【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q37 心付け・追加サービスの支払義務など

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【Q37】葬儀の実施に当たり、葬儀社から、当初の契約による葬儀社への支払のほか、運転手・火葬場職員・会食の際の配膳人へのチップなどの心付けを支払うよういわれることがあると聞きました。
また、葬儀の際に追加のサービスをしたとして、追加料金の支払を求められる場合もあるようです。これらは支払う義務がありますか。

【POINT】
① 葬儀サービスの場合の寸志・チップなどの支払義務の有無
② 追加サービスの対価の支払義務
③ 不当利得の考え方

1⃣ チップ・心付けとは
① 「チップ」とは「サービスや芸などに対する慰労や感謝の気持ちとして与える少額の金。心付け。祝儀」との意味。「心付け」とは、「世話になる人に感謝の気持ちを示すために与える金銭や品物。祝儀。チップ」といった意味であると国語辞典などでは説明されています。
② いずれにしても、感謝の気持ちを表すために少額の金銭などを渡すものを指しているということで、契約に基づいて提供されるサービスの対価として支払うべき法的な債務ではないということです。
③ 古くから、旅館の仲居さん、冠婚葬祭でお世話をしてくれる人などに、少額の金銭を心付けとして渡す習慣があったことは事実です。
④ 契約社会が浸透してきている現代社会では、契約に基づく対価関係が中心となり、このような習慣もすたれてきているようです。
⑤ 以上のように、心付けやチップというものは、あくまでも感謝の気持ちを表すためのもので、契約に基づいて法的に支払う義務があるものではありません。
⑥ 質問は「支払う義務はあるか」というものです。法的な支払義務はあるのか、つまり支払わないときに裁判に訴えることで支払いを強制できる性格のものか、という意味になろうかと思います。
⑦ このような観点からは、法的な支払義務はないということになります。感謝の気持ちを表すために支払っても良いし、対価を適正に支払っているのだからと支払わなくても構いません。

2⃣ 追加サービス
① 葬儀の実施の際に、葬儀社の判断で、契約では約束していなかったサービス業務などを行う場合が見受けられます。例えば予想以上に会葬者が多く、受付の人員を増員したなどです。
② 契約内容になかったサービスの提供などが必要となった場合、契約者と協議をして、合意に基づいて行うことが基本です。この場合には、追加サービス提供についての契約が締結されているので、消費者は、契約に従って追加の料金を支払う義務を負います。
③ 問題は葬儀社の判断だけで追加サービスを提供し、後日、追加サービスの対価を当然に請求することができるのか、消費者は支払義務を負うのかという問題です。
④ 対価の支払義務は、契約によって生じます。したがって、葬儀社だけの判断で提供したものは、追加サービスの提供に関する契約はないので、契約に基づく対価の支払い義務はないということになります。

3⃣ 不当利得をめぐる問題
① 葬儀社が勝手に行った追加サービスについては、消費者は常に一切支払わなくても良いのでしょうか。実は契約によるものではないからといって、常に一切の支払義務はないとは言えないという難しい問題があります。
② 民法には契約などがないにも関わらず、相手の労務の提供などによって利益を受けた者は、そのために相手に損失を与えている場合に限って、自分が得た利益の限度で返還しなければならないという規定があります。
③ つまり、契約などの法的根拠がないのに、相手の労務の提供などによって結果的に利益を得てしまった場合の清算について定めているわけです。
④ 以上のように、いかなる経緯で葬儀社が契約内容とはなっていない追加のサービスの提供をすることになったのか、追加サービスの内容、それによって消費者が得た経済的利益の有無と金額などによって対処が違ってくることになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q36 疑問がある立替金

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【Q36】都区内で葬儀社の「立替料金」の中に火葬費用一式として20万円(最上等、冷蔵保管3日、休憩室30席用、骨壺青磁3号一式)となっていました。後で火葬場のホームページで費用を調べると、合計してもこの金額にならず7万円程多く請求されていることが分かりました。差額は立替金ではないのでしょうか。

【POINT】
① 葬儀契約と立替金
② 立替金の内容

1⃣ 立替金とは
① 葬儀を実施する場合には、葬儀社が行なうことの他に、寺院に依頼すること、送迎のためのタクシーや飲食代、火葬場に支払う費用、などがかかります。葬儀社が「葬儀一式」でいくらいくらと説明していたとしても、すべて葬儀社の提供するサービスだけで葬儀を行うことはできません。
② こうした事情から、葬儀社では、葬儀社自体が提供するサービス以外のことについても消費者に代行し、支払も立て替えて支払う場合があります。ご質問のケースはそうした事例に関するものです。

2⃣ 立替金の項目の明示がないと聞き
① 契約をした時に契約内容に、葬儀社が実施する葬儀サービス以外の内容について立替払をすることが盛り込まれていることが少なくありません。
② このような場合には、何の費用を立て替えてもらうことになっているのかが明確になっているので、トラブルは起こりにくいと思われます。
③ しかし、契約の時には立替払をすることが明示されていない場合があります。このような場合、契約内容となっていないのに葬儀社が立替えて支払ったものを、「頼んだわけではないので支払いたくない」ということでトラブルになる場合があります。
④ このようなことを避けるために、葬儀の契約をする段階で、葬儀社に立替て支払ってもらうものの内容を具体的に明確にしておくことが重要です。
⑤ では、契約で立替払をすることが明確にされていない場合には、どのように考えたらよいでしょうか。例えば、火葬費用のように、現実にサービスの提供があり、利益を得ている場合には、本来は火葬場に対価を支払う義務があるものです。
⑥ それを葬儀社が立替えて支払っていることによって、消費者は、火葬場に対する支払いを免れるという利益を得たことになるので、消費者は、葬儀社の出費によって得た利益分は葬儀社に対して支払う義務があることになります。
⑦ これとは異なり、火葬場の従業員や送迎の為のタクシーの運転手などに心付けを支払う慣習があるからと、契約で立替払いの内容を明示していないのに、葬儀社が心付けを立替払いしたとして消費者に請求してくる場合があります。
⑧ このような場合には、心付けを支払う法的義務があるわけではなく、葬儀社との契約内容にも明示されていないうえ、消費者は実質的な利益を得ているわけではないので、支払う義務はないと考える余地があります。

3⃣ ご質問のケース
① ご質問のケースでは、葬儀社との契約で火葬費用については葬儀社が立替金として支払う内容となっていたもので、葬儀社は契約の履行として立替払をしたケースです。
② ところが、火葬費用としての立替金の内容について「火葬費用一式として20万円(最上等、冷蔵保管3日、休憩室30席用、骨壺青磁3号一式)」と表示されていたのに、消費者が火葬を実施した火葬場のホームページに掲載されている費用で「最上等、冷蔵保管3日、休憩室30席用、骨壺青磁3号一式」を計算したところ7万円が多く請求されていることが判明したとのこと。
③ 消費者は「差額は立替金ではないでしょうか」という疑問を持っているわけですが、このような場合には、まず、葬儀社に対して直接請求金額の内訳明細を明確にするよう説明を求める必要があります。その上で、過大な請求であれば支払義務はないということになります。
④ 火葬場の従業員等に対する心付けを立替払いしていたという場合には、心付けは契約に基づく対価の支払ではないので、葬儀社との契約の際に「心付けの支払が習慣として行われているので、心付けについても立替払に含まれる」旨が明示されていなかった場合には、心付け部分については契約内容にはなっていないと考えられます。したがって、心付けの立替分については、支払の義務はないと考えることが可能です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q35 サービスの品質への不満

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【Q35】葬儀社が「ご心配なく、全部致します」と言うので、受付から案内まで頼んだのですが、態度も横柄で案内も気が利かず、親戚から不満が出ました。葬儀社に言ったら「あくまで無料サービスだから責任は取れない」という返事でしたが、問題はないのでしょうか。

【POINT】
① サービスの品質
② 無料サービス

1⃣ 契約内容の確認を
① 葬儀社に葬儀の依頼をするのも契約です。したがって、どのような内容の契約をしたのかが重要です。ご質問の事例では契約内容が全く分からないので、何とも言えませんが、受付から案内まで行うということも含まれていたのではないかと思われます。
② 受付・案内は、葬儀社の方で人手を用意するということです。葬儀サービスでは、これらの人件費はコストの多くを占めるものなので、この点が無料サービスということは考えにくいと思われます。
③ 受付と案内ということですと、配置された人数も1人ではないはずです。何人を配置することになっていたのかも大切なポイントです。
④ 契約するときに、どのような内容のことを葬儀社に依頼するのか、内訳の明細をきちんと提出してもらいましょう。「ご心配なく」等、口頭だけで済まさないことが大切です。

2⃣ 気が利かないなど
① 受付や案内などの態度が横柄で気が利かないなどの苦情に対して、「無償サービスだから責任は取れない」という回答だったとのこと。無料であったかどうかも疑問ですが、もう一つ難しい問題があります。受付業務なども依頼内容に入っていた場合に、「横柄」だという苦情が親戚から出た場合には、事業者に法的責任が発生するかどうかという問題です。
② 横柄・気が利かないとは、具体的にどのような態度だったのか、仕事上どのような支障が生じたのかという問題です。確かに、親戚や葬儀に参列した人々からすると、葬儀社の対応が心のこもった丁寧なものだったかどうかは大切なことです。
③ しかし、契約どおり人も配置してやるべきことは一通り行っていたということであれば、債務不履行があるとまでは言えないのではないかと思われます。
④ たしかに親切な対応を期待しますが、不親切な対応だから債務不履行だと直ちには言えないのです。これは飲食店や介護ヘルパーなどのサービス業での接客対応と似ていると言えます。
⑤ したがって、感情的に気が利かないとか、横柄という評価をするだけでなく、するべき事務を怠っていたといった具体的なことをはっきりさせる必要があります。単に、横柄だっということでは、債務不履行などの問題にはならないと思われます。

3⃣ 葬儀社を選択する時に
① 葬儀で対応の良くない受付などは困ります。そこで、葬儀社を選択する場合には、あらかじめ葬儀社を利用したことのある地域の住民などから情報を収集するなどして、判断材料にすることが大切です。
② 葬儀社に電話をした時の電話の応対、契約のための打合せでの対応や説明が親切かどうか、質問にはきちんと答えてくれるか、見積りを示して丁寧に説明してくれるか、渡される書類は分かりやすいようにまとめられているか、などもチェックすべき点です。
③ 契約の締結についてやりとりをしている段階での対応が良くない場合には、消費者に対する配慮が足りないということであり、従業員教育も行き届いていない可能性があると考えた方が良いでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q34 納得できない物品(棺)の品質

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【Q34】葬儀での棺は豪華なものにしたいと考え、三面彫刻入りを15万円で頼みました。実際には彫刻部分をはめ込んだもので棺自体も何か頼りない製品だったので、割引なり納得できる棺への取替を要求したいのですが、可能でしょうか。

【POINT】
① イメージ違いの場合は不可
② 勧誘時の説明が事実と違っていた場合は契約の取消事由
③ 契約内容とは異なる商品が引き渡されていた場合は追完請求できる

1⃣ 葬儀契約で問題が起こりがちな理由
① 葬儀契約における棺が、現実に引渡しを受けてみたら、自分がイメージしていたものよりも品質が劣る粗末なものだった、という苦情です。
② 葬儀契約では、棺の品質に限らず、祭壇などでも類似のトラブルが起こりがちです。考えられる理由は大きく分けると二つあります。
③ 第1は、日常的に経験している取引ではないため、利用者には品質と価格のバランス等がわからないことが挙げられます。棺は段ボール製の1万円以下のものや、数万円の合板使用のもの、総ヒノキで彫刻を施した数百万円のものなど棺の価格帯は広くなっています。
④ 第2に、棺などを決める際には、現物を見ないことが多い点です。現物を見ないで注文をする典型例は通信販売ですが、特定商取引法で通信販売の広告表示には、返品の可否を明示することを義務づけております。
⑤ 葬儀契約における棺の売買も現物を見ないと同様のことが起こりがちですが、通信販売ではないので、返品制度はありません。最近では葬儀社側もカタログを用意する等対策はしていますが、それでも現物を確認しているわけではないので、トラブルは起こり得ます。
⑥ ご質問のようなトラブルが起こる理由としては、イメージ違い、事業者の説明に問題があった場合、引き渡された商品が契約内容と違う商品だった、という3パターンが考えられます。

2⃣ イメージ違い
① 引き渡された棺は、契約で約束したものであったものの、利用者がイメージしたものとは違った、という場合なにか苦情が言えるのでしょうか。
② 通信販売に該当しない葬儀契約の場合には、返品制度に関する規制があるわけではないので、利用者には返品権はありません。民法の契約の原則で考えることになります。
③ 民法によれば、売買契約を締結し、事業者が契約の内容に従って商品の引渡しをすれば、事業者の債務の履行は完了します。顧客は、当然に、契約に従って対価を支払う義務を負うことになり、値引きや交換を求めることはできません。

3⃣ 勧誘時の説明が事実と違っていた場合
① 利用者が棺の品質について不満を抱いた理由が、契約の締結について勧誘をする際の事業者の説明に問題があったことによる場合はどうでしょうか。
② 勧誘の際の事業者の説明が「この15万円の棺は、無垢材に直接彫刻を施した豪華なものです」と説明し、この説明を信じた利用者が「それならば」とこの15万円の棺を選んだ場合に、実際の商品が合板の棺の一部に彫刻をはめ込んだものであり、利用者が不満を抱いた場合です。
③ この場合は、契約の履行には問題がないものの、事業者の勧誘時の説明に問題があったということになります。
④ 葬儀契約は個人と葬儀業者との契約ですから消費者契約に該当し、消費者契約法の適用があります。消費者契約法4条1項および5項では、事業者が契約の締結について勧誘をするにあたり、販売する商品の品質などに関する重要な事項について事実と異なる説明をし、消費者が、事業者の説明が事実であると誤認して契約を締結した場合には、その契約を取り消すことができると定めています。
⑤ 取消しは、追認できる時から1年間可能です。現物が届いてすぐであれば取消しは可能です。そこで利用者は、ご質問の棺の売買契約を取り消して、納得できる棺の売買契約を新たに締結すればよいことになります。

4⃣ 引き渡された商品が契約の内容に適合しないとき
① 葬儀社との契約内容は「無垢材に彫刻を施した棺を15万円で販売する」との内容だったのに、実際に引渡しをされた棺は合板で彫刻をはめ込んだものだったという場合、売買契約に基づいて引き渡された商品が「契約内容に適合しない商品だった」ということになります。一種の債務不履行に当たります。
② 令和2年4月から施行されている改正民法では、購入者は、引き渡された商品が契約の内容に適合しない場合には、不適合に気が付いた時から1年間は、事業者に対して追完請求をすることができると定めています。
③ ご質問のような場合の追完とは、契約内容に適合した商品と交換するように請求することができるということです。追完請求をする場合には、合理的な相当期間を定めて、この期間内に追完して欲しいと請求します。
④ 指定した期間を経過しても追完されない場合には、適合しない程度に応じた減額請求ができます。つまり値引きの請求ができるということになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q33 オプションとその料金

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【Q33】葬儀社から見積もりを受け取ったら、葬儀基本料金とは別にオプションとして「棺 布張り棺10万円」とありました。棺なしに葬儀はできないので、葬儀基本料金と二重取りされているのではないでしょうか。

【POINT】
① 葬儀基本料金の内訳
② オプションの意味の確認

1⃣ 葬儀契約は内容があいまいになりがち
① 契約は、通常具体的に事業者が提供する商品やサービスの内容を決め、あわせてその提供時期、対価など契約条件を決めることによって成立します。
② 事業者が提供する商品やサービスの内容が不明確であったり対価などの契約条件が曖昧である場合には、トラブルの元となるので要注意です。
③ 契約の内容というのは、事業者が約束してくれることを意味しますから、内容が曖昧だと何を約束してもらっているのかがはっきりしないということになるため、トラブルになる危険性が高い訳です。
④ ところが、葬儀に関する契約では、葬儀社が提供する商品やサービス内容が曖昧であることが少なくなく、しばしばトラブルが生じています。
⑤ 葬儀社によっては「葬儀一式」とか「葬儀基本料金」などの表現をしている場合がありますが、これらは用語の定義があるわけでもなく、葬儀社ごとに恣意的に使用しているものにすぎません。
⑥ よって何が含まれているのかは葬儀社ごとに様々です。ですので、内訳明細がない場合には、何が含まれているのかわかりません。
⑦ 葬儀社の方では、「常識的にこの内容」と考え、消費者は「葬儀に必要なものすべて」と考える。結果、葬儀終了後にトラブルが多々生じてくる結果となります。

2⃣ オプションとは
① もう一つの問題は、葬儀社によっては、オプションという言葉を使用していることがある点です。
② 事業者の方は、基本料金には含まれていないものをオプションとして用意しているので、オプション料金を支払えば利用できます、と説明します。
③ オプションというと、旅行パックなどでよく聞きますが、基本のパックに含まれていない観光地での観光やレジャー参加など、旅行パックとは別にオプション契約をしてオプション料金を追加するイメージです。
④ 葬儀の場合も、基本料金に含まれていないサービスの追加を依頼する場合がオプションであるというイメージを持つのも無理はないでしょう。

3⃣ ランクアップの場合
① ところが、葬儀の契約ではもともと基本料金に含まれている棺や祭壇、使用するホールのランクを上げる場合も、オプションと呼ぶ場合があります。
② この場合には、基本料金に含まれている棺・祭壇・ホール使用料とオプション料金の関係が曖昧だとトラブルになります。ご質問は典型例です。
③ トラブルを避けるには以下の点が重要です。第1に、基本料金に含まれている内容について内訳明細を出すように求めます。ついで、棺の料金も入っていることが分かったら、ランクアップのオプションを選択した場合には、オプションの追加料金はどのように算出しているかを確認します。
④ この場合、基本の棺の代金は基本料金に含まれているとすれば、ランクアップの代金と基本の棺の料金の差額がオプション料金と考えるのが一般的だと思います。
⑤ しかし、この点も確認が必要で、事業者によっては基本料金はそのまま全体としてのセット料金なので、基本の棺ではなくランクアップした棺を使用する場合でも、基本料金を値引きしないケースがあります。
⑥ この問題は約款をどう解釈するかという問題になりますが、日本では約款の解釈に関する法律はありません。事業者側は「約款は定めた側の解釈で」と主張するケースが多く、消費者側の理解とずれているケースが散見されます。
⑦ ご質問のケースでは内訳明細が明示されていないケースのようですので、まずは、内訳明細の開示を求め、ランクアップ料金の算出方法について確認が必要です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q32 葬儀ローンを利用したとき

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【Q32】葬儀の際に、一括で支払う余裕がなかったため、葬儀社の勧めるままに葬儀ローンを利用しました。葬儀後、葬儀の実施をめぐり葬儀業者とトラブルになっています。そのため、ローンの返済をしたくありません。
また、これまで支払った金額も返還して欲しいですが、可能でしょうか。葬儀社は、支払ってもらうしかないというのですが、納得できません。

【POINT】
① 葬儀ローンの仕組み
② 割賦販売法の規制
③ 葬儀社とトラブルになったときー支払い停止の抗弁制度

1⃣ はじめに
① 突然の葬儀で、葬儀費用の準備がないという場合に、葬儀費用をどのように準備すればよいかは、大きな問題です。
② 手持資金がない場合の方法としては、銀行等のフリーローン、カードローン、消費者金融業者のキャッシングなどを利用する方法が考えられます。
③ いずれの場合にも、利息が高い傾向があります。借入時期と金額と返済期間にもよりますが、実質年率で利息が10%前後から18%弱かかる場合もあります。

2⃣ 葬儀ローンのしくみ
① ご質問の葬儀ローンと呼ばれているものは、フリーローンなどの金融機関等からの借金とは違い、葬儀社が加盟店契約しているクレジット会社との間で個別クレジット契約を締結する仕組みのモノです。
② 消費者は、葬儀社との間で葬儀サービス契約を締結し、クレジット会社との間で個別クレジット契約を締結するという契約関係になります。
③ この契約を利用すると、クレジット会社は、葬儀代金の全部又は一部を葬儀社に対して消費者に代わって立替払いします。
④ 消費者は、立替払いしてもらった金額相当額に立替手数料を加算した合計額を、個別クレジット契約を締結する時に決めた分割方法でクレジット会社に返済していくという仕組みです。
⑤ 令和2年現在、葬儀ローンを取り扱っているクレジット会社はジャックスとオリエントコーポレーションがあるようです。
⑥ どちらの会社を選ぶのかは、消費者ではなく、葬儀社が加盟している会社を選ぶ形になります。
⑦ 立替手数料の金利は7から8%程度のようで、フリーローンよりも若干金利が安くなっているようです。

3⃣ 葬儀ローンの手続き
① 銀行のフリーローンやカードローン、消費者金融からの借入の場合には、銀行や消費者金融に出向いて手続きをすることが必要であったり、ATMでの操作が必要となります。
② 葬儀ローンの場合、消費者は、自分でクレジット会社に対する申込みや契約手続きを取る必要はありません。
③ 加盟店である葬儀社が説明し、申込書もくれます。葬儀ローンの申込書に署名押印して葬儀社に提出すればよく、手続きは簡単です。
④ 葬儀社はクレジット会社に申込書を送り、クレジット会社で信用情報を調査するなど審査を行います。場合によっては消費者に電話をするなどして収入調査を行うこともあります。

4⃣ 割賦販売法による規制
① 割賦販売法は、個別クレジット契約について、個別信用購入あっせん取引としての規制を設けています。規制の概要は次のとおりです。
・クレジット会社は登録が必要で、加盟店契約を締結するときは加盟店の販売方法に問題はないか、などについて加盟店調査する義務がある。
・個別クレジット契約を締結するにあたり、消費者の支払能力について調査しなければならず、支払能力を超えた契約を締結することは禁止(葬儀ローンにつきこの規制は緩和されている)。
・個別クレジット契約を締結した場合には、契約書面を消費者に交付する義務がある。
・加盟店に対して支払いを拒絶できる法的権利がある場合には、加盟店に対する法的権利(抗弁事由)を根拠に、クレジット会社に対する支払を拒絶することができる「支払停止の抗弁制度」がある。

5⃣ ご質問の場合
① ご質問の事例では、葬儀社とのトラブルの内容が不明です。内容次第で対応が変わります。
② 葬儀社との契約を取り消したり、解除したりできる場合には、葬儀契約の取消しや解除を理由に、クレジット会社に対しても支払停止の抗弁を主張して支払いを拒むことができます。
③ ただし、すでに支払った分については、クレジット会社に対する返金要求はできません。
④ 葬儀契約を取消しできる場合としては、葬儀契約の締結について葬儀社が勧誘する際に、嘘をついて消費者に誤認させた結果契約締結に至った場合などです(消費者契約法4条1項・2項)。
⑤ 葬儀契約を解除できる場合とは、葬儀社の葬儀の実施が葬儀契約の内容どおりではなくきわめてずさんであるなど大きな問題がある場合です。この場合、債務不履行として解約できます。
⑥ 手順としては、消費者は葬儀社に対して、契約の取消しや解除の通知をだします。同時にクレジット会社にも、葬儀契約の取消しないし解除の通知をしたこと、したがってクレジット会社に対する支払いも拒絶することをはがきなどで通知します。
⑦ このような通知文書はコピーした上、簡易書留や配達証明付き書留で行うか、内容証明郵便で送るかして、通知の事実を証明できるようにします。
⑧ クレジット会社に通知しないで支払いを止めると、単なる延滞と扱われ、信用情報機関に事故情報が記録され、以後、ローンやクレジットが使えなくなってしまいます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q31 葬儀の契約の範囲

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q31 葬儀の契約の範囲についての記事です。

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【Q31】葬儀社と契約を結ぶ場合、契約の内容には何が入っているのでしょうか。総額料金となっているとき、葬儀社との契約だけで葬儀全部を済ませることはできますか。
また、葬儀社が提示した見積もりの内容が納得いかない場合には、どうすればよいでしょうか。

【POINT】
① 葬儀契約の内容
② 葬儀に必要な費用
③ 葬儀社のいう「総額料金」の意味
④ 見積もりが納得できないとき

1⃣ 葬儀に係る費用の種類
① 葬儀は、日常生活で頻繁に利用するものではなく、あらかじめよく調べて準備することはしにくいものです。
② そのため、いざ必要となった時は、葬儀を実施するためには何が必要で、費用がいくらかかるのかわからないという問題が起こりがちです。
③ そのため、葬儀社に依頼すればすべてを行ってくれるといった勘違いも起きることがあります。
④ 葬儀を行う場合かかる費用は大きく3種類に分かれます。第1は葬儀社に提供してもらうサービスの対価、第2は葬儀社以外の業者に対する支払費用、第3に寺院に支払う費用です。

2⃣ 葬儀社に支払う費用と契約内容
① 葬儀社に支払う費用は葬儀社との契約で、どのような内容の葬儀サービスを依頼することにしたのかによって決まります。
② 自宅で行うか、セレモニーホールを利用するのか、その広さや場所等によっても金額は変わります。棺や祭壇なども簡素で安価なものから豪華で高額なものまでさまざまです。葬儀参列者の数によって受付などの人件費も変わります。
③ 病院からの遺体の搬送費も遠方の病院からの場合割増料金が発生します。自宅に安置できない場合、安置場所の費用、追加のドライアイス代等が発生します。
④ 生花代込みと聞いていたが、一組だけで寂しいので追加するとすれば、当然追加費用が発生します。
⑤ 葬儀社と契約する場合、葬儀に必要なことは何かをよく把握した上で、見積もりを出してもらって必要なものがすべて入っているか、自分たちが納得できるレベルの内容か吟味する必要があります。
⑥ 会葬御礼等は参加者の人数によって変動するものです。そのため契約時の見積もりに入っておらず、葬儀後に請求されるなどのトラブルもあります。
⑦ 葬儀社との契約料金を低額に抑えることのみにこだわり、低額で契約を締結した。しかし、料金を低く抑えるためには葬儀の実施のために葬儀社に提供してもらう必要があるサービスの一部を削った契約内容とする結果となっていた。
⑧ 実際その契約で葬儀を実施した場合、多額の追加料金が発生、結局高額になるというトラブルもあり、葬儀の実施に必要なサービスはすべて含まれているかを注意して確認する必要があります。

3⃣ その他の事業者の費用
① その他の事業者への費用としては、火葬場費用、ハイヤー等の交通費、生花業者や仕出し業者への費用などです。
② 火葬場の費用は地域によって異なってきます。公共の火葬場がある地域では無料か非常に安価な場合が多く、都内ではランクにもよりますが相応の利用料金がかかります。
③ 葬儀社によっては、生花代、食事代なども含めた料金になっている場合がありますが、この場合、生花業者、仕出し業者に葬儀社が委託するシステムになっています。葬儀社が立替払いして後日精算のケースもあります。

4⃣ 寺院に対する費用
① 葬儀での読経や戒名についてお布施を支払うことになります。お布施の支払は葬儀社とは別になります。
② 葬儀社が提携する寺院の僧侶による読経をセットにして葬儀費用に織り込んでいるものもあります。この点でも契約内容をよく確認する必要があります。

5⃣ 総額料金の意味
① 葬儀社が使う「総額料金」に決まった定義はありません。各葬儀業者が各社の理解のレベルで使用しているにすぎません。
② 消費者からすると「総額料金」と言われると、これで葬儀のすべてが賄われると思いがちですが、そのような意味ではありません。「当社との契約内容の対価の総額」程度の意味です。

6⃣ 見積もりの重要性
① 葬儀社との契約では、葬儀に必要な内容が漏れなく入っているか、どのようなサービスまで含んだものか、サービスなどの具体的な内容や質が重要です。
② 葬儀のあり方も多様化しており、スタンダードというものはありません。我が家での葬儀には何が必要かをわきまえたうえで、葬儀社との契約に含まれている内容を見積書にて十分チェックすることが重要です。

7⃣ 見積もりに納得できないとき
① 見積もりは契約締結前に提示するように求めましょう。その際、見積費用も確認しましょう。見積もりは無料なのか、有料なのかの確認は重要です。
② 契約締結前にどのような内容が含まれているか確認し、見積内容に納得がいかない場合には契約をしない自由があります。見積無料であれば費用はかからず、有料の場合、見積費用だけ支払えばよいことになります。
③ 問題は契約締結後に出てきた見積に納得がいかない場合です。この場合は契約内容の解約条項にキャンセル料の定めがあるかどうかで違ってきます。
④ 民法では、請負契約は仕事が完成するまでは注文者からいつでも解除できると定めます。この場合、請負人に対して生じた損害を賠償する義務があります。
⑤ キャンセル料の定めがない場合、葬儀社が契約のキャンセルによって被った実損を賠償する必要があります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q27 葬儀の多様化と事前相談

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【Q27】近くに葬儀会館がオープンしたので、事前相談コーナー「で「一般的葬式費用」を聞いたところ、「葬儀費用もいろいろある。お宅の事情や希望を聞かないと見積出来ない」と言われました。気楽な気持ちで行ったのにプライバシーまで明かさないと相談できないのかと不審に思いました。

【POINT】
① 葬儀の多様化
② 一般的葬式費用というものはない
③ どのような葬儀をしたいかがポイント

1⃣ はじめに
① 「一般的葬式費用」を教えてもらえないということですが、どのようなことが知りたかったのでしょう。葬儀に係る全体の費用の全国平均であれば、一般財団法人日本消費者協会が行なったアンケート調査があります。
② それによれば、平成22年度の調査では199万円でした。しかし、ここで知りたかったことはそのようなことではないと思います。
③ 近年では、葬儀のあり方が大きく変化しており、多様化が進んでいます。平均的な葬式のスタイルというものがそもそもあるわけではありません。
④ どのような葬儀をしたいのか、場所は、何人くらい参列するのか等によってかかる費用は変わってきます。気軽な気持ちで聞いたとのことですが、何が知りたかったのか判明しませんので、この業者の対応を批判することはできません。

2⃣ 葬式にもいろいろある
① どれくらい葬式費用がかかるかは、どのような葬式をしたいのかによって違います、葬式費用について知りたい場合には、どのような葬式をしたいかまずはご自身が整理する必要があります。
② プライバシーまで明かさないと相談に乗ってもらえないのかと不審に思ったとありますが、被害妄想が過ぎると思えます。まずは自分がどのような葬式を希望するのか伝えないことには、業者側は見積もりなど出せません。
③ 例えば、数人だけの家族で自宅で質素な家族葬をしたい場合と、セレモニーホールを葬儀会場に借りたうえで、百人規模の参列者が見込まれる場合とでは、かかる費用が全く異なります。
④ 使用する棺や祭壇、通夜振舞の料理、生花などによっても費用は大きく異なり、「平均的葬式費用」と聞かれて簡単に「○○万円」と回答が出る業者の方が不誠実で信用できないというべきだと思います。

3⃣ どのようなことが必要か
① 葬式費用の概算を知りたい場合には、最低でも明らかにしておくべきことがあります。
② 第1に、葬式を行う場所です。自宅か、セレモニーホールを借りるか、公的なところで運営している斎場を利用するか、火葬場で簡単に済ますか(いわゆる直葬)などを考える必要があります。
③ 第2に、祭壇、棺、その他様々なものをどの程度のものにしたいのか、ということです。「一般的な葬式だ」と言いたいのかもしれませんが、そもそも「一般的な葬式」などありません。
④ 人や家族によって考え方が様々で葬式に対する考え方も多様です。したがって具体的にどうしたいのかを考えたうえで示す必要があります。カタログなどを見せてもらい、「こんな感じで」と指定して見積もりをしてもらうという方法が一般的といえるでしょう。
⑤ 逆にそういう資料がなく、「これが一般的な葬式です」と数字だけ示す業者だと、祭壇も棺も内容は分からないままであるということになって、かえって「こんなはずではない」となりがちです。
⑥ 第3に、参加者は何人くらいかも重要です。それにより使用する会場の広さも違います。食事などの準備の数も、返礼品や礼状の数も、火葬場までの送迎の車の台数も全て違ってきます。
⑦ これらについて考えたうえで相談すれば、費用の概算を助言してもらえるでしょう。ただし、これはあくまで概算ですから、現実の葬儀の依頼の場合にはより具体的に内容を決める必要があります。
⑧ この点があいまいなまま「一括料金」などで依頼した場合、不満が残ったり、トラブルになったりしがちです。
⑨ なお、戒名・読経などの寺院へのお布施などの支払は別途必要になります。また、飲食接待費や葬儀社の支援スタッフの人件費なども実際の規模に応じて変動しますので、別計算になります。こうした点も注意が必要です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q25 生前契約・生前予約の解約

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【Q25】葬儀社と葬儀の生前予約契約をして50万円を支払った後に、急に現金が必要になり解約の申し出をしました。葬儀社は「入会金として受け取ったものだから解約返金には応じられない」と言います。50万円もの入会金などあるのでしょうか。

【POINT】
① 生前葬儀契約の趣旨
② 解約できない特約の妥当性
③ 入会金の意味

1⃣ 1回払いの葬儀生前契約
① 生前葬儀契約の典型的なものとしては、従来から冠婚葬祭互助会があります。これは契約金額を毎月数千円程度分割で支払っていくというもので、割賦販売法に基づく許可が必要です。
② 許可の審査の際には使用する約款内容も審査をすることになっており、中途解約できる内容であることが必要とされています。
③ ただし、解約料としていくらまで差し引くことができるかについては特に規制されていません。
④ ご質問のケースでは、法律で規制されている冠婚葬祭互助会ではなく、1回払いの生前葬儀契約に関するものです。したがって、基本的には当事者間の契約の合意内容によります。
⑤ 具体的には、事業者が決めた約款の内容の合理的な解釈によります。ただし、どのような内容の約款なのかによって、消費者契約法の規制する不当条項に該当する場合には、その不当な条項部分は無効とされます。

2⃣ ご質問の契約の趣旨
① ご質問の契約の内容はどのようなものだったのか、が最も問題です。
② 消費者は、「生前予約契約」であるとの認識です。つまり、自分が死んだ場合の葬儀サービスの予約をし葬儀サービスの代金を前払いしたものである。予約完結権を実行しないで解約することはできるはずである、という主張と思われます。
③ 一方、葬儀社の言い分は「入会契約の入会料である」から入会後に退会したとしても返還できないという主張のように思われます。
④ そうすると、この契約の内容はいったいどのような内容のものだったのかが大きなポイントとなります。入会とは、どのような会に入会するという契約なのか、入会料とは何に対する対価なのか、という問題です。
⑤ これらの点を解明するには、まず契約書や契約関係書類を確認する必要があるでしょう。実態として、生前に生前葬儀契約の予約をしたという趣旨の内容であれば、これは一種の請負契約に該当するものであり、仕事が完成する以前は、注文者はいつでも契約を解除できるのが原則です。
⑥ 解除できない旨の特約があるときでも、消費者からの解約を制限するだけの合理的理由がないので、消費者契約法10条に反して無効であるというべきです。
⑦ ただし、その場合には、もし葬儀社に損害を与えた場合には損害については賠償することになると思われます。ただし、この損害には「儲けそこなった利益」や「外務員に支払った歩合給」等は含まれません。

3⃣ 契約内容が異なっていた場合
① 契約内容が、葬儀社の主張する「入会契約」であり退会しても入会金は返金しない内容となっていた場合には、二つ問題点があります。
② 第1に、消費者が生前の葬儀予約契約だと認識していたことです。業者の説明を信じてそう思い込んで契約していたのであれば、不実告知による取消し(消費者契約法4条1項)ができる可能性があります。
③ 第2に、入会契約であっても入会金は何に対する対価なのか。退会しても返還しないだけの合理的な理由があるのか、平均的損害を超えていないのかという問題です。
④ 入会後に退会まで受けたサービスは何か、退会によりその事業者が被る平均的損害はどのようなものかがポイントになります。
⑤ いずれにしても一切返金しないとの特約は、消費者契約法9条1号に反して無効と考えられます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q23 冠婚葬祭互助会契約の解約

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【Q23】70歳の父が将来の葬儀のことを考えて、36万円36回払の冠婚葬祭互助会の契約をしました。知人から「36万円で全部できるわけがなく、追加料金が発生する」と言われ、全部できると思って契約したので、それなら辞めたいと思い解約したいと告げたところ、「6回分の支払済み金額は解約手数料で戻らない」と言われました。正当な言い分でしょうか。

【POINT】
① 冠婚葬祭互助会とは何か
② 冠婚葬祭互助会の中途解約
③ 解約料の妥当性

1⃣ 冠婚葬祭互助会とは
① 冠婚葬祭互助会とは、葬儀や結婚式などが必要になった場合にサービスの提供を受けることを約束して、その対価を2カ月以上にわたり3回以上に分割して支払う契約を指します。数年間にわたり数千円程度を分割払いで支払うものが多くみられます。
② 分割による前払の方式をとっていることから、冠婚葬祭互助会は割賦販売法の規制が及び、経済産業省の許可が必要です。
③ 営業所ごとに営業保証金の供託が必要で(主たる営業所は10万円、その他の営業所は1か所ごとに5万円)、顧客からの預かり金が多くなるとその半額を保全することも義務づけられています(前受金保全措置)。
④ 金額と提供されるサービスの内容は、互助会業者によって数種類のコースを用意しているのが普通です。コースの内容は、料金内で提供できる範囲のサービスなどを組み合わせています。
⑤ 安いコースの場合には、例えばホールの使用料が含まれていないなど、葬儀に必要なサービスであっても含まれていないものがあるので、よく確認することが大切です。
⑥ さらに、葬儀には、料理、タクシーなどの費用、火葬場の支払、寺院への支払いなど、互助会で提供する以外のサービスなどが必要不可欠です。
⑦ そのため、葬儀を行う場合には、互助会への支払だけで葬儀を済ませることができるわけではありません。この点も消費者に誤解がないように十分説明が必要です。

2⃣ 冠婚葬祭互助会の中途解約
① 冠婚葬祭互助会は、サービスの提供を受ける前であれば中途解約ができます。冠婚葬祭互助会の使用する約款については割賦販売法による許可の際の審査対象になっており、現在では中途解約ができる内容になっているものであることが必要とされています。
② ただし、現在のところ、中途解約の際の解約料などの取扱いについては具体的な基準は定めておらず、互助会業者の自由に委ねています。
③ これまでは、契約金額の2割程度の違約金条項を定めているものが少なくありませんでした。また、支払済みの料金は返還しないというケースもしばしば見受けられました。

3⃣ 解約料と消費者契約法
① こうした事情のもとで以前から互助会の解約に伴うトラブルは少なくありませんでした。解約しても支払済みの金銭が返還されないとか、違約金が高すぎるという指摘が少なくなかったのです。
② 消費者契約法では「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」を不当条項とし、「当該超える部分」は無効であると定めています。
③ 違約金条項に定める違約金が平均的損害を超えているのではないかという指摘がされていたのです。
④ ある適格消費者団体が、冠婚葬祭互助会が用いていた中途解約に関して、一律契約金額の2割を解約料とする条項が平均的損害を超えるもので無効であるとして差止めを求めた事件があります。
⑤ この事件に関して大阪高裁は次のように判断しました(互助会側が上告しましたが、上告不受理で高裁判決が確定しています)。
⑥ 消費者契約法9条1項にいう「平均的損害」とは、同一事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される損害の額を指し、具体的には、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生ずる損害の額の平均値をいうものと解されると判断しました。
⑦ 次いで、冠婚葬祭互助会は、消費者から葬儀等の施行の請求を受けてはじめて、その消費者のために葬儀等の施行に向けた具体的な準備を始めるものであること、したがって、具体的な葬儀等の施行の請求がなされる前に契約が解約された場合には、損害賠償の範囲は原状回復の範囲に限られるべきであると判断しました。逸失利益の請求はできないと判断したわけです。
⑧ 具体的には、契約の締結及び履行のために通常要する平均的な費用の額が「平均的な損害」であり、その範囲は個々の消費者契約との関係において関連性が認められるものを意味すると判断しました。
⑨ 毎月の集金費用(1回600円の実費)と年1回のニュースの作成費用と送付費用および入金状況通知の費用であると判断しました。
⑩ 以上からすると、中途解約した場合には支払済みの月掛金は一切変換しないとする主張は不当なものであり、認められません。

4⃣ 不実告知による取消しの場合
① また、契約の締結について勧誘をする際に、事業者が「この契約には葬儀に必要なすべてが含まれている」旨の契約の内容についての不実の告知をしたために消費者が誤認した事実がある場合には、消費者契約法による不実の告知を理由に契約を取り消すことができます。その場合には支払済みの全額を返還するよう請求できます。