【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q9 病理解剖と遺族の承諾・費用負担

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【Q9】母ががんで入院していた病院で死亡しました。医師は「思ったより早い死になってしまったので、是非解剖させて欲しい」と言っています。
この解剖を拒否することはできるのでしょうか。また、この解剖を承諾すると、その費用を負担しなければならないのでしょうか。

【POINT】
① どのような場合に病理解剖が行なわれるのか
② 病理解剖を拒否することはできるか
③ 病理解剖の費用を負担しなければならないか

1⃣ 病理解剖とは
① 病理解剖とは、病気で死んだ人につき、臨床診断の妥当性、治療の効果の判定、直接死因の解明などを目的として行われる解剖のことを指しています。
② 病理解剖は、医療臨床を検証する機能や医療臨床の研修・教育の機能などがあるとされています。
③ 遺体は、死後一定の時間を経過した後、火葬して焼骨を埋蔵するのが通常です。したがって、医療過誤などの疑いがある場合、解剖しないで火葬してしまうと、後で訴訟を提起して死因を特定することが不可能となってしまいます。
④ 予想外に死期が早まったというのであれば、遺族にとっては、医療上のミスが原因でそうなったのかどうかを確認することができるでしょうし、医師にとっても、今までの診察では気付かなかった病因があったのかどうかを確認することができるでしょう。そのような意味で、病理解剖をしておくと、後日の紛争を予防することもできると思います。

2⃣ 病理解剖の拒否
① 死体解剖保存法は、原則として、死体解剖には遺族の承諾が必要であると定めています。したがって、遺族が拒否する限り、病理解剖を行うことはできません。
② ただし、死亡確認後30日を経過しても、なおその死体について引取者の無い場合や、2人以上の医師が診療中であった患者が死亡した場合において、主治医を含む2人以上の診療中の医師又は歯科医師がその原因を明らかにするため特にその解剖の必要を認め、かつ、その遺族の所在が不明であり、または遺族が遠隔の地に居住する等の事由により遺族の諾否の判明するのを待っていてはその解剖の目的がほとんど達せられないことが明らかな場合には、遺族の承諾がなくても解剖することが認められています。
③ もし医療上のミスがあったのではないかという疑いがある場合には、むしろ、遺族の側から積極的に病理解剖を行うよう申し入れるべきだろうと思います。
④ もっとも、医療上のミスが明確であって、担当医師の業務上の過失が認められる場合には、捜査機関に対して司法解剖をするよう、職権発動を促すべきだろうと思います。

3⃣ 病理解剖の費用
① 病理解剖の費用は、死後の措置の費用であって、診察費には該当しないため、病院側がすべて負担していることが多いようです。
② しかし、病理解剖には、一定の公益的な機能もありますし、一部には行政解剖的な病理解剖も存するとすれば、財政支援が全くないのも今後の臨床医学の発展のためにはあまりよくはないかもしれません。
③ 司法解剖に対する財政支援も含めて国民的に議論すべきだろうと思います。
④ 遺族側が病理解剖を行うよう申し入れる場合には、遺族側にその費用の一部を負担させることもあり得ないことではないでしょう。
⑤ なかなか難しい問題ですが、病院側でも、自己の医療上のミスがないことを明確にできるうえ、臨床上のさまざまな疑問を明確にするチャンスでもあるわけですから、相互のメリットに照らして費用分担を考えてみてもよいのではないかと思います。