【相続・遺言について】相続放棄

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、養子・非嫡出子・相続放棄の場合の相続分について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】1.相続放棄の方法を教えて下さい。

2.私が受取人になっている生命保険があるのですが、相続放棄をしたら、受け取ることができなくなるのでしょうか?

3.受け取ったら相続放棄できなくなるものと、相続放棄をしても受け取れるものを教えてください。

 

【A】◆1.相続放棄の方法

①被相続人が亡くなると、直ちに相続(相続による権利義務の承継)が開始します。ただ、相続では、プラスの財産(不動産や預貯金など)だけでなく、マイナスの財産(借金など)も相続してしまうため、たとえば、被相続人が多額の借金を残している場合など、相続人は相続したくないと考えるかもしれません。そのような場合に、相続人が、相続するのか(単純承認)、一切相続しないのか(相続放棄)、限定的な範囲で相続するのか(限定承認)、選択できるようになっています。相続放棄とは、上記のうち、相続人が被相続人の財産の一切を相続しないことを言います。相続放棄をすると、初めから相続人にならなかったものとみなされます。

②相続放棄をするには、被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄をすることを申し出なければなりません(「申述」と言います)。相続人間の話し合いの中で、「私は何も相続しなくていい。」「私は相続を放棄する。」などと言っても、それは民法上の「相続放棄」とはなりません。

相続放棄の申述書には収入印紙を貼り、申述書と共に、戸籍謄本や郵便切手等を家庭裁判所に提出します。相続放棄の申述の期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内とされています(これを「熟慮期間」と言います)。なお、相続人が相続放棄をする前に死亡した場合、相続人の相続人に放棄の権利が承継されますが、この場合は後の相続人が自己のために相続開始を知ったときから、熟慮期間は起算されます。この熟慮期間は、相続人や利害関係人が、被相続人の財産状況を調査し、相続するのか、相続放棄するのか、限定承認するのかについて、調査・熟慮するための期間です。被相続人の財産状況の調査などのため、利害関係人等は、熟慮期間の延長を家庭裁判所に請求することができます。

③熟慮期間が過ぎると相続放棄が認められないことから、熟慮期間の起算点が問題になることがあります。この点につき、最高裁判所は、相続人が3ヶ月以内に相続放棄等をしなかったことにつき、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人の間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続に対し相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人においてそのように信ずることに相当な理由があると認められるときには、熟慮期間は、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算すべきものと解するのが相当としています。

④なお、相続開始があったことを知ってから3ヶ月以内であっても、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(ただし、相続財産を保存するための行為等の例外はあり)は、単純承認といって、無限に被相続人の権利義務を承継するとみなされてしまい、相続放棄ができなくなることがあります。

また、上記3ヶ月以内に相続放棄の手続きをした後であっても、相続人が相続財産の全部又は一部を。隠したり、密かに費消したり、悪意で財産目録に記載しなかったときには、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄は認められません。

⑤一度相続放棄をすると、たとえ熟慮期間内であっても、撤回することはできません。ただし、騙されたり、錯誤により相続放棄をした場合など、例外的に相続放棄の取消しや無効が認められる場合があります。

 

◆2.生命保険の受け取り

相続放棄をした場合に保険金を受領できるかどうかは、生命保険金が相続財産にあたるかどうかによります。

生命保険金の受取人が相続人の中の特定の者に指定されている場合、その生命保険金は相続財産にあたりません。この場合、当該特定の相続人が保険金を受け取るのは、相続によるのではなく、保険契約によると考えられるからです。また、生命保険金の受取人が「相続人」と抽象的に指定されている場合、一見、相続により保険金受領の権利が発生するように思えますが、この場合も保険金は相続財産にあたりません。したがって、これらの場合には、相続放棄をしていても、相続人は保険金を受け取ることは可能です。

これに対し、生命保険金の受取人が、被相続人自身の場合には、当該保険金は相続財産になるため、相続放棄をしている場合には、保険金を受け取ることはできません。また、保険金を受領した後は、単純承認をしたものとみなされますので、その後、相続放棄ができなくなります。

 

3.相続放棄をしても受け取ることができるもの

前述のとおり、熟慮期間内であっても、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認したものとみなされ、相続放棄はできなくなります。

相続財産の中から何らかの物を受け取った場合、それが「相続財産の処分」にあたれば、相続放棄ができなくなります。「相続財産の処分」にあたらないものとしては、さきほどの受取人が相続人と指定されている場合などの生命保険金の受領のほか、遺族年金の受領などがあります。これらは、そもそも、相続財産にはなりませんが、死亡退職金については争いがあるところです。

また、被相続人の形見の物の受領、葬儀費用を相続財産の中から支出することも、「相続財産の処分」にあたらないと考えられます。ただし、これらはいずれも相当な範囲での受領に限られますので、形見分けの範囲を超えて著しく高価な物を受領したり、不相当に豪華な葬儀をした場合の葬儀費用を相続財産から支出した場合には、「相続財産の処分」にあたり、相続放棄が認められない場合があります。

これに対し、被相続人が受取人の生命保険金の受領や、被相続人が有していた債権の取り立て及び受領は、相続財産の処分にあたるため、相続放棄ができなくなる可能性があります。また、受領行為に限らず、相続債務の弁済、相続財産である不動産の売却等も、「相続財産の処分」にあたり、単純承認をしたものとみなされますので、相続放棄ができなくなります。

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