【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q46 葬儀費用の負担者

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
パスポート申請、古物商申請、車庫証明申請も多く手掛けております。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q46 葬儀費用の負担者ついての記事です。

東京都世田谷区の車庫証明はインボイス対応済みの【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の遺言書は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・戸籍収集支援・銀行手続は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の成年後見制度・任意後見契約・死後事務委任契約は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区のパスポート申請は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・遺言のご相談は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の古物商許可申請は【090-2793-1947】までご連絡を

【Q46】父が亡くなり、相続人は兄、私、妹の3人で、実家の地元に残り父のそばにいた次男の私が葬儀社と契約を行いました。実家は寺の代表的な檀家で伝統ある旧家ですので、葬儀社に任せる形で旧家にふさわしい大掛かりな葬儀を行い、高額な費用が掛かりました。
喪主は長男が務め、葬儀費用は私が立て替えのつもりで葬儀社に支払いました。ところが兄は、私が勝手に契約した葬儀だといい、立て替えた費用を支払ってくれません。葬儀費用は喪主が負担するものではないのでしょうか。

【POINT】
① 葬儀費用は誰が負担するべきか
② 葬儀費用として負担者に請求できる相当な金額は

1⃣ 葬儀費用と葬送の変化
① 国や時代を問わず、人間は葬送の儀式を営んできました。葬儀という死者との別れの儀式は、愛する者を失った生者のグリーフケアに必要な喪の作業ともいえるでしょう。
② 民法306条、309条は「葬式の費用のうち相当な額」について先取特権を認めています。貧しい人であっても葬儀が必要だと判断されているからです。
③ この「葬式の費用」の内容については、立法段階の議論を参照して、追悼の儀式と埋葬の費用が含まれると解されています。ただし、埋葬の費用には、墓地や墓石を購入する費用は含まれません。
④ また、通常、葬儀費用とは死者を弔うのに直接必要な儀式費用をいい、参列客への飲食の接待費用は含まれません。さらに、通夜と葬儀当日の費用のみで、四十九日や一周忌の法要の費用は含まれないとされています。
⑤ 日本の葬送産業においては、設備費と人件費を足してコストを計算し、しかるべき利潤を加えて対価を算出してそれらを対比するという通常の産業における競争原理がなかなか働きません。
⑥ 葬儀費用には、ある種の不合理な費用、すなわち「穢れ」に関与する対価、遺体に触れる作業をしてくれる人への感謝を金銭で表現したい、対価をけちると供養にならないという考えが働き、そのような考えが葬儀費用に含まれる傾向にあります。
⑦ 葬儀のあり方も多極化しています。孤独死された方の腐乱した遺体を処理し、その悪臭対処を行う業者も生まれています。
⑧ 葬儀をする場合でも、家族だけの直葬の場合から、参列者の目を意識した大規模な行事とする場合まで、選択肢の幅は非常に広く、よって、いわゆる「相当な」葬儀費用の設定が難しくなっています。どのような葬儀をするかで遺族の意見が相違している場合、慌ただしく葬儀が行われた場合には、費用負担でもめる危険性も高いでしょう。

2⃣ 葬儀費用の負担者
① 誰が葬儀費用を負担するかについては民法に規定はありません。先述の民法306条、309条も債務の負担者を定めているものではありません。
➁ この点について、学説と判例は多岐に分かれています。共同相続人全員で負担するとする説(葬儀費用は相続債務となり、相続人に分割帰属することになる:盛岡家裁昭和42年5月3日)。
③ 相続財産が負担するとする説(葬儀費用は民法885条の相続財産に関する費用に含まれる:盛岡家裁昭和42年4月12日)。
④ 喪主の負担とする説:東京地裁昭和61年1月28日。
⑤ 慣習ないし条理によるとする説:甲府地裁昭和31年5月29日。
⑥ 相当な費用は相続人の共同負担であるがそれ以上の支出は喪主の負担とする説。
⑦ これらのうち最近の有力説は喪主の負担とする説です。理由の一つは、葬儀費用でもめているケースは、遺産分割協議でももめていることが多く、遺産の中に含めて解決しようとすると、遺産分割協議が一層困難になるので、葬儀費用は遺産分割の枠外で処理した方がよいという判断です。
⑧ さらに現代では葬儀のあり方が多様化しているので、どのような葬儀が相当かということが言いにくく、「葬儀を自己の責任と計算とにおいて手配等して挙行した者(原則として喪主)の負担となると解すべき」(神戸家裁平成11年4月30日)であるという判断があります。
⑨ この場合の喪主は実質的に葬儀を自己の責任と計算とにおいて手配等した者とするべきで、形式的な喪主にその負担を負わせるのは妥当とは言えません。
⑩ 被相続人の実家家族と相続人である妻子が対立して実家家族が妻子を排除して葬儀を行い、形式的な喪主となったのは前妻の若年の子であったという前掲東京地裁昭和61年1月28日判決のケースでは「葬式を実施した者とは、葬式を主宰した者、すなわち、一般的には、喪主を指すというべきであるが、単に、遺族等の意向を受けて、喪主の席に座っただけの形式的なそれではなく、自己の責任と計算において、葬式を準備し、手配等して挙行した実質的な挙式主宰者を指すというのが自然であり、一般の社会通念にも合致するというべきである。したがつて、喪主が右のような形式的なものにすぎない場合は、実質的な葬式主宰者が自己の債務として、葬式費用を負担するというべきである」として、被相続人の兄から妻子への葬儀費用の請求を認めませんでした。
⑪ 喪主負担説に立って考えると、質問のケースでは、長男である喪主が「弟に葬儀契約締結を任せる」と事前にはっきりと委託していたのならば、喪主として単独で、あるいは少なくとも弟と共同主宰者として費用負担するべきでしょう。