【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q80 祭祀主宰者の範囲と承継手続

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【Q80】私たち兄妹3人で、兄の私と妹2人です。妹2人は他家に嫁いでいます。私は未婚で子供もいません。そんな時、父が亡くなりました。お墓は承継者のいない人は継げないとお寺から言われています。妹たちに頼みましたが、いずれも夫のお墓があるので、父のお墓はいらないと言っています。どうしたらよいでしょうか。

【POINT】
① 祭祀主宰者となれる者の範囲
② 墓地使用券の承継手続

1⃣ 祭祀主宰者となれる者の範囲

⑴ 墓地使用権の承継
① 通常、お墓を承継するといった場合、承継の対象は、墳墓(墓石やカロート)そのものの所有権と、墓地使用権に分かれます。墓地使用権とは、墳墓の所有者が、墳墓所有のために、他人の所有する墓地のうち、限定された区画を利用することができる権利をいいます。
② そして、墓地使用権は、墳墓の所有権と一体となる権利として、「祭祀財産」に含まれ、祭祀主宰者がこれを承継することになります。
③ 被相続人が祭祀主宰者を指定した場合には、その指定された者が、祭祀主宰者として祭祀財産を承継し、被相続人による指定がない場合には、慣習によって祭祀を主催すべき者が、祭祀財産を承継します。また、被相続人による指定がなく、かつ慣習が明らかでないときには、最終的には家庭裁判所が審判を行うことによって、祭祀主宰者を指定することになります。
④ そして、祭祀主宰者として指定された者は、承諾するしないとは関係なく法律上当然に祭祀財産を承継します。しかし、その地位を放棄することは自由ですし、さらに別の者に承諾させることも自由です。

⑵ 祭祀主宰者となれる者
① 上記⑴のいずれかの方法によって祭祀主宰者が指定される限り、法律上は誰でも祭祀主宰者になることができます。例えば、未婚で子供のいない者や、結婚や養子縁組をして氏を変えた者であっても、祭祀主宰者になることは可能です。
② さらには、成年被後見人を祭祀主宰者に指定した例、共同墓地の共有持分権を有する者が相続人なくして死亡した事案において、その者と親族関係にはない墳墓を管理する者を祭祀主宰者として指定した例もあります。したがって、承継者がいる場合でなければ祭祀主宰者とはなれないというような法律上の制限は存在しません。

2⃣ 墓地使用権の承継手続

⑴ 墓地管理者への届出
① 祭祀主宰者が指定された場合、祭祀主宰者は、当然に墳墓の所有権と墓地使用権を承継しますが、事務手続の問題として、墓地使用権については、墓地管理者に承継の届出をする必要があります。
② 墓地の使用権は、通常、墓地使用権者が墓地管理者から永代使用権を取得して使用しているため、名義変更手続きをしないと誰が承継したのかがわからず、管理料を誰に請求したらよいかが不明になってしまうためです。

⑵ 墓地使用に関する標準契約約款
① もっとも、この届出に対する墓地管理者の承諾は不要です。この点については、平成12年12月6日に厚生省が、事業用墓地を対象に墓地使用契約の内容の明確化等を図ることを目的として各都道府県知事らに対して発した「墓地経営・管理の指針等について」が参考になります。
② この別紙2「墓地使用に関する標準ん契約約款」7条1項は、「使用者の死亡により、使用者の祭祀承継者がその地位を承継して墓所の使用を継続する場合には、当該祭祀承継者は、すみやかに別記様式による地位承継届出書に住民票の写しを添えて経営者に届出を行うものとする」と定める。
③ 同条項の解説は、「墓地使用権については当然に祭祀承継者に承継されるものであるから、本契約約款では特に承継に際しての経営者の承認等の関与は定めていない。それよりも、経営者としては、だれが承継して墓所を使用するのかを把握しておくことが重要であるから、承継者が住民票の写しを添えて必要な事項を書面をもって届け出るべきことを明確に義務付けた」としています。
④ 上記約款は、公益法人などの事業者が経営する事業型墓地について、特定の階層だけではなく多数の利用者を予定しているというその公共性に鑑みて、あるべき契約約款を示したものであるため、ご質問のケースのような寺院が経営する寺院型墓地に直ちに当てはまるものではありません。
⑤ しかし、寺院型墓地においても「墓地をめぐる権利義務関係を明確にする」という観点から取り入れることができる部分については、上記趣旨を可能な限り参考とするべきであるとされています。
⑥ もっとも、寺院型墓地の場合には、檀家という宗教による特殊な結びつきも無視できないため、お墓を承継する者は、檀家としての地位も承継することになります。

3⃣ 結論

① ご質問のケースは、兄妹3人で妹2人は他家に嫁いでいるということですが、法的には、ご兄妹誰でも祭祀主宰者としてお墓を承継することは可能です。そして、その祭祀主宰者の指定方法として、亡きお父様が兄妹のうち誰かを祭祀主宰者に指定していた場合には、その者が祭祀主宰者となり、そのような指定がない場合には、慣習によって祭祀主宰者となるべき者が承継することになります。また、お父様による指定がなく、慣習も明らかでない場合は、最終的には家庭裁判所が審判によって祭祀主宰者を指定することになります。
② このような手続によって、ご質問者が祭祀主宰者となれば、ご質問者が当然に祭祀財産を承継することになり、お寺としても、ご質問者の祭祀主宰者としての地位を尊重すべきことになります。
③ なお、上記のように、祭祀主宰者となれる者の範囲は、相続人に限られません。そのため、ご質問者の後にお墓を承継する者として、同じお寺の檀家となっている親族を指定することも可能ですので、未婚で子供がいないことが直ちにお墓の承継者になれないということを意味するわけではありません。また仮にご自身の承継者がいないとしても、永代供養の手続をとることによって、ご質問者の死後の祭祀も可能になります。
④ したがって、あらかじめご自身の後にお墓を承継する者を指定してその旨をお寺に申し出るか、あるいは、永代供養の手続をとるべきかについて、まずはお寺と話し合いをされてみてはいかがでしょうか。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q79 祭祀主宰者の指定

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【Q79】亡き父の遺言に「すべての財産は長男の私に」ということが書いてありました。お墓の権利も当然私のものとおもっていたら、弟が自分にも権利があると言ってきました。本当ですか。

【POINT】
① 祭祀財産の承継方法の相続との違い
② 祭祀主宰者の指定方法

1⃣ 祭祀財産の承継
⑴ 祭祀財産
① 法律上、お墓の権利に関しては、相続財産とは別の財産として、その承継方法が定められています。
② 民法896条は、相続財産の承継方法について定めていますが、その次条である897条1項は、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
③ ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」とし、2項は「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める」としています。
④ なお、ここに言う「系譜」とは家系図、「祭具」とは仏壇・仏具・位牌、「墳墓」とはお墓(墓石の所有権のほか、墓地使用権も含みます)のことをいい、これらに関する権利をまとめて「祭祀財産」と呼びます。
⑤ このように、民法897条は、祭祀財産を相続財産とは異なる方法で承継させることを明かにしています。
⑵ 祭祀主宰者
① 民法897条によると、祭祀財産は「祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継します。この、祭祀主宰者は、被相続人と親族関係にあることは必要ではなく、また、氏が同じであることも必要ではないとされています(大阪高裁決定)。

2⃣ 祭祀主宰者の指定方法
⑴ 被相続人による指定
① 被相続人が祭祀主宰者を指定した場合には、その指定をされた者が祭祀財産を承継します(民法897条1項ただし書)。
② この祭祀主宰者の指定時期・方法には特に制限はありませんので、生前の口頭での指定でも構いません。また、指定は必ずしも明示的になされる必要はないと考えられ、被相続人が生前にその全財産を贈与して家業を継がせた場合に、祭祀主宰者を黙示的に指定したものと認めた例があります(名古屋高裁判決)。
⑵ 慣習による指定
① 被相続人が祭祀主宰者を指定していない場合には、慣習によって祭祀を主宰すべき者が承継します。ここでいう慣習とは、その地方で一般に通用しているしきたりのことをいいます。
② 旧民法では、「系譜、祭具及ヒ墳墓ノ所有権ハ家督相続ノ特権ニ属ス」としていましたが、前記大阪高裁決定は、897条にいう慣習とは、旧法時代の家督相続的慣習ではなく、新民法施行後新たに育成される慣習である」と判示し、戦後に長男子優先の家督制度が廃止された以上、長男が当然に祭祀主宰者となるという慣習があるとはいえないことを明らかにしました。
⑶ 家庭裁判所による指定
① 被相続人が祭祀主宰者を指定していない場合で、かつ慣習によって祭祀を主宰すべき者が明らかでないときは、家庭裁判所の審判により祭祀主宰者を指定することになります。
② この場合、利害関係人が、家庭裁判所に対して、祭祀主宰者の指定を求める調停を申し立てることになります。そして、当事者間で合意が成立し、これが調書に記載されると、確定した判決と同一の効力を有することになります。
③ 調停が成立しない場合には、家庭裁判所が「承継者と被相続人との身分関係のほか、過去の生活関係及び生活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力、利害関係人の意見等諸般の事情を総合して判断」し、祭祀主宰者を指定することになります。

3⃣ 祭祀財産の分割承継、共同承継の可否
⑴ 単独承継の原則
① 祭祀財産は、単独で承継されるのが原則とされています。
② 法律上、祭祀主宰者の人数を制限する定めはありませんが、祭祀財産である家系図や、仏壇、仏具、位牌、墓地使用権などを複数人で分けてしまうと、家系図がどこに行ったか分からなくなったり、お墓も管理費未納で処分されたりすることが十分考えられるため、単独で承継すべきとされているのです。
③ お墓の権利の分割承継や共同承継が全く認められないわけではありませんが、分割承継や共同承継は、以下に記すような特別の事情があり、かつ混乱の可能性が少ない場合に限って認められているのが現状です。
⑵ 分割承継が認められたケース
① 分割承継が認められた審判例としては、東京家裁昭和49年2月26日審判が挙げられます。
② このケースでは、被相続人が2か所の墓地使用権を有しており、一方の墓地については、被相続人の前妻とその子の遺骨が埋葬され、前妻側の相続人が管理料等の支払をしていたという事情があり、他方の墓地については、前妻の子の遺骨も一部埋葬されてはいたものの、後妻側の相続人が特に承継を望み、前妻側の相続人も一方の墓地のみを承継すれば満足する意向を示していたという事情があったことから、裁判所は、前妻側の相続人と後妻側の相続人が2か所の墓のそれぞれを分割して承継することを認めました。
⑶ 共同承継が認められたケース
① また、共同承継については、墓地の所有形態が共有であって、先祖代々一つの墓に二つの家の祖先の遺骨が埋葬されており、いずれか一方の家系の者にのみ承継させるのが不合理であるような事情が存在した場合に、「一般的に祭祀の承継者は一人に限られるべきであるが…特別の事情がある場合には、祭祀財産を共同して承継するものとして承継者を共同指定することも差し支えない」(仙台家裁審判)としてこれを認めた例があります。

4⃣ 結論
① 亡きお父様の遺言は相続財産をすべて長男に与える趣旨であると思われますが、法律的には、相続財産とお墓の権利を含む祭祀財産は別の権利として扱われています。
② この点「すべての財産は長男に」という文言から、祭祀主宰者の指定も同時になされているのではないかと思われるかもしれません。
③ しかし、本件遺言の正確な文言は分かりかねますが、仮に、これが「すべての財産を長男に相続させる」という文言であった場合、相続財産と祭祀財産は別個の財産ですので、この遺言のみを根拠に、祭祀主宰者の指定があったというのは困難かと思われます。
④ そこで、その他にご質問者がお父様から生前に「墓を守ってくれ」などと言われていたなど、明示または黙示の祭祀主宰者指定があったといえる場合には、ご質問者が祭祀主宰者の地位を承継します。
⑤ しかしこのような事情がない場合には、いずれが祭祀主宰者となるかを慣習により指定することになります。
⑥ 上記のような特別の事情がある場合でない限り、お墓の分割承継や共同承継は認められず、ご質問者と弟様のどちらか一人が祭祀主宰者となります。
⑦ そして、慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所に祭祀主宰者の指定を求める調停を申立て、調停がまとまらないときには、家庭裁判所の審判によって祭祀主宰者が決まることになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q78 墓地に埋蔵されていた遺骨を自宅安置する方法

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【Q78】墓地に埋蔵していた父の遺骨を自宅に安置したいと考えています。どのような手続きをすればよいでしょうか。

【POINT】
① 遺骨の自宅安置の適法性
② 遺骨の自宅安置と改葬許可の要否
③ 将来の紛争予防ー埋蔵証明書の条件

1⃣ 遺骨の自宅安置の適法性
① 墓地以外の区域における埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地埋葬法により禁止されています。しかし、墓地埋葬法は、自己所有の下にある焼骨を自宅に保管することまでは禁止していませんので、自宅に遺骨を安置することは適法に行うことができます。
② ただし、墓地の「経営」にあたるような態様での保管をした場合には、墓地埋葬法に違反するので、遺骨の保管態様については注意して下さい。

2⃣ 自宅安置のための手続きー改葬許可の要否
① 遺骨の場所を移動する行為が、「改葬」に該当する場合には、改葬許可の手続きをとる必要があります。墓地埋葬法において、改葬とは、「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義されています。
② この定義に照らして考えてみますと、埋蔵した焼骨を他の墳墓・納骨堂に移す場合には改葬許可の手続きが必要となりますが、単に遺骨を自宅に安置する場合には改葬許可は不要となります。
③ したがって、遺骨を埋蔵する墓地管理者に対して、遺骨を返還するよう請求し、遺骨を持ち帰れば手続きは終了です。
④ もっとも、埋蔵した焼骨を他の墳墓・納骨堂に移す際に、一時的に遺骨を自宅に安置する場合であれば、この一連の行為が「改葬」に該当するので、改葬許可の手続きが必要となります。
⑤ 具体的には、改葬許可申請書を現在遺骨が埋蔵・収蔵されている市町村長に対して提出して許可を得るようにしてください。
⑥ 以上は墓地埋葬法の解釈ですが、墓地管理者によっては、遺骨を自宅安置するためであったとしても、改葬許可証がなければ遺骨の引渡しを拒否する運用をするところもあります。
⑦ 実際に、川崎市の管理する霊堂に納骨した焼骨を自宅安置のために返還請求したところ、焼骨の返還は出来ないと対応をされた事例がありました(川崎市緑ヶ丘霊堂における焼骨返還請求事件)。
⑧ この事例で苦情申し立てを受けた市民オンブズマンは、焼骨の自宅安置のための焼骨の返還は改葬に該当せず、市は焼骨の返還に応ずべきであるとの判断を行い、その旨を市に要請したことがあります。
⑨ この要請に対して川崎市は、すでに墓地等に埋蔵された焼骨を自宅に安置する場合およびその後再度埋蔵する場合の手続きについては、長期的な改葬とみなすという川崎市独自の取り扱い基準により遺骨の自宅安置を行う場合には、改葬先の場所の記載について「未定」と記載した改葬許可証の交付を受けたうえで自宅安置を行うこととなり、将来、再度遺骨を埋蔵する必要性が生じた際に改葬許可証を持参のうえ、「未定」の記載を修正してもらう手続きを踏むことになります。
⑩ したがって、遺骨を自宅安置する場合の取り扱いの詳細は各自治体に問合せる必要があり、各自治体の対応の適法性・妥当性に疑義が生じた場合には、法律専門家に相談する必要があります。

3⃣ 将来の紛争予防のためにー埋蔵証明書の交付
① 改葬許可証を得ずに遺骨を自宅安置することができたとしても、現実には将来的に自宅から墓地および納骨堂へ遺骨を埋蔵・収蔵することになる場合も想定されます。
② 墓地管理者は、埋葬許可証、改葬許可証または火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬または焼骨の埋蔵をさせてはならないものとされているので、このような場合には、やはり、改葬許可証を取得する必要が出てきます。
③ また、この改葬許可申請の際には、埋蔵されていた事実を証する埋蔵証明書の添付が必要となります。そこで将来のトラブルを防止するため、遺骨を自宅安置のために引き取る際に埋蔵証明書をあらかじめ発行してもらっておくことが望ましいでしょう。

知的障害を持つ子の「親なきあと問題」への備えと行政書士への相談のすすめ

〜世田谷区砧の行政書士長谷川憲司事務所が支える安心の終活〜


はじめに

知的障害を持つ子どもを育てる親にとって、最大の不安のひとつが「親なきあと問題」です。
「私が亡くなった後、この子はどうやって生活していくのだろう」
「私が認知症になった後、誰がこの子の身の回りを見てくれるのだろう」
「財産は子どものためにきちんと使われるのだろうか」

このような心配は、日々の介護や支援の中で強く感じるものです。
親が元気なうちは、子どもの生活や将来を直接見守ることができます。しかし、いずれ親自身が高齢になり、病気や認知症、そして死に直面するときがやってきます。そのとき、親の代わりに子どもを守る仕組みをつくっておかなければ、知的障害を持つ子どもは社会の中で孤立したり、不利益を被るリスクが高まってしまうのです。

こうした「親なきあと問題」への備えは、実は 早い段階から法的に整えておくことが可能 です。
そして、その具体的な準備を一緒に考え、手続きを支援する専門家が「行政書士」です。

本記事では、知的障害を持つ子どもの将来を守るために必要な制度や手続を解説しながら、世田谷区砧で相続・終活支援を行う 行政書士長谷川憲司事務所 に相談依頼するメリットをご紹介します。

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「親なきあと問題」とは何か

「親なきあと問題」とは、知的障害・発達障害・精神障害などを持つ子どもの親が認知症になったり、亡くなったりなどで介護できなくなったりした後に、その子どもの生活や権利を誰が守るのかという問題を指します。

特に日本では、障害を持つ人の多くが親と同居し、親の支援に大きく依存している現状があります。厚生労働省の調査でも、知的障害者の約7割以上が親と同居しているとされ、親の高齢化とともに深刻化するのが「親なきあと」の現実です。

親なきあとに想定されるリスク

  1. 生活面での困難
    • 食事、入浴、通院などの日常生活が自力で営めない
    • 施設やグループホームへの入所手続きが進まない
  2. 金銭管理の問題
    • 預金や年金を自分で管理できず、悪意ある第三者に狙われやすい
    • 遺産を相続しても適切に活用できない
  3. 法的なトラブル
    • 相続の手続きができず、財産が放置される
    • 契約や更新手続きが滞り、生活基盤が崩れる
  4. 孤立と虐待のリスク
    • 親族との関係が希薄な場合、見守る人がいなくなる
    • 支援者不在で虐待や詐欺に巻き込まれる可能性がある

こうしたリスクを回避するためには、親が元気なうちに「子どもを守る仕組み」を設計しておくことが欠かせません。

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親なきあと対策に活用できる制度

親なきあと問題に備えるために、日本にはいくつかの法的制度や契約の仕組みがあります。

1. 成年後見制度

判断能力が不十分な人を法的にサポートする制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、後見人が選任されます。後見人は財産管理や契約の代理、生活支援のための法的行為を行います。

  • メリット
    • 法的に強い権限を持ち、財産や権利が守られる
    • 親亡き後も裁判所の監督の下で支援が続く
  • デメリット
    • 親が後見人になる場合、親の死後に再選任が必要
    • 報酬や手続きの負担がある

2. 任意後見契約

将来に備えて、あらかじめ「誰に、どのように支援してもらうか」を公正証書で契約しておく制度です。

  • 特徴
    • 親が元気なうちに信頼できる人(親族や専門家)を後見人候補に指定できる
    • 発効は本人の判断能力が低下してから

任意後見は、親自身の認知症の備えとして非常に有効な仕組みです。

3. 遺言書・遺言公正証書

親の財産を子どもの生活に確実に役立てるためには、遺言が必須です。
「この財産は子どものために使う」「後見制度を利用するためにこの資産を残す」などの希望を具体的に書き、それを法的に有効な形にして残すことで、遺産が適切に子どもに届きます。

特に 公正証書遺言 は公証人が関与するため、偽造や紛失の心配がなく、遺言執行者をつけることで確実に執行されます。

4. 死後事務委任契約

親が亡くなった後の事務手続きを信頼できる人に依頼する契約です。
葬儀・埋葬、役所への届出、施設退去手続き、財産の整理などを任せることができます。

5. 見守り契約

高齢になった親自身の生活を、第三者が定期的に確認してくれる契約です。
「親なきあと問題」への備えは、まずは親の健康や生活を支えることから始まります。

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行政書士に相談するメリット

上記の制度を活用するには、複雑な法律知識や公的手続きが必要です。そこで力を発揮するのが行政書士です。

行政書士は、遺言、公正証書、契約書作成、死後事務委任契約など、親なきあと対策に必要な文書作成を専門的にサポートできます。

行政書士に相談することで得られる安心

  • 自分の家庭の事情に合った制度を選べる
  • 複数の制度を組み合わせた最適なプランを提案してもらえる
  • 公証役場や行政・福祉機関とのやり取りをスムーズに進められる
  • 法的に有効な文書を確実に残せる

世田谷区砧の行政書士長谷川憲司事務所が選ばれる理由

世田谷区砧にある 行政書士長谷川憲司事務所 は、相続・遺言・成年後見などに特化した事務所です。親なきあと問題の相談を多数扱ってきた実績があります。

特徴

  1. 障害を持つ子の支援に精通
    • 知的障害を持つ子の将来設計に寄り添った具体的な提案
    • 成年後見・任意後見・死後事務委任・遺言を組み合わせた包括的プラン
  2. 地域密着型のサポート
    • 世田谷区を中心に、港区・目黒区・渋谷区など都内全域で対応
    • 地域の福祉機関や施設とも連携しやすい
  3. 丁寧なヒアリングと安心の説明
    • 専門用語を避け、わかりやすく解説
    • 初めての方でも安心して相談できる雰囲気
  4. 終活全般をトータルサポート
    • 相続手続きから死後事務までワンストップで対応

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親なきあとに備える具体的な流れ

  1. 現状把握
    • 親の財産、子どもの生活状況、支援体制を確認
  2. 制度選択
    • 成年後見、任意後見、遺言、死後事務委任などを検討
  3. 文書作成
    • 公正証書遺言や任意後見契約書、死後事務委任契約書を行政書士がサポート
  4. 定期的な見直し
    • 家族の状況や法律改正に応じてアップデート

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まとめ

知的障害を持つ子どもの「親なきあと問題」は、避けることのできない現実です。
しかし、親が元気なうちから備えを始めれば、子どもの生活と将来は大きく守られます。

成年後見制度、任意後見契約、遺言、死後事務委任契約――これらを正しく組み合わせることで、親亡き後も子どもが安心して暮らせる仕組みをつくることができます。

そして、その複雑な制度設計を一緒に考え、確実に実行へと導いてくれるのが 行政書士 です。

世田谷区砧の 行政書士長谷川憲司事務所 は、地域に根ざした親身な相談対応と豊富な経験で、多くの家庭の「親なきあと問題」を解決へと導いてきました。

「うちの子の将来が不安」
そう感じたときが、備えを始めるタイミングです。

安心して子どもの未来を託せる仕組みを整えるために、ぜひ一度、行政書士長谷川憲司事務所にご相談ください。


👉 ご相談・お問い合わせは 世田谷区砧の行政書士長谷川憲司事務所 まで。
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〒157-0073
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T&F:03-3416-7250
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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q77 遺骨埋蔵(収蔵)証明書

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【Q77】新しく霊園墓地を買い、郷里の母の遺骨を移そうとしたら、郷里のお墓は山の中にあり、管理者がいないので埋蔵証明書を出してもらえません。どうしたらよいのでしょうか。

【POINT】
① 墓地管理者がいない場合の遺骨収蔵証明書にかわる書面

1⃣ 改葬の手続
① ご質問の「霊園を買い、郷里の母の遺骨を移そう」というのは、埋蔵した焼骨を他の墳墓に移そうとすることにほかなりませんので、ご質問者は墓埋法にいう「改葬」を計画していることになります。
② 墓埋法施行規則2条2項1号は、改葬の許可申請書に墓地又は納骨堂の管理者の作成した埋葬もしくは埋蔵または収蔵の事実を証する書面(遺骨の場合、「遺骨埋蔵(収蔵)証明書」と呼ばれています)を添付することを求めていますが、一方、同規定の末尾には、「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」との定めもおいています。
③ そうしますと、ご質問のケースが、上記「これにより難い特別の事情のある場合」に該当するとして、「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」が具体的にいかなる書面であるかの検討をしなければなりません。

2⃣ ご質問に対する回答
① 墓地管理者の遺骨埋蔵証明書を入手できない場合としては、墓地管理者がいない場合だけでなく、墓地管理者がいても改葬に反対している等の理由で、遺骨埋蔵証明書を書いてもらえない場合もあります。
② そのような場合について、鳥取衛生部長の問い合わせに対し、厚生省の環境衛生課長が次のように答えています。
③ 問 「墓地埋葬等に関する法律施行規則第2条中について改葬申請人亦は申請受任者の要請に不拘墓地管理人は次の証明をする事に応じない。この場合申請人亦はその受任者は右の事実を立証する書面を添えて申請する事に依り市長は改葬許可証を下附する事の適否について」
④ 答 「改葬許可の申請にあたり、墓地若しくは納骨堂の管理者が埋葬若しくは納骨の事実の証明を拒むべきでないのであるが、もし拒んだ場合はお尋ねのようにこれにかわる立証の書面をもって取り扱って差し支えない。
⑤ ただし、本法はあくまでも国民の宗教感情上に合致して支障なく事が運ばれることを最も重視すべきで、このような場合においても極力当該管理者に証明書を出させるよう指導を行い万遺憾なきを期する用すべきである。」
⑥ ご質問のケースでは、墓地管理者がいない場合にも当てはまると思われますので、ご質問のようなケースでも「これにかわる立証の書面」によって対応が可能ということになります。
⑦ では、遺骨埋蔵証明書に「かわる立証の書面」とは具体的にどのようなものが考えられるでしょうか。
⑧ ケースバイケースですが、墓地管理者がいるケースでは、経過を詳述した改葬申請書の陳述書や管理料を支払ってきたことの裏付けとなる領収証等がこれに該当するでしょう。
⑨ また、ご質問のケースのように、山林にある村落型共同墓地のような場合であれば、改葬申請書の陳述書や写真のほか、当該地域の長老の陳述書などが、これに該当することになると思います。
⑩ したがって、ご質問のようなケースでは、市町村の役場に対して、現在の墓地管理者の遺骨埋蔵証明書を提出するかわりに、現在の墓地に遺骨が埋蔵されていることを立証する書面を提出することによって、改葬許可を得ることができる取扱いとなっていますので、その書面を提出して、改葬許可を取得するよう試みたらよいでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q76 無縁墓地の改葬手続

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【Q76】5年ぶりにお墓参りしたらお墓はなく、父の遺骨は合葬墓にあると聞きました。無縁になったので、改葬したと言われました。墓石も霊園で処分してしまったそうです。こんなことは許されるのでしょうか。

【POINT】
① 無縁墳墓の認定
② 無縁墳墓の改葬に必要な行政上・私法上の手続

1⃣ 無縁墳墓の改葬手続
① 墓地埋葬法では、死体を埋葬し、または焼骨を埋蔵する施設を「墳墓」といい、その墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域を「墓地」といいます。
② そして、死亡者の縁故者がいない墳墓を「無縁墳墓」といいますが、世の中では「無縁墓地」という呼び方がよく使われているようです。ここでは「無縁墓地」という呼び方をします。
③ ところで、公営墓地では、無縁墓地の改葬手続を行う場合、きちんとした手続を踏んでいる場合が多く、かつ、その使用権も永代ではなく、期間を定められている場合が少なくありません。そうしますと、公営墓地ではご質問のような問題はあまり発生しません。
④ ご質問の中に、「墓石も霊園で処分してしまった」とありますが、ここでは、当該霊園がいわゆる寺院墓地であるか、民営墓地であるかのいずれかであるとして、以下、説明します。
⑤ まず、墓地の管理者は、無縁墓地の改葬を行うことができるのか、行うことができるとして、どのような手続をとらなければならないかを押さえておく必要があります。

2⃣ 無縁墓地の改葬
① 焼骨(一般にいう遺骨のこと)を現在埋蔵されている墓地から、他の墓地に移す必要が生じる場合があります。
② 一つは、墓地使用者が遠方に引越したため、墓参の都合上、引越し先で新たな墓地を購入したような場合や、信仰する宗教・宗派を変えたため、新しく信仰するようになった宗教団体の墓地を購入したような場合などです。つまり、墓地使用者側の都合による場合です。
③ もう一つは、霊園側に改葬する必要が生じる場合です。霊園が区画整理の 対象となったような場合もそうでしょうし、埋葬者の縁故者がいなくなって、墓地管理料の納付がなくなった場合等も考えられます。そして、埋葬者の縁故者がいなくなった場合の改葬を、無縁墓地の改葬と呼んでいます。

3⃣ 行政上求められる手続
① 従前、墓地埋葬法施行規則では、無縁墓地の改葬手続に厳格な定めを置いていましたが、その手続きを履践するには、高額の費用等を要し、事実上、無理を強いるような内容でした。
② そして、墓地不足の申告かも背景として、平成11年に墓地埋葬法施行規則の一部改正が行われ、無縁墓地の改葬手続は簡略化されました。
③ 現在、無縁墓地の改葬には、改葬許可申請書に、墓地の管理者の作成する遺骨埋蔵証明書のほか、以下の書類等を添付すれば足りるとされています。
⑴無縁墳墓の写真及び位置図
⑵死亡者の本籍および氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者および無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し1年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に1年間掲示て、公告し、その期間中にその申出がなかった旨を記載した書面
⑶⑵の官報の写しおよび立札の写真
⑷その他市町村長が特に必要と認める書類
④ なお、⑷については、市区町村においては、あらかじめ必要な添付書類を定めておくことも、個々の事案ごとに必要な書類の添付を求めることも可能と解されており、改葬先の墓地の管理者の受入れを承認する書類がこれに該当します。
⑤ また、ご質問のケースのように、同一墓地内の合葬墓が改葬先であるときは、その所有証明書の提出が求められているようです。

4⃣ 私法上求められる手続
① 墓地埋葬法および同施行規則に定める手続は、行政上の規制を定めたものにすぎませんので、その手続を履践しただけでは、墓地の永代使用権を取得した者(その相続人を含む)との間の私法上の権利義務関係に変動を及ぼすことはできません。
② そのため、墓地の永代使用権を取得した者との間の墓地使用契約の内容となるように、墓地の開設時に作成する墓地使用規則の中に、無縁墓地となった場合の改葬手続に関する定めをおいておくことが必要です。
③ 墓地埋葬法および同施行規則の定める手続を履践するとともに、その墓地使用規則の定める手続を行えば、私法上の権利変動の手続としては足りることになります。
④ しかし、墓地使用規則の中に、かかる定めがおかれていない場合や、現在の規則の中にはおかれているが、当該墓地の永代使用権を販売した時点ではおかれていなかった場合は、民法の規定に従って処理すべきことになります。
⑤ 令和2年に改正された現在の民法(債権法)では、定型約款に関しては、契約の目的に反しない変更であれば、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更がある旨の定めの有無、その他の変更に係る事情に照らして合理的といえる場合、相手方の合意なく変更することができるようになりました。ちなみに墓地使用規則は定型約款に該当します。
⑥ そして改正民法の施行前に締結された定型取引に係る約款についても、改正民法が適用され、定型約款の変更法理が適用されます。
⑦ したがって、墓地使用規則の中に、無縁墓地の改葬に関する規定が設けられていなかったような場合は、定型約款の変更法理を使って、無縁墓地の改葬に関する定めを入れることが可能となっています。

5⃣ 結論
① 無縁墓地の改葬手続に着手するためには、無縁になったと思われる状況が出現していることは、不可欠であると思われます。
② したがって、墓地管理料が支払われている、あるいは、墓地管理料の督促状が墓地使用者の届出住所地宛に着いているような状態では、いかに、前述した行政上および私法上求められている手続を履践しても、改葬手続は違法と言わざるを得ません。
③ 墓地管理料の督促状を送付できるのであれば、墓地管理料の長期不払を理由として、墓地使用契約を解約して墓石撤去および墓地明渡し等の裁判を提起しなければなりません。
④ これに対して、無縁となったと思われる状況が出現していれば、行政上および私法上必要とされる手続を履践したか否かによって結論が異なります。
⑤ これが履践されておれば、霊園の措置を違法とすることはできないでしょう。履践されていなければ、「霊園のとった措置は許されません。ご質問者において、慰謝料等の損害賠償請求をすることが可能ですし、ご質問者が墓地使用者であれば、処分された墓石や侵害された永代使用権についての損害賠償請求もできます」という結論になります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q75 知らないうちに改葬されていた場合

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【Q75】10年ぶりに故郷のお墓参りをしました。ところが、お墓がありません。びっくりしてお寺の住職にお聞きしたら、弟が来て、改葬手続きをして、弟の自宅の近くの墓地に移ったとのことです。私がこのお墓を守って来たのに、このようなことは許されますか。

【POINT】
① 改葬と墓地使用者の承諾

1⃣ 改葬とその手続き
① いったん埋葬した遺体や墓地または納骨堂に埋蔵もしくは収蔵された焼骨を他の墓地等に移すことを、「改葬」と言います。
② 改葬を行うには、厚生労働省令の定めるところにより、現在遺骨等が納められている墓地等の所在地の市町村長(若しくは特別区の区長)から、改葬許可証を得る必要があります。

2⃣ 墓地使用権者の承諾
① これらの規定からわかるように、改葬の許可を申請できるのは墓地使用権者または焼骨収蔵委託者(以下墓地使用権者と言います)です。
② 墓地使用権者等でない者が申請をする場合には、墓地使用権者等の改葬についての承諾書が必要とされています。
③ 墓地使用権者等とは、墓地や納骨堂の名義人もしくは施主とも言われ、当該墓地等の権利者として墓地等の管理者の帳簿に記載されている者をいいます。
④ では、なぜ墓地使用権者等の承諾が必要なのでしょうか。この点については、そもそも遺骨の所有権者が誰かということについて検討する必要があります。
⑤ 通常、墓地の使用権者は、喪主もしくは祭祀主宰者であるため、墓地の使用権者は遺骨の所有権を有することになり、所有権者の意思に反して改葬することは許されないことになります。

3⃣ 誰が使用権者か
① 以上を前提にご質問のケースについて考えてみます。質問者はこれまでお墓を守って来たとのことですが、墓地使用権者となっているのでしょうか。
② 事実上墓地管理料を納めていたり、頻繁に墓参や墓地の清掃をしていたとしても、実際には弟さんが墓地使用権者であるケースもあります。
③ この場合、弟さんは、ご質問者の意向にかかわらず、単独で改葬の許可を得て改装することができます。
④ これに対して、弟さんが墓地使用権者でないにもかかわらず、たとえば使用権者であるご質問者の承諾書を偽造する等の方法により改葬の許可を得たような場合には、実質的な遺骨の所有権者であるご質問者は、改葬許可の取消しや無効を裁判で争うことも可能であります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q74 改葬と離壇料

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【Q74】郷里にある墓が遠く、墓参りや日頃の管理が難しいため、現在の自宅近くの霊園に移そうと思い、手続きを進めていたところ、お寺から高額の離壇料を請求されました。離壇料は支払わなければならないのでしょうか。

【POINT】
① 離壇料をめぐるトラブル
② 改葬する際の留意点

1⃣ 離壇料とは
① 遺骨を別の場所に移動することを「改葬」といい、元のお墓を更地にして返還することを「墓じまい」といいます。「改葬」は法律用語で、「墓じまい」は造語ですが、「墓じまい」と表現する方が一般に伝わりやすいこともあり、お墓を閉じて遺骨を取出し、別の場所に移動する一連の作業を総称して「墓じまい」と表記されることもあります。
② 「改葬」「墓じまい」で起こるトラブルとして、よく取り上げられるのが寺院とのトラブルです。墓じまいをするということは、多くの場合「檀家をやめる」ことに相当します。
③ これを「離壇」というようになり、中には「離壇するなら○○万円を用意するように」と離壇料と称されるお布施を提示されたり、「離壇料を出せないなら改葬に必要となる埋葬証明はできない」と圧力をかける寺院も一部にはあります。
④ しかし、あくまでこれは一部であって、離壇を阻止しようとするどころか、離壇料のような費用を請求するようなケースはほとんどありません。
⑤ そうはいっても、ごく一部、離壇料をめぐるトラブルがあるのも事実です。例えば、「改葬するなら一柱(一人分)につき10万円必要。今回は6柱なので60万円」と離壇料を要求してきた寺院もありましたが、話合いにより全部で10万円で解決したという例がありました。
⑥ 離壇料について、檀信徒契約等で明確に定められていない限り、強制力を伴う性格のものではありません。離壇料という言葉も、近年使用されるようになった造語にすぎず、寺院に喜捨するお布施として位置づけられています。
⑦ 労働やサービスの対価ではないので、明朗会計とはいきませんが、一回の法要で用意するお布施の2~3倍程度が妥当なのではないかと言われています。

2⃣ 改葬する権利と留意点
① 法的には遺骨の所有権は祭祀承継者に帰属するため、寺院の意向より祭祀承継者の意思が尊重されることになります。信教の自由もあり、寺院が改葬を阻止することはできません。
② そうはいっても、相談もなく強引に「改葬」「墓じまい」をしてしまうのはトラブルの元です。まずは先に「墓を整理したい」「今のお墓を維持していくことが困難で墓じまいを視野に入れている」等、事前に相談または意思を伝えておいた方がよいでしょう。
③ 「寺院が改葬を阻止する」というと寺院があたかも悪者のように聞こえてしまいますが、改葬トラブルが悪化した人の話を聞くと、改葬に必要な一連の事務的な手続きの話を、何の前触れもなく切り出したために不義理な印象を与え、話がこじれてしまうケースが多いような気がします。
④ 寺院はマンションの管理とは異なり、日々の勤行などを通じてお墓を守っている意識があります。住居の引越しなどの感覚で、前触れもなく突然改葬の話をされたら、快く思わないのも当然です。
⑤ そもそも寺院と檀家の関係とは、寺院は仏の教えを説き、信者は檀家となって布施など経済的な支援で寺院を支え、葬式や法事を行ってもらう関係にあります。
⑥ 話がどうしてもまとまらない場合は、当人同士の話し合いはあきらめ、法律実務家に間に入ってもらい、話し合いを進める方法もあります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q73 改葬の手続きの流れ

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【Q73】郷里にあるお墓を現在の自宅近くの霊園に移そうと思います。どのような手続きが必要ですか。

【POINT】
① 改葬とその手続き
② 無許可の改葬に対する罰則等

1⃣ 改葬手続き
① 改葬とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、または、埋蔵し、もしくは収蔵した焼骨を、他の墳墓または納骨堂に移すことをいいます。
② 墓地埋葬法は、改葬手続きについて規定しており、改葬を行うには、厚生労働省令の定めるところにより、市町村長の許可を得なければなりません。
③ この場合の市町村長は、死体または焼骨の現に存在する地の市町村長になります。そして、墓地や納骨堂の管理者は、改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨の埋蔵や収蔵をさせてはならないとなっています。

2⃣ 改葬許可申請と必要書類
① 改葬の許可を得るためには、次の事項を記載した申請書を提出しなければなりません。
⑴死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は父母の本籍、住所、氏名)
⑵死亡年月日(死産の場合は分娩年月日)
⑶埋葬又は火葬の場所
⑷埋葬又は火葬の年月日
⑸改葬の理由
⑹改葬の場所
⑺申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者等との関係
② そして、上記申請書には、次に掲げる書類を添付する必要があります。
⑴墓地又は納骨堂の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面
⑵墓地使用者等以外の者にあっては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本
⑶その他市町村長が特に必要と認める書類

3⃣ 違反の場合の罰則等
① ご質問のように、一度郷里の墓地に埋葬した遺骨を他の墓地に移すことは、改葬に該当します。
② したがって、上記に述べた墓地埋葬法および同法施行規則所定の改葬手続きを履行する必要があります。
③ 具体的には、先ず郷里の市町村長に対して改葬の許可申請を行い、改葬許可証を取得して、これを改葬先の墓地に提出する必要があります。
④ 上記の手続きを経ずに改葬した場合には、罰金、拘留もしくは科料の罰則が規定されており、場合によっては刑法の墳墓発掘罪や墳墓発掘死体損壊等罪に触れる場合もあるため注意が必要です。

4⃣ 改葬先の霊園との関係
① なお、上記に述べた手続きのほかにも、郷里の墳墓については返還する必要があり(いわゆる墓じまい)、改葬先の霊園との関係では、永代使用権の設定契約を新たに締結する必要があります。
② ですので、郷里の墓地との関係では、管理規則等に定められた手続きに従って墓地を返還しなければならず、改葬先の霊園には、同様に管理規則等に従い所定の永代使用料や墓地管理料を納付することになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q72 分骨する場合の祭祀主宰者の許可

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q72 分骨する場合の祭祀主宰者の許可についての記事です。

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【Q72】父の遺骨を分けてもらい、婚家のお墓に納骨しようと思い、兄の菩提寺に行ったら、兄の承諾を得て欲しいと住職にいわれました。兄に頼むことは事情があって不可能です。どうしたらよいでしょうか。

【POINT】
① 分骨手続き
② 遺骨の所有権の帰属

1⃣ 分骨
① 遺骨を分けて、2か所以上の墳墓や納骨堂に埋蔵もしくは収蔵することを分骨と言います。したがって、ご質問のように、すでに埋蔵された遺骨の一部を他の墓地に移す場合には、分骨に関する手続きを履行する必要があります。

2⃣ 墓地管理者による証明書の発行
① すでに墓地等に埋蔵もしくは収蔵された遺骨を分骨する場合の手続きは、墓地埋葬法施行規則に規定されています。
② すなわち、同施行規則5条1項は、「墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者の請求があつたときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を、これに交付しなければならない」と定めています。
③ 同条2項は、「焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、前項に規定する書類を提出しなければならない」と定めています。
④ したがって、ご質問の場合、ご質問者は、墓地の管理者に対して、遺骨が埋蔵されていることを証する書類の交付を求め、その交付を受けて婚家の墓地の管理者に提出する必要があります。

3⃣ 遺骨の所有権の帰属
① では、ご質問のように、分骨に際してお寺からお兄さんの承諾を要求された場合にはどうすればよいでしょうか。この点、墓地埋葬法施行規則5条1項の証明書を請求するに際しては、墓地の使用権者等の承諾は要件とはされていません。
② しかし、遺骨についても所有権が成立することから、所有権者の意思に反して遺骨を分けることはできません。よって、分骨を行う際には、遺骨の所有権者の承諾が必要となります。
③ では、遺骨の所有権は誰に帰属するのでしょうか。遺骨の所有権の帰属については、⑴遺骨は相続財産を構成し、相続により相続人に帰属するという説。
④ ⑵慣習法上定まった喪主に帰属するという説、⑶祭具に準じて祭祀主宰者が承継するという説があります。

4⃣ 分骨と遺骨の所有者の承諾
① ご質問では、ご質問者の兄が墓地の使用権者となっているため、兄が祭祀主宰者であると考えられます。とすれば、上記に述べた説を鑑みた場合、亡くなったお父さまの遺骨の所有権は、兄に帰属していると考えるべきでしょう。
② したがって、ご質問者は兄の承諾を得なければ、そもそも分骨を行うことは出来ないと考えざるを得ません。