【改正民法債権編】意思表示の瑕疵

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、意思表示の瑕疵について考えてみたいと思います。

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意思表示の瑕疵

条文外の判例のルールが反映された錯誤取消し

意思表示の合致があった時に契約は成立することになりますが、契約当時、意思無能力状態ではなかったものの、騙されて契約を締結した場合などもあります。
このように物事を弁識する能力はあったが、意思表示に何らかの問題があった場合を「意思表示の瑕疵」といいます。
この意思表示の瑕疵について、民法では、「心裡留保」「虚偽表示」「錯誤」「詐欺・強迫」という類型を挙げています。

 

◆心裡留保
心裡留保とは、表意者が自分の真意と異なる発言を自覚しながら行なう意思表示のことです。
たとえば、内心は売却する意思はないのに、「売却する」と言った場合などです(相手方と意思表示の合致があれば、契約は成立します)。

この場合、表意者が真意でないことを知っていたにもかかわらず、真意と異なる内容の発言をしているので、表意者に責任があり、その意思表示は有効となります。
そのため、表意者の言葉を信じ、売却の契約関係に入った相手方との関係でも、心裡留保があっても契約は原則として有効となります。

しかし、「相手方がその意思表示が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができたとき」まで相手方を保護する必要はないので、その場合には契約は無効となります(新法93条1項)。ここまでは現状と同じです。
このような心裡留保の無効が、取引関係に入った善意の第三者を害するのは取引の安全を損なうことになるので、善意の第三者を保護するべきです。新法では、心裡留保の無効は善意の第三者に対抗することができないという判例法理が、新たに明文化されました。

 

◆虚偽表示
表意者が相手方と通謀して真意でないことを知りながらする意思表示を虚偽表示といいます。虚偽表示について、今回改正はありません。
虚偽表示は当事者間では無効ですが、それでは取引の安全を害します。そのため、虚偽表示による無効は「善意の第三者」に対して主張することができないと定めています(法94条2項)。

 

◆錯誤
錯誤とは、人の認識したことと、その認識対象である客観的事実が一致しないことです。
旧法では、意思表示は「法律行為の要素」に錯誤がある場合には無効と明記されていましたが、条文にはないさまざまなルールもありました。
新法では、これらを整理し、「動機の錯誤」についても新たに規定を設けました。

(1)表示の錯誤
新法95条1項は「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(1号)の場合で、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができるとしています。

いわゆる「表示の錯誤」というもので、意思表示に対応する意思を欠いており、そのことを表意者自身も気がついていない場合です。
たとえば、Aという物件を購入しようとしていたのに、誤って隣の「物件Bを買いたい」と言ってしまって、本人もそのことに気がついていない場合です。物件の対象がAかBかは、もはや対象物が違うので、重要な錯誤といえ、原則として後で取り消すことができます。

(2)動機の錯誤
新法は、従前は判例法理であった動機の錯誤の規定を新設しました。「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(新法95条1項2号)で、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、錯誤取消しが認められます。

ただし、動機の錯誤は、その動機が示されていることが必要です(同2項)。
たとえば、「新幹線が通る見込みだからこの土地を買う」と言ったものの、実はそのような計画はなかった場合は、動機の錯誤の主張が考えられます。

(3)錯誤の主張が制限される場合
誤解していた場合はすべてが取り消せるとなると、取引は不安定になります。
そこで、すべての錯誤が取り消せるのではなく、錯誤した者に重過失がある場合は取り消すことできません(特別の場合には、例外として取り消すことができる旨を明記しました)。重過失がある錯誤までは保護しないでよいというのが法の考えです。

特別の場合とは次のとおりです。
①相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき
②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
これらの場合には、たとえ表意者に重過失があっても、表示を受けた者を保護する必要がないことから、原則通り取消しを認めています。

(4)第三者保護の観点と取消しの主張ができる期間
旧法では、錯誤による意思表示を前提に、新たに、法律関係に入ってきたような第三者について、保護の規定がありませんでした。
新法では、「善意で過失がない第三者に対抗することはできない」(新法95条4項)と明記されました。詐欺における第三者保護と同様の規定となっています。
なお、新法では錯誤の効果は無効から取消しになりましたので、取消しは追認をすることができる時から5年に限定されます(法126条)。

 

◆詐欺
(1)一般の詐欺
詐欺とは、人を欺罔(欺き騙すこと)して錯誤に陥れる行為です。相手方の詐欺に基づいて意思表示を行ってしまった場合、表意者は原則としてこれを取り消すことができます。
通常の詐欺による意思表示の取消しをする際、取り消される法律行為を前提に取引行為に入った第三者がいる場合には、その第三者が善意で過失がない者であれば、その第三者を害してまで取り消すことはできません。新法は、第三者が無過失の場合も明文化しました(新法96条3項)。

(2)第三者詐欺
相手方以外の第三者が詐欺を行ない、表意者が騙される場合(第三者詐欺といいます)もあります。
新法では、第三者詐欺の場合、意思表示の主体の相手方がその事実を知っていたときのみならず、知ることができたときも、取消しが可能としました(同2項)。これは、心裡留保でも過失によって心裡留保を知らなかった相手方に対して無効となることと整合を図ったものといわれています。

 

◆強迫
強迫とは、害意の告知を行ない畏怖させる行為です。強迫されて意思表示をしてしまった場合、取り消すことができます(法96条1項)。
強迫は、第三者よりも、強迫により意思表示をさせられてしまった者を保護する必要があるので、第三者保護の規定がありません。強迫については改正はありません。

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