【相続・遺言について】遺言書の書き直し

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺言書の書き直しについて考えてみたいと思います。

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【Q】私は、今、長男に自宅を相続させるという内容の遺言書を作成するつもりです。しかし、遺言書作成後に事情が変わって、次男に自宅を相続させたいという場合、一度作成した遺言書を書き直すことはできるのでしょうか?
また、長男に自宅を相続させるという内容の遺言書を作成した後に、自宅を売却することが必要になった場合、自宅を売却することはできるのでしょうか?

【A】◆1.遺言書の書き直しについて
遺言とは、遺言者の最終意思を法律上も尊重しようという制度ですので、生前にその意思が変わった場合には、何らの理由無く、いつでも書き直すことができますし、前にした遺言を撤回することもできます。
そしてその撤回権を放棄することはできません。つまり遺言書に「この遺言は今後絶対に取り消さない」と書いてもそのような記載に効力はなく、自由に撤回できます。
遺言の撤回をするときは、その旨の遺言書を作成するのが一般的です(撤回遺言による撤回)。その際、撤回の対象となった遺言書と同一の方式による必要はありません。つまり、公正証書遺言を撤回するのに、自筆証書遺言でも撤回できるということです。遺言書の内容は「遺言者〇〇は令和〇年〇月〇日付で作成した自筆証書遺言を全部撤回する」といった条項を盛り込むのです。
ここで注意しておくこととして、撤回遺言も遺言ですので、民法に定めのある遺言の方式を守らなければいけないということです。撤回遺言が方式を満たしていないときには、撤回遺言が無効となります。

◆2.遺言書を作成した後の抵触行為について
遺言の撤回は、撤回遺言を作成しなければならないわけではありません。遺言書を作成した後に、その内容に抵触する行為があった場合には、その抵触する部分については、遺言書の内容を撤回したとみなされます。これは抵触行為をした遺言者の意思を考えれば、前の遺言の効力の存続を望まないことが明らかであると言えるからです。
①.抵触遺言
前にした遺言と抵触する内容の遺言がなされた場合、その抵触する部分については撤回があったものとみなされます。撤回遺言と似ていますが、抵触遺言の場合、遺言の条項中に「撤回する」という文言がなくても、また遺言者が前にした遺言内容を忘れていた場合でも、撤回の効力が生じます。
例えば、前の遺言で「甲不動産をAに遺贈する」としておきながら、後日「甲不動産をBへ遺贈する」との遺言を作成した場合は、Aへの遺贈は撤回されたものとみなされます。この場合、後の遺言書に「Aへの遺贈を撤回する」と書く必要はありません。
②.抵触する生前処分
遺言者が遺言をしたのちに、その遺言内容に抵触するような行為をした場合、その抵触する部分について遺言書の記載は撤回されたものとみなされます。例えば「遺贈する」と遺言書に書いておいた物を、第三者へ売却した場合などです。
また、抵触する行為には身分行為も含まれるとされています。裁判例では、遺言者が、妻に財産を相続させる旨の遺言をした後に、協議離婚した場合や、終生扶養を受ける前提で養子縁組をし、財産を養子に遺贈する旨の遺言をした後に、協議離縁をし、かつ実際に扶養を受けていない場合に遺言の撤回を認めたものがあります。
③.遺言書または遺贈の目的物の破棄
遺言者が故意(わざと)に遺言書や遺贈の目的物を破棄した場合に、その破棄した部分について遺言が撤回されたものとみなされます。
遺言書の破棄とは通常は、遺言書を捨てたり、切断したり、文字を塗りつぶしたりして、内容が判別できないようにしますが、最高裁判例では、遺言者が自筆証書遺言の文面全体の左上から右下に斜めに赤色ボールペンで斜線を引いた場合に、文字が読めるとしても、行為一般の意味に照らすと、遺言書全体を不要とし、かつ、遺言全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるとして、「故意に遺言書を破棄したとき」に該当すると判示したものがあります。
遺贈の目的物の破棄とは、例えば、遺贈するとしていた建物を取り壊すなどを言います。

◆3.本件について
相談者は一度作成した遺言書を自由に書き直す(撤回する)ことができます。よって、長男に自宅を相続させるという内容の遺言を撤回する旨の遺言(撤回遺言)、または、次男に自宅を相続させるという内容の遺言(抵触遺言)をすれば、長男に自宅を相続させるという内容の遺言は撤回されたものとみなされます。
また、相談者が生前に自宅を処分することは自由ですので、次男に自宅を贈与すれば「抵触する生前処分」に該当するため、長男に自宅を相続させるという内容の遺言は撤回されたものとみなされます。

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