【孤独死をめぐるQ&A】Q17 限定承認

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【孤独死をめぐるQ&A】Q17 限定承認についての記事です。

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【Q17】おじが亡くなり、私が相続人になります。
おじには相続財産があることは分かっているのですが、生前にあまり交流をしていなかったので、もしかしたら負債があるのではないかと思い、相続をしてしまってよいものか悩んでいます。
相続財産の限度で債務を相続する限定承認という制度があるのをインターネットで知ったのですが、限定承認をしてよいものか注意点を教えてください。

【A】限定承認は、相続放棄と同様、相続の開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。単純承認事由がある場合には限定承認は出来なくなります。
また、限定承認は、相続放棄とは異なり相続人全員で行う必要があるほか、手続きや税務面でも複雑であり、限定承認という方法を選択するかについては慎重な検討が必要です。

【解説】

1 限定承認とは

① 限定承認とは、相続人が遺産を相続するときに債務は相続財産を責任の限度として留保して相続をすることをいいます。
② 相続によって得たプラス財産の限度において、被相続人の債務などのマイナス財産を相続するので、もしマイナス財産が多くても、相続人がもともと持っていた財産で債務を弁済する必要はありません。もし、プラスの財産の方が多ければ、相続財産をもって負債を弁済した後、余りが出ればそれを相続できます。
③ このように、限定承認をすれば、負債の有無や額が分からない相続の場合、負債があっても相続財産の範囲内で弁済すればよくなります。
④ もし財産の方が多ければ財産を相続でき、一見して損がない制度なので、それであればみんな限定承認を選択するはずです。
⑤ しかしながら、令和元年度の司法統計によると、相続放棄申述受理の申立てが22万件超であったのに対し、限定承認申述受理の申立ては657件と極めて少ないというのが実情なのです。
⑥ これは、以下に述べるように、限定承認は手続きや税務処理が複雑であり、利用が敬遠されているという理由です。

2 熟慮期間、単純承認事由

① 限定承認も、相続放棄と同様、限定承認の期限は相続の開始をした日から3か月以内に被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して限定承認の申述をする必要があります。
② また、相続放棄と同様、限定承認の申述をする前に、相続人が相続財産の全部又は一部を処分してしまうと、単純承認したとみなされ、限定承認はできなくなります。
③ なお、3か月以内にどの相続方法を選べばよいか決められない場合は、熟慮期間の伸長を申立てることもできます。

3 相続人全員で行う必要がある

① 相続放棄は一人でも行えますが、限定承認は相続人全員が共同で行う必要があります。
② 相続人のうち一人でも協力してくれない人がいる場合には、限定承認を行うことができません。ただ、相続放棄をした場合には、相続放棄をした者は最初から相続人とはならなかったものとみなされるので、相続放棄をした人を除いたすべての相続人が限定承認を希望しているのであれば、限定承認の申述は可能です。
③ なお、共同相続人が生死不明で一緒に申述ができないという場合、生死不明者について不在者財産管理人を選任し、不在者財産管理人と他の相続人で限定承認の申述をすることができます。

4 限定承認の清算手続き

① 限定承認をした場合、勝手に遺産の中から債権者に弁済をしていくというわけにはいきません。法で定められた手続きに従って清算手続をしていく必要があります。

1)相続財産管理人の選任
① 複数の相続人で限定承認をする場合は、申述の受理と同時に相続財産管理人が選任され、相続財産管理人が清算手続を行うことになります。
② 限定承認をした相続人が一人の場合、その人が清算手続を行うことになります。

2)公告、催告
① 相続人が家庭裁判所に限定承認の申述を行った後は、5日以内に全ての相続債権者及び受遺者に対し、2か月以上の期間を定めて限定承認をしたこと及び債権の請求をすべき旨の公告(官報掲載)を行い、知れている債権者には個別に催告を行う必要があります。
② 官報公告は、法定の期間内(限定承認者の場合は5日以内、相続財産管理人の場合は選任後10日以内)に行う必要があります。
③ 受理の審判後すぐに官報に掲載する必要があるので、官報公告の文案や官報公告の手順については、事前に準備しておく必要があるでしょう。

3)換価
① 限定承認をした場合、換価についてもルールが決められており、限定承認者や相続財産管理人が好きに不動産を売って換価したり、不動産は居住し続けたいから売却せずに持ち続け預貯金から弁済をしたりするという自由な処分はできません。
② 債権者からすれば引当てとなるのは相続財産だけですから、自由に相続財産を処分してよいとすると適正な価格で財産が処分されずに満足な債権回収ができなくなるおそれがあります。
③ そのため、限定承認手続においては、財産の換価手続は「競売に付さなければならない」と定められております。
④ ただし、先買権といって、相続財産の全部又は一部について、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い価額を弁済することにより、競売を止めることは認められます。
⑤ 先買権を利用すれば、不動産は第三者に売却せず相続したいという要望をかなえることが可能です。
⑥ 換価の際には、限定承認手続き専用の銀行口座を作成するなど、自身の財産と相続財産とが混ざってしまわないような配慮をした方がよいでしょう。

4)弁済
① 官報公告の申出期間が過ぎたら、先取特権や抵当権などの優先権がある債権者、一般の債権者、受遺者の順番に弁済をしていきます。
② 相続財産で全債務を完済できない場合は、同一の優先順位の範囲内の債権者に対し、債権額の割合に応じて弁済することになります。

5)残余財産を相続人が受け取る
① 債権者や受遺者に弁済をしても財産が余った場合、ようやく相続人がその財産を受け取ることができます。

5 みなし譲渡課税

① 限定承認の手続きを行った場合、税法上では、被相続人が相続人に対して、財産を時価で譲渡したとみなされてしまいます。
② そのため、購入時よりも値上がりしている土地や株式、そもそも取得価格も分からないような先祖代々の土地などは、時価と取得価格の差額がみなし譲渡所得となり、所得税が課せられてしまいます。相続人は被相続人の所得税について、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をする必要があります。
③ 限定承認の場合、不動産を第三者に売却して実際に現金を得ているわけではないので、限定承認をしただけでみなし譲渡所得税が課せられてしまう点で、単純承認に比べて不利益があります。
④ 明らかに資産の方が多く、また不動産は売却せずに所有し続けるという場合には、所得税の分だけ被相続人が損をしたことになってしまいます。

6 限定承認の実例

① このように限定承認は、手続きが煩雑である、税務面でデメリットがあるという理由もあってほとんど利用されていません。
② しかし、相続債務があるかどうかわからないという場合には、有力な手段の一つであることは言うまでもありません。
③ 孤独死した方の相続の場合、縁が遠く、どのような負債があるかも全く見当もつかず、資産があるのは分かっているので相続はしたいが、後で負債が出てきたら困ると考える方はいます。
④ 遺産が現金・預貯金のみで、今のところ相続債務は見つかっていないような場合には、そこまで手続きが複雑にはなりませんので、全ての相続人で意思統一ができるのであれば、限定承認をしてみるということも検討してよいかと思います。

【法改正情報】

所有者不明土地問題解決を図る民法・不動産登記法等の改正に伴い、相続財産管理人は、相続財産清算人となります。
改正は令和5年4月1日から施行されます。