【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q59 墓地使用の約款

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【Q59】墓地使用規則をみると、霊園の都合によって、必要があれば墓所を移動させることがある旨の規定がありました。いったん納骨した遺骨を霊園の都合で改葬して移動させることは許されるのですか。

【POINT】
① 墓地使用規則の法的拘束力ー約款
② 墓所移動既定の法的拘束力
③ 改葬手続き

1⃣ 墓地使用規則の法的拘束力ー約款
① 墓地提供者である霊園と墓地使用者との間における法律関係は、慣習や「黙示の合意」によって規律されている場合もありますが、近年では、墓地使用規則によって規律されていることが多いです。
② 墓地使用規則の名称・内容は霊園によってさまざまであるものの、墓地使用規則では、主として墓地の使用目的、使用者の宗派に関する事項、墓地の使用権、管理料、契約の解除等に関する事項が定められます。
③ 墓地使用規則は、多数取引のためにあらかじめ事業者側で定型化した契約条件である「約款」の性質を有するため、「約款」である墓地使用規則の内容は霊園と墓地使用者との間の墓地使用契約の内容を構成します。厚生労働省も墓地使用に関する標準契約約款を提示しています。
④ 約款に関しては令和2年4月1日に施行された改正民法により「定型約款」という概念が創設されました。改正前の規則も定型約款に該当する可能性があります。
⑤ 墓地使用規則が定型約款に該当する場合は、霊園は一定の条件の下でみなし合意を主張でき、内容の表示義務が発生し、相手方の同意なく一方的に定型約款の内容を変更しうる効果が発生します。
⑥ 墓地使用規則が、定型約款に該当しない場合でも、霊園は民法改正前のとおり、一般的な約款法理に基づく墓地使用規則の歩王的拘束力を主張できます。
⑦ 墓地使用規則が定型約款・約款ではないとされた場合には、当事者間の明治または黙示の合意の限度で墓地使用規則の拘束力があることになります。
⑧ 以上を踏まえると、一般論として、墓地使用規則は法的拘束力を有し、霊園と墓地使用者との間における墓地使用契約の内容を構成していることが多い、といえるでしょう。

2⃣ 墓所移動規定の法的拘束力
⑴ 墓所移動規定の解釈
① たとえば、墓地使用規則に、契約終了後の原状回復義務を元使用者側が履行しない場合に、「契約終了後○年経過後に墓石等の移動、改葬手続きを経ての焼骨の移動ができる」旨の定めや、墓地の公用収容や墓域整備その他の必要のため代替地を用意の上改葬を求めたときの使用者が拒否することができない旨の定めの例はあります。
➁ もっとも質問のように「霊園の都合によって、必要があれば墓所を移動させることがある旨の規定」という抽象的な霊園都合での一方的な移動を墓地使用規則に定める例はあまり多くはないと思います。
③ このような広範な霊園都合での墓所移動規定であっても、当事者間における合意等により法的拘束力を説明できる場合はありますが、霊園の都合という意味内容がいかなる事態を指すのかについては必ずしも明らかではありません。
④ 公営型墓地に関してですが、地方公共団体の長が使用区画の変更を求める要件として、「管理、事業執行上の必要性」を定めている場合でも、「当該区画の使用継続が、墓地全体の管理上重大な支障が生じるなど墓地の固定制を犠牲にするのもやむを得ない事情がある場合で、かつ、使用者側にとっても従前の使用区画における使用環境と比較し、新たな使用区画が実質上不利益にならない場合」に例外的に使用者の承諾を不要とする見解も存在します(茨城県弁護士会編「墓地の法律と実務」)。
⑤ この見解を参考にすると、仮に霊園の都合を要件とする墓所移動規定が存在する場合でも、霊園の都合が制限的に解釈され、墓地管理上の支障や墓地使用者側の実質的不利益の不存在・軽微性などが要求される可能性があります。
⑥ よってご質問の事例では、墓地使用者側の必要性(墓域整備などの事由)があり、使用者に対して相応の代替地等を用意して改葬を求められたときは「霊園の都合」による墓所の移動が可能であり、墓地使用者もこれに応じる民事上の義務があると解釈される可能性があります。

⑵ 損害賠償責任、解除
① 墓地使用者の承諾なく墓所移動規定を根拠に霊園が勝手に墓所を移動させた場合、霊園は、墓地使用契約の債務不履行または不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
➁ 東京地裁平成5年11月30日判決は、墓地使用者の承諾を得ずに墓石を移動した行為について信頼関係の破壊を理由とする解除およびこれに伴う原状回復義務として永代使用料・管理料返還義務を認めるとともに、不法行為に基づく損害賠償責任を認めています。

3⃣ 改葬手続き
① 仮に霊園の都合による墓所移動が可能であり、墓地使用者側もこれに応じる民事上の義務があると解釈された場合であっても、霊園側で自由に墓所を移動できるわけではなく、墓地埋葬法上の手続きを踏む必要はあります。
➁ 墓地埋葬法上、改葬には市町村長の許可を要し、墓地使用者等以外の者が改葬許可申請を行う場合、「墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本」を添付する必要があります。
③ 霊園側としては改葬を行う理由を説明したうえで墓地使用者から改葬承諾書を取得することになります。もし改葬承諾書を任意に提出しない場合には、霊園は墓地使用者に対して、「被告は原告に対し、目録記載の焼骨を目録記載の土地に改葬することを承諾せよ」との判決を求める民事訴訟を提起して判決を取得し、この「裁判の謄本」を添付して改葬許可申請を行う必要があります。
④ そのため、仮に墓所移動規定があっても霊園側が一方的に霊園都合で墓所を移動することはできず、墓地使用者から改葬承諾書を取得するか、民事訴訟を提起して「裁判の謄本」を取得したうえで、改葬許可申請の手続きを経たうえで改葬をすることになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q58 墓石業者との契約と墓地使用規則

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【Q58】石屋に高さ3mの竿石を注文したら、石屋に「そんなに大きい石はだめだ」と言われました。危険だからというわけではなく、この霊園は2mまでのものしかだめだというのです。また、木を植えようとしたらこれもだめ。このようなことは許されますか。

【POINT】
① 霊園墓地の使用契約
➁ 霊園の共同使用関係

1⃣ 墓地使用規則
① 墓地の経営管理は、墓地埋葬法10条1項により、都道府県知事の経営許可を得た者でなければ行うことができません。
➁ 霊園事業は、その許可権者である知事の監督を受ける公益的事業であり、事業を行うにあたっては必ず墓地の管理者を任命することになっており、その管理者が、墓地の使用内容を墓地使用規則といった名称の約款として定めています。
③ 霊園は、不特定多数の利用者を予定しており、墓地の管理上、このような規則をもって一定の規制をすることで、公益事業を行う者としての責任を持った管理を行えるように体制を整えているのです。
④ 墓地は、遺骨を埋蔵して追善するための施設であり、参詣者が読経し、線香・供花を手向けるなどの使用以外には使用できませんし、使用者が、当該墓地の使用権を自由に他人に転貸・譲渡することもできません。
⑤ のみならず、他の墓地使用者にとっても迷惑を及ぼすわけにもいきません。樹木の繁茂や豪雪台風による倒壊・折損被害の防止については、そもそも使用者自身が注意しなければなりませんが、仮にそれらの問題が生じ他の使用者の墓地区画に被害が及んだ場合には、本来的には使用者同士で解決する問題ではあるものの、霊園管理者としてもなんらかの責任追及をされかねません。
⑥ したがって、霊園の管理においては、各墓地の区画使用について、一定の行為制限が必要であり、その対策が墓地使用規則などの約款によって定められているのです。
⑦ 墓地使用規則においては、墓石の高さの制限や樹木の植栽の禁止などの条項が設けられていることがあります。
⑧ 墓地が高い樹木で覆われてしまうと、土地柄によっては、開放感が損なわれたり、浮浪者に不法占拠されたり、犯罪者に悪用されたりすることの危険性が増してしまいます。そのために墓石の高さや樹木の植栽の禁止策がとられるのです。
⑨ また、墓参者の安全や霊園としての尊厳保持などのため、あるいは外観上の美観保持の問題もあります。このように様々な理由を背景として使用者の行為の制限が定められているわけです。
⑩ 多人数が共同で使用する墓地は、多くの墓地来訪者の使用に供されるものであり、各使用者は必ずしも同じ宗教・宗派に属していないことが一般的ですから、霊園の管理者としては、できるだけ少ない労力で管理することが大事となりますし、墓地経営に対しては行政が監督しているという面もあるため、一定の規制がされていることは不合理なものとは言えないでしょう。
⑪ したがって、ご質問の場合、墓地使用規則に墓石の高さについての制限や植栽の禁止が定められているのであれば、使用者はその内容に従わなければなりません。墓地使用規則によっては、この規制に違反した場合には、契約解除とされる場合もあり得ますので、その点はよく確認する必要があります。

2⃣ 墓石業者との契約
① 霊園の管理者にあたっては、規模にもよりますが、石材店が窓口となることがあります。これは、霊園の開発にあたって宗教法人と石材店が共同で行い、霊園の経営主体は宗教法人であるものの、管理や販売に関しては石材業者に委託している場合があるからです。
➁ このような場合には、墓石の建立等にあたっては、指定された石材店に注文しなければならないという趣旨の項目が墓地使用規則に定められていることが多くみられます。
③ 霊園開発を共同で行っていない場合であっても指定石材店制度が設けられているところもあります。いずれにせよ、霊園の経営者である宗教法人ではなく、管理や販売を任された石材業者が窓口となる場合においても、石材業者は墓地使用規則の定めに従って管理や販売をすることになります。
④ ご質問のケースにおいても、石材業者は、自身の都合で墓石の高さや植栽について意見を述べているのではなく、墓地使用規則に基づいて対応していると思われます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q57 指定石材店制度と他の墓石業者の選択

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【Q57】親戚に石屋がいますので、この者に依頼して墓石を建立しようとしました。ところが、霊園には出入りの石屋がいて、その人に頼まなければいけないとのことです。私が注文するのだから私の自由ではないのでしょうか。

【POINT】
① 墓地使用規則の確認
② 指定石材店制度と独占禁止法

1⃣ まずは墓地使用規則の確認を
① まず、ご質問者の霊園の墓地使用規則を見直してみてください。墓地使用規則に「墓石の購入・墓石の建立工事は指定石材店を用いて行わなければならない」という趣旨の項目は入っているでしょうか。
② 墓地使用規則にその旨の項目が入っていなければ、墓石工事に指定石材店を用いることは、ご質問者と霊園との間の墓地使用契約の内容となっていないので、霊園から霊園出入りの石屋に墓石工事を頼むよう言われても、ご質問者にはそれを受け入れる義務はありません(もっとも霊園側との今後の関係を考えると断るのは困難かもしれませんが)。
③ 墓地使用規則にその旨の項目が入っている場合は、ご質問者と霊園の墓地使用契約の内容になっているため、ご質問者は墓石の建立に際して、霊園指定の石材店を用いる義務があります。

2⃣ 指定石材店制度と独占禁止法との関係
① 独占禁止法19条は、事業者が、不公正な取引方法を用いることを禁じています。どのような行為が不公正な取引方法にあたるかについて、公正取引委員会は、告示を出しています。
➁ その告示の10項には「抱き合わせ販売等」という項目があり、「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己の指定する事業者と取引するように強制すること」が不公正な取引方法にあたるとしています。
③ 指定石材店制度の場合、墓所の使用権の設定と墓所に設置する墓石の購入、墓地建立工事、墓地のメンテナンスを一体化させたような制度ですから、前述の「抱き合わせ販売等」に該当するのではないかとの指摘がなされています。
④ しかし、墓石の購入や墓石建立工事はそれのみを取り出せば、一時的な取引ですが、霊園の管理運営は、永続性が求められ、長期的な保守・管理が必要となるため、その霊園の管理運営について事情をよくわきまえ、経営基盤がしっかりした石材業者を指定石材店とする必要性が高いという特殊性があります。
⑤ このようなことから、指定石材店制度は制度として許容され、「抱き合わせ販売等」に該当しないとされています。

3⃣ 現実的な対応
① このように、墓地使用規則に制定石材店制度が規定されていた場合、ご質問者は、墓地使用契約上、霊園が指定した石材店を墓石の建立の際に用いる義務があります。
➁ しかし、契約内容はお互いの合意によって変更することができます。まずは、霊園側に「親戚の石材店で墓石をぜひとも建立したい」とあなたの希望を正直に直接伝えてみたらいかがでしょうか。
③ 指定石材店以外の石材店でも、将来のお墓の管理やメンテナンスをきちんと行うことを伝えれば、工事を許可してもらえたり、指定石材店の名義を借りて工事をさせてもらえたりする例もあるようです。もっとも、その場合、いくばくかのお礼を支払うことが必要なことが多いようです。
④ 霊園が、ご質問者の希望を聞き入れず、指定石材店以外の石材店を使うことを許可しなかった場合、ご質問者は指定石材店に墓石の建立を頼むしかありません。
⑤ もし、ご質問者が指定石材店を用いず、親戚の石材店で墓石の建立を行った場合、霊園は、ご質問者との間の墓地使用契約を解除してくるなど、トラブルが発生することは必至ですので、申請の石材店に頼むことを強行するのはやめておいたほうが良いでしょう。
⑥ 霊園が指定石材店以外の石材店の利用を認めなかったにもかかわらず、どうしても親戚の石材店に墓石の建立を頼みたいのならば、他の霊園に移るしかないと思われます。
⑦ その際、その霊園に指定石材店制度があるかないかを事前に確認することが必須になります。なお、墓地区画を返還するに際して、永代使用料はほとんど戻ってこない可能性がありますので、中途解約の場合に永代使用料の扱いについて墓地使用規則をもう一度よく確認してください。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q56 墓石建立条件付墓地とその条件に違反した場合

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【Q56】霊園側より、墓地を買ったら1年以内に外柵を作って欲しいと言われました。まだ私には納骨すべき遺骨がないので、更地のままにしておきたいのですが、外柵をつくらなければなりませんか。

【POINT】
① 墓地使用規則の確認
② 工事施行実施期間の定めに違反した場合の効果

1⃣ まずは墓地使用規則の確認を
① 霊園側から、墓地購入後1年以内に外柵を作って欲しいと言われているとのことですが、まずは墓地使用規則の内容の確認をしてみてください。
② もし、1年以内に外柵を作る旨の規定がなければ、それは契約の内容となっていませんので、あなたには墓地購入後1年以内に外柵を作る義務はありません。
③ そこで、1年以内に外柵を作る旨の規定があった場合について、以下説明します。

2⃣ 工事施行実施期間の趣旨
① 公営・民営を問わず、多くの墓地では、墓地使用規則(公営の場合墓地使用条例)において、「墓地使用権取得後、○年以内に外柵工事、または建墓をしなくてはならない」といった墓所区画内の工事施行実施期間の制約を定めています。
② なぜ、このような工事施行実施期間が定められてるのでしょうか。理由は大きく二つあると考えられます。一つは墓地の景観の保持、もう一つは恒久性のある石材などで外柵を設けておかないと、区画の境界が曖昧になってしまうという理由です。
③ そして、墓地使用規則に「墓地購入後、外柵を1年以内に設ける」旨の工事施行実施期間の定めのあった場合、それはご質問者と霊園側の墓地使用契約の内容となっているため、ご質問者には、墓地購入後1年以内に墓地区画に外柵を設置する義務があります。
④ なお、墓地使用規則において工事施行実施期間の定めがある場合、工事施工時・施行後に霊園管理者に届出をする旨の定めがあることが通例ですから、届出を忘れないようにしてください。

3⃣ 工事施行実施期間の定めに違反したらどうなるか
① ご質問者が、墓地使用規則の工事施行実施期間の定めに反して、墓地購入後1年以内に墓地に外柵を設けなかった場合はどうなるのでしょうか。
② 公営墓地の場合は、条例の定める許可条件に違反したとして、墓地使用権の取消しがなされる可能性があります。民営墓地の場合は、契約違反だとして、解除がなされる可能性があります。
③ もっとも、墓地使用権は、一般に慣習法上の物権であるとされることが多く、強固な権利です。また、墓地使用権は、単なる私権ではなく、宗教的感情や公衆衛生上の見地も加味された権利であると言えます。
④ したがって、墓地使用権の取消しもしくは墓地使用契約の解除をめぐって争いが裁判所に持ち込まれた場合、工事施行実施期間の定めが合理的か否か、解除の必要性・相当性があるか等、解除の有効性が厳格に判断されることになるでしょう。
⑤ とはいえ、墓地使用規則に工事施行実施期間の定めがあった場合は、その内容がよほど不合理ではない限り、墓地使用規則の定めに従って工事をすべきでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q55 管理料と消費税

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【Q55】今年から管理料に消費税を上乗せした請求書が届きました。管理料に消費税はかかるのでしょうか。

【POINT】
① 墓地管理料の対価的性質
② 消費税対象取引の収入総額

1⃣ 消費税概論
① 消費税とは、広義では、商品・製品の販売やサービスの提供などの消費に対して課される税金をいいます。
② 狭義では、消費税法の定める消費税と地方税法の定める地方消費税の総称をいいます。

2⃣ 墓地管理料と消費税
⑴ 消費税該当性
① 墓地の管理料とは、墓地内の共同使用部分や共益施設などの維持保全、清掃、環境の整備、事務などに要する管理費について、墓地使用契約に基づいて、墓地使用者が墓地管理者に対して定期的に支払う金員を意味します。
② そうすると、このような墓地の管理辞退は、上に示した消費税の定義のサービスの提供に該当することになります。問題は、管理料を支払うことが、同定義の消費に該当するといえるのか、すなわち、管理料が酢の対価として支払われていると評価できるかという点にあります。

⑵ 墓地管理業務の性質と対価性
① 墓地管理料がサービスの対価であるかという点について、墓地の管理業務の性質をどのように考えるかによって結論が異なってきます。
Ⓐ 墓地使用者の利益移を重視する立場
① 墓地の管理とは、墓地管理者が、墓地使用者に対し、墓所の良好な環境の継続および墓地を使用する際の便益を提供するために行うものであるという考え方があります。
② この見解に立てば、墓地使用者は、管理によって得られる利益に対して墓地管理料を支払っていることになり、対価関係が認められ、消費税の課税対象となります。

Ⓑ 管理者の円滑な運営を重視する立場
① これに対して、墓地全体の維持管理を図り、その利便性・快適性を向上させ、もって墓地経営者が事業を円滑に運営するために墓地の管理が行われているのである、という考え方があります。
② この見解に立てば、墓地使用者に利益がないため、対価を観念することができませんから、消費税の課税対象にはなりません。

⑶ 国税不服審判所の判断
Ⓐ 消費税における対価性が争われた事例
① 墓地管理料に消費税が課税されたことを不服として、対価性がないことを理由に審判を求めた事例において、審判所は上記⑵Ⓐの墓地使用者の利益を重視する立場とほぼ同様の見解に立ちました。
② すなわち、墓地管理料は使用者の利益の対価として支払われるものであり、消費税を課税することは不当ではないと判断しました。

Ⓑ 法人税における収益事業性が争われた事例
① 墓地管理が、請負業に該当するとして法人税が課されたことを不服として、これらに該当しないとして審判を求めた事例において、審判所は上記⑵Ⓑとほぼ同様の見解に立ちました。
② 具体的には、まず、収益事業の解釈として、公益法人が営む収益事業の範囲をむやみに拡大すべきではないとしました。
③ そのうえで、前期⑵Ⓑの立場、すなわち管理者の円滑な運営のために墓地管理が行われることを前提に、「管理者のために墓地を管理することは、使用者からの注文・指図という要素がなく、請負に当たらない」として、収益事業該当性を否定しました。

3⃣ まとめ
① このように審決の見解は分かれているため、実務上は、リスクを回避するために、前記2⃣⑵Ⓐの見解によって処理される可能性を考慮し、管理費に消費税をかける墓地経営者が多いと考えられます。
➁ 消費税法においては、非課税とする取引が列挙して規定されていますが、その中に墓地管理料があげられていないこともあり、墓地管理料に消費税が課されることはやむを得ないと考えなければいけないでしょう。
③ なお、墓地の永代使用料には消費税は課税されません。永代使用料とは、墓地の存する土地を借りるために支払われる金員であり、このような土地の貸付けは、商品・製品の販売やサービスの提供などの消費に該当しないため、その対価である永代使用料にも課税されないのです。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q54 管理料における管理の内容

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【Q54】毎年管理料を支払っているのに、私の墓所内はいつも草が生えています。お参りするたびに草取りをしなければなりません。私も老いてきて草取りするのもつらくなりました。これは、管理不行き届きではありませんか。

【POINT】
① 管理料の法的性質(一般論)
② 個々の契約における管理料既定の内容

1⃣ 管理料の発生根拠
⑴ 概説
① 墓地の管理料とは、墓地内の共同使用部分や共益施設などの維持保全、清掃、環境の整備、事務などに要する管理費について、墓地使用契約に基づいて、墓地使用者が墓地管理者に対して定期的に支払う金員を意味します。
② 管理料と一口に言っても、その内容は各墓地使用契約ごとに異なりますので、ここでは、最も平易な例を用いて説明します。

⑵ 条例および規則の規定
① 地方公共団体が経営する公営墓地の場合、条例および規則において「条例の定める額の範囲内において、規則の定める額の管理料を徴収する」と定められていることが通常です。
② 公益法人が経営する事業墓地(いわゆる霊園墓地)の場合、墓地使用規則において「使用者は、別に定める管理料を所定の時期に納入する」と定められていることが通常です。
③ 寺院が経営する民営墓地の場合、墓地使用規則において「墓地使用者は、当寺の檀徒として墓地を使用でき」、「毎年、当寺が定めるところによる管理料を納入する」と定められていることが通常です。
④ 墓地の使用者は、これらの定めに従って、管理料を支払う義務を負っているのです。

2⃣ 管理料の内容
⑴ 問題の所在
① 以上のように、条例や規則において管理料について定められているのが通常ですが、その使途(内容)については、必ずしも明確にされていないようです。
② そこでご質問のように、「自分が使用している墓所区画内の清掃や除草」をすることが管理料の内容に含まれるのかが問題となります。

⑵ 墓地管理料の使途
① 墓地管理料は、園内通路や植栽、水場や休憩所などの各種設備や施設の維持管理の費用に充てられます。したがって、これらの費用と、埋葬や改装、分骨等に伴う事務処理のための人件費などを基礎にして、墓地管理料の舞台的な金額が算定されているというのが実情です。
② すなわち、墓地管理料を支払うということは、墓地使用者の共用部分や共益施設について発生する「共益的費用」を分担することを意味します。
③ ここで気をつけなければならないことは、墓地を使用することの対価ではなく、あくまで永続継続して墓地使用するという用益的な関係において定期的に支払うべき金員であるという点です。

3⃣ 結論
① 以上の説明に基づきますと、まず、管理料には「自分が使用している墓所区画内の清掃や除草をするための費用」は含まれません。
② 上記2⃣のような管理料の性質に照らせば、墓地管理料とは、あくまで墓地「全体」を管理するために求められている負担であって、個々の墓所区画内の管理をするために求められているものではないからです。
③ したがって、ご自身が使用している墓所区画内の清掃や除草がされていないことをもって、管理不行き届きであると主張することは難しいように思われます。仮に使用する墓所の面積を基に管理料を計算する方法をとっていたとしても、個々の区画の管理を前提としているとは必ずしも言えないでしょう。
④ 冒頭で説明した通り、あくまでこれは一般論です。規則において「墓地管理料には、個々の区画の清掃や除草の費用を含める」というような規定が存在する場合には、当然、管理不行き届きと主張することも可能となってくるでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q53 霊園管理料の値上げ

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【Q53】霊園から管理料値上げの通知が来ました。比較的最近に値上げがあったばかりなのに、また値上げとは納得できません。管理料は霊園の都合で勝手に値上げできるものでしょうか。

【POINT】
① 管理料値上げ条項に基づく相当額までの値上げ
② 事情変更の法理による管理料の値上げ

1⃣ 霊園管理料の定め
① 霊園管理料は、名前の通り、霊園の環境保全、整備、管理等に要する費用であり、通常、霊園使用者から、その支払いが行なわれています。
② 具体的には、霊園の使用規則や管理規則の中に、「使用者は毎年いくらいくらの管理料を納入しなければならない」旨の定めがあり、これを承諾して霊園を購入することにより成立する管理契約に基づき、管理料が支払われることになります。

2⃣ 管理料の値上げ条項がある場合
① 霊園使用規則の中には、「物価の上昇その他経済事情の変動等により、管理料の額が不相当になったときには、これを改定することができる」との条項が設けられていることも少なくありません。
② その旨の条項がある場合には、霊園使用者として相当額までの管理料の改定に応じる義務があります。しかし、そのことは、霊園側からの値上げ要請額を無条件で承諾しなければならないことを意味するものでもありません。
③ 管理料の額が不相当になったといえるか、いくらに改定することが相当なのかについて、霊園側に説明を求め、納得のいくところで合意するのが望ましいでしょう。
④ どうしても合意に達しなければ、裁判所における調停や訴訟により、増額の当否を決めてもらうことになります。
⑤ しかし、裁判に勝訴しても費用倒れになることが多いでしょうし、霊園との間で裁判することはあまりお勧めできることでもありませんから、それ以前に話し合いによって解決することをお勧めします。

3⃣ 管理料の値上げ条項がない場合
① 霊園使用規則の中に、上記のような管理料改定についての条項がない場合には、管理料の値上げが一切許されないかというとそうではありません。
② 常識的に考えても、たとえば、諸物価が高騰し続けた場合に、改定条項がないからといって使用料が永久に不変であるというのは不合理であることは明らかです。
③ そこで法律の世界には、「事情変更の法理」という理論があります。これは「契約は、双方が慎重に協議検討のうえ締結されるものであるから、その一方的変更をみだりに許すべきではないが、契約締結当時予想できなかったような大きな事情の変更があり、契約をそのまま存続させることがかえって公平・正義に反すると考えられるような場合には、契約の変更ないし解除を認めるべきである」という法理です。
④ この法理は、借地借家法に採り入れられ、物価の変動に応じた地代家賃の改定が認められていることは、広く知られているところです。
⑤ ただし、一定期間改定をしないという特約があるとか、比較的最近改定したばかりであるというような場合には、裁判所は、法的安定性維持の立場から事情変更の法理に基づく改定を認めないことがあります。

4⃣ 結論
① 結論としては、無条件で霊園管理料の値上げ請求に応じる必要はありませんが、上記のような観点から値上げ請求の合理性の有無を判断し、合理性のある範囲でこれに応じるという姿勢で弾力的に霊園側と話し合うことをお勧めします。
② なお、物価が低下したときには、逆に、同じ法理によって管理料の値下げを申し入れることも可能です。

5⃣ 寺院墓地の場合
① 寺院墓地の場合も、墓地管理料の値上げについては、以上に述べたところと同様に考えることができます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q52 永代使用権の更新

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【Q52】先日、お寺から、「三十三回忌がきたので、今年4月1日で永代使用期間が切れる」という通知が来ました。更新するか、終了するかを決めるようにとのことです。永代というのに、このようなことがあるのでしょうか。

【POINT】
① 墓地購入の法的性質
② 永代使用と永代供養の違い

1⃣ 「墓地を買う」とは
① 私たちは、日常的に「お墓を買う」とか、「墓地を購入する」という言い方をします。電話で「お墓を買いませんか」などと勧誘を受けたりチラシをご覧になることがあると思います。
② 「永代使用」の意味を理解する前提として、そもそも「お墓を買う」とは法律上どのような意味を持つのでしょうか。
⑴ お墓とは
① お墓に関する事柄を規律する法律である墓地埋葬法には、「墓」という漠然とした概念はなく、「墳墓」「墓地」「納骨堂」と分けて、それぞれ定義規定が置かれています。
② すなわち墳墓とは、死体を埋葬し、または焼骨を埋蔵する施設であり、墓地とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事等の許可を受けた区域をいい、納骨堂とは、他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設を指します。
③ 日常用語である「お墓」からイメージするものは、人それぞれ違いがあるかと思いますが、お墓を買うといった場合、その対象は、通常「墓地内の一定の区域区画」を意味します。永代使用という言葉は、一般的には「墓地」について使われますが、「納骨堂」についても永代使用という形式をとる霊園もあります。
⑵ 「買う」とは
① 「買う」という言葉は、通常、その目的物の所有権を取得することを意味します。しかし、お墓の場合には、「指定された区域区画について、墳墓を設けるために排他的、永続的に使用する権利(墓地使用権)を取得すること」を意味するだけであって、決して、その区域区画の所有権を取得することではありません。所有権はあくまでも、霊園・寺院側に残ります。

2⃣ 永代使用とは
① 「永代使用」という言葉は法律上の用語ではなく、祭祀承継者がいる限り期限を定めずに代々承継して使用できるという墓地の一般的な使用権を示す意味で使われているにすぎません。したがって、すべての墓地使用権は永代使用権であるとも言えます。
② しかし、永代使用権であることと、更新手続きが必要であるかどうか、更新料を支払う義務があるかどうかは、別問題です。墓地をめぐる法律関係は、各地の慣習によるところが大きく、一概に論じることはできません。
③ 伝統的な寺院墓地における墓地使用権は、通常、更新という概念もなく、更新料の支払を要しないことが多いでしょう。その代わり、諸法要の際に相当のお布施を納めなければなりませんし、護持会会費や本堂改修費用等を寄付する必要もあるでしょう。
④ これに対し、霊園墓地においては、永代と言っても長期というほどの意味しか持たないのが通常であるといえるでしょう。
⑤ 最初に一時金として永代使用料を支払って墓地使用権を購入し、その後定期的に定額の「管理料」を払い続け、墓地購入契約により定められた一定時期が来るたびに更新することによって、使用権を承継し続けることができるというものです。
⑥ したがって、永代使用の具体的な期間・内容については、霊園との契約に定められた内容によって決まります。長い年月をかけて承継されていく途中で、承継者がいなくなることもありますし、別の埋葬方法を選択することも想定されます。
⑦ そこで実際には、三十三回忌までなどの有期契約とし、期間満了時に契約更新といった方法をとることが多いようです。このような有期使用権は、使用者にとっては、契約時に支払う使用料を軽減できますし、霊園にとっては、更新がない場合の土地の再利用が可能となるなど、双方にメリットがあります。
⑧ そこで、このように、永代と言っても「長期」という程度の意味しかもたない場合がありえるのです。もっとも、近年、「永代」という概念が明確でなく、誤解を招くことから、単に「使用権」という言葉を使う霊園もあります。
⑨ なお、墓地使用権は墓地管理規則等に規定がある場合はもちろんのこと、規定がない場合であっても、永代と称するか否かにかかわらず、第三者に転貸したり、売却することはできません。
⑩ 途中で、墓地を移転したいとか、不要になった等の理由で解約しても、墓地購入代金や永代使用料の払戻しを受けることはできません。祭祀承継者がいなくなり、無縁墓地となれば、墓地使用権は消滅すると考えられます。

3⃣ 永代供養とは
① 「永代使用」と似た言葉に「永代供養」があります。永代供養は、少子化や未婚者の増加、子供のいない夫婦や子供がお墓の承継を望まない場合など、お墓の面倒を見てくれる人がいない場合に、お寺などが代わりに管理・供養してくれるものです。
② この場合にも、三十三回忌などを契機に合祀墓へ合祀する霊園もあるようですが、供養自体は継続して行ってくれますので、「永代」という言葉本来の意味に近いかもしれません。

4⃣ 結論
① ご質問のケースにつきましては、まず、寺院の慣習や霊園との間で交わした墓地使用に関する契約書や関連する書類を確認してください。
② 「永代使用」の具体的内容は、各霊園・寺院との契約内容や慣習によって決まるからです。実際には、祭祀承継者の不存在等を考慮して、三十三回忌までなどの有期契約とし、期間満了時に契約更新という方法がとられていることも多いようですが、寺院墓地では慣習によるところが大きいようです。
③ 有期の墓地使用契約であれば、たとえ「永代」という名称をつけていても、契約に定められた期限が来れば終了し、あとは更新するかどうかの問題となります。
④ あなたが更新を希望するのであれば、寺院・霊園は正当な事由がない限り、更新を拒絶することはできません。寺院・霊園側からいえば、紛争の予防のためには、「墓地使用規則」などのルールを定め、使用者に墓地の使用方法等を理解してもらう必要があります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q51 墓地管理料の使途についての会計報告

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【Q51】私は菩提寺に対して、毎年、墓地管理料を支払っていますが、どのように使用されているのか会計報告がありません。これを知る方法はないでしょうか。

【POINT】
① 収支計算書の記載事項と閲覧請求権
② 墓地管理料収入台帳の記載事項と閲覧請求権

1⃣ 宗教法人の会計書類と閲覧
① 宗教法人法は「宗教法人は…毎会計年度終了後3月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない」旨を定めていますので、これを受けて、各寺院は、その寺院規則において、毎会計年度、決算を行うものと定めています。
② 次いで、同法は、宗教法人は、その事務所に「財産目録及び収支計算書」を備えなければならない旨を定めています。さらに同法は、宗教法人は「信者その他の利害関係人であって」、財産目録および収支計算書を「閲覧することに正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者からの請求があつたときは、これを閲覧させなければならない」旨定めています。
③ 檀信徒が、ここに言う利害関係人であることは明らかであり、かつ自己が納めた墓地管理料がどのように使われているかを調べることには、特段の事情がない限り、正当な利益と目的があると言えますので、あなたには、墓地管理料の使用状況を知るために、寺院に対して収支計算書の閲覧を請求する権利があります。

2⃣ 墓地管理料の台帳の閲覧
① 墓地管理料は、特別会計を用いて大きな墓地を経営しているような寺院を除き、一般の寺院では、上記収支計算書の収入科目のうちの「布施収入」として、葬儀料、戒名料、読経料などと一緒に集計されています。
② 墓地管理料については、支払があったかどうかを管理するため、各寺院において「墓地管理料収入台帳」が作成されているでしょうが、檀信徒には財産目録や収支計算書の閲覧請求権があるものの、その他の帳簿閲覧請求権まではありませんので、寺院に対し墓地管理料収入台帳の閲覧を請求することはできません。
③ したがって、寺院の墓地管理料の収入総額は、自分の支払っている墓地管理料の額と、檀家数もしくは墓地の個数から推測するほかありません。

3⃣ 墓地管理料の使途
① 墓地の管理料がどのように使われているかも、収支計算書からは把握できません。なぜなら、収支計算書の支出の部には「墓地管理費」という科目はなく、墓地に関しては、例えば、墓地周辺の整備費用は「修繕費」として、墓地の清掃のための日当は「人件費」として、墓地使用権者への連絡費用は「事務費」としてそれぞれ支出されていますので、檀信徒から受け入れた墓地管理料の支出総額や明細は、これも各種帳簿を詳細に閲覧しない限り把握できません。
② 結局は、墓地管理料の増額などの機会に、住職に質問して大略を知るよりほかはないと思います。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q50 墓地・墓石と税金

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【Q50】我が家には家墓がありませんので、墓を購入しようと思いますが、墓の購入には税金がかかるのでしょうか。また、私が死亡して子供が墓を承継する場合、相続税はかかるのでしょうか。

【POINT】
① 墓の購入と消費税等
➁ 墓の管理と消費税等
③ 墓と相続税

1⃣ 墓の購入と税金
⑴ 墓購入時の税
① 一般的に墓を新規に購入する場合、その寺院に納める墓地代(永代使用料)と石材業者に支払う墓石代および工事費が必要になります。
➁ 墓地代(永代使用料)は消費税等が非課税となり、墓石代および工事費には10%の消費税等が課税となります。
Ⓐ 墓地代(永代使用料)
① 「永代使用料」は、一般的に、永代にわたりその墓地を使用する権利の代金のこととされています。墓地として土地を購入するのではなく、あくまで使用する権利の代金です。
➁ つまり寺院からみれば、永代使用料を受領して行う墳墓地の貸付けということになります。消費税法上は「土地の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の一定の場合を除く)」を非課税取引と規定します。
③ それゆえ墓地代(永代使用料)は原則として、消費税法において非課税とされるのです。

Ⓑ 墓石代および工事費
① 墓石代および工事費は、消費税の非課税取引として規定されていません。
➁またこの墓石代および工事費は、国内において事業者が行なった資産の譲渡等に該当するため課税対象外(不課税)取引にも該当せず、課税対象取引として消費税の課税対象となります。

⑵墓の管理と税
① 墓地代(永代使用料)と墓石代および工事費は、墓の購入時にのみかかる費用です。しかし、その後、墓の「管理費」を継続して支払うことが求められます。
➁ この「墓地、霊園の管理料」は、非課税取引、課税対象外(不課税)取引のいずれにも該当しません。したがって消費税が課されることになります。

2⃣ 墓の承継と税
⑴ 墓と相続税
① 墓を承継すると税金はかかるのでしょうか。相続税法は非課税財産として、「墓所、霊びよう及び祭具ならびにこれらに準ずるもの」と規定します。ですから墓を相続しても相続税はかかりません。
➁ これは墓が「祭祀財産」とみなされるためです。「祭祀財産」とは、一般的に神や祖先をお祀りするためのものをいい、民法では具体的に系譜、祭具および墳墓を挙げ、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承する」と規定します。
③ つまり、これらを一般財産とは切り離し、別個に承継されるべき旨を規定するのです。相続税法は、「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」を相続税の非課税財産としているのです。
④ 系譜とは一体何でしょうか。一般的に系譜とは、血縁関係、系統関係のつながりをいい、これを図式的に記したもので家系図などがこれにあたります。
⑤ 祭具とは、祭祀に用いられる道具のことです。墳墓は、遺体や遺骨などを埋めて供養する墓所のことといわれます。墓石のほか、その敷地となる墓地もこれに含まれます。
⑥ 相続税法では、「これらに準ずるもの」とは、「庭内神し、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているもの」がこれに該当するものとして扱われています。
⑦ 「墓所、霊びよう」についても「墓地、墓石およびおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件を含むもの」として取り扱いを定めています。
⑧ ただし、「これらに準ずるもの」、すなわち、庭内神し、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものであっても、商品、骨とう品または投資の対象として所有するものはこれに含まれず、相続税の課税対象となる場合があるので、注意が必要です。

⑵ 墓の購入費用に係る借入金
① 相続税法は、相続税額の計算にあたり、「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む)」を債務控除として、控除することを認めています。
② では、生前に墓を金融機関からの借入金により取得し、相続開始の時点でこの借入金に残高がある場合、この借入金残高は債務控除として控除できるのでしょうか。
③ 墓は相続税の非課税財産でした。このような生前に被相続人が購入した墓の借入金などといった相続税の非課税財産に関する債務は、相続税の計算上、債務として差し引くことができません。
④ 債務控除の規定では、「被相続人に係る葬式費用」も控除の対象としています。しかし、葬式費用には、墓碑および墓地の買入費並びに墓地の借入料は含まれません。