【任意後見制度】財産管理契約の注意点 管理人(受任者)の途中変更

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約移行型の財産管理契約の注意点 管理人(受任者)の途中変更について考えてみたいと思います。

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【1】財産の管理人(受任者)を途中で変更できるか

財産の管理人を変更するということは、財産管理契約の受任者すなわち契約の相手方を変更することを意味しますので、そのような場合は、当該受任者との契約を解約することになります。

そして、新たな受任者と改めて移行型任意後見契約を締結することになります。

もっとも、任意後見契約については移行後(家庭裁判所で任意後見監督人を選任したあと)の財産の管理人すなわち任意後見人の変更は制限されています。

財産の管理人すなわち任意後見既契約の受任者を変更する場合は、新たな受任者と任意後見契約を締結する必要があります。

今までの旧任意後見契約については、終了の登記を、委任者又は受任者から申請することが必要です。新たな任意後見契約については、公証人が後見登録登記所(東京法務局民事行政部後見登録課)に嘱託することになります。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 遺言の代理はできない

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【1】遺言は本人でなければできない

遺言は、法律に決められた事項について、遺言者が単独で法律で定められた方式でする相手方のない意思表示で、遺言する者だけの意思に基づくものですので、これを第三者(受任者等)に代わりにやってもらうことはできません。

遺言は15歳以上であればすることができます。ただし、遺言をするには意思能力があることが必要です。例えば、認知症のように、自分の行為の結果を正確に認識できない人は遺言をすることはできません。

遺言をする人は、遺言をする時点でその能力があればよいので(民法963条)、任意被後見人や成年被後見人であっても物事の判断能力を回復していれば、法律で定めた遺言の方式に従わなければならないのはもちろんですが、医師2人以上の立会いのもとに遺言をすることはできます。

【2】遺産分割は受任者が本人に代わって参加できる

本人が遺産分割協議に関する事項について受任者に代理権を与えているときは、受任者が遺産分割協議に参加し意見を述べることができます。

その際、本人に判断能力があれば本人の指示に従って、あるいは判断能力の低下前になされた本人の意思の表明に従って、遺産分割協議で意見を述べることになりますが、判断能力のない状態であれば、本人の利益を保護ないし確保する立場から、少なくとも本人の法定相続分に沿った意見を述べることになるものと考えます。

【3】任意後見監督人等が本人を代表する場合がある(利益相反行為)

任意後見監督人がすでに選任されている場合(すなわち「移行後」)において、任意後見人(受任者)が本人(委任者)とともに共同相続人であるときは、両者は利益相反の関係に立ちますので、この場合には任意後見監督人が本人を代表することになります(任意後見契約法7条1項4号)。

任意後見監督人が選任される前であれば、受任者は、他の中立的立場の第三者に本人の代理人となってもらうのが相当です。

これらの手続きを怠って任意後見人(受任者)が利益相反行為を行なった場合、その行為は無効となる上、任意後見員(受任者)はその職務を解任等されてしまうおそれがありますので、注意が必要です。

【4】本人と受任者(任意後見人)との利益相反行為

次のような行為は利益相反行為にあたるとされ、受任者(任意後見人)が本人の代理人として取引などをしても無権代理行為(代理権を有しない者が代理人として法律行為を行なうこと)となります。

①本人(A)と受任者(B)とが共同相続人の立場にあるときは、双方の間で利益が相反する関係となり、このような場合はBがAを代理することは禁止されています。

遺産分割協議のほか、相続放棄のような単独行為についても最高裁は利益相反を認めています。ただし、他の相続人全員が相続放棄している場合や、全員が一斉に放棄する場合は該当しないとしています。

②BがAの所有する不動産の贈与を受けたり買い受けたりする場合、不動産を受ける者がBの配偶者や内縁関係にある者も同様に利益相反行為に当たります。

③Bの債務を担保するために、Aの不動産に担保権を設定したり、Aを保証人とすることなども利益相反行為に当たります。なお、Bの財産をAに贈与するようなAに利益をもたらすだけの行為であれば、利益相反行為には該当しないことになります。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 自宅は手放したくない

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【1】財産管理契約では通常「処分」は含まれない

財産管理契約では、土地や建物などを売却する不動産の処分行為は、委任の範囲に入れないのが通例です。「移行型」の場合の委任契約の代理権目録の記載も「財産の管理、保全」であり、「処分」は受権範囲に入れておりません。

したがって、この定型文例による限り、財産管理契約では、受任者には不動産を処分する権限が与えられておりませんので、自宅を処分されるということはありません。

もっとも委任する事務の内容及び範囲は、本人(委任者)と受任者とで自由に決めることができるので、自宅を処分したくないということであれば、代理権の範囲についての記述中に、自宅の処分を行なってはならない旨明記すればよいということになります。

仮に、当初の契約に代理権の範囲として不動産の処分を入れていた場合、あるいは逆にそれを「管理、保全」に縮小する場合は、任意後見契約では、一部解除は認められていませんので、締結済みの財産管理契約及び任意後見契約を合意解除して、新たに縮小した代理権目録による契約を締結することになります。

【2】移行後の任意後見契約でも「処分」を含めないことは可能

任意後見契約では、不動産の保存、管理のほか処分をも含めた代理権を受任者に付与するのが実務において通常行われていますが、特に、自宅のような本人にとって特別の思い入れのある重要な財産については、これを除外して代理権の範囲を設定することも可能です。

また、財産管理契約と同様に、代理権の範囲から「不動産の処分」それ自体を除外することもできます。また、自宅は手放したくないが、将来施設に入るようなことがあったら処分することもやむを得ないと考えるのであれば、その旨を受任者によく伝えておくことも必要ですし、重要財産の処分について慎重に対処してほしいと考えるなら、任意後見人一人の判断に任せず、不動産を処分する場合は、任意後見監督人の承認を得るようにしておくことも可能です。

公正証書に実務では、重要な委任事項について任意後見人がその事務を行なう際に、任意後見監督人の書面による同意を必要とすることも行われております。

ちなみに、法定後見の場合には、成年後見人が本人の不動産を処分するときは、家庭裁判所の許可を要するとされています。(民法859条の3)。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 医療行為への同意 

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【1】医者の治療方針への同意の現状

医師が患者(本人)に対して医療行為を行なう場合、本人の同意を得なければなりませんが、このとき本人に判断能力があれば、自己決定権に基づき医療行為を受けるか否かを本人が決断することになります。

本人に判断能力がなく、親族もいない場合、いても疎遠で関与を拒否しているような場合、医師が任意後見人(受任者)に当該医療行為を受けることについての諾否を求めてくることがあります。

【2】医療行為の同意は委任や代理になじまない

患者が医師から説明を受け、医療行為についての諾否を表明する権利は患者本人の自己決定権に基づく固有のものであって、委任及び代理にはなじまないと解されています。したがって、財産管理契約及び任意後見契約の代理権(本人に代わって事務を行なう権限)には含まれません。

また、一般的に任意後見契約の「代理権目録(任意後見契約)」には、「医療行為、入院契約、介護契約、その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入退所契約に関する事項」との記載がありますが、この委任事項には医療行為についての決定権・同意権は含まれないことになります。

【3】法制審議会意見

このことについて、法制審議会(法務省民事局参事官室「成年後見制度の改正に関する要綱試案の解説ー要綱試案・概要・補足説明」)では、成年後見において医療行為に関する決定権・同意権について、一時的に意識を失った患者又は未成年者に対する医療行為に関する決定・同意と共通する問題であり、それら一般の場合における決定・同意権者、決定・同意の根拠・限界などについて、社会一般のコンセンサスが得られているとは到底言い難い現在の状況の下で成年後見の場面についてのみ医療行為に関する決定権・同意権に関する規定を導入することは時期尚早であるとしています。

【4】今後の課題・・・医療行為に関する任意後見人の権限

前述の法制審議会の意見を踏まえながらも、委任者の強い希望があり、かつ受任者が了解する場合、医師から医療行為についての説明を受け、当該医療行為を受けることについての諾否を表明することに関する事項について代理権を付与するとの公正証書も見受けられます。

ただ、その場合でも、例えば、遺言公正証書末尾の付言事項と同じように、任意後見契約公正証書の本文中に、判断能力喪失の場合における受任者の医療行為への関わりの内容、程度を受任者にあまり過負担とならないよう、希望事項(付言事項)として記載する程度にとどめている例もあるようです。

医療行為に関する任意後見人の諾否の権限については、上記の通り不透明な状況です。当面、受任者にとっては、医療行為に関する決定・同意は財産管理契約及び任意後見契約における身上監護の事務の範囲を超えた事項であり、これに応ずる権限も義務もないということになります。

しかしながら、少なくとも公正証書の付言事項として、本人の希望を記載した事項については、受任者は担当医師に本人の判断能力を失う前の希望として伝える必要はあると思われます。

この医療行為についての決定・同意権については、日本は超高齢社会を迎え、一人住まいの高齢者が増える現状において、速やかな検討と法整備が期待されます。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 予備の受任者を選びたい

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【1】予備の受任者を選んでおきたい。

受任者が複数の場合、第1順位の受任者をAとし、第2順位の受任者をBとするなど優先順位を定めることは、少なくとも登記所との関係ではできないとされています。

後見登記法にこのような予備的契約を登記する規定がないからです。そうしますと、AとBを同列の受任者とする任意後見契約を締結するほかありません。その上で、「Aが病気や死亡によって後見事務を行なうことができなくなったときには、Bは任意後見監督人の選任の請求をしなければならない。」と定めた場合にはどうなるでしょうか。

この点については、日本公証人連合会「新版 証書の作成と文例 全訂家事関係偏」(立花書房、2005年)111ページでも、「このような特約は登記されないし、Bが特約に違反して、Aの職務遂行中に任意後見監督人選任の請求をした場合、家庭裁判所は特約に拘束されないので注意を要する」と指摘しています。

確かに裁判所に対して効力を生じない特約を設けることには、疑義が存しないわけではありません。しかし、裁判所を拘束する効果はなくとも、契約当事者間で効力を生じると解するのを妨げる理由はなく、かえって、本人の意思を尊重するという任意後見契約法の趣旨に適合すると考えられます。

したがって、このような契約も当事者間においては有効であり、当事者であるBには契約上の義務が委任者(本人)との関係で生じるものと考えられます。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 複数の受任者・後見人でお願いしたい「各自代理方式」

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【1】各自代理方式

この方式は、複数の受任者がそれぞれ単独で代理権を行使できることを定める方式です。この場合は、契約は本人(委任者)と各受任者との複数の契約となり、一つの公正証書で行うこともできますし、各受任者ごとに複数の公正証書によっても行なうことはできます。

仮に、一通の公正証書による場合でも、契約はあくまで受任者ごとに別個ということになるので、受任者の1人にふさわしくない事由(不適任事由)があっても、他の受任者が適任であれば、適任者について任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力を生じさせることができます。

この各自代理方式による場合も、複数の受任者が高齢者と接触しますので、認知症などの到来に気づき、財産管理契約から任意後見契約への移行がスムースに行われることが期待できます。

しかし、特に、受任者であるAとBがそれぞれ別個の公正証書によるものである場合、Aの請求で任意後見監督人が選任されたならば、その任意後見監督人はAのみを監督し、Bには監督権は及びません。したがってAと本人との関係では、財産管理契約は終了し、任意後見契約に移行しますが、受任者Bとの関係では、Bについて任意後見監督人が選任されない限り、財産管理契約はなお存続し、任意後見契約は効力を生じていないことになります。

その結果、Aの任意後見事務は任意後見監督人にチェックされているのに、Bの財産管理事務は、もはや本人のチェックができず、誰からも監督されないことになります。それでも、Bの財産管理契約は有効ですので、AもBの行動を制限することはできません。

このような問題が生じることは極めてまれな例だと思われますが、委任者本人にとっては決して望ましい状態とはいえません。公正証書作成段階では、本人(委任者)は受任者が複数になることは十分認識しているはずですので、先行する契約の受任者に通知をするなどの手段を講じる必要があると思われます(同時に契約する場合は一通にするなど)。

尚、各自代理には、受任者が代理権の全範囲にわたり各自同じ事務を単独で行うことができる方式と、代理権の一部を各受任者が分掌して、受任者がその分掌事務を各自単独で行う方式とがあります。

中身はいろいろあるようですが、代表的なものに、財産管理については専門知識が必要であるので司法書士や弁護士、税理士や行政書士などの専門家に分掌させ、身上監護については親族や福祉の専門家に分掌させるなどの方法があります。

各自代理の場合は、たとえ1通の公正証書によって任意後見契約を締結したとしても、受任者は別々ですので、公証人が任意後見契約の締結の登記を嘱託する際は、複数(受任者の分だけ)必要となります。

 

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 老後のライフプラン

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【1】「移行型」の活用

財産管理契約の中では、財産の管理のほか本人(委任者)の生活、療養看護に関する事務も委任でき、老人ホーム等への入所契約、入院契約、福祉サービス利用契約などを受任者に任せ契約してもらうことができます。

本人が希望する老人ホームに入るには、その老人ホームと入所契約を締結する必要があります。その際に、本人に判断能力があり自分の意思を受任者にしっかりと伝えることができる状態であれば、受任者は、本人の意思を最大限尊重して委任事務を実行することになるので、希望どおりに本人が入りたい老人ホーム等の施設と契約をした上で、入所することができるでしょう。

しかし、認知症などで判断能力が低下し自分の考えや希望を正確に伝えることができない状態の場合は、速やかに任意後見に移行した上、任意後見人が調査をし判断した結果、本人(委任者)にとって最も良いと思われる施設を決定して入所契約を結ぶということになります。

この場合、任意後見人が本人の希望を知らされていない場合には、本人の希望と異なる施設に入所する結果となるかもしれません。
生活の本拠をどこに定めるのかは本人が決定することですので、任意後見人は、本人の意思に反して入所契約を締結することはできないと考えられます。

しかし、本人が徘徊を繰り返したり、失火を起こすなどの危険があって、一人ではとても生活できない状況の場合には、本人の身の安全を確保するために必要であれば、本人が施設への入所を拒んでも、任意後見人の判断により、施設への入所もやむを得ないものと考えられます。

このような場合を想定して、本人は、普段から受任者(任意後見人将来なる人)に対して入所する施設に関する希望を伝えておく必要があります。
また、財産管理契約を結ぶときにすでにそのような希望があるのなら、契約の中に具体的に盛り込んでおくこともできます。

 

【2】老後のライフプランを作る

自分の老後の人生設計に関しては、それが契約の内容として生かせる事項は財産管理契約の中に盛り込めますが、契約の内容にはなりにくい事項もあります。
本人が希望する事項の中で、例えば、①介護は在宅か施設か、②施設はどこか、③施設に入所した場合自宅をどうするか、④医療にかかるときの治療方法、⑤病院はどこにするか、⑥葬儀や埋葬、墓地についての希望、⑦死亡したときの連絡先などについて、これらの意思表明を文書にしておき、受任者にしっかり承知しておいてもらえれば、本人の希望に沿った財産管理及び療養看護に役立ててもらうことができます。

人は自分で判断し処理できる状態と亡くなるまでの間に、人の支援を受けなければ生活できない時期があります。その場合でも財産管理及び任意後見に関する希望を表明しておくことによって、本人に代わって任意後見人等が行う事務が、本人の希望に沿ったものとなるための助けになると思われます。
そのために、判断能力があるうちに、自分の意思の表明として、老後のためのライフプランを作っておくことは意味があります。

 

【3】かかりつけの病院、医者は変えたくない

高齢者にとって、行き慣れた病院を変えるのは大きな負担です。また、病状を熟知した医者に最後まで診てもらいたいと願っている高齢者も多いでしょう。
このような本人の希望についても、契約文言に入れることは可能です。

しかし、本人の意思であっても、契約の内容にはなりにくい事項も多いと思われます。介護や後見に関する希望を本人の判断能力が低下した後も実行してもらうには、受任者に日頃から伝えておくこと、希望を表明する文書を作成しておくことも必要です。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 準委任契約

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【1】法律行為は委任契約(財産管理契約、任意後見契約)

任意後見契約において委任することが予定されている事務は「自己の生活、療養看護及び財産に関する事務」(後見事務)に限られています(任意後見契約法2条では、受任者に委任できる事務は代理になじむ法律行為に限られています。)

対象となる法律行為は、例えば不動産の売買契約、賃貸借契約、介護契約、医療契約の締結や解約などです。ここで想定されている委任事務は法律行為だけですので、介護などの事実行為は含まれておりません。

 

【2】事実行為は準委任契約で

日常生活の中で、買い物や散歩の補助、通院の際の付き添い、介護行為や家事手伝いなどの事実行為の支援を必要とする場合には、これらの事実行為を依頼することも有効です。これらの事務は準委任契約(民法656条)として後見事務の受任者と同じ人に任せることもできます。

さらにペットの世話や墓参りの代行など身上監護とは言えない事務も任せることが可能です。そしてこの準委任契約を財産管理契約及び任意後見契約とともに3個の契約として1つの公正証書に記載することも可能です。

ただし、任意後見契約の代理権目録は、任意後見契約法では法律行為に限られますので、準委任契約の内容を任意後見契約の代理権目録に記載することは当然できないものと解されます。

この準委任契約は、財産管理契約から任意後見契約に移行した場合に、財産管理契約は終了することになるので、その時、準委任契約も終了するとの疑義を生じないよう、財産管理契約とは別個の契約としたうえ、念のため任意後見契約が発効しても(任意後見監督人が選任された後も)終了しない旨定めておくとよいでしょう。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 移行型の優位点について

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【1】移行型の有効性

一人住まいのご高齢の方が心配されることの一つに、詐欺や悪徳商法に騙されやしないかということがあります。あるいは親族などが勝手に財産を使い込んでしまうといった事例も少なくありません。

このようにして一度失った財産を取り戻すのは容易なことではありません。このような被害に遭わないためにも、判断能力が低下する前から財産管理を委任しておく、財産管理契約と任意後見契約をセットで締結する「移行型」は有効です。

もっとも、自分がしっかりしているうちは財産の管理は自分で行うが、判断能力が低下していないかどうか、継続的に見守って欲しいという方は、「将来型」と継続的見守り契約を併用することもできます。

 

【2】見守りの必要性

本人が家族と同居している場合や施設に入所している場合は、本人の判断能力の低下に誰も気づかず長期間放置されるようなことはなく、周りに常に人がいることから悪徳事業者も近寄るのが難しいと思います。

一人住まいの高齢者の場合に、判断能力が低下していることに気付かないでいるときに、悪徳商法の被害に遭う危険性があります。判断能力がそれほど低下していなくても、悪徳商法はときには強引に、ときには巧妙に高齢者に近寄ってきますので、だまされてしまうこともあります。

だまされて財産的被害に遭わないように、本人の健康状態の変化にも早く気づくには、親族や第三者が本人の日常生活の様子に注意していることが大切です。

 

【3】見守り契約

上記の見守りにおける面談の際に、本人は、日常生活上の悩みや困りごとを相談することもでき、老後を安心して、かつ安全な生活を送ることにもつながるものと思われます。

「見守り」とは何かという点については、定まった定義があるわけではありません。しかし、任意後見契約法2条に基づき、移行後の任意後見人は、本人の生活、療養看護に関する事務を受託し、その受託に係る事務について代理権を付与されています。

その関係でその前提となる事務すなわち、任意後見人が本人と面接し、ヘルパーや主治医などから本人の心身の状態につき説明を受けるなどの事務が行なわれますが、その事務は「見守り」事務といわれるものです。

これに対し、任意後見契約に移行する前の財産管理契約の公証人連合会定型文例には、見守り契約は直接規定されていません。けれども財産管理人は契約の「締結後、甲(本人)が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分になり、乙(受任者)が第2の任意後見による後見事務を行なうことを相当と認めたときは、乙は家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任を請求」しなければなりません。

財産管理人は、その義務を履行するためには上記の任意後見人の「見守り」事務と同一の事務を行なわなければなりませんので、財産管理人も「見守り」義務を負担しているものと解されます。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 団体に財産管理を任せたい

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【1】受任者・任意後見人になる資格はあるのか?

財産管理契約及び任意後見契約の受任者・任意後見人になる資格には法律上の制限がありません。どちらも任意代理の委任契約ですので、受任者及び任意後見人に親族や弁護士・司法書士・行政書士等の専門職のほか、社会福祉協議会や福祉関係の公益法人・社会福祉法人など法人になってもらうことができます。

ちなみに法人が成年後見人に選任された件数は、最高裁判所事務局家庭局「成年後見関係事件の概況」によると、平成28年度1,274件、平成29年度1,447件、平成30年度1,567件、令和元年度1,722件、令和2年度2,034件で着実に増加しています。

 

【2】法人後見の注意点

受任者に株式会社のような営利法人を選ぶことは、法人の資格に制限はないので、一応法律上は可能と言えますが、本人(委任者)の意思を尊重しノーマライゼーションの精神にのっとり社会生活を支援していくという任意後見事務自体の性質から、営利を追求するような株式会社を受任者とすることには慎重になるべきでしょう。また、会社など営利目的の法人に委任する場合には、それなりの報酬を覚悟する必要があります。

社会福祉法人であれば常に適任かといえば、必ずしもそうではありません。例えば、社会福祉法人が運営している施設に委任者が入所している場合、この法人を受任者とすると、委任者と施設との関係で利益相反の問題が生じます。さらに、あくまで一般論ですが、生活上の世話をしてもらっている施設に財産管理の代理権が与えられることにより、本人(委任者)の生活全般が施設側に支配される危険があるとの指摘もあります。

また、施設等に入所している場合は、直接の施設運営者である法人でなくても、その法人と共通のネットワークの範囲内にある者を受任者とすると、どうしても施設側の言いなりに財産が使われる危険性が生じてしまうことにも留意する必要があると指摘されています。

 

【3】法人後見の長所と短所

法人を受任者にすることの長所は、親族間で財産争いがある場合など個人で対応することが困難な事案でも対応が可能であることや、長期にわたって継続的に支援することが可能なことなどが挙げられます。他方、短所としては、受任者として支援する担当者がころころ変わるようだと「顔」が見えない状況となり、意思疎通が十分でなく信頼関係も築けないおそれがあることが挙げられます。

さらに意思決定に時間がかかり機動的な対応ができないのではないかとの懸念もあります。いずれにしても、法人に受任者を引き受けてもらう場合には、受任者及び任意後見人として本人を支援するだけの適格性があるかを慎重に判断する必要があります。