【改正民法債権編】危険負担

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、危険負担について考えてみたいと思います。

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危険負担

特定物売買等に関する債権者主義は削除、債務消滅から履行拒絶に

 

◆危険負担とは
危険負担とは、債務者に落ち度なく債務の履行が不可能になった場合における、反対債務の取扱いに関するルールです。

たとえば、建物の売買を考えてみましょう。売買契約により、売主は建物を買主に引き渡し、買主は売買代金を支払うという、相対する債務を負うことになります。

それでは、建物の隣地で火災が発生し、延焼により建物が焼け、建物を引き渡すことができなくなってしまった場合はどうなるでしょうか。この場合、建物の引渡債務は、債務者である売主に落ち度なく履行不能となり、債務自体が消滅します。
このとき、反対債務である代金の支払義務は存続するのか否か、というのが危険負担の問題です。一方の債務が履行不能によって消滅した場合の危険=リスクを、債権者・債務者のどちらが負担するかという問題なので、「危険負担」と呼ばれています。

 

◆特定物売買等に関する債権者主義の削除
旧法534条1項は、危険負担について、特定物に関する物権(たとえば所有権)の設定または移転を目的とする債務については、債権者・債務者のいずれにも落ち度なく履行不能になった場合、反対債務は消滅しない、すなわち履行不能が生じるリスクを債権者が負うという債権者主義が採られていました。

特定物とは、取引の当事者が、取引の対象物の個性に着目して取引の対象とした場合における、その対象物のことをいいます。
たとえば、土地や建物の売買は、隣の建物や土地でよいわけではなく、「その」土地や建物でなければならないわけです。このような物が特定物です。
一方、缶ビール1箱とか、ネジ1000本のように、物の種類に着目して指定される取引の対象物を種類物といいます。

先程の建物の売買の例では、建物は特定物なので、建物の明渡債務が両者に帰責事由なく履行不能となった場合、債権者である買主の代金支払い債務は消滅せず、買主は、建物が手に入らないのに代金を支払うことになります。

しかし、まだ売主の手元にあり、買主が何も関与することのできない対象物について、滅失のリスクを買主に負わせることには、かねてから強い批判がありました。実務においても、危険負担の移転時期を引渡時とする特約が締結されているケースがほとんどで、規定の合理性が疑問視されていたのです。
そこで、新法では、債権者主義を定めた旧法534条1項と、これに関連する規定である同2項・535条は、すべて削除することとしました。
なお、新法では、売買契約の対象物が滅失等した場合のリスクの移転時期を、引渡し時とする新規定が創設されています。

 

◆債務の消滅から履行拒絶に
(1)両者に帰責事由がない場合
特定物に関する債権者主義は削除されたので、特定物に関する債務、それ以外の債務とも、債務者主義が適用され、履行不能によるリスクは債務者が負い、債権者は反対債務を履行しなくてよいことになります。

旧法536条1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、「反対給付を受ける権利を有しない」と規定し、反対債務は当然に消滅するとされていました。
ところが、先述した通り、新法では、履行不能を含む債務不履行においては、債務者の帰責事由の有無を問わず契約の解除が認められることになりました。

そうすると、両者に帰責事由がないのに履行不能となった場合、債権者は、契約を解除して反対債務を消滅させることができます。反対債務が自動的に消滅するとする危険負担の規定と、解除により消滅させることができるとの解除の規定との間の整合性が問題となります。
そこで、新法は、制度間の整合性を確保するため、反対債務の消滅に関するルールは解除に一本化することとし、危険負担については、「債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」との規定に変更されました。

(2)債権者に帰責事由がある場合
上記の変更により、債権者に帰責事由がある場合に、反対給付が消滅しない旨を定めていた536条2項の規定も、「債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」との表現から「債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」との表現に変更されました。(内容面での変更はない)

この規定が適用される典型的な例は、不当解雇時における給与債権の取扱いです。
解雇事由がないのに不当に解雇され、使用者が労働者の出勤を拒絶している場合、労働者の労務提供債務は、債権者である使用者の責めに帰すべき事由により履行不能となっています。
このような場合、上記規定により、使用者は賃金を支払わなければなりません。
また、履行不能について債権者に帰責事由がある場合には、債権者による解除はできないと新たに規定されています。

 

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