世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約移行型の財産管理契約の注意点 詐欺、悪徳商法への対処について考えてみたいと思います。
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【1】詐欺や悪徳商法に対する、法定後見や保佐と任意後見契約の違い
財産管理契約の本人(委任者)はもちろんですが、任意後見契約に移行した後の本人であっても、なんら行為能力が制限されることはありません。
そのため、意思能力があることが当然の前提になりますが、自由に第三者と物の売買や贈与その他の契約を締結することができます。この点が法定被後見人や被保佐人とは大きく異なります。
もっとも、契約するときに本人に意思能力がなかったことを証明できれば契約は無効であることを主張できますが、意思能力がなかったとして契約の無効を証明することは容易なことではありません。
任意後見制度は、後見人の支援を受けている場合においても、本人の残存能力を最大限に活かすとともに、自己決定権の尊重を基本の理念としています。その半面において、本人が取引契約を結んでしまい被害を受ける危険性もあるということです。
詐欺や悪徳商法にあった場合には、一定の要件を満たせば当該契約を取り消すことができますので、お年寄りによる取引一般に言えることですが、とくに、任意後見契約が発効しているときに本人が行なった取引については、詐欺の場合であれば、「だまされて錯誤に陥って意思表示をすること」の要件を緩和する解釈または立法措置が望まれるところです。
消費者契約法の適用の際の要件緩和についても同様なことが望まれるところですが、これらについて今後の課題と言えるでしょう。まずは、詐欺や悪徳商法に引っかからないことが先決ですので、そのためには、やはり親族や第三者が時々訪問するなど、お年寄りの様子に注意することが大切と思われます。
【2】詐欺の場合
物の売買契約などにおいて、本来のその物の価値よりも不当に高く売りつけたり、不当に安く買い取ったりするような場合、このような行為は詐欺に該当し、騙された者は、この契約を取り消すことができるとされています。したがって、要件を満たせば、騙された者は誰でも民法の詐欺による取消権を行使できます。
民法120条2項は「詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。」と規定しています。
ここでいう代理人には、取消権行使の代理権付与が前提となりますが、財産管理契約の受任者や任意後見契約の受任者も含まれます。財産管理契約では、受任者に「本人の有する一切の財産の管理、保存」の代理権を与えるというのが、これまでの多くの例です。また、任意後見契約では、その代理権目録に「不動産、動産等すべての財産の保存、管理に関する事項」、「紛争の処理に関する事項」を掲げ、後見人受任者に代理権を与えておくのが通例です。
これらの代理権が与えられているならばその中に、その契約の取消権も含まれると解されます。したがって、お年寄りが騙されことを理由に行使できる取消権を、受任者はその代理権に基づいてお年寄りに代わって行使することができることになります。脅かされて契約してしまった場合も同じように受任者が取消権を行使することができます。
【3】悪徳商法の場合
消費者契約法は、悪質な勧誘などによって契約してしまった場合、消費者が取り消すことができるとしています。具体的には、
①事業者が重要事項について嘘をつくこと
②将来において不確実な事項について「必ず値上がりする」などと断定的にいうこと
③消費者に不利益となる事実を告げないこと
④消費者の自宅等に居座って契約を迫ること
⑤勧誘している場所から消費者を退去させないで契約を迫ること
など悪質な事業者の行為によって結ばされた契約であれば、消費者は取り消すことができます。財産管理契約の本人は悪質商法の被害にあった場合でも、そもそも本人が取消しをすることができる場合には、前述のとおり代理権の付与が前提となりますが、本人に代わって受任者が取消権を行使することができます。
【4】取消権における法定後見との違い
前述したように、本人が民法や消費者契約法などで取消権を取得したときは、受任者が代わって取消権を行使することができるのが通例です。
これに対し、すでに認知症や知的障害のために家庭裁判所の審判によって法定後見を開始している成年被後見人については、成年被後見人による行為であることそれ自体をもって日用品の購入その他日常生活に関する行為以外は、前に述べたような民法や消費者契約法等の定める要件に該当しなくとも当然にその契約を取り消すことができることになっています。
保佐開始または補助開始・要・同意の審判を受けたときも同様に一定の範囲の法律行為を取り消すことができます。
この点は法定後見における後見人等と財産管理契約及び任意後見契約における受任者及び人に後見人とは異なる扱いとなります。
少し難しく言いますと、法定後見の場合は、立法政策上において後見開始等の審判を受けているという画一基準によって、行為能力を制限される者として一律に保護しているためなのです。
任意後見においては、このような行為能力を欠くことを理由とする取消権は認められていません。