【孤独死をめぐるQ&A】Q19 特別縁故者に対する財産分与

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【孤独死をめぐるQ&A】Q19 特別縁故者に対する財産分与についての記事です。

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【Q19】兄弟同然の付き合いをしていたいとこが孤独死したらしく警察から連絡がありました。相続人は誰もおらず、葬儀等も私が行なったのですが、相続人が誰もいない場合、相続財産は国庫に帰属してしまうと聞きました。
いとこには結構な財産があるのに、国庫に帰属してしまうのはもったいないと思いますので、私が特別縁故者として財産分与を受けようと思います。
いとこでも特別縁故者として認められるものでしょうか。また、特別縁故者として財産分与を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか。

【A】いとこというだけで特別縁故者として認められるかは微妙ですが、兄弟同然の付き合いがあったのであれば、特別縁故者として認められる可能性はあります。
特別縁故者として財産分与を申立てたい場合、相続財産清算人が選任され、相続人捜索の公告期間満了後である必要があるので、まず家庭裁判所に対して、相続財産清算人選任申立てをし、時期が来たら特別縁故者に対する財産分与の申立てをするという流れになります。

【解説】

1 特別縁故者に対する財産分与

① 相続人の存否が不明の場合に家庭裁判所により選任された相続財産清算人が被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、家庭裁判所の相続人を捜索するための公告で定められた期間内に相続人である権利を主張する者がなかった場合、被相続人と特別の縁故の有った者は、裁判所に対して、清算後残った相続財産の全部又は一部を分与するように請求することができます。
② 特別縁故者の財産分与請求は、相続と違って当然に発生するものではありません。自身が特別縁故者に当たると考え財産分与を希望する者が、裁判所に対して特別縁故者に対する財産分与の申立てを行い、特別縁故者に当たり、財産分与をするのが相当と認めてもらう必要があります。

2 特別縁故者として認められる者

法は、特別縁故者として、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者を挙げています。
1)被相続人と生計を同じくしていた者
① 同一の家計で生活をしていた者は特別縁故者に当たります。同居をしていればもちろん、仕事や療養などの事情で別居をしていても生活費の負担などをしている場合も、生計が同一と認められる例もあります。内縁関係にある人や事実上の養子などがこれに当たります。

2)被相続人の療養看護に努めた者
① 被相続人の介護や看護をした場合がこれに当たります。ただし、親族の場合、親族として通常なすべきような相互扶助・協力を超えるような寄与、功労が必要という例もあり、単に風邪を引いた時に看病した、入院をした際にお見舞いに行った程度の関わり合いでは認められない可能性もあります。
② 療養看護は病院や老人ホームが行なっていたとしても、周辺部分を行っていれば、療養看護に尽力していたと認められた例もあります。大阪高決の例では、8年間に39回病院に面会に行き、一時外出に付き合ったりしていたという例で特別縁故者と認めています。この例では1年間当たり5回程度であり、シーズンごとに面会に行っていた程度での認定となりました。
③ また対価を得て介護や看護に当たっていた看護師や介護士、家政婦などは原則として特別縁故者には当たりませんが、対価としての報酬以上に献身的に看護に尽くしたとして、付き添い看護婦として雇用されていた者が特別縁故者に認められた例もあります。

3)その他被相続人と特別の縁故があった者
① 上記には該当しないものの、それらと同じくらい密接な関係にあったものをいいます。特別縁故者の範囲は、親族だけではなく、友人や市などの地方公共団体や勤務先などの法人も認められます。
② 関与の程度に応じて分与される財産額が調整される分、関与の程度がそこまで高くなくても特別縁故者として認められるのではと考えられます。特別縁故者に対する財産分与の申立てをして、仮に特別縁故者として認められなかったとしても、もともと分与されない財産ですので、特段損失が生じるわけではありません。一定程度の縁故があるのであれば、諦めずに特別縁故者と主張しても良いのではないかと考えます。
③ 親族関係がある事例
・五親等離れた親族が、故人の生活の援助をしており、1~2年前からは毎月一定額の生活費を仕送りしていたという経済的な援助をしていた事例。
・経済的な援助はしていないが、いとこが幼少期から身近な親族として絶えず交際をしており、死亡後の葬儀、納骨、法要も遺族同様の世話をしていた事例。
④ 親族関係がない事例
・個人の勤務していた会社の代表者が、故人に家屋を購入し、かつ10年以上にわたり故人の家計を援助していた事例。
・教師をしていた故人の元教え子が、50年以上も交流を持ち、医療費の立替えをした事例。
⑤ 地方公共団体
・個人に対し生活保護を実施し、死後に葬祭を行った市が特別縁故者として認められた事例。
・32年間にわたって市立小学校の校務員として勤務し、多くの児童に慕われ、多数の教師とも交流が深いとして市が特別縁故者として認められた事例。
⑥ その他法人
・30年間にわたって個人が勤務していた社会福祉法人が故人の死亡に当たってその葬儀を主宰していた事例。
・個人が無縁墓とならないよう永代供養料を上納した上で往生を遂げたいと希望を述べていたが、突然病に倒れて亡くなったとして菩提寺が特別縁故者として認められた事例。
・殺人未遂事件を起こした個人が出所後、死亡するまでの間、更生保護事業を目的としている公益法人の施設に居住してその援護を受けていた事案で公益法人が特別縁故者として認められた事例。
・身寄りのない故人としては機会があれば世話を受けた老人ホームに贈与遺贈をしたであろうと推認されるとして、法人格を有しない老人ホームが特別縁故者として認められた事例。
⑦ 死後の縁故
・死後の縁故(死亡後に葬儀や墓守をする)というだけでは認められないこともありますが、死後の縁故だけでも認められた事例はあります。

3 分与される金額

① 特別縁故者として認められたとしても、相続財産の全部を取得できるとは限りません。故人との縁の程度に応じて、裁判所が取得できる財産の割合を決定します。
② 高松高決では、被相続人と特別縁故者との縁故関係の厚薄、度合い、特別縁故者の年齢、職業等や、相続財産の種類、数額、状況、所在等一切の事情を考慮して、分与すべき財産の種類、数額等を決定すべきとしています。
③ 分与額を定めるには様々な事情が考慮されるので、どの程度の割合が認められるかは、率直に言って見通しを立ってるのは難しいです。
④ 過去の事例では、内縁の妻として長期間同居し、闘病生活を監護していたにもかかわらず、50%しか分与されなかった例もあります。

4 申立ての方法

① 特別縁故者として相続財産の分与を受けるためには、特別縁故者が被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して、特別縁故者に対する財産分与の申立てをする必要があります。
② 申立ての期間は、相続財産清算人選任公告の終了後3カ月以内となっております。
③ このように特別縁故者に対する財産分与請求は、相続財産清算人が選任されていることが前提の手続きとなります。相続財産清算人が選任されていない場合、特別縁故者は、相続財産清算人選任の申立てをすることができます。
④ 特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行うと、特別縁故者かどうかの調査があります。介護施設の面会簿、経済的援助が分かる領収証や振り込みの控え、手紙、日記、写真、生前の交流についてまとめた陳述書などを資料として提出します。
⑤ 家庭裁判所や相続財産清算人から事情を聴かれることもあります。特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判をする場合には、家庭裁判所は、相続財産清算人の意見を聴かなければならないとされています。
⑥ 審判が出ると審判書が送付されます。不服申立て期間が満了すると、相続財産清算人から申立人に送金先の問い合わせがあります。

5 税金

① 特別縁故者が相続財産分与を受けた場合には、遺贈により取得したとみなされ、相続税の対象となります。相続税の基礎控除額を超える場合には相続税の申告が必要となります。
② 特別縁故者は、被相続人の一親等の血族には当たらないため、相続税額に2割が加算されます。
③ 進行は被相続人の最後の住所地を所轄する税務署で行います。申告期限は、審判が確定し相続財産の分与を受けたことを知った日の翌日から10か月以内となります。