世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は、【改正民法債権編】に関して、解除に関するその他の規定について考えてみたいと思います。
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解除に関するその他の規定
債権者に帰責事由がある場合の規定を新設
◆債権者に帰責事由がある場合の解除権の成否
債務者による債務不履行について、債務者ではなく債権者に帰責事由(落ち度)がある場合があります。
その典型例は、使用者が不当解雇を行ない、解雇が無効であるにもかかわらず、労働者の就労を拒絶している場合です。この事例では、労働者による労務提供義務は不履行となっていますが、その原因は債権者である使用者側にあり、債務者である労働者には落ち度がありません。
旧法では、解除について債務者の帰責事由が要件とされていたので、この事例では使用者による労働契約の解除は認められず、また旧法536条2項により、労働者は賃金を請求することができました。
ところが、新法では、解除にあたって債務者の帰責事由は不要となったため、何らかの手当を行なわないと、使用者による解除が認められ、労働者による賃金請求もできなくなってしまします。
そこで、新法543条は、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」は解除できないと定め、債権者に帰責事由がある場合には解除できないことを明確にしました。
したがって、上記の事例でも、これまでと同様、使用者による労働契約の解除は認められないことになります。
◆債権者と債務者の双方に帰責事由がある場合
以上の説明は、債権者のみに帰責事由があることを前提にしています。
債権者と債務者の双方に帰責事由がある場合に、債権者が解除できるかどうかは別の問題として残ります。
この点は、今後の解釈に委ねられることになります。立法過程における資料には、双方有責の場合は、契約の解除との関係では、いずれにも帰責事由はないとして、解除を認めるとの解釈が示されています。
◆解除の効果
契約が解除されると、まだ履行されていない債務は消滅し、既に履行済みの債務については、契約前の状態を回復する義務(原状回復義務)を負うことになります。原状回復義務の内容として、すでに受領した金銭を返還しなければならない場合は、金銭の受領時からの利息を付さなければならないことが定められています。
一方、旧法では、金銭以外の物を返還する場合について、その物の果実(たとえば収益不動産を返還する場合に、不動産から得られる家賃)も返還しなければならないかは、何ら触れていませんでした。
そこで、新法545条3項は、「金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以降に生じた果実をも返還しなければならない」と規定し、金銭以外の物を返還する場合も果実を返還すべきことを条文上明記しました。
◆解除権の消滅
債務不履行が発生し、債権者が解除できるようになった後、いつまでも解除権が行使できるわけではありません。解除権は次の場合に消滅します。
①相当の期間を定めて、相手方が解除するか否かを確答すべき旨を催告したにもかかわらず、相当の期間内に解除しない場合
②解除権者が故意・過失で目的(受領)物を損傷等した場合
③解除権が消滅時効にかかった場合
新法では、このうち②について改正がなされました。これまでは、解除権の発生後であれば、解除できることを本人が知らない場合でも、目的(受領)物の損傷等により解除権を失うとされていました。
しかし、このような場合に解除権を失う理由は、目的(受領)物を故意・過失で損傷等する行為が、解除権の黙示の放棄とみなされるからです。解除できることを知らない場合には、このような評価はできません。
このため、新法548条は、解除権を有することを知らなかった場合は、目的(受領)物を故意・過失で損傷等したとしても、解除権は消滅しないと規定しました。
また、③の解除権の消滅時効については、消滅時効期間一般の変更に伴い、権利を行使できることを知った時から5年で消滅します。