【終活・遺言・相続相談】相談例15 成年後見制度とその問題点

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例15 成年後見制度とその問題点についての記事です。

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【相談内容】
相談者から「同居している母(83歳)の認知症が進んできた。姉や弟から私が母の財産を使い込んでいると誤解されたくないので、成年後見を利用して、自分が後見人になろうと思う。」と相談された。

【検討すべき点】
成年後見制度を利用したいという相談ですので、成年後見制度の説明をします。成年後見制度は判断能力が不十分な方の財産管理方法としてもっとも基本的な方法ですが、誤解されている点も少なくありません。問題点を説明し、相談者が成年後見制度を利用する目的と効果が一致しているかを確認する必要があります。

【1】成年後見制度

① 家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族等の申立てにより、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については後見開始、その能力が著しく不十分である者については保佐開始、その能力が不十分である者については補助開始の各審判を下し、それぞれ成年後見人、保佐人、補助人を選任します。
② 成年後見人には広く代理権を付与され、保佐人には重要な財産処分行為(民法13条1項規定)に関する同意権と取消権(審判で付与される場合は代理権も)、補助人には、それよりは限定的な同意権と取消権(審判で付与される場合は代理権も)が、認められます。

【2】成年後見人の選任

① 平成12年施行の成年後見制度の創設当初は、親族が後見人等になることが期待されていましたが、親族後見人が管理財産を費消するトラブルが多発し、専門職後見人が選任されることが多くなりました。
② 令和2年度に選任された後見人中の親族の割合は約19%、それ以外は専門職後見人が選任されています。ことに、多額の資産がある場合には専門職後見人が選任される傾向が強く表れています。
③ 申立人が後見人候補者を推薦しても、後見開始決定前に推定相続人全員に候補者に関する意見照会を行い、その結果、候補者の選任に反対する意見があれば、利害関係のない専門職後見人が選任される傾向にあります。
④ よって、資産額や推定相続人間の人間関係によっては、相談者自身が後見人になることは難しいケースが多くなります。

【3】成年後見制度の問題点

【3-1】財産利用に関する思惑違い

① 相談例のように、高齢者と同居している子が後見開始を申立てる場合、申立人には、自分が家庭裁判所から成年後見人に選任してもらって、高齢者の財産管理に「お墨付き」をもらいたいという期待があるのが一般的です。
② しかし、前述のように資産額や推定相続人同士の関係性によっては、申立人がそのまま後見人に選任されることは稀ですし、専門職後見人が選任されると相談者は母の財産を管理して使うことができなくなります。
③ たとえば、相談者が母の在宅介護をしている場合には、介護費用や医療費のほか、風呂や階段の手すり、バリアフリーへの改装、母所有の自宅建物の屋根の修繕など様々な出費が予想されますが、そのたびに専門職後見人に説明し、後見人から費用を支払ってもらわなければなりません。
④ もちろん母の持つ株式の処分や相続税対策についても同様で、母の財産はほぼ凍結された状態(母のためにのみ利用が可能で、基本的には投機的運用は認められない)になります。
⑤ よって後見開始の申立人やその親族は「成年後見を申立てなければ母の財産を利用できたのに」と不満に感じがちです。

【3-2】財産凍結に関する思惑違い

① 相談例とは逆に、非同居の子が、同居の子による親の財産の浪費を監視し、親の財産を保全する目的で後見開始を申立てる場合があります。しかし、成年後見人は後見開始の申立人に対して、直接に報告義務を負うわけではありません。したがって、申立人や親族や推定相続人といえども、後見人が説明をしない場合に成年後見の内容を知りたければ、家庭裁判所の許可した範囲に限られますが、記録を閲覧などするしか方法がありません。
② また、本人に事理弁識能力が残っている場合には、後見開始から保佐開始や補助開始の審判に移行しますので、その場合に、被保佐人や被補助人本人が、自宅の修繕や孫への贈与等を希望すれば、保佐人や補助人が本人の意思に従って出金を認める可能性があります。
③ つまり、後見開始が認められれば申立人の思惑通りに監視できるというものではないということです。

【3-3】後見監督人・後見制度支援信託

① 相談者の母の財産が少なく、相談者に兄弟がいなかったり、兄弟が賛成している場合は、相談者自身が後見人に選任されることがあります。しかし、後見人に選任された相談者は、領収証を集め整理し、収支の帳簿を付けて、被後見人の財産管理業務を行い、家庭裁判所に報告する義務を負います。
② 家庭裁判所は親族後見人による財産の横領を警戒し、後見監督人の選任に同意するか、後見制度支援信託を利用するか選択を迫ります。これは申立人に対して「あなたを信用できません」というようなもので、気持ちよいものではなく、何方を選択するにせよ費用が掛かります。

【3-4】専門職後見人の費用

① 専門職後見人や後見監督人が選任された場合、報酬が発生します。家庭裁判所が金額を決めますが、本人の財産額に応じて基準が示されており、最低額は月額2万円となってます。本人の財産額が5千万円以上の場合は月額6万円となり、年額では72万円にもなります。
② この報酬は本人の財産から支払われます。被後見人の家族からすれば、将来の相続財産が減っていくことを意味します。

【3-5】専門職後見人の問題点

① 後見人は、財産管理だけではなく、身上監護についても配慮すべき立場にありますが(民法858条)、専門職後見人が被後見人の日常生活の世話をすることは難しく、ほとんどの場合、その業務は財産管理に重きを置かれます。
② 専門職後見人が被後見人に会いに行かないとか、家族の相談に乗らないとか、被後見人の施設入所に協力しないとか、親族からの不満の声も多く聞かれます。
③ 被後見人の親族などは成年後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所に対して解任を求めることができます。

【3-6】やめられない成年後見

① 成年後見制度にも問題点はありますが、申立人や家族が不満を抱いても、いったん申立てを行った以後は、成年後見を止めることはできません。被後見人は事理弁識能力を回復する以外には、一生涯成年後見人のお世話になることになります。

【4】他の注意点

① 相談例では姉や弟から疑われたくない、ということでしたので、専門職後見人が選任されても問題ないケースと思いますが、姉や弟にも成年後見を申立てることは説明しておくべきです。