【改正民法債権編】消滅時効の改正

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、消滅時効の改正について考えてみたいと思います。

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消滅時効の改正

債権の消滅時効期間の統一化と新たな消滅時効期間の導入

◆時効とは
時効とは、ある一定の事実状態が継続したときに、その事実状態を真実の事実状態と認め、権利を確定させる制度です。
時効には、一定の期間経過すると権利を取得できる「取得時効」と一定の期間権利を行使しなければ権利を喪失してしまう「消滅時効」とがあります。取得時効は、無権利者が所有権など物権を取得するときに適用される制度で、賃借権の時効取得という例外はあるものの、原則として債権の分野に関係する制度ではないため、改正の対象とはなっていません。
今回の改正対象は、権利を有する者がその権利を行使しないときに喪失する消滅時効の制度です。

 

◆時効の援用
一定の期間が経過し、債権について消滅時効が完成しても、時効の効果が発生するわけではありません。消滅時効の効果を確定的に発生させるためには、相手方に対して時効である旨を告げなければなりません。
消滅時効が完成しても、債務者が任意に債務の履行をすることが禁止されるわけではなく、任意に債務の履行を行なうことは可能であり、法は時効を主張するかどうかを当事者に委ねているのです。

この、相手方に対して時効であることを主張し、時効の効果を発生させることを「時効の援用」といいます。
旧法では、時効の援用ができる者について、「時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と、「当事者」とだけ規定されていました。そのため、当事者の解釈についてさまざまな争いが生じることになりました。

しかし、新法では、判例の蓄積を成文化する形で、「時効は当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者w含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」(新法145条)と規定されました。
判例の蓄積を成文化しただけなので、実務上の影響は大きくありませんし、「その他権利の消滅について正当な利益を有する者」と概括的な規定もあることから、その解釈について裁判所の判断が必要な場面は依然としてあります。
ただ、「当事者」の定義がなされ、時効を主張できる者の範囲が明確化されることで、よりわかりやすくなりました。

 

◆債権の消滅時効期間の統一化
一定の期間の経過と、時効の援用により消滅時効の効果が生じますが、今回の改正では、消滅時効の期間が統一されました。
旧法では、債権の消滅時効は10年を原則的な時効期間として定める一方、医師、弁護士、売掛債権、宿泊料、飲食料など、さまざまな職種や債権の性質に応じて細かな短期消滅時効を定めていました。
また、私人間の取引ではなく、商取引で生じた商事債権についても異なる時効期間を定めており、きめ細やかな反面、複雑な規定となっていました。

新法では、短期消滅時効や商事債権の時効を廃止し、①権利を行使できることを知った時から5年、②権利を行使できる時から10年、のいずれか早く到来したほうで時効が完成するものとされました。

 

◆新たな消滅時効期間の導入
債権の消滅時効期間は統一化されてわかりやすくなりましたが、「①権利を行使できることを知った時から5年」という、新しい消滅時効期間が導入されたことには注意が必要です。
これは2つの意味で実務上の影響が大きいと考えられます。1つには5年というこれまでにない時効期間が設定されたこと、もう1つは新しい時効の起算点ができたことです。5年という短く新しい時効期間が大きな影響を及ぼすことは明らかなので、時効の起算点について説明します。

旧法における時効の起算点は「権利を行使することができる時から」(旧法166条)と規定されていました。「権利を行使することができる時」とは、権利を行使するのに法律上の障害がなくなった時のことです。
たとえば、金銭消費貸借契約については返済期日以後、債務者に返済を請求できるわけですから、返済期日が時効の起算点になります。債務不履行に基づく損害賠償請求権の場合は、損害賠償請求権と本来の債務とが同一であると考えられることから、本来の債務の履行の請求ができる時が時効の起算点となります。

これらのように、法律上の障害がなくなった時は客観的に確定できるので、「権利を行使できる時」を客観的起算点といいます。この旧法における考え方は新法でも維持されており、「②権利を行使できる時から10年」という形で残されています。

一方、新法では、新たに「①権利を行使できることを知った時から5年」という消滅時効が追加されました。この消滅時効の起算点は、債権者の主観的な認識を基礎としています。客観的に定まるものではなく、時効の起算点が債権者の主観的事情によって変動するのです。
これは、短期消滅時効を廃止することによる緩和措置として、また権利を行使できることを知ってから5年経過したのだから、権利が時効消滅したとしてもやむを得ない、との価値判断に基づき制定されたものです。
通常、債権者は期限がきた時に権利を行使できることを理解しているので、ほとんどの場合で、①の5年間の消滅時効が適用になると考えられます。

また、新設された「権利を行使できることを知った時」の意味については、当然ながら確定した解釈はなく、債権発生の原因と債務者を知った時とするのか、債権者に権利行使を期待することができる時とするのか、もしくは他の解釈とするのか、判例の蓄積が待たれることになります。

 

◆消滅時効制度の運用
新法では、客観的起算点から始まる時効と、主観的起算点から始まる時効の、2つの時効期間が併存します。
したがって、客観的起算点から10年間か、主観的起算点から5年間か、どちらか早く到来したほうで時効が完成することになります。

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