世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例2 独身の子と2人で暮らす高齢者の相談についての記事です。
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【相談内容】
80代女性の相談者から、「15年前に夫が他界した後、ずっと独身で無職の長男(50代)と2人で暮らしている。今はなんとかやっていけているが、この先の備えを考えると不安で、どうすればいいのか」と相談された。
【検討すべき点】
50年も一緒に暮らしているのであれば、普通の場合、相談者と長男はお互い気心も知れて、毎日の生活は安定していると思われます。しかし、時間の経過とともに加齢により現在の関係は壊れていきます。相談者の死後一人で暮らすことになる長男のことを考えれば、問題の先送りはもうできず、何らかの対策を行う必要があります。
【回答・解説】
【1】8050問題
① 親一人子一人と聞けば、親と幼い子が肩を寄せ合って生活しているのをイメージされる方が多いと思います。しかし、子が中高年と聞けば、なぜ自立しないのかと批判的に受け止める方が多いでしょう。
② 「8050問題」とは、若いころからの子のひきこもりが常態化し、50代の子と80代の親が同居しているケースのことで、最近では、孤立死、無理心中、親の死体遺棄、親の年金・生活保護費の不正受給などの原因としてとらえられることが多くなっています。
③ ちなみに、平成30年の内閣府の調査によれば、中高年(40歳~64歳)の引きこもりは約60万人で、そのほとんどが、高齢の親との同居と考えられています。そうすると高齢者とこの同居世帯(約1000万世帯)のうち6%程度(60万世帯)がこの問題を抱えているのです。また「8050問題」は時間の経過とともに、「9060問題」へと移行していくと危惧されます。
④ 多くの場合、8050問題やひきこもりの背景には、精神疾患や事故の後遺症など、そうならざるを得ない深刻な事情が存在することが多くみられます。しかし、根本的な解決方法は、子の就労による自立(またはそれに代わる社会参加)しかありません。相談者の死後に長男が生活していけるかを危惧しているのであれば、なおさらです。
⑤ このような問題があると思われるケースは、都道府県や市区町村のひきこもり地域支援センターや自立相談支援機関窓口への相談を勧めます。
東京都のひきこもり地域支援センターは「東京都ひきこもりサポートネット」になります。
【2】共依存の問題
① 一つ注意したいのは共依存の問題です。「共依存」とは自分と特定の相手の関係性に過剰に依存し、その人間関係に囚われている関係への嗜癖を意味します。
② たとえば、親が子の世話をすることによって、子から依存されることに自己の存在価値を見出し、子をコントロールして自分の望む行動をとらせて親自身の心の平穏を保とうとすることを言います(親子が逆の場合や夫婦間でも起こり得ます。)。
③ 相談例でも、相談者が長男と共依存の関係なら、相談者は長男の自立を願っていると言いながら、それを阻害する裏腹な行動をとっているかもしれません。特に「息子は私がいないとだめなんです」「私がいないと何もできない子なんです」といった発言が頻繁に出るようであれば要注意です。窓口を紹介しても、「外に出たがらないんです」など様々な口実を設けて、アドバイスを拒絶してきます。したがって相談者の気持ちに配慮しながらも、ひきこもり地域支援センター等への相談を促すなど、うまく誘導する必要が出てきます。
【3】相続開始後に想定される事態
① 相談者が他界すれば、長男は一人取り残されます。相談者と長男の関係があまりに歪であると、他に相続人がいたとしても、関わり合いをおそれて実家に近づかないかもしれません。しかしそれは争族(相続争い)が起きないことを意味するものではありません。したがって長男以外に子がいる場合は相談者に遺言書を作成するように勧めます。なお、相談者の相続人が長男だけでしたら、「おひとり様の問題」が生じることになります。
② 「今はなんとかやっていけている」とのことですので、収入源は相談者の年金だと考えられます。そうだとすると、相談者の死亡によって年金はなくなりますので、長男は相談者の遺産を取り崩して生活するか、それが底をつけば、生活保護を受給することになる可能性があります。また、長男に障害がある場合は親なき後問題が生じます。