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【孤独死をめぐるQ&A】Q40 居室内での孤独死の損害賠償についての記事です。
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【Q40】一人暮らしの高齢者に賃貸物件を貸していたところ、貸室内で孤独死し、死体が腐敗して居室内が損傷しました。
その様な場合、相続人や連帯保証人に対し、損害賠償請求はできるのでしょうか。また、居室内で死亡した場合、次の賃貸人に対して、その旨を告知する必要があるのでしょうか。
【A】死因が自殺の場合の多くは、損害賠償が認められます。他方で、自殺以外の死因であった場合には、裁判所の判断が分かれる可能性はあります。
単に死亡しただけであれば告知する必要はないと考えますが、死体が腐敗して屍臭などが周囲に漏れていたような場合には告知義務が生じると考えます。
【解説】
1 死亡の原因が自殺の場合
① 賃貸借契約の賃借人は、居室の引渡しを受けてからこれを返還するまでの間、居室を善良な管理者の注意義務をもって使用収益する義務を負います。
② そして、上記善管注意義務には、本件居室を物理的に損傷しないことのみならず、同居室において自殺などの事故を起こさないことも含まれると解されています(東京地判平成29年4月14日)
③ したがって、入居者が自殺した場合には、債務不履行になり、損害賠償義務を負います。
④ その損害賠償義務は連帯保証の範囲内となりますので、賃貸人は連帯保証人に損害賠償請求することができます。また、損害賠償義務も相続されますので、賃貸人は相続人に対しても損害賠償請求できます。
⑤ 損害の範囲は、修繕費用の他、自殺した物件については心理的瑕疵がある物件となってしまい、自殺後相当期間成約できなかったり、賃料を大幅に減額しないと借り手がつかないという状況が続くこととなりますので、その逸失利益も損害賠償が認められます。(東京地判平成23年1月27日)
2 死亡の原因が自殺以外の場合
Ⅰ 否定例
① 東京地判平成19年3月9日は、建物の賃貸人が、当該建物を社宅として使用していた賃借人に対し、賃借人の従業員が当該建物内で脳溢血により死亡したことについて、当該従業員に履行補助者としての過失があるなどとして、主位的に債務不履行、予備的に不法行為に基づく損害賠償として建物の価値下落の損害等を請求した事案です。
② 同判決は、「住居内において事故などで死亡したりすることは、経験則上ある程度の割合で発生し得ることである。失火などは居住者の過失があるといえるとしても、人間の生活の本拠である以上、死が発生しうることは、当然に予想されるところである。したがって老衰や病気などによる借家での自然死について、当然に借家人に債務不履行責任や不法行為責任を問うことはできない」と判示。
③ そして、居室内で死亡したことについて、何らの過失や落ち度も認められないから、仮に、本件建物内において居住者が死亡したことにより、事実上本件建物の価値が減価したとしても、損害の賠償を請求することはできないとしました。
④ また、原状回復義務についても、借主側の故意過失による経年変化とは言えない損傷が発生していることは立証されていないとして借主の原状回復義務も否定しました。
⑤ この判決の判断の枠組みに従えば、賃貸建物で賃借人が自然死した場合には、自然史は義務違反や過失があるとは言えないので、損害賠償責任は発生せず、賃貸借契約の終了に当たっても、一般的な原状回復義務は生じるものの、死亡によって汚損した部分の修理やリフォームは含まないということになります。
Ⅱ 肯定例
① 東京地判昭和58年6月27日。同判決は、建物部分内において死亡し、死体が同室内に放置され腐乱死体となり、同死体から本件建物部分の床面に流失した悪臭に満ちた汚物・体液が床コンクリートまで浸み込み、屍臭が室内の天井・畳・建具その他に浸透すると同時に、同室に隣接する建物部分にまで悪臭が漂ったとして、相続人に対し、原状回復の不履行を理由とした損害賠償請求を求めた事案です。
② 居室内の修繕費について、単なる清掃にとどまらず、天井板、壁板、床板、ふすま等を取り換える必要がある、浴槽、便器などの住宅機器等も次の借主に対して嫌悪感を与えないために交換する必要があるとし、その費用を損害と認めました。
③ 賃料相当額について、悪臭のため使用できなかった期間の賃料相当額についても、損害と認めました。
④ 居室以外の原状回復費用について、原状回復の範囲は居室内に限られ、それ以外の部分には及ばないとし、居住していた部屋以外の修理の費用は認められませんでした。
⑤ 東京地判平成29年2月10日。同判決は死後1ヶ月経ち、遺体に由来する体液が貸室の木製フローリングの床板の広範囲にわたり、また、同床板の裏側の建材にまで浸み込んでおり、本件貸室には同体液によるとみられる強い異臭が生じており、腐敗物に起因するとみられる強い臭気が存在し、貸室内には多数の蠅や蛆虫が見られるという事案です。
⑥ 同事案について、本件貸室の汚損状況が通常の使用に伴い生じた損耗の程度を超えると言えることに照らすと、本件賃貸借契約に基づき、これを現状に回復すべき義務を負うというべきと判示。
⑦ 損害賠償として、汚損や臭気発生原因が残存していないかを確認する必要があるとして、居室を解体しスケルトンとした工事費用やオゾン脱臭費用を損害と認めました。
⑧ また、工事期間のみならず、新入居者が入居に至るには工事終了後1年はかかるとして、その期間の逸失利益も損害と認め総額790万円超の損害賠償を認めています。
⑨ 以上のように、下級審の判断は分かれているのですが、死体の腐乱が進んでいる事案では、自然死であっても損害賠償が認められる可能性は十分にあると言えます。
3 告知義務について
① 居室内で孤独死した場合、心理的瑕疵がある物件として、重要事項説明において告知義務があるのでしょうか。
② この点については、令和3年10月8日国土交通省から「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」が公表されました。
③ ガイドラインでは、他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡については告知対象とする一方で、老衰、持病による病死等、いわゆる自然死については、そのような死は当然に予想されるものであるから告知対象にする必要はないとされています。
④ もっとも、自然死であっても、長期間にわたって人知れず放置されたことに伴い、室内外に臭気・害虫等が発生して特殊清掃等が行われたような場合は、告知対象になるとしています。
⑤ また、告知期間については、特段の事情がない限り、事案の発生から概ね3年間という目安も定められています。
⑥ 孤独死の全てが告知事項になってしまうと、居室内で死亡するリスクの高い高齢者に対して居室を貸そうとする人が少なくなってしまいます。
⑦ そのため告知事項についてガイドラインが設けられ告知対象や告知期間が明確になることは、単身高齢者が住宅を借りやすくなることにつながると言えます。