【成年後見制度について】成年後見人が選ばれるまで待てない場合、どうしたらよいでしょうか?「審判前の保全処分の利用」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「成年後見人が選ばれるまで待てない場合、どうしたらよいでしょうか?審判前の保全処分の利用」について考えてみましょう。

【Q】一人暮らしをしていた母が脳梗塞で倒れて入院した後、認知症になって現在も入院中です。母には年金の他貸しアパートの家賃収入もありますので、治療費の心配はありませんでした。ところが母が入院してから、年金や家賃が振り込まれてくる母の預金を管理してきた兄が、最近になって母の多額の預金を解約して、自分の借金返済に充てるなどして、使い込んでいることはわかりました。このまま兄に母の預金を管理させ続けていては、母の入院費の支払いさえできなくなってしまいますので、私が母について成年後見の申立てをしました。しかし申立てが認められて成年後見が開始されるまでには、2・3ヶ月はかかるとのことでしたので、それまで兄の預金使い込みを放置しておくことはできません。何とかする方法はないものでしょうか。

【A】お母さまについて、成年後見を開始するかどうかは、家庭裁判所が家事審判で決めます。家事審判はもともと簡易・迅速に事件を処理することを目的としており、平成28年の1年間に全国の家庭裁判所が扱った成年後見関係事件(王権開始・保佐開始・補助開始・任意後見監督人選任)の77.4%が2ヶ月以内の審理期間で結論が出ており、年々短縮される傾向にはあります。

しかし、お尋ねのように成年後見開始の審判が出るまでの間にも、財産を使い込まれたり、どこかに隠されたりして、本人に不利益を生じさせる事態はあり得ます。

そこで家庭裁判所は、そのような必要があるときは申立てにより又は職権で、担保を立てさせることなく後見開始の審判が効力を生じるまで、審判前の保全処分として、財産管理者の選任等をすることができる(家事事件手続法126条1項)ことになっています。財産管理者選任の審判前の保全処分を申し立てるときは、お母さまについて、後見開始の審判を待っていては、兄がお母さまの預金を使い込んでしまうなど、お母さまの権利を保全しておく必要がある事情を具体的に明示する必要があります。選任された財産管理者は、後見人が選任されるまで、本人であるお母さまの代わりに財産の管理を行いますので、兄に対して通帳や印鑑の引き渡しを求めたり、通帳が紛失されている場合は、財産管理者選任の審判書を金融機関に提出して、通帳の再発行手続きを行い、お母さまの預金から払戻しを受けて、それでお母さまの入院費の支払いをすることもできます。

審判前の保全処分としては、その他、例えば子が成年後見開始の審判申立てをし、審判前の保全処分として財産管理者が選任されているのに、退院した本人が認知症のため、度々高額の着物や布団を訪問販売で買ってしまって被害を受けた場合などには、本人を守るために財産管理者の後見を受けるべきことを命ずる後見命令の申立て(家事事件手続法126条2項)をすることもできます。後見命令が効力を生じると、本人が財産管理者の同意を得ないで行った財産の取引行為等を取り消すことができます。

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