【改正民法債権編】損害賠償を規定するその他改正

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、損害賠償を規定するその他改正について考えてみたいと思います。

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損害賠償を規定するその他改正

損害賠償に関する判例・通説の理解を明文化

 

◆履行に代わる損害賠償(填補賠償)
債務不履行がある場合で完全履行を求めることができないときには、債権者は本来給付の代わりに損害賠償請求をすることになります。この損害賠償請求を、「履行に代わる損害賠償」あるいは「填補賠償」といいます。

旧法下では、履行不能の場合に履行に代わる損害賠償請求ができることに争いはありませんでした。しかし、それ以外のどのようなケースで履行に代わる損害賠償請求ができるか、解釈が分かれていました。

そこで新法では、履行に代わる損害賠償請求ができる場面を、以下のように明文で規定しました(新法415条2項)。
①債務の履行が不能であるとき(同1号)
②債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確にしたとき(同2号)
③債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、または債務の不履行による契約の解除権が発生したとき(同3号)

③の前段の「契約が解除され」たときの典型例は、契約が法定解除された場合です。③の後段の「契約の解除権が発生したとき」とは、債務不履行の効果として解除権が発生したものの、いまだ行使されていない場合を指します。解除権を行使せずとも填補賠償の請求は可能です。

 

◆履行遅滞中または受領遅滞中の履行不能
債務者が期限を超えて履行をしていない(履行遅滞の)場合に、債務者の責めによらない事由によって履行不能となった場合でも、債務者はその責任を免れないと考えられてきました(判例)。

これを受けて、新法413条の2第1項は、履行遅滞中に当事者の責めに帰することができない事由によって履行不能になった場合について、「債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす」としました。「みなす」というのは、反対事実を証明したとしても、事実を覆すことができないことを意味しています。
これにより、履行遅滞中の履行不能のケースでは、債権者は債務者に対して損害賠償請求ができることになります。

他方で、債権者の責任で履行が遅れている場合に、債務者にその責任を負わせるのは酷です。たとえば、動産の引渡債務の場合には、債権者が当該動産を受け取らないと履行は完了しません。このように、履行の提供があったのに、債権者の責任で債務の本旨に従った履行が完了しない状態を「受領遅滞」といいます。
新法は、受領遅滞の場合に、「当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。」(新法413条の2第2項)としました。この規定により、受領遅滞中の履行不能の場合には、債権者は契約の解除もできず、債務者の反対給付請求(上記動産の例でいえば、売買代金の請求など)の拒絶もできないことになります。

 

◆代償請求
履行不能を生じさせたのと同一の原因によって、債務者が履行の目的物に代わる利益を取得することがあります。
たとえば、売主(債務者)Aが、買主(債権者)Bに目的物を引き渡す義務を負っている場合に、第三者Cがその目的物を壊してしまったとします。

この場合、売主Aは第三者Cに対して損害賠償請求ができます。しかし、他方で、買主Bは目的物を受け取ることができなくなってしまいます。
そこで、旧法下でも、判例は、買主Bの損害を限度として、売主Aに対して生じた利益の償還を請求する権利(代償請求権)を認めてきました。

今回の改正では、新法422条の2が新設され、代償請求権が明文で認められました。これは、これまでの判例法理を明文化したものと言えます。

【改正民法債権編】債務不履行による損害賠償請求

【改正民法債権編】中間利息控除

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今回は、【改正民法債権編】に関して、中間利息控除について考えてみたいと思います。

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中間利息控除

中間利息控除の明文化と適用利率、変動制への移行

 

◆中間利息控除とは
中間利息控除とは、不法行為等に基づく損害賠償額の算定にあたり、将来の逸失利益や出捐(支出、費用)を現在の価値に換算するため、損害賠償額算定の基準時から将来の利益を得られたであろう時点までの利息相当額(中間利息)を控除することをいいます。

本来であれば将来受け取るべき金銭を現在受け取るため、その調整をするということです。
これは、交通事故における損害賠償請求訴訟等で、実務上広く行われていますが、旧法には中間利息控除の定めはありませんでした。

 

◆中間利息控除に用いる率
旧法下での裁判実務においては、中間利息控除を行ない、その際の利率として法定利率の5%を用いるのが通常でしたが、これより低い利率を用いる裁判例も見られました。
中間利息控除に用いる利率は逸失利益の算定に多大な影響を与え、損害額が多額の場合、利率の変更により、損害賠償額に数千万円単位での差異を生じさせます。同一内容の損害である場合でも、裁判官によって、用いる利率が異なり、損害賠償額に大きな差異が生じるのは、交通事故における公平の観点からも好ましくありません。

そこで、平成11年に東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の各交通部より、原則として、中間利息控除の際の利率は、年5%を採用するとの共同提言が行なわれました。しかし、この提言の後も、市中の低金利を理由に年5%よりも低い利率を採用する裁判例がありました。
そのような中、平成17年、最高裁は、中間利息控除の際に用いる利率は、民法所定の法定利率である年5%を用いるべきであると判断しました。この判例では、中間利息控除に法定利率を用いる理由として、次のような点を指摘しています。

①法定利率が、我が国の一般的な貸付金利を踏まえて定められたものであること
②将来の請求権を現在価値に換算するにあたって、法的安定と統一的処理が必要とされていること
③被害者の将来の逸失利益を現在価値に換算する場合にも、法的安定と統一的処理が要請されること
このような経緯により、裁判実務上、中間利息控除に際しては、年5%の法定利率が用いられてきました。

 

◆変動制への移行
改正により法定利率は変動制となりましたが、中間利息控除は法定利率によるべきという上記裁判例の考え方は、引き続き維持することが可能です。
そこで、新法では、417条の2が新設され、損害賠償額の算定において中間利息控除をするときには、損害賠償請求権が発生した時点の法定利率によることが明記されました。不法行為による損害賠償についても同様です(新法722条1項)

また、実務における中間利息控除は、①将来において取得すべき利益(たとえば、被害者が事故に遭わなければ将来取得していたであろう収入)についての損害賠償額を定める場合のみならず、②将来において負担すべき費用(たとえば、被害者が将来負担することになる介護費用)についての損害賠償額を定める場合にも行われています。

そのため、将来の積極損害(現実に支出を要する損害)の損害賠償額の算定で中間利息控除を行なう場合にも、同様の規律によることとされました。
このように、改正後、中間利息控除を行なう場合の利率は、法定利率の3%を用います。その結果、中間利息控除を行なう損害に関しては、旧法での法定利率5%の場合より、賠償すべき損害額が増加することに注意が必要です。

このように、法定利率の変動に伴って、交通事故等において賠償すべき損害額が変動すると、損害保険の内容の見直しが必要になる可能性があります。これにより、交通事故等を対象とする損害保険の保険料に影響を与える可能性があり、実務に与える影響は大きいと考えられます。

 

◆基準時について
金銭債務の不履行の損害賠償(遅延損害金)の利率は、金銭債務の遅滞の時の法定利率によるとされ、中間利息控除に用いる利率は、損害賠償請求権が生じた時の法定利率によるとされています。

そして、不法行為に基づく損害賠償請求権については、一般に、不法行為の発生と同時に、直ちに遅滞に陥ると考えられています。
そのため、損害賠償額の算定と中間利息控除との両方に、不法行為時の法定利率が適用されます。
なお、後遺症による逸失利益を算定する場合には、その症状が固定した時点での損害額の算定が可能になります。
仮に、このような場合に症状固定時が基準時となるとすると、症状固定時がいつであったかをめぐって深刻な紛争を生じるため、一律に不法行為時とするのが適切であると考えられたのです。

他方、契約に基づく安全配慮義務等の違反に基づく債務不履行責任は、事故発生時に損害賠償請求権が生じ、安全配慮義務等の違反に係る損害賠償額の中間利息控除に用いる法定利率は、事故発生時のものとなります。
もっとも、安全配慮義務等の違反を含む債務不履行責任に基づく損害賠償請求権は、期限の定めのない債務と解されているので、債権者が履行の請求をした時から遅滞となります。

この場合、中間利息控除に用いる法定利率は事故発生時のもの、損害賠償額の算定に用いる法定利率は債権者の請求時のものとなり、両者が異なる可能性が生じることに注意が必要です。

【改正民法債権編】損害賠償額の算定に関する特則

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今回は、【改正民法債権編】に関して、損害賠償額の算定に関する特則について考えてみたいと思います。

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損害賠償額の算定に関する特則

損害賠償額算定の際の適用利率に関する規定を整備

 

◆金銭債務の損害賠償額の算定に関する特則
法定利率は変動制が採用されたため、金銭債務の損害賠償額の算定に際し、適用する利率の基準時が問題となります。
新法419条1項は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によるとしました。つまり、損害賠償の基となる金銭債務が発生した時ではなく、遅滞が生じた時点のおける法定利率が適用利率になるということです。

【適用される法定利率の例】
債務者が遅滞の責任を負うのは、
・確定期限がある場合    → 期限を経過した時から
・確定期限の定めがない場合 → 債務者が履行の請求を受けた時から

この時点の法定利率が適用される

また、不法行為に基づく損害賠償債務については、不法行為時から遅滞の責任を負うため、不法行為時の法定利率によります。
なお、法定利率を超える約定利率がある場合は、それによることに変更はありません。

 

◆基準時の必要性
新法では、法定利率を3年ごとの変動制としたため、債権の存続中に、法定利率が変動することがあり得ます。そのため、特定の債権について遅延損害金が発生した場合、どの時点の法定利率を適用するかの基準時を定める必要があります。

そして、利息を生ずべき債権についての法定利率の適用の基準時は、利息が生じた最初の時点とされ、仮にその後に法定利率が変動しても適用される法定利率は変わらないとされています。これにより、その債権に係る利息が最初に生じた一時点の法定利率に定まります。

なお、利息は日々発生するとされるため、単に「利息が生じた時点」の法定利率とすると、日々の利息の発生を指すと理解され、法定利率が変動すると適用される利率も変わるとの解釈を招くおそれがあります。
そこで、「最初に」という文言が付され、同一の債権については、遅滞より後に法定利率の変動があっても、利率は変わらないとされました。

 

◆法定利率と遅延損害金利率
損害賠償の利率を法定利率と定める新法419条1項は、任意規定です。
多くの契約においては、金銭債務の不履行時の遅延損害金利率が約定により定められており、法定利率が適用される場面は少ないと思われます。
他方、不法行為に基づく損害賠償請求や悪意の受益者への不当利得返還請求などでは、通常、遅延損害金利率の定めはなく、法定利率によります。

 

◆新旧規定の適用関係
金銭債務の損害賠償額の算定について定めた新法419条1項の規定は、新法施行日以後に遅滞が生じた場合に適用し、施行日前に遅滞が生じた場合には適用されません。
施行日前に遅滞が生じた場合に、改正後の民法の規定を適用すると、当事者(債権者と債務者)の予測可能性をを損なうためです。

 

◆期限の定めのない債務の請求と適用利率
期限の定めのない債務は、債権者が請求をした時点で遅滞となり、その時点の法定利率が適用されます。そのため、債権者がどの時点で請求し、遅滞に陥らせるかで、損害賠償額の算定利率の基準時を自由に選ぶことができ、不合理なのではないかということが考えられます。

しかし、債権者が請求を遅らせた場合、債務者は遅滞の責任を負わず、債権者は遅延損害金を取得できません。そのため、債権者があえて請求を遅らせるような事態が頻繁に生じることはなく、大きな弊害はないと考えられ、この点に対する対処は特にはされませんでした。

【改正民法債権編】変動制による法定利率

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、変動制による法定利率について考えてみたいと思います。

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変動制による法定利率

利率の引き下げと固定性から変動制への移行

 

◆利息の発生と法定利率
利息は、典型的には、金銭を貸し付ける際に発生しますが、それ以外にも、契約を解除し金銭を返還するときや、悪意の受益者が利益を返還するときなどにも発生するとされています。

旧法では、利率に関する約定がないときには、いずれの場合でも年5%の法定利率により利息が発生するとされていました。
そのほか、金銭債務の不履行の場合における損害賠償額の算定(旧法419条1項)にも、年5%の法定利率が用いられていました。

このように、法定利率が適用される場面は多くありますが、旧法が法定利率を年5%と定めていたのは、なぜでしょうか。
これは法定利率が、原則として私人間の関係に適用される規律であり、市中における金利水準に沿ったものであるべきとされ、立法時には、年5%が相当と考えられたことによります。

 

◆法定利率改正の必要性
市中の金利水準は変動するため、これに応じて法定利率を改正する必要があると考えられていました。
しかし、現実には法定利率が改正されたことはなく、市中の金利と法定利率との間に乖離が生じることになりました。特に1990年代後半から、市中の金利は、非常に低い水準が長期間継続し、法定利率の年5%が市中の金利を大きく上回る状態となっていました。
他方、過去のいわゆるバブル景気においては、市中の金利が年5%の法定利率を上回っている時期もありました。

その結果、年5%に固定された法定利率の適用が、当事者の公平を害している状況があるとの指摘がされてきたのです。
そこで、市中の金利と法定利率に乖離がある不合理な状況を是正し、法定利率を市中の金利水準に合致させるための改正が必要とされました。

結論として、新法404条2項により、当面の法定利率が旧法から2%引き下げて年3%とされ、同3項により、法定利率は3年ごとに見直す変動制とされました。
この改正は、実務に与える影響も大きく、今回の民法改正の中でも注目すべき改正点といえます。
なお、利息制限法等の法令の範囲内で、当事者が約定により法定利率と異なる利率を合意することが可能であることに変更はありません。

【法定利率の改正内容】
改正前(旧法):法定利率・年5% 固定制

改正後(新法):法定利率・年3% 変動制(3年ごとに見直し)

 

◆商事法定利率の削除
商法では、商法514条により、商行為によって生じた債務に関し、法定利率は年6%とされていました。つまり、民法よりも1%高く設定されていたのです。
これは、商取引においては、金銭の利用によって民事上の取引よりも多額の収益を上げられるはずであると考えられていたこと等が理由です。

しかし、現代では、さまざまな金融取引市場が整備された結果、商人でなくとも投資を行なったり、必要な情報を容易に取得できるようになったりして、商人と非商人との差異は小さなものとなっています。
そうした状況の変化を踏まえると、商取引であるからといって、民法上の法定利率よりも年1%高い利回りを得る必然性が高いとはいえません。

そのため、民法上の法定利率と異なる商事法定利率を別途定める合理性は失われているとされ、民法改正にあわせて商法514条は削除の上、商取引についての法定利率も民法と同一とされました。

 

◆法定利率が年3%とされた理由
前述のとおり、今回の民法改正時の法定利率は年3%です。
改正の議論がされていた時期の金利水準は、国内銀行の貸出約定平均金利が年1%弱程度、取引主体が個人である住宅ローンが年2%強、無担保のマイカーローンや教育ローンはいずれも年3%程度となっていました。

これら市中の金利の状況、旧法の法定利率年5%からの円滑な移行といった諸般の事情が総合的に考慮された結果、改正法施行時の法定利率は年3%とされました。

 

◆法定利率変動制の詳細
(1)基本的な仕組み
まず、改正法施行時の法定利率は年3%とされました。
その上で、市中の金利の変動を適切に反映する指標(以下、「基準割合」といいます)として、日本銀行が毎月発表する国内銀行の「貸出約定平均金利(新規・短期)」(国内銀行の当該月末貸出残高のうち、当月中において実行した貸出で、約定時の貸出期間が1年未満の貸出に関する利率の平均)の60か月の平均値を用い、その増減を法定利率に反映することとされました。

各期の法定利率は、法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下、「直近変動期」といいます)における基準割合と、当期における基準割合との差に相当する割合を直近変動期における法定利率に加算し、または減算した割合とされています(新法404条4項)。

また、法定利率の値については、取扱いを容易にする観点から、整数値となるよう1%未満の端数は切り捨てることとされました。
そのため、法定利率は、2%や4%など、必ず整数値となり、1%未満の端数が生じることはありません。

(2)基準割合の算定にあたり金利を参照する期間
法定利率について、変動制を採用する場合であっても、法的安定性や債権管理の事務負担の軽減等の観点からすると、突発的に変動することは望ましくありません。
そして、基準割合について、一時点における金利を参照すると、当該時点のみの特殊事情による影響を受けるため、一定期間の金利の平均値を参照することになりました。

ただし、期間をあまりに短くすると一時的な事情に影響を受けてしまいますし、あまりに長くても金利動向を適切に反映できません。
たとえば、3年間の平均を計算して基準割合を決めるとすると、石油危機やバブル景気といった一時的・短期的な変動に影響されやすく、妥当ではありません。これに対して、5年間の平均を利用した場合、一時的・短期的な出来事の影響を避けつつ、金利変動の大まかな傾向を反映できると考えられました。

そこで、基準割合は貸出約定平均金利の5年間(60か月)の平均を計算して定めるとされました。
この5年間は、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までとされています。

(3)法定利率を見直す頻度
市中の金利は、さまざまな要因から変動します。
他方、法定利率は、法的安定性や債務管理の事務負担の軽減等の視点も考慮する必要があるため、あまり頻繁に変動させることは妥当ではありません。しかし、見直しの間隔を長くしすぎると、市中の金利との乖離が生じる可能性が高くなります。

経済実態等を反映して一定期間ごとに見直しを行なう制度の例として、固定資産税の評価換えの制度があり、不動産については、3年ごとに評価額を見直すこととされています。
そのような事情も踏まえて、新法では、法定利率の見直しの頻度は3年に1度とされました。

なお、1期3年が、具体的にいつの時点から開始するかについては、法務省令に委任されています。

【改正民法債権編】時効の完成猶予と更新

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今回は、【改正民法債権編】に関して、時効の完成猶予と更新について考えてみたいと思います。

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時効の完成猶予と更新

制度名称の変更と時効の完成を防ぐ事由の詳細化

 

◆時効の完成猶予と更新
(1)旧法における考え方
時効は一定期間の経過により完成しますが、常に一定期間の経過により時効が完成するわけではなく、時効の完成を防ぐ制度もあります。
旧法ではそれら制度を「時効の中断」(旧法147条~157条)と「時効の停止」(旧法158条~161条)と呼んでいました。

①時効の中断
時効の中断とは、中断事由として規定されている事由が発生した場合に、それまで経過した時効期間の効力が失われ、時効期間がゼロに戻る制度です。中断事由が終了すると、再度時効期間が進行し始めますが、中断前の時効期間を通算することはできず、また新たに時効期間が進行します。

②時効の停止
時効の停止とは、停止事由として規定されている事由が発生した場合に、時効の完成を一定期間猶予する制度です。猶予期間中、何もしなければ、猶予期間経過後、時効が完成します。

(2)新法における規定
このような時効の中断と停止ですが、新法ではそれぞれ、時効の「更新」と時効の「完成猶予」という言葉に改正されました。

これは時効の「中断」と「停止」という言葉の一般的な意味と、その法的効果とが合致していなくてわかりにくいことから、直接的に法的効果を表現する言葉を使用し、わかりやすくすることを目的にしています。そのため、言葉は変わりましたが、その法的な意味は基本的には変わらないと理解されています。

「時効の更新」は、それまでの時効期間の効力が失われ、新たに時効期間が進行することを意味していますし、「時効の完成猶予」は、時効の完成が一定期間猶予されることを意味しています。

 

◆時効の完成猶予と更新事由
時効の完成猶予と更新事由について改正点をまとめると次のようになります。

 

◎新法147条
・時効障害事由
①裁判上の請求
②支払督促
③訴え提起前の和解または民事調停法もしくは家事事件手続法による調停
④破産手続参加、再生手続参加または更生手続参加
・完成猶予としての効力
これら事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。
また、訴えの取下げのように、確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。以下同じ)以外でその事由が終了した場合には、その終了時点から6か月経過時まで、時効は完成しない。
・更新の効力
これら手続の結果、確定判決によって権利が確定したときは、これら事由が終了した時から新たにその進行を始める。

 

◎新法148条
・時効障害事由
①強制執行
②担保権の実行
③担保権の実行としての競売の例による競売
④財産開示手続
・完成猶予としての効力
これら事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。また申立ての取下げや不適法取消しによって終了した場合には、6か月経過まで、時効は完成しない。
・更新の効力
これら事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げまたは不適法取消しによってその事由が終了した場合は更新しない。

 

◎新法149条
・時効障害事由
①仮差押え
②仮処分
・完成猶予としての効力
これら事由が終了した時から6か月経過時まで、時効は完成しない。
・更新の効力
なし

 

◎新法150条
・時効障害事由
催告
・完成猶予としての効力
催告から6か月経過時まで、時効は完成しない。また、完成猶予期間中になされた再度の催告は、完成猶予の効力を有しない。
・更新の効力
なし

 

◎新法151条
・時効障害事由
権利について協議を行なう旨の合意
・完成猶予としての効力
以下のいずれか早い時期までの間は、時効は完成しない。
①合意から1年
②当事者の定めた協議機関(1年未満)
③協議続行拒絶を一方当事者が行なったときは、その通知から6か月
ただし、本来の時効期限から5年以内であれば、合意を繰り返すことが可能。
・更新の効力
なし

 

◎新法152条
・時効障害事由
承認
・完成猶予としての効力
なし
・更新の効力
承認があった時から新たに進行を始める。

 

◎新法161条
・時効障害事由
天災
・完成猶予としての効力
天災により新法147条や新法148条の手続ができないときには、その障害が消滅してから3か月経過時まで、時効は完成しない。
・更新の効力
なし

 

新法151条では、当事者間の合意により、時効の完成猶予を認める制度を導入しました。これは、当事者間で交渉が継続しており、債務承認はできないが、時効完成間近のときに使用されます。ただし、明確性確保のために書面または電子メール等による合意を求め、要式行為としています。

新法148条や新法149条に列挙された事由は、連帯保証人や物上保証人など債務者以外に対して行なうこともあります。そのような場合には、債務者など時効の利益を受ける者に対して通知をした後でなければ、時効の完成猶予または更新の効力は生じません(新法154条)。

また、未成年者または成年被後見人の権利、夫婦間の権利、相続財産に関する権利の時効の完成猶予については改正はなく、旧法のままとなっています。

【改正民法債権編】その他債権の消滅時効

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今回は、【改正民法債権編】に関して、その他債権の消滅時効について考えてみたいと思います。

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その他債権の消滅時効

定期金債権など原則的な消滅時効が適用されない債権

 

◆定期金債権の消滅時効
(1)定期金債権とは
定期金債権とは、一定額の金銭を定期的に受領することを目的とする債権で、毎月定額で受給するような年金受給権、養育費請求権、利息請求権などがこれに当たります。1つの債権を分割して支払うような場合には、定期金債権とはいいません。
定期金債権は、定期で個別に支払われる個々の債権(支分権)と、それらを発生させる基本となる債権(基本権)の2つに分けられます。支分権の消滅時効は、一般の時効期間に関する新法166条が適用されます。

(2)新法における変更点
今回の改正により、定期金債権(基本権)の時効期間は、以下のように変更されました。

定期金債権の時効期間の改正
改正前(旧法)
①第1回の弁済期から20年間行使しないとき
②最後の弁済期から10年間行使しないとき

改正後(新法)
①債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使できることを知った時から10年間行使しないとき
②①に規定する各債権を行使できる時から20年間行使しないとき

 

◆不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効
①被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間、②不法行為の時から20年間、という規定は改正されませんでした。こちらも主観的起算点と客観的起算点の併存です。なお、不法行為債権における「知った時」とは、権利行使が現実に可能となる時と解されています。

今回の改正では、時効期間に変更はなかったのですが、20年間という期間の意味については、明確に定義されました。

旧法では、①知った時からの3年間は時効期間である一方、②不法行為の時から20年間は除斥期間である(時効の援用は不要で、20年を経過すると当然に債権は消滅し、その進行を止めることもできない)、と解釈されていました。
しかしながら、新法では、20年間という期間も時効期間である、と定義されたのです(新法724条)。

20年間が旧法下の解釈のように除斥期間であれば、時効の完成猶予や更新などの制度の適用を受けることができないのですが、新法で時効期間と定義されたことで、時効の完成猶予や更新の制度を利用することができるようになります。

この改正により、除斥期間が問題となり救済されなかった被害者が、より保護されるようになったといえます。また、時効なので、時効の効果を発生させるためには援用も必要となりました。

 

◆生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効
不法行為の中でも人の生命または身体に対する侵害は、より保護が図られるべきですし、被害者に時効の進行を阻止するための行動を求めることは、通常より酷であると考えられます。そのため、それら損害に基づく損害賠償請求権の時効期間が延長されました(新法167条、724条の2)。

具体的には、通常の不法行為の時効期間が加害者を知った時から3年であるところ、生命・身体の侵害の場合にはそれが5年に、通常の債権の消滅時効期間が10年のところ、20年間に延長されました。

【改正民法債権編】消滅時効の改正

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、消滅時効の改正について考えてみたいと思います。

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消滅時効の改正

債権の消滅時効期間の統一化と新たな消滅時効期間の導入

◆時効とは
時効とは、ある一定の事実状態が継続したときに、その事実状態を真実の事実状態と認め、権利を確定させる制度です。
時効には、一定の期間経過すると権利を取得できる「取得時効」と一定の期間権利を行使しなければ権利を喪失してしまう「消滅時効」とがあります。取得時効は、無権利者が所有権など物権を取得するときに適用される制度で、賃借権の時効取得という例外はあるものの、原則として債権の分野に関係する制度ではないため、改正の対象とはなっていません。
今回の改正対象は、権利を有する者がその権利を行使しないときに喪失する消滅時効の制度です。

 

◆時効の援用
一定の期間が経過し、債権について消滅時効が完成しても、時効の効果が発生するわけではありません。消滅時効の効果を確定的に発生させるためには、相手方に対して時効である旨を告げなければなりません。
消滅時効が完成しても、債務者が任意に債務の履行をすることが禁止されるわけではなく、任意に債務の履行を行なうことは可能であり、法は時効を主張するかどうかを当事者に委ねているのです。

この、相手方に対して時効であることを主張し、時効の効果を発生させることを「時効の援用」といいます。
旧法では、時効の援用ができる者について、「時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と、「当事者」とだけ規定されていました。そのため、当事者の解釈についてさまざまな争いが生じることになりました。

しかし、新法では、判例の蓄積を成文化する形で、「時効は当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者w含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」(新法145条)と規定されました。
判例の蓄積を成文化しただけなので、実務上の影響は大きくありませんし、「その他権利の消滅について正当な利益を有する者」と概括的な規定もあることから、その解釈について裁判所の判断が必要な場面は依然としてあります。
ただ、「当事者」の定義がなされ、時効を主張できる者の範囲が明確化されることで、よりわかりやすくなりました。

 

◆債権の消滅時効期間の統一化
一定の期間の経過と、時効の援用により消滅時効の効果が生じますが、今回の改正では、消滅時効の期間が統一されました。
旧法では、債権の消滅時効は10年を原則的な時効期間として定める一方、医師、弁護士、売掛債権、宿泊料、飲食料など、さまざまな職種や債権の性質に応じて細かな短期消滅時効を定めていました。
また、私人間の取引ではなく、商取引で生じた商事債権についても異なる時効期間を定めており、きめ細やかな反面、複雑な規定となっていました。

新法では、短期消滅時効や商事債権の時効を廃止し、①権利を行使できることを知った時から5年、②権利を行使できる時から10年、のいずれか早く到来したほうで時効が完成するものとされました。

 

◆新たな消滅時効期間の導入
債権の消滅時効期間は統一化されてわかりやすくなりましたが、「①権利を行使できることを知った時から5年」という、新しい消滅時効期間が導入されたことには注意が必要です。
これは2つの意味で実務上の影響が大きいと考えられます。1つには5年というこれまでにない時効期間が設定されたこと、もう1つは新しい時効の起算点ができたことです。5年という短く新しい時効期間が大きな影響を及ぼすことは明らかなので、時効の起算点について説明します。

旧法における時効の起算点は「権利を行使することができる時から」(旧法166条)と規定されていました。「権利を行使することができる時」とは、権利を行使するのに法律上の障害がなくなった時のことです。
たとえば、金銭消費貸借契約については返済期日以後、債務者に返済を請求できるわけですから、返済期日が時効の起算点になります。債務不履行に基づく損害賠償請求権の場合は、損害賠償請求権と本来の債務とが同一であると考えられることから、本来の債務の履行の請求ができる時が時効の起算点となります。

これらのように、法律上の障害がなくなった時は客観的に確定できるので、「権利を行使できる時」を客観的起算点といいます。この旧法における考え方は新法でも維持されており、「②権利を行使できる時から10年」という形で残されています。

一方、新法では、新たに「①権利を行使できることを知った時から5年」という消滅時効が追加されました。この消滅時効の起算点は、債権者の主観的な認識を基礎としています。客観的に定まるものではなく、時効の起算点が債権者の主観的事情によって変動するのです。
これは、短期消滅時効を廃止することによる緩和措置として、また権利を行使できることを知ってから5年経過したのだから、権利が時効消滅したとしてもやむを得ない、との価値判断に基づき制定されたものです。
通常、債権者は期限がきた時に権利を行使できることを理解しているので、ほとんどの場合で、①の5年間の消滅時効が適用になると考えられます。

また、新設された「権利を行使できることを知った時」の意味については、当然ながら確定した解釈はなく、債権発生の原因と債務者を知った時とするのか、債権者に権利行使を期待することができる時とするのか、もしくは他の解釈とするのか、判例の蓄積が待たれることになります。

 

◆消滅時効制度の運用
新法では、客観的起算点から始まる時効と、主観的起算点から始まる時効の、2つの時効期間が併存します。
したがって、客観的起算点から10年間か、主観的起算点から5年間か、どちらか早く到来したほうで時効が完成することになります。

【改正民法債権編】代理

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、意思表示の瑕疵について考えてみたいと思います。

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代理

代理権の濫用に関する判例法理などを新たに規定

◆代理人の行為能力
代理とは、代理人が本人のためにすることを示して相手方との間で契約などをした場合、その契約の効果が、直接本人に帰属する制度です。
代理は、未成年者などの行為能力がない者も行うことができます。
この点、新法では、「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない」とし、その旨規定を改めました(新法102条)。

また、本人保護の観点から、たとえば未成年者の親に成年後見人がついているにもかかわらず、その親が子のために行った代理行為などは、例外的に取り消すことができることを明記しました(同条ただし書き)。

 

◆代理権の濫用に関する規定
新法では、新たに代理権濫用の規定ができました。旧法下では、代理権の濫用については心裡留保の規定を類推適用するのが判例法理でした。
新法107条は、「代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。」と規定し、代理人の背信的な意図を知りまたは知ることができたときには、無権代理と同じ効果としました。

代理人と称している者の法律行為であっても、代理権のない場合を無権代理と呼びます。代理権がない行為なので、本人との間に効果は発生しません(代理人と称している者を無権代理人と呼びます)。
旧法下では判例法理により代理権濫用の行為は無効とされていましたが、新法ではその効果を無権代理とみなすとしたため、契約の相手方は無権代理人への責任追及(新法117条)が可能となった点が変更点となります。

 

◆自己契約および双方代理
本人が相手方の代理人として契約する自己契約や、双方の代理人として代理行為を行なう双方代理の場合、代理人が本人の利益を優先できません。
したがって、民法は代理行為の効力を認めていません。
旧法では、自己契約や双方代理の禁止のみが規定されており、その効果が規定されたいませんでした。
新法108条では、従前の判例法理を反映して、自己契約または双方代理の効果として、無権代理とみなす旨規定しました。

 

◆無権代理
新法117条1項では、無権代理人は自己の代理権を証明したとき、または本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行または損害賠償の責任を負うとし、規定を整理しています。
新法は、この点を明記したことで、代理権を証明する責任が無権代理人にあることを示しました(無権代理行為が本人の追認を得たときには、本人にその効果が帰属します)。

新法117条2項は、無権代理人の責任を否定する例外規定です。次の場合には、無権代理人は責任を負いません。
①無権代理であることを相手方が知っていたとき(同1号)
②無権代理人であることを相手方が過失によって知らなかったとき(ただし、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りではない、同2号)
③無権代理人が行為能力の制限を受けていたとき(同3号)
無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合、相手方に過失があっても無権代理人が責任を免れない点は重要です(同2号ただし書)。

 

◆代理権授与の表示による表見代理
本人と無権代理人との間に一定の関係があるときには、当該代理権がない場合でも、代理の効果が認められることもあります。
本人が代理権を授与していないが代理権を授与したと第三者に伝え、その表見代理人が授与したとされた範囲の代理行為をした場合、本人に法律効果が帰属します。
ただし、相手方が代理権がない旨を知り、または知ることができた場合、本人に当該法律効果は帰属しません(新法109条1項)。

新法109条2項では、本人が第三者に対して代理権を授与した旨を表示し、第三者は代理権が与えられていないことを過失なく知らない場合で、その表示した代理権以上の行為を当該無権代理人が行なった場合、当該第三者の誤信に正当な理由があれば、当該法律効果が本人に帰属することを明記しました。これは従前の判例法理を明文化したものです。

 

◆権限外の行為の表見代理
代理人が代理権限外の行為をした場合、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由がある場合も、本人に法律効果が帰属します(新法110条)。この点、改正はありません。
たとえば、判例では実印の交付を受けていた代理人が権限外の代理行為をした場合には、特別の事情がない限り、代理権があると信ずべき正当な理由があるとしています。

 

◆代理権消滅後の表見代理
新法は、他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う(新法112条1項)とし、旧法をわかりやすく規定しました。なお、第三者が過失によりその事実を知らなかった場合には、本人は責任を負いません。

新法112条2項は、代理権消滅後に、代理権限外の行為をした場合の規定を新設しました。この規定は、裁判例を反映したもので、代理権消滅につき善意無過失で、かつ権限外の行為について代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、責任を負うとしています。

 

◆新旧規定の適用関係
代理行為一般については代理権の発生時期、無権代理人の責任は無権代理行為時、制限行為能力者の代理行為は代理行為時が新法施行日前であれが旧法が、施行日以後であれば新法が適用されます。

 

【改正民法債権編】意思表示の瑕疵

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、意思表示の瑕疵について考えてみたいと思います。

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意思表示の瑕疵

条文外の判例のルールが反映された錯誤取消し

意思表示の合致があった時に契約は成立することになりますが、契約当時、意思無能力状態ではなかったものの、騙されて契約を締結した場合などもあります。
このように物事を弁識する能力はあったが、意思表示に何らかの問題があった場合を「意思表示の瑕疵」といいます。
この意思表示の瑕疵について、民法では、「心裡留保」「虚偽表示」「錯誤」「詐欺・強迫」という類型を挙げています。

 

◆心裡留保
心裡留保とは、表意者が自分の真意と異なる発言を自覚しながら行なう意思表示のことです。
たとえば、内心は売却する意思はないのに、「売却する」と言った場合などです(相手方と意思表示の合致があれば、契約は成立します)。

この場合、表意者が真意でないことを知っていたにもかかわらず、真意と異なる内容の発言をしているので、表意者に責任があり、その意思表示は有効となります。
そのため、表意者の言葉を信じ、売却の契約関係に入った相手方との関係でも、心裡留保があっても契約は原則として有効となります。

しかし、「相手方がその意思表示が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができたとき」まで相手方を保護する必要はないので、その場合には契約は無効となります(新法93条1項)。ここまでは現状と同じです。
このような心裡留保の無効が、取引関係に入った善意の第三者を害するのは取引の安全を損なうことになるので、善意の第三者を保護するべきです。新法では、心裡留保の無効は善意の第三者に対抗することができないという判例法理が、新たに明文化されました。

 

◆虚偽表示
表意者が相手方と通謀して真意でないことを知りながらする意思表示を虚偽表示といいます。虚偽表示について、今回改正はありません。
虚偽表示は当事者間では無効ですが、それでは取引の安全を害します。そのため、虚偽表示による無効は「善意の第三者」に対して主張することができないと定めています(法94条2項)。

 

◆錯誤
錯誤とは、人の認識したことと、その認識対象である客観的事実が一致しないことです。
旧法では、意思表示は「法律行為の要素」に錯誤がある場合には無効と明記されていましたが、条文にはないさまざまなルールもありました。
新法では、これらを整理し、「動機の錯誤」についても新たに規定を設けました。

(1)表示の錯誤
新法95条1項は「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(1号)の場合で、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができるとしています。

いわゆる「表示の錯誤」というもので、意思表示に対応する意思を欠いており、そのことを表意者自身も気がついていない場合です。
たとえば、Aという物件を購入しようとしていたのに、誤って隣の「物件Bを買いたい」と言ってしまって、本人もそのことに気がついていない場合です。物件の対象がAかBかは、もはや対象物が違うので、重要な錯誤といえ、原則として後で取り消すことができます。

(2)動機の錯誤
新法は、従前は判例法理であった動機の錯誤の規定を新設しました。「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(新法95条1項2号)で、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、錯誤取消しが認められます。

ただし、動機の錯誤は、その動機が示されていることが必要です(同2項)。
たとえば、「新幹線が通る見込みだからこの土地を買う」と言ったものの、実はそのような計画はなかった場合は、動機の錯誤の主張が考えられます。

(3)錯誤の主張が制限される場合
誤解していた場合はすべてが取り消せるとなると、取引は不安定になります。
そこで、すべての錯誤が取り消せるのではなく、錯誤した者に重過失がある場合は取り消すことできません(特別の場合には、例外として取り消すことができる旨を明記しました)。重過失がある錯誤までは保護しないでよいというのが法の考えです。

特別の場合とは次のとおりです。
①相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき
②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
これらの場合には、たとえ表意者に重過失があっても、表示を受けた者を保護する必要がないことから、原則通り取消しを認めています。

(4)第三者保護の観点と取消しの主張ができる期間
旧法では、錯誤による意思表示を前提に、新たに、法律関係に入ってきたような第三者について、保護の規定がありませんでした。
新法では、「善意で過失がない第三者に対抗することはできない」(新法95条4項)と明記されました。詐欺における第三者保護と同様の規定となっています。
なお、新法では錯誤の効果は無効から取消しになりましたので、取消しは追認をすることができる時から5年に限定されます(法126条)。

 

◆詐欺
(1)一般の詐欺
詐欺とは、人を欺罔(欺き騙すこと)して錯誤に陥れる行為です。相手方の詐欺に基づいて意思表示を行ってしまった場合、表意者は原則としてこれを取り消すことができます。
通常の詐欺による意思表示の取消しをする際、取り消される法律行為を前提に取引行為に入った第三者がいる場合には、その第三者が善意で過失がない者であれば、その第三者を害してまで取り消すことはできません。新法は、第三者が無過失の場合も明文化しました(新法96条3項)。

(2)第三者詐欺
相手方以外の第三者が詐欺を行ない、表意者が騙される場合(第三者詐欺といいます)もあります。
新法では、第三者詐欺の場合、意思表示の主体の相手方がその事実を知っていたときのみならず、知ることができたときも、取消しが可能としました(同2項)。これは、心裡留保でも過失によって心裡留保を知らなかった相手方に対して無効となることと整合を図ったものといわれています。

 

◆強迫
強迫とは、害意の告知を行ない畏怖させる行為です。強迫されて意思表示をしてしまった場合、取り消すことができます(法96条1項)。
強迫は、第三者よりも、強迫により意思表示をさせられてしまった者を保護する必要があるので、第三者保護の規定がありません。強迫については改正はありません。