【成年後見制度について】保佐人と本人の意見が対立した場合には?「保佐人の同意に代わる方法」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「保佐人と本人の意見が対立した場合には?保佐人の同意に代わる方法」について考えてみましょう。

【Q】知的障害のある私の弟は、うまく物事を判断することができず、計算も苦手です。以前、悪質商法の被害にあったこともあります。だから、兄は、弟の財産を守るためだといって、保佐という制度の利用を家庭裁判所に申立て、兄が弟の保佐人に選任されました。

しかし、兄は、弟の行動を制限しすぎるように思います。最近、弟が、今は亡き両親が残していった弟名義の不動産を処分して、その金で、障害者仲間やボランティアの人たちと一緒に、毎年旅行に出かけたいと言い出した時も、保佐人である兄は、これに猛反対し、不動産の処分には絶対に同意しないと言ったそうです。幸い、弟には、親が残した十分な資産が他にもあるので、私としては、不動産を一つ処分するだけなら、弟の夢をかなえてやりたいと思うのですが、なんとかできないものでしょうか。

【A】保佐とは、精神上の障害により物事を判断する能力が著しく不十分な者に、家庭裁判所が、援助者として保佐人を付する制度です。保佐人がつくと、本人が、民法に定める一定の重要な行為を行う場合には、保佐人の同意を得ることが必要になります。そして、本人が保佐人の同意をえないでした行為は、本人または保佐人による取消の対象となります。さらに、民法所定の一定の重要な行為の範囲内の行為については、本人が同意しさえすれば、保佐人に代理権を与えることもできます。

このように、保佐は、本人が重要な行為を行う場合に、原則として、同意という形で保佐人の判断を仰ぎ、仮に、本人が単独で、重要な法律行為をしてしまった場合には、本人または保佐人が、後日、保佐人の同意がないことを理由に当該行為を取り消すこともできるという制度です。ですから、判断能力に問題があるため、誤った判断をして、悪質商法の被害にあったり、計算が苦手なために、思いもかけない高額の買い物をしてしまいがちな人にとっては、大変有効な制度として機能します。

したがって、保佐人であるお兄さんが、弟さんの財産処分行為にうるさく口をだし、止めようとするのも、弟さんのことを心配すればこそかもしれません。まずは、お兄さんと弟さんが、よく話し合ってみるよう勧めるとよいでしょう。

しかし、保佐人であるお兄さんが、弟さんの不動産処分行為に断固として反対し同意せず、弟さんは、それに納得できないというのであれば、弟さんは、家庭裁判所に、保佐人の同意に代わる許可を求めることができます。家庭裁判所が、弟さんの利益を害する恐れがないにもかかわらず、保佐人であるお兄さんが同意を拒んでいると認めれば、弟さんは、保佐人の同意に代わる家庭裁判所の許可を得ることができます。

これは、保佐人が、適正に同意権を行使しないと、本人は、自分の財産でも処分することができなくなる等、自分のことすら自分で決めることができないという不当な制約を受けることになるため認められた制度です。これを利用することによって、弟さんの希望がかなえられる可能性がありますので、弟さんに、勧めてはどうでしょう。

 

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