
⑤ なお、相続人がいる場合、全額寄付をすると、相続人によっては遺留分があり、寄付の受け入れ団体側がトラブルを回避するために、寄付の受け入れを拒否することもあります。

3 清算型遺贈
① 遺言により寄付する場合、遺産を換価して現金化してから寄付することが多いかと思います。そのような場合、遺言に、遺言執行者を置いて、遺産の全部を換価し、被相続人の債務など必要な支払いをしたうえで、残ったお金を遺贈するという清算型遺贈をすることになります。
② 清算型遺贈の場合、遺言執行者が必要になりますので、あらかじめ遺言書で遺言執行者を定めておいた方がよいでしょう。

4 葬儀や納骨に関する記載
① 私がおひとり様から依頼されて遺言書原案を作成する場合、遺言者の希望があれば、葬儀や遺品整理、納骨等について遺言書に記載するということをしています。
② 死後事務委任契約を作成するのではなく、遺言に記載をするという方法もあります。葬儀の主催や遺品整理について、どの業者に依頼するということをあらかじめ記載し、その依頼について遺言執行者が行うように記載します。
③ また、遺体を引き取る親族がいない場合、遺体の引取りについても記載するようにしています。
④ 遺言には遺産をどう分けるかなどの法で定められた事項(遺言事項)にのみ法的効力があり、それ以外の事項については付言事項といい、法的な効力は生じません。
⑤ これまでのところ、公正証書遺言を作成する際には、葬儀の主催に関する指定を記載することで祭祀承継に関連する事項として、付言事項ではなく、遺言の本文として記載してもらえています。

【孤独死をめぐるQ&A】Q9 遺言の探し方② 自筆証書遺言保管制度について

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【Q9】遺言の探し方② 自筆証書遺言書保管制度について

一人暮らしをしていたいとこが孤独死をしました。いとこには相続人がいないのですが、いとこと私は生前仲が良かったので、もしかしたら遺言を書いているかもしれません。
公正証書遺言はなかったのですが、生前にいとこは自筆証書遺言を法務局に預けるという制度が始まったということを話しており、その制度を利用しているかもしれません。
自筆証書遺言書が法務局に預けられているか調査する方法を教えて下さい。

【A】法務局に対して、「遺言書保管事実証明書」の請求をすれば、故人が請求者を受遺者に指定している遺言を作成していたか調査することができます。

【解説】

1 自筆証書遺言書保管制度

① 令和2年7月から法務局で自筆証書遺言を預かるという自筆証書遺言書保管制度が始まりました。(遺言書保管法)
② 自筆証書遺言書保管制度を利用すると、
・遺言書の画像情報
・遺言書に記載されている作成の年月日
・遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍
・遺言書に受遺者がある場合には受遺者の氏名、住所
・遺言書で遺言執行者を指定している場合は、その者の氏名、住所・遺言書の保管を開始した年月日
・遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
などの情報が法務局で記録されることになります。

2 自筆証書遺言書保管の調査

① 故人が自筆証書遺言書保管制度を利用して自筆証書遺言を法務局に預けていたかについて、相続人や受遺者、遺言執行者などの立場にある人(相続人等といいます。)は、全国の遺言書保管所(法務局)で調査をすることが可能です。
② 遺言書が存在した場合、相続人等は、遺言書の内容の証明書の交付を請求したり、遺言書の原本の閲覧、遺言書のモニターによる閲覧をすることができます。
③ なお、遺言書保管官は、遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに、当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人、受遺者及び遺言執行者に通知することになっています。

3 遺言書保管事実証明書

① 遺言者が死亡した後であれば、誰でも、法務局に対して「遺言書保管事実証明書」の請求をすることにより、故人が自筆証書遺言を保管しているか否かの確認をすることができます。
② この制度により自分が受遺者になっているかもしれないという程度の利害関係でも、自分に関係がある自筆証書遺言が保管されているか否かを確認することができます。
③ いとこでありもしかしたら受遺者に指定されているかもしれないという場合、遺言書保管事実証明書の申請をすれば、自身に関係がある自筆証書遺言が保管されているか否かが明らかになります。
④ 自身に関係がある自筆証書遺言が保管されていなければ、「(あなたに関係のある遺言書は)保管されていない」という証明書が発行されます。
⑤ なお、遺言書保管事実証明では遺言書の内容を知ることはできません。遺言書保管情報証明書を請求し自筆証書遺言が保管されていることが判明したら、次は遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧請求を行い、遺言書の内容を確認する必要があります。

4 請求先

① 遺言書保管事実証明書は、実際に遺言書を保管している遺言書保管所に限らず、どの遺言書保管所に請求しても構いません。
② 窓口で請求する場合には、免許証などの写真付きの公的身分証明証が必要になるので、忘れずにお持ちください。
③ なお、窓口の請求ではなく、郵送による請求をすることも可能です。

【終活・遺言・相続相談】相談例48 自筆証書遺言がある場合の手続き

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【相談内容】
相談者(62歳女性)から、「3か月前に母(92歳)を亡くしたが、母の手書きの遺言書(封筒に入っていたが、封入も封印もないもの)を預かっている。ただ、弟も母に何か書かせていたらしい。どうしたらいいだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
時折、複数の子に請われるまま、高齢の親が複数の自筆証書遺言を書くケースがあり、後日、紛争の原因となります。他の兄弟姉妹の出方をうかがっても意味はありませんので、相談者には淡々と自筆証書遺言の検認を行うよう勧めます。

【1】検認手続き

① 遺言書の保管者は、相続開始を知った後、遅滞なく検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。封印のある場合は家庭裁判所での検認期日まで開封することができません(民法1004条3項)。なお、公正証書遺言と遺言書保管所保管の遺言は、検認は不要です。
② 家庭裁判所に遺言書検認の申立をすると、裁判所は検認の審判期日を定め、遺言者の相続人全員に対して呼出状を発します。相談者には、この手続きを説明し、早めに検認を申立てるよう勧めます。
③ 相談例では弟も自筆証書遺言を保管している可能性があるので、弟に対して、相談者が遺言書を持っていることと検認を請求することを知らせ、もし、弟も遺言書を持っているなら、同じ家庭裁判所に牽引を請求するよう促します。
④ 直接、弟にその書面を見せてもらうことも考えられますが、検認を求める方が堅実です。
なお、検認手続きが終われば、申立人は検認済証明書を付した遺言書をを返してもらい、その他の相続人には、その遺言書を内容とする検認調書の交付を求めることになります。

【2】遺言書の有効性

① 相談者が保管している遺言書は封入も封印もない場合なので、封筒の中の遺言書を見ることができます。そこで、相談者が遺言書を持ってきているなら、中身を拝見して遺言の有効性を確認します。
② この場合、自筆証書遺言ですので、全文自筆、署名捺印、日付等の形式要件と筆跡・印影を確認し、形式的有効性を確認するとともに、検認期日に訊かれることになる作成の状況(日時・場所・同席者・経緯など)や保管の経緯も確認しておきます。
③次に、遺言者の年齢から遺言能力が気になるので、遺言書作成当時に被相続人がどのような状態だったかを確認します。

【3】遺言を見て確認するポイント

① 自筆証書遺言では、形式的要件以外に遺言の内容に問題がある可能性があります。そこで、遺言書を拝見できるのであれば、以下の点をチェックします。
② 第一に、遺言の確定性の点から、相続分の指定か、特定財産の処分が記載されているのか(特定財産承継遺言)、処分文言はどうなっているのか(相続させる遺言か遺贈か、あるいは取得させる、承継させる、任せるなど)、遺族なら特定遺贈なのか包括遺贈なのか割合的包括遺贈か、一部遺言でないか、予備的遺言や条件付遺言ではないか、などを確認します。
③ 第二に、履行の確保の観点から、遺言執行者を指定しているかどうかなどを確認します。
④ 第三に、その遺言が共同相続人に公平なものか、また、遺留分侵害していないかを考えます。その他、自筆証書遺言では、遺言書の文言があいまいで、遺言者の意思が確定できないときがあります。そのよう場合には、相談者に質問しながら、遺言の解釈によって遺言内容を確定できる可能性があるかを考えます。

【4】複数の遺言

① 複数の遺言がある場合には、後の遺言が優先します(民法1023条1項)。
ただし、弟が母に書かせたらしいという書面がなにか、相談時点で明らかになっていません。そもそも認知症が進むなどして判断能力が低下している高齢者は、以前に遺言書を書いたことを忘れたり、目の前にいる人の言いなりになって遺言書を書いたりします。
② また、日記やチラシの裏に遺言めいたことを書くこともあります。したがって、検認によって、弟が持っている書面の形式と内容を確認する必要があります。
③ なお、家庭裁判所は、遺言らしい書面であれば検認しますから、検認を受けたからといって、その書面が遺言であるということにはなりません。また、弟が保管している書面が有効な遺言だったとしても、双方の遺言の内容が重複、抵触しない場合もあり、その場合には前の遺言も、その全部又は一部が有効になる可能性があります。

【5】遺言と遺産分割協議

① 遺言があっても、その内容を知ったうえで、相続人と受遺者の全員が遺産分割に合意した場合には、その遺産分割協議が有効になると解されます。ですから、遺言の内容が当事者全員にとって不合理なものであれば、改めて遺産分割協議をすることも可能です。
② 相談例の場合、姉(相談者)と弟の関係性が不明ですが、お互いに遺言書を持っているような場合には、警戒あるいは忖度して処理が遅れがちになります。
そして、それが相続紛争の遠因になる可能性もありますから、早めに検認手続きを勧めます。

【終活・遺言・相続相談】相談例47 遺言の調査

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【相談内容】
相談者(61歳女性)から、「郷里の母(84歳)が息を引き取って半年たったが、郷里に住む弟(57歳)から連絡がなく、気をもんでいる。そういえば、母は2年前に「遺言書を書きたい」といっていたので、遺言書があるかもしれない。それを確認するにはどうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相続開始後半年たっているなら、相続税の申告期限が迫っていますから、すぐに遺言の有無を確認したいところです。遺言には、公正証書遺言、法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づき遺言書保管所に保管された自筆証書遺言、法務局に保管されていない自筆証書遺言等の3通りがありますので、それらに応じた確認の方法を説明します。

【1】公正証書遺言の確認

① 公正証書遺言の存否を確認するには、母の除籍謄本、相談者本人の戸籍謄本(母が死亡し、相談者が相続人であることを証明できるもの)及び本人確認の書類(免許証・健康保険証等)をもって、近くの公証役場を訪問し、母が作成した公正証書遺言を検索してもらいます。
② その結果、該当する公正証書遺言があると分かれば、それを作成した公証役場に謄本を請求します。
③ なお、行政書士や弁護士が相続人から遺言調査を引き受ける場合は、上記の書類に加え、相談者からの委任状と士業の身分証明書が必要になります。
④ ただし、公正証書遺言を作成している高齢者の割合は10人に1人程度でしょうから、公正証書遺言が見つかるとは限りません。

【2】遺言書保管所保管の自筆証書遺言の確認

① 令和2年7月1日以降に受付けられた遺言書保管所保管の自筆証書遺言についても、地元の法務局に戸籍等と身分証明書を持参して、自筆証書遺言が保管されているかどうかを確認(遺言書保管事実証明書の交付請求。手数料は800円)します。
② 結果、遺言書が保管されていると判明すれば、遺言書情報証明書の交付を請求します(手数料は1400円)。
③ この証明書は、遺言書の保管を届け出た法務局(遺言書保管所)に請求しなくても、地元の法務局に請求して交付してもらうことができますし、これ以外に遺言の内容を閲覧することもできます。
④ ただし、遺言書保管官が相談者に遺言書情報証明書を交付し、又は閲覧させた場合には、遺言書を保管している旨を、他の相続人、受遺者や遺言執行者に通知されます。
⑤ 相談例の場合で言えば、弟が遺言書保管所保管の遺言書を利用しようとすれば、相談者にも通知されるシステムになっています。
⑥ なお、相談者の話によれば、母は2年前に自筆証書遺言を書いていた可能性があるが、法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行前に作成された自筆証書遺言も保管の対象になります。したがって現状では、公証役場での検索と遺言書保管所での確認は必ず行うべきでしょう。

【3】遺言書保管所で保管されていない自筆証書遺言等の確認

① 遺言書保管所が保管していない自筆証書遺言等の有無を確認するためには、亡母の近くにいた弟に尋ねるほかありません(亡母が遺言書を託すほど親しくしていた方がいるなら問い合わせるべきでしょう)。
② 亡母が弟に不利な遺言を残していたとすれば、弟が、見て見ぬふりをしている可能性を捨てきれません。「相続人に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」は相続人の欠格事由に当たります。そこで、弟に対して、書面で「遺言書はなかったですか」と問い合わせることを勧めます。
③ 相談者のような立場だと、亡母が弟に有利な遺言を残していて、弟がその遺言に基づいて、相談者の知らないうちに相続手続きをしているのではないかと疑いがちです。
④ しかし、弟が自筆証書遺言等に基づく権利を行使するなら検認手続きを経る必要がありますし、検認の申立てがあれば、家庭裁判所はすべての相続人及び受遺者に検認期日の呼出状を送ります。
⑤ したがって、相続開始後半年間、遺言書保管所からの連絡も、家庭裁判所からの検認の呼出状も届いていないのなら、(弟に有利な)自筆証書遺言はない可能性が高いということができます。

※遺言があることを知ったうえでの遺産分割は可能ですが、遺産分割後に遺言の存在が明らかになれば、その遺言が優先しますので、遺言の存否は最優先で確認すべき課題であることに違いありません。

【終活・遺言・相続相談】相談例46 遺言執行者

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【終活・遺言・相続相談】相談例46 遺言執行者についての記事です。

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【相談内容】
相談者(76歳男性)から、「遺言書を書くつもりだが、長男(38歳)は、遺言執行者は費用がかかるだけなので、不要だと言っている。それでも遺言執行者を置く意味があるのだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
遺言者は、遺言執行の費用(遺言執行者報酬)について、あまり気にしません。自分の死後のことだからです。しかし、遺言執行者報酬によって取得財産が減る推定相続人は、「本当に遺言執行者が必要なのか」と気にされることがままあります。遺言執行者の必要性について説明する必要があります。

【1】遺言執行者

① 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
② また、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げるべき行為をすることはできず、これに反した相続人の行為は無効です。この無効は善意の第三者には対抗できません。
③ また、遺言による子の認知や相続人の廃除については、遺言執行者の執行行為が必要不可欠です。
④ これに対して、相続分の指定や遺産分割の禁止では、遺言の執行行為が存在しないため、遺言執行者は不要です。

【2】遺言執行者の必要性

遺言で遺言執行者を指定するメリット(必要性)については、以下のように整理出来ます。

【2-1】遺贈がある場合

① 遺言が遺贈を含む場合、遺贈義務者となる共同相続人全員が手続きに協力してくれるなら遺言執行者がいなくても遺贈は実現できます。
② しかし、共同相続人の一人でも協力してくれなければ、遺贈は実現できません。共同相続人が遺贈に反感を持つこともあるでしょうし、全員の協力を得るには手間もかかります。
③ そこで、遺言執行者を指定しておけば、共同相続人の意向に関係なく、遺言執行者による遺贈の履行を期待できます。なお、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとされました(平成30年改正、民法1012条2項)。

【2-2】特定財産承継遺言がある場合

① 遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人の相続人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)の場合、相続開始と同時にその相続人にその財産の権利が移転しますから、その相続人は単独で名義変更等の手続をすることができます。
② しかし、平成30年の相続法改正で、相続による権利の承継は、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ法定相続分を超える部分の取得を第三者に対抗できないとされましたので、その代わりに、遺言執行者が対抗要件を備える行為を当然に行えることになりました。
③ そして、特定財産承継遺言によって財産を取得した相続人が対抗要件の具備を放置する可能性もありますので、遺言執行者を指定して、その遺言を確実に執行させるべきです。

【2-3】清算型遺言がある場合

① 遺言者が、遺産分割方法の指定として、「遺産たる不動産Aを売却して、その代金を相続人甲と相続人乙が2分の1ずつ取得する」といった条項を含む遺言をした場合(清算型遺言)、これを実現するためには、共同相続人全員の協力を得て不動産を売却しなければなりません(売却する対象が、株式や投資信託等の場合も同じです)。
② 遺贈と同じく、共同相続人全員が快く協力してくれる保証はありません(売却代金の配分に不満を持つ相続人がいる場合はなおさらです)。
③ そこで、遺言者は、遺言で遺言執行者を指定し、不動産Aの売却と代金分配の権限を与えておくことによって、清算型遺言の実行を確実なものにすることができます。

【2-4】預貯金の処分がある場合

① 遺言者が「○○銀行の預金は解約して相続人甲及び乙に半分ずつ相続させる」という内容を含む遺言を残した場合も、清算型遺言と同じく、遺言執行者を指定する意味があります。
② 次に、遺言者が「○○銀行の預金は相続人甲に相続させる」と遺言した場合は、特定財産承継遺言ですから、相続人甲が単独で預金の名義変更又は解約払戻しができるはずです。
③ しかし、金融機関は、自筆証書遺言の検認調書や検認済証明書又は公正証書遺言を確認できても、それらの遺言より後に作成された(優先することになる)遺言が存在しないことまでは確認できません。
④ そこで、金融機関は、その遺言に頼ることなく、相続人甲に対して、その預金の処分に関する法定相続人全員の同意を明らかにする書面(相続人代表者指定届などと呼ばれ、法定相続人全員の自署と実印での捺印と印鑑証明書の添付が必要になる)を徴求し、そのような場合には、権利者(甲)以外の相続人の協力が必要になる可能性があります。
⑤ これに対して、平成30年改正の民法では、遺言執行者は「その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる」と明文化されましたので、少なくとも、遺言執行者から払戻し等の請求を受けた金融機関は、これを拒むことができなくなりました。
⑥ したがって、(金融機関の対応によりますが)預貯金の解約等に関しても、遺言執行者を指定する意味があります。

【2-5】遺言で遺言執行者を指定しなかった場合

① なお、遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができますが、そのために相続手続きがストップし、その間に、共同相続人が遺産を処分するといったリスクもあります。
② したがって、遺言で、確実に就任を承諾してくれる人を遺言執行者に指名するべきでしょう。

【3】遺言執行者の適格性

① 相談例のように、長男が遺言執行者の報酬を気にしているのなら、その長男を遺言執行者に指名することも考えられます。
② ただし、遺言執行者は、相当期間を定めた就任承諾の催告を受けて確答なければ承諾とみなされ、就任後遅滞なく相続財産目録を作成して相続人に交付し、遺言内容に疑問ある場合は遺言者の意思を合理的に解釈して遺言執行しなければならず、遺言執行者が任務を怠ったときその他正当理由がある場合には解任請求されることもありますから、財産管理等の経験のない相続人には荷が重いでしょう。
③ また他の相続人は、特定の相続人が遺言執行者になることを不快に思うかもしれません。これに対して、第三者の専門家を遺言執行者に指名すれば、事実上、共同相続人や受遺者の緩衝材としての役割を期待できます。ベテランの士業であれば、遺言執行手続きに精通している上、相続人や受遺者の相談や不満にも適宜対応できるので、円滑な遺言執行に適しています。

【4】遺言執行者の報酬

【4-1】遺言執行の費用

① 「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする」とされ(民法1021条)、遺言執行者の報酬、検認手続や相続財産目録作成の費用、相続財産の管理や遺言執行に必要な一切の行為をするための費用がこれに当たります。
② このうち、遺言執行者の報酬が最も高額になるでしょう。相談者の長男も、この点が問題だと思っているので説明が必要です。

【4-2】遺言施行者の報酬の額

① 遺言執行者を指名する場合、遺言執行者の報酬も遺言で定めることができます。そして、弁護士の場合は「遺言執行者報酬は、旧日弁連基準による」と定めるケースが多いように思われます。
② 金融機関は遺言時の契約で遺言執行者報酬について詳細に定めており、ある大手信託銀行の場合は、100万円の最低額を設け、1億円以下の部分につき、1.8%、1億超3億以下の部分につき0.9%などと、定めております。
③ 執行対象財産額が1,000万円の場合、弁護士が44万円で、銀行が100万円
3,000万円の場合、弁護士が84万円で、銀行が100万円、
1億円以下の場合、弁護士が154万円で、銀行が180万円
3億円の場合、弁護士が354万円で、銀行が360万円
④ 弊所の遺言執行者報酬は、最低額が30万円
3000万円の場合は60万円
1億円の場合は130万円
3億円の場合は330万円となっております。
⑤ なお、金融機関は、自社又はグループ会社の預金や投資信託は遺言信託の割引対象とし、遺言信託の手数料が安くなると勧誘しますが、もともと遺言信託は金融商品を売り込むツールだったのであり、投資信託等の取引で手数料を得るわけですので、よくよく考える必要があります。
⑥ また、遺言執行者報酬の算定基礎にも注意が必要です。遺言信託では、算定基礎となる財産の額を財産評価基本通達に基づく相続税評価額としつつ、小規模宅地の特例については、特例適用前の価額とするとか、消極財産は含まないといった定めを置くことがあります。
⑦ これらの規定で考えると、算定基礎の価額はかなり高くなりますし、かなりの額の相続債務があった場合でも、金融機関に支払う遺言執行者報酬は高額になってしまいます。

【4-3】遺言執行者費用の負担者

① 遺言では、誰が遺言執行の費用や遺言執行者の報酬を負担するのかも決めておくべきです。たとえば、「遺言執行者がすべての財産を売却換価し、そのうち3分の2を甲に、その3分の1を乙に相続させる」という内容の遺言だった場合、遺言執行者の報酬等を先に控除するのか、取得分に応じて負担するのか、折半なのかという疑問が生じかねません。
② したがって、「遺言執行者がすべての遺産を売却換価し、遺言執行者の報酬その他遺言執行の費用を支払った後、残額の3分の2を甲に、その3分の1を乙に相続させる」といった内容にしておけばよいと思います。もともと遺言執行費用は相続財産の負担ですし、こうしておけば無用のトラブルも回避できます。

【終活・遺言・相続相談】相談例45 遺言信託

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(66歳男性)から、「付き合いのある都市銀行から遺言信託とやらを勧められている。今一つ理解できないのだが、どのような点に気を付ければいいか」と相談された。

【検討すべき点】
「遺言信託」とは、遺言・相続に関するコンサルティング、遺言書の作成と保管、相続財産の調査や名義変更を内容とする遺言執行を組み合わせた信託銀行や銀行のサービス(商品)の名称です。信用のある金融機関に後事を託すという意味で安心感はありますが、法律上の信託ではありませんし、金融機関でなければできないサービスでもありません。

【1】遺言信託の背景

① 平成6年ごろから、信託銀行は、遺言・相続に関するコンサルティング、遺言書の作成と保管、相続財産の調査や遺言執行等の業務に参入し、これを「遺言信託」と称して大々的に宣伝し始めました。
② もともとは遺言を契機に富裕層高齢者にアプローチして信託商品を販売する狙いだったと言われていますが、今では都市銀行、地方銀行なども遺言信託と称して同様の商品を提供しています。
③ 委託者、受託者、受益者は遺言信託の要素ではなく、信託行為も存在しませんから、法律上の信託ではありません。
④ なお、金融機関では、遺言信託の内容のうち、遺言がない場合の相続関連業務を「遺産整理」と呼んでいます。

【2】遺言信託の内容

① 遺言信託業務の内容は以下の3つに大別されます。
② 第一に、金融機関は、特に、富裕層高齢者の生活や資産の状況を聴取して、相続紛争予防、相続税対策、事業承継、融資、資産活用等の遺言・相続に関するあらゆるコンサルティングをしています。
遺言信託を始めてすでに20年以上が経過していますから、特に大手の金融機関は、このコンサルティングについては膨大なノウハウを蓄積していると思われます。
③ 第二に、金融機関は遺言書作成についても多くの経験を持っています。また、遺言書の保管も遺言信託の内容であり、信託を取り扱う金融機関によって構成される一般社団法人信託協会の統計によれば、令和3年3月末時点で、159,719通の遺言を保管しているそうです。
もっとも、公正証書遺言は全国300か所の公証役場で検索できますし、自筆証書遺言も遺言書保管制度を利用すれば、紛失や偽造改ざんの恐れはありませんから、今日では、銀行の大金庫で遺言書を保管していただく必要はありません。
④ 第三に、金融機関が遺言書を作成するときには遺言執行者の指名を受け、相続開始後には遺言執行者として活動します。相続開始後の処理については、相続人は自分で法定相続人や遺産を調査できますし、不動産・預貯金・株式・投資信託等の名義変更や換価手続きについても同様です。

【3】遺言信託の問題点

① 第一に、平成6年3月、信託協会と日本弁護士連合会は、紛争性のある相続事案に関しては金融機関が遺言執行者にならない旨の合意が成立しました。
② したがって、金融機関は、遺言信託として遺言書を作成しても、相続開始後に一部相続人から遺言無効を主張されたり、不満があるなどの申告を受ければ、直ちに遺言執行者を辞退又は辞任します。
③ その場合、相続人や受遺者は改めて家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てることになりますから、紛争が予想される案件に遺言信託は不向きです。
④ 第二に、金融機関は、遺言信託と抱き合わせで、資産に応じた投資信託等を勧誘するはずですが、それが不要なら、はっきり断るべきでしょう。ちなみに、士業が遺言書を作成する場合なら、特に問題にならない限り、現有資産の詳細を伺わないこともあります。
⑤ 第三に、金融機関が作る遺言書の内容はそつのないものになりますが、逆に、金融機関にとって安全確実な内容にとどまる傾向が強いと感じます。たとえば、処理に困難を伴う海外資産や農地・山林などは遺言執行者の義務から外している例もありましたが、それでは相続人が困ることになりかねません。
⑥ 第四に、金融機関は合併を繰り返し、30年前に13行あった都市銀行は現在4行に減りました。有人店舗も半減し、支店窓口で相談するには、インターネットでの予約が必要とされる時代であり、相続開始後のサービスの点についての疑問が残ります。
⑦ また、戸籍の収集などは相続人任せですし、相続人間に多少の誤解や感情のもつれがあっても、一切介入しません。これが行政書士や弁護士であれば職務上請求で戸籍を収集できますし、遺言者の家族とも顔なじみであれば、多少のフォローやきめ細かい対応ができるはずです。

【終活・遺言・相続相談】相談例44 特定財産承継遺言と配偶者の居住権

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【相談内容】
相談者(82歳男性)から、「10年前に再婚した妻(74歳)と自宅で暮らしている。自宅は先祖代々受け継いできたので、やがては前妻との間にできた長男(50歳)に受け継がせたい。ただ、妻もほかに行く当てがない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相続人が後妻と前妻の子というのは、相続紛争のリスクの高い組み合わせです。この例では、先祖代々の自宅をどちらに承継させるのかの問題です。板挟みになっていますので、選択肢を提供して判断を促すことになります。

【1】特定財産承継遺言

① 自宅の所有権を長男に相続させると決断しているのなら、相続開始時にもめないよう「長男に自宅を相続させる」という内容の遺言書を作成するよう勧めます(特定財産承継遺言)。
② 「特定財産承継遺言」とは、遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言のことで、これまでの「相続させる遺言」に相当するものです。
③平成30年改正前は、相続させる遺言の効果として相続開始時にその財産の所有権が移転するとされていましたが、改正後の特定財産承継遺言では、法定相続分を超える部分については対抗問題となり、登記が必要です。
④ したがって、所有権移転登記を確実に行うために遺言執行者を指定するよう勧めます。
⑤ しかし、長男に自宅を相続させると、妻は自宅に住み続けることができなくなるかもしれません。そこで次のような方法を検討します。

【2】配偶者居住権

① 平成30年の相続法改正により、相続開始時に配偶者が被相続人の所有建物に居住していた場合、遺産分割・遺贈・審判によって終身又は一定期間、配偶者にその建物の無償での使用収益権を認めることができることになりました(配偶者居住権)。
② 相談者の死後も妻を自宅に住まわせる場合には、「長男に自宅を相続させる」という特定財産承継遺言とともに、遺言に「妻に対し、その終身の間、自宅の居住権を遺贈する」という条項を設け、配偶者居住権を設定するように勧めます。
③ なお、注意点は次の通りです。まず、配偶者居住権は「遺贈」による必要があり、「配偶者居住権を相続させる」と記載すると無効になる危険性があります。遺贈に限られたのは、配偶者が望まない場合があると考えられたからです。また、配偶者居住権の終期についても記載する必要があります。
④ 配偶者居住権が遺贈されると、自宅の所有権は長男に帰属するので長男が固定資産税等を負担しますが、配偶者居住権は無償で行使できます。ただし、配偶者居住権が設定された「土地・建物」の相続税は、配偶者居住権の存続期間などを勘案して長男と妻が分担することになります。
⑤ 以上と同じことは負担付遺贈でも可能ですが、負担付遺贈では受遺者の義務であるのに対して、配偶者居住権は配偶者の権利として構成される点に違いがあります。

【3】配偶者短期居住権

① 平成30年の相続法改正により、相続開始時に被相続人所有建物に無償で居住していた配偶者は、遺産分割により建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始時から6月の遅いほうまで無償で建物を使用できることになりました(配偶者短期居住権)。
② 遺言がない等の事情で遺産分割が必要になっても、妻は、相続開始から6月又は遺産分割成立までの長いほうの期間は無償で居住できることになり、前述のように、遺産分割や審判で配偶者居住権を設定できる可能性もあります。

【4】後継ぎ遺贈型受益者連続信託

① 一方、自宅を妻に相続させて妻が死亡すると、長男は(縁組をしていなければ)妻の相続人になりませんから、自宅は妻の相続人の手に渡ります。そこで、妻が死亡した場合に自動的に長男が自宅を取得する方法として、後継ぎ遺贈型受益者連続信託の利用が考えられます。
② その場合には、たとえば、相談者を委託者兼受益者、長男を受託者として信託契約を行い、相談者が死亡した場合には受益者を妻に変更し、次いで妻が亡くなった場合は、信託を終了させ、帰属権利者としての長男に自宅が渡るように設定します。
③ 配偶者居住権は相続開始時に配偶者が被相続人の所有建物に居住していた場合に限られます。そうすると、相談者が、自分の死後は遺産となる賃貸アパートの収益を配偶者に与えたいが、配偶者の死亡後はそれを長男に取得させたいと考えた場合には使えません。したがって、後継ぎ遺贈型受益者連続信託はこのような場合にも利用される可能性があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例43 遺贈に関する相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例43 遺贈に関する相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(85歳女性)から「私には一人息子(56歳)がいるが、嫁の言いなりで私の言うことを聞かない。私が亡くなったときには自宅だけは息子に継がせるとしても、それ以外の財産は、世話になった姪(62歳)に残したい。どのような遺言書を作ればいいだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
息子は相談者の相続人ですが、姪は相続人ではありません。したがって、姪に対する遺産の承継は遺贈になりますが、遺贈の方法については多くの問題があります。遺贈に関する知識を整理しながら、相談者の意向に適う遺言案を考えることになります。

【1】包括遺贈と特定遺贈の効果の違い

① 遺贈とは、遺言で相続人又は第三者に遺産の全部又は一部を処分することで、遺産全体の全部(全部包括遺贈)又は一部(割合的包括遺贈)を遺贈する包括遺贈と、特定の財産を遺贈する特定遺贈があります。
② 包括遺贈の受遺者(包括受遺者)は相続人と同一の権利義務を有しますが、特定遺贈の受遺者(特定受遺者)はそうではありません。そこで、包括遺贈か特定遺贈かにより、大きな違いが生じます。
③ 第一に、特定遺贈では受遺者は特定の遺産を取得するだけで原則として相続債務を承継しませんが、包括遺贈では受遺者は相続人と同じ立場に立つので、相続債務を承継します。
④ したがって、包括受遺者は、遺贈を受ける財産と承継する債務を比較したうえで、遺贈を受けるのか否かを判断しなければなりません。
⑤ 第二に、特定遺贈と包括遺贈では、放棄の方法が異なります。民法986条1項は「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる」としていますので、特定受遺者の遺贈の放棄はこの規定によりますが、包括受遺者は相続人と同視されるため、通常の相続放棄と同じく(包括遺贈があったことを知った日から)3か月の期間内に家庭裁判所に放棄の申述をしなければならず、民法986条1項の規定は適用されません。さらに、包括受遺者が相続人でもある場合には、遺贈の放棄と相続の放棄の両方を行わなければ、相続債務から完全に逃れることができません。
⑥ 第三に、特定遺贈では、相続開始と同時に、その遺産が受遺者に帰属することになりますが、割合的包括遺贈では、相続分の指定を受けた場合と同じく、どの遺産を取得するかは決まっていませんので、他の共同相続人との間で遺産分割協議をすることになります。

【2】遺言の工夫

① こうしてみると、遺贈を受ける側(受遺者)の立場としては、包括遺贈より特定遺贈してもらった方が面倒は少なく、ありがたいことになります。したがって、遺言を考えるについても、できるだけ、特定遺贈の方法を選択するべきでしょう。
② ところが遺言の書き方によっては、それが割合的包括遺贈なのか特定遺贈なのか明らかでない場合があります。
③ 例えば相談例で「自宅は息子に相続させ、その余の財産すべてを姪に遺贈する」との遺言を作成すれば、具体的事情によりますが、特定財産を除いた財産の全部または一部を遺贈する包括遺贈になる可能性があります。
④ また、「自宅は息子に相続させ、その余の財産は全て換価のうえ債務と必要経費を控除した残額を姪に遺贈する」(清算型遺贈)と言った遺言も同様です。
⑤ したがって、相談者が包括遺贈の効果を望まず、特定遺贈の意向なのであれば、大雑把な条項を避け、遺贈する財産(不動産・預貯金等)をひとつひとつ特定して列挙するべきです。

【3】その他の注意

【3-1】遺言執行者の指定

① 遺贈では、相続人たる遺贈義務者から受遺者に対する権利移転行為が必要になりますが、相続人の協力を得られない可能性があるため、遺言執行者を指定するべきだとされます。
② 特定遺贈の場合はその通りですし、全部包括遺贈の場合も遺言執行者の指定は有益ですが、割合的包括遺贈では遺産分割を経ないと具体的な遺贈の内容が定まらないので、遺言執行者を指定しても、直ちに問題が解決できるわけではありません。
③ その意味でも、遺言書作成においては、遺言執行者指定を併用した特定遺贈が合理的だと思います。

【3-2】予備的遺言

① 受遺者が遺言者の相続開始前に先死亡した場合には、遺贈の効力はなくなります。したがって、相談者が、その場合には姪の相続人や別の受遺者に遺贈したいというのであれば、その旨、予備的遺言として残す必要があります。
② なお、受遺者が遺贈を放棄した場合、受遺者が受けるべきであったものは相続人に帰属しますので、これに備えて別段の意思表示(予備的遺言)をしておくべきかもしれません。

【3-3】遺留分の侵害

① 遺贈が遺留分を侵害していれば、包括受遺者・特定受遺者ともに遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
② したがって、受遺者に遺留分侵害額請求される面倒を掛けたくないなら、遺言は、遺留分権利者の遺留分を侵害しない内容にとどめるべきですし、もしもの場合の遺留分侵害額請求にすみやかに対応できるよう、遺産を処分して金銭で遺贈する内容の清算型遺贈にしておくことが望ましいでしょう。

【3-4】士業の関与

① 相談例のように、たとえ遺言者の意思が明らかでも、遺言の書き方次第で包括遺贈になったり、特定遺贈になったりして、受遺者に思いがけない迷惑をかけることがあります。
② 自筆証書遺言には警戒が必要な理由の一つがここにも表れております。したがって、相談者が遺贈を希望される場合には、行政書士や弁護士に遺言書案の作成を任せていただくことをお勧めします。

【終活・遺言・相続相談】相談例42 遺言書の内容

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【相談内容】
相談者(80歳女性)から、「夫が急逝して1年たつので遺言書を書きたい。まず、世話になった私の妹(75歳)に2,000万円を遺贈し、長女(55歳)には自宅を取得させ、次女(53歳)と三女(50歳)には残りの財産を半分ずつ相続させたい。他には長男(48歳)がいるが、長男は夫の相続のときに十分にもらっているので何も相続させたくない。遺言書にはどう書けばいいのか」と相談された。

【検討すべき点】
相談者の意向ははっきりしていますが、そのまま遺言書に反映させると問題が起きる可能性も高いので、アドバイスが必要です。遺言書の内容を考える際に注意すべき点は、①遺言の内容が一義的で内容を確定できること(確定性)、②相続人たちにとってそれなりに公平であること(公平性)、③その遺言の履行が担保されていること(履行の確保)の3点だと思います。

【1】遺言の確定性

【1-1】明確性

① 遺言書の記載内容が一義的でない場合には遺言者の意思を解釈する必要が生じますが、それ自体が紛争の種になるので、解釈の余地がないようはっきりと記載するべきです。自筆証書遺言では、なおさら注意が必要です。
② 相続人に対しては通常「相続させる」と表現しますが、遺贈の意思がある場合「遺贈する」と表現します。
③ 遺贈の場合、包括遺贈なのか、特定遺贈なのか判然としない場合もあります。さらに遺言の各条項の関係が矛盾・抵触していたり、複数の読み方ができることがあるので、注意して下さい。

【1-2】相続分の指定

① 「相続分の指定」とは、遺言で共同相続人の相続分を指定することです。相談例では「次女と三女に半分ずつ」というのがこれに当たります。
② しかし、相続分の指定は、どの遺産を誰に与えるかを決めていないので、相続財産は共有状態になり、改めて遺産分割が必要になります。
③ したがって、相続人の間ですんなり遺産分割が成立しない可能性があるなら、相続分の指定はお勧めできません。この問題を回避するためには、特定財産承継遺言か清算型遺言を用いることを勧めます。
④ なお、割合的包括遺贈は、遺言で遺産の一部の割合を遺贈することですが、誰がどの遺産を取得するかが確定しないので、相続分の指定と同様の問題が生じます。

【1-3】特定財産承継遺言

① 「特定財産承継遺言」とは、遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言です。
② 相談例では「長女に自宅を相続させる」というのがこれに当たります。この方法では、対象財産がその相続人に帰属することが確定するので、紛争を避けるために合理的です。
③ もっとも、この場合でも、法定相続分を超える部分の取得を第三者に対抗するためには登記、登録その他の対抗要件を具備することが必要です。遺言執行者は対抗要件を具備するために必要な行為をすることができます。

【1-4】清算型遺言

① 「清算型遺言」とは、遺産を売却換価して現金化し、それを分配する内容を含んだ遺言です。
② 相談例のように「次女と三女に半分ずつ相続させる」としたのでは、なお遺産分割協議が必要ですが、現金化してその割合を分けるのなら問題は起きません。したがって、紛争を予防するために清算型遺言が多用されています。
③ ただし、清算型遺言を用いる場合には、誰が売却換価等の手続を行うのかという問題があり、その手続きを確実なものにするため、第三者の遺言執行者を指定しておくべきです。
④ また譲渡所得税についても、気を付ける必要があります。売却換価する際に不動産の名義を被相続人から相続人に代えなければ売却できません。その売却の際の名義人に、譲渡所得税が課税されますので、その課税額の負担も考慮する必要があります。

【1-5】一部遺言

① 「一部遺言」とは、遺産の一部の処分のみを定めた遺言のことです。包括条項(その他の遺産は○○が取得するとか、本書に定めていない遺産が判明した場合には、○○に相続させるといった条項)が欠けている遺言も、一部遺言になってしまう可能性があります。
② 一部遺言は多くみられ、遺言で処分を決めていない遺産については、改めて遺産分割協議が必要になります。
③ 全遺産を網羅した遺産目録を作成して、誰がどの遺産を取得するのかを決めればいいように思いますが、せめて重要な遺産は特定財産承継遺言で確定させ、残りの遺産は包括条項で処分方法を決めておくべきです。

【1-6】予備的遺言

① 「予備的遺言」とは、将来、遺言の前提条件が変化した場合(多くは受遺者の先死亡)の遺産の処分方法を決めておく遺言のことです(公証人により、補充遺言と記載されることもあります)。
② 仮に、特定財産承継遺言を利用しても、受遺者が遺言者よりも先に死亡した場合には、その遺産は宙に浮き、原則に戻って遺産分割協議が必要になります。したがって、受遺者が先に死亡した場合に、その遺産をどのように処分するかを決めておく必要があります。
③ 相談例で見ますと、遺言者の妹が先に死亡する可能性は無視できません。そもそも、妹が2,000万円の遺贈を放棄すれば、遺贈対象の2,000万円は改めて遺産分割協議が必要になります。
④ したがって、少なくとも妹への遺贈について「妹の先死亡又は遺贈放棄の場合」の処分を予備的に決めておくべきです。また、長女、次女、三女に対する相続についても、それらの子が先死亡した場合の遺産の処分方法を決めておいた方がよいでしょう。

【1-7】条件付遺言

① 遺産の処分に停止条件又は解除条件をつけた遺言もあります。予備的遺言とほぼ同じですが、公正証書遺言では予備的遺言との表題を付けないようなので、ここでは区別して、「条件付遺言」とします。
② たとえば「受遺者の結婚を条件として不動産を遺贈する」といった条項です。このような条件がありますと、相続開始時までに条件が成就していれば無条件となります。
③ しかし、相続開始時に成就・不成就が確定しなければ、混乱の原因となります。というのも、相続開始後にその条件が成就する場合も、その条項が有効になるからです。したがって、「相続開始時において結婚していれば」とか、「相続開始後1年以内に結婚すれば」というように、条件を明確にすべきです。
④ なお、「弟の面倒をみるのなら不動産を遺贈する」という内容だったとすると、条件なのか、負担付遺贈なのか遺言の解釈が問題となります。

【1-8】相続債務の承継

① さて、相続債務は法定相続分に応じて相続人が承継しますが、遺言者は、遺言により、特定の相続人にその債務を承継させることができます(相続分の指定)。
② 不動産売買の借入金債務や賃貸物件の敷金返還債務などはその不動産と密接に関連しますから、それを相続する者に承継させるべきですし、遺言にはそれを必ず記載しておくべきです。
③ しかしながら、相続債権者は、各共同相続人に対して、相続分の指定にかかわらず、法定相続分に応じて権利を行使することができますが、他方、共同相続人の一人に対しての相続分の指定(指定相続分)を承認したときは、指定相続分に従った権利しか行使できません。
④ したがって、この承認があれば、他の共同相続人は、免責的債務引受けと同じ効果を受けられます。
当然のことですが、相続債権者がこの指定相続分を承認しなかった場合、共同相続人はその法定相続分の債務を負担することになります。
⑤ なお、被相続人の医療費・施設利用費・介護費用等といった相続債務は、少額かもしれませんが、遺言で相続財産から負担すると確定した方がよいでしょう。
なお、葬儀費用も、厳密には相続債務ではありませんが、遺言で相続財産から支出すると定めておくことをお勧めします。

【2】遺言の公平性

【2-1】遺留分への配慮

① まず、相談者から推定相続人その他の者に対する生前贈与の内容を確認し、将来、遺留分侵害額請求権を行使される可能性を検討します。ここで注意すべき点は以下の3点です。
第一に、相談者は、すでに生前贈与した財産には関心がなく、積極的に生前贈与の事実を告げてくれるわけではありません。そこでこちらから積極的に生前贈与を確認する必要があります。
第二に、相談者から生前贈与の事実を確認したら、それを現有の相続財産に当てはめて、遺留分侵害額請求権行使の可能性を確認します。
第三に、現時点の試算で安心することなく、相続開始までに相続財産は変動するはずですから、相続開始時点における遺産も予想して計算する必要があります。

【2-2】一次相続の修正

① 相談例では、1年前に亡くなった夫の遺産分割の内容が不明です。仮に亡き夫の遺産分割の結果に問題があれば、相談者の相続(二次相続)では子らの利害が対立しますので、一次相続の結果も加味して、遺言の内容を決めるべきです。
② ちなみに、相談者は、長男は一次相続で十分にもらっているので、二次相続では何も相続させないとの意向ですが、そのような事情があっても、二次相続で長男の遺留分侵害額請求が否定されるものではありません。

【2-3】寄与分への配慮

① 相談例では不明ですが、相談者も子らの誰かに介護してもらうことになるかもしれませんし、その場合には寄与分が問題になることもあります。
② 寄与分とは、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」がいる場合において、遺産からその者の寄与分を差し引いたものを遺産分割の対象とし、寄与者には寄与分を加えてその者の相続分とする制度ですが、「特別の寄与」や「財産の維持又は増加」の要件が厳しく、1割程度しか認められないと覚悟する必要があります。
③ 寄与分が認められにくいのであれば、介護で疲弊した相続人がある場合は、遺言でそれなりの傾斜をつけるのは当然とも思えます。

【3】履行の確保

① 遺言内容を確実に履行させるには、第三者の遺言執行者を指定するべきです。
なお、相談例では妹への遺贈がありますが、何も相続させないとしている長男の協力がなければ遺贈は履行されません。よって遺言執行者の指定は不可欠でしょう。また、清算型遺言の場合も同様です。

【4】相談者への対応

① 主に遺言の確定性について整理しましたが、あまりに説明事項が多く、「どう書けばよいか」と相談されても、30分や1時間程度ですべてに行き届いた処方箋を差し上げるのは不可能です。よって最初は問題点の指摘にとどまるでしょう。