【相続・遺言について】配偶者の居住権を長期的に保護するための方策

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、配偶者の居住権を長期的に保護するための方策について考えてみたいと思います。

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【Q】今回の相続法改正で、配偶者の居住権を長期的に保護するための方策が制定されたと聞きました。そこで、具体的にどのような制度・方策なのか教えてください。

【A】◆1.制度創設の理由
近年の社会の高齢化の進展及び平均寿命の伸長に伴う家族形態・家族観の変化の中で、被相続人の配偶者(以下生存配偶者と言います)が、被相続人の死亡後、長期間にわたって住み慣れた居住環境での生活を継続することは少なくありません。そこで生存配偶者のこれまでの居住環境・居住権を確保しつつ、その後の生活資金として、居住権以外の財産(特に預貯金)についても一定程度確保・保護すべく、所有権とは別に、配偶者居住権が創設されました。
そして、配偶者居住権が設定された住居(居住建物)の所有者は、配偶者居住権という負担付の所有権者となります。

◆2.配偶者居住権の内容
次に、配偶者居住権の内容についてお話しします。
配偶者居住権は、相続開始の時に、被相続人の住居(居住建物)に居住していた生存配偶者に、原則として終身、その住居に無償で生活できる権利を確保する内容となっています。つまり、生存配偶者はこれまで使用していた住居全体について、引き続き使用及び収益することができるということです。

また、配偶者居住権は、生存配偶者の居住権を保護するために認められた権利ですので、帰属上の一身専属権となります。そのため、配偶者居住権を譲渡することはできません。さらに、配偶者居住権は、法律上の配偶者に限定されており、内縁の配偶者や事実婚の配偶者には、適用はありません。

気を付けることとして、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでないと規定されていることです。
すなわち、被相続人とその子が共有している建物の場合、配偶者居住権を取得することはできません。

加えて、生存配偶者が死亡した場合には、当然に配偶者居住権は消滅し、相続の対象にもなりません。

◆3.配偶者居住権の成立要件について
配偶者居住権の成立要件は、配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物(被相続人と他の者との共有の建物除く)に居住していたことを前提に、①その建物について、生存配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、②被相続人からの遺贈、③死因贈与契約、④家庭裁判所の審判、のいずれかによりなされたこと、となっています。

ここで、「被相続人所有の建物に居住していた」という要件に関連して、被相続人死亡時に、生存配偶者が入院していたり、施設へ入所していたりという場合が想定されます。
しかしこの場合、生存配偶者の入院・入所が一時的なもので、家財道具が建物に存在し、退院・退所後に、当該建物に帰ることが予定されていた等であれば、このような生存配偶者については、「被相続人所有の建物に居住していた」という要件を満たすものと考えられます。

◆4.配偶者居住権を第三者に対抗する手続き
生存配偶者が、配偶者居住権を第三者に対抗するには、配偶者居住権の設定の登記が必要になります。
遺産分割に関する審判や調停によって配偶者居住権を取得したときは、その審判書や調停調書に、配偶者が単独で配偶者居住権の登記手続きをすることができるよう記載されることが通常ですので、審判書や調停調書に基づき単独で申請をすることができます。

また、遺産分割に関する審判書や調停調書がない場合には、配偶者居住権の設定の登記は、生存配偶者と居住建物の所有者と共同で申請する必要があります。
もっとも、居住建物の所有者が登記の申請に協力しない場合は、生存配偶者は、居住建物の所有者に対して登記義務の履行を求める訴えを提起することができ、この訴えが認められれば、判決に基づき、生存配偶者は、単独で登記申請をすることができます。

◆5.配偶者居住権が設定された場合の居住建物の修繕費用等について
配偶者居住権が設定された場合の居住建物の修繕費用等は、居住建物の所有者が負担することはなく、生存配偶者が負担することとなります。
また、配偶者居住権が設定された場合の固定資産税についても、生存配偶者が負担することになります。

◆6.配偶者居住権の施行期日について
2020年4月1日からとなっております。

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