世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q60 墓地使用権の解約と墓地使用料についての記事です。
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【Q60】前年買った墓地が不要になったので返そうと思い、霊園の事務所へ行ったら、永代使用料は返還しないと言われました。こんな不合理なことがあるでしょうか。
【POINT】
① 墓地の返還
➁ 墓地使用料の精算
1⃣ 墓地の返還
① 墓地利用者から墓地経営者に墓地が返還される場合としては、次のような場合が考えられます。
➁ 第1は、墓地使用契約に定められた永代使用権の消滅事由が生じたときです。墓地使用者の契約違反がこれにあたりますが、この契約違反があると直ちに返還義務が生じるのではありません。
③ 返還義務が発生するかどうかは、契約に違反した者の意図・動機・態度、違反の程度・回数、契約を締結するに至った事情、使用期間、使用態様、墓地使用料の金額、宗教法人の宗教的感情や経済的事情等を総合して墓地の永久性・固定性に照らして判断されます。
④ 第2は、墓地使用権の放棄や合意による終了です。
⑤ 第3は、消滅時効です。しかし、永代使用者の墳墓が存在する間は時効は完成しません。時効が問題となるのは空墓地の場合のみです。
⑥ 第4ですが、期間満了によって契約が終了するということは原則として考えられません。墓地使用権は永久性を備えていますので、期間を限定する特約があっても、期間満了によって墓地使用権は消滅しないというのが通常の見解です。
⑦ ただし、三十三回忌までとか五十回忌までという契約もないわけではありません。しかし、この場合は通常の終了の場合と異なって、永代使用料の返還という問題は起きません。
⑧ 第5は、契約の解除です。墓地経営者と墓地使用者の間で信頼関係が破綻したときは、解約原因となります。
⑨ 一般的には、⑴墓地使用者側の事情⑵墓地使用権の永久性⑶墓地使用権の固定性⑷寺院側の事情(墓地整理の必要性)⑸使用者と寺院双方の宗教的感情⑹双方の経済的利益、などを比較考量して決められます。
⑩ 寺院が墓地使用者に無断で墓石の向きを変え、納骨してある遺骨を動かしたことが信頼関係を破綻させたとして、解除を認めた判例があります。
2⃣ 墓地使用料の精算
① 墓地使用権がなくなると墓地経営者は墓地を返還してもらうことになりますが、当初受け取った永代使用料はどのように扱うべきでしょうか。
➁ 墓地使用契約は墓地の永続性から、期間を定めない継続的契約関係と考えられています。この継続的契約関係が途中で終了した場合は、終了後に対応する永代使用料は墓地経営者の不当利得となりますので、その利得分を返還することが原則です。
③ 返還しなければならない金額は、公平の理念から判断することになります。⑴墓地使用権の消滅に至った事情⑵どちらの責任で終了に至ったのか⑶その責任の程度はどれほどか⑷墳墓はあったかどうか⑸納骨されていたかどうか⑹墓地経営者の規模や経済状態、等が判断の対象になります。
④ 墓地管理規約に、永代使用料を返還しない特約があるときはどうでしょうか。返還しない特約を適用することが権利の濫用にならない限り有効と考えてよいでしょう。
⑤ たとえば、契約期間がまだ半年とか1年にも満たない場合で、墳墓も造られてはおらず、納骨もされていないような場合にも一切返還しないというのは権利の濫用となる場合もあります。
⑥ もっとも、永代使用料は使用権の設定の対価であり、使用期間に対応したと判断した裁判例がありますし、権利の濫用が認められることは極めてまれですので、特約がある場合は基本的に返還されないものと考えるべきでしょう。
⑦ ちなみに、都営霊園の条例は、「既納の使用料及び管理料は、還付しない。ただし、知事は、相当の理由があると認めるときは、その全部又は一部を還付することができる」としています。還付されるのは3年以内に届出て、原状回復を行ったときです。
3⃣ 結論
① 永代使用料を返還しないとの約款が定められているのは、永代使用料の返還を認めてしまうと、永代使用権を設定してから返還されるまでのあいだ、霊園はなんの収入も得られなかったことになってしまうからです。
➁ 霊園といってもビジネスの要素は当然ありますので、理由自体が不当なものとは一概には言えませんし、何より、永代使用料が返還されないことについては、それだけ重要なことですので、あらかじめ説明を受けているはずです。
③ 墓地使用権を購入するにあたっては、金額も安いものではありませんから、契約内容を含めて慎重に検討する必要があるでしょう。