【相続・遺言について】自筆証書遺言

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、自筆証書遺言について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】遺言書はどのようにして作るのですか?
作成する上で、注意すべきことは?
他の方式に比べて、自筆証書遺言の、長所と短所はなんですか?

 

【A】◆1.自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者の真意を確保し、偽造、変造を防止するために、すべて自筆で作成することが必要です。民法で厳格に遺言の方式を規定し、その方式を満たさないものは無効とされます。
自筆証書遺言の場合は、遺言の全文自書、日付及び氏名の自書、これに押印が必要です。

◆2.自書とは
文字通り、自分で書くことです。したがってパソコン等により作成することや、代筆をさせることはできません。判例では、カーボン複写を用いた遺言は有効とされています。自書する場合、他人の助けを借りる程度で、他人の意思が介入したと認められないことが筆跡上判定できる場合には、自書の要件を満たしており有効とされます。

◆3.相続財産目録についての自書要件の緩和
平成31年1月13日より自筆証書遺言の自書を一部緩和する法改正が施行されました。
民法第968条2項は「前項の規定にかかわらず、自筆証書とこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」と改正し、自書を相続財産目録に関しては、不要としました。
偽造防止として、自書によらない目録の毎葉に遺言者の署名及び押印を要求し、特に自書によらない記載が両面にわたる場合については、その両面に遺言者の署名押印を要求しています。
これにより、相続財産目録に関しては、パソコン等による作成、代書、不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しなどを添付することが可能となりました。

◆4.日付の記載
日付は、遺言作成時の遺言能力の有無、内容の抵触する遺言の先後関係を明らかにして撤回の有無の判断をするために、自書して記載することが必要です。
日付がない場合遺言は無効です。
日付は年月日を明らかにすることが必要です。西暦でも元号でも結構です。例えば、日付が特定されれば構わないので、月日の記載を「自分の誕生日」という表現にしても有効とされています。
ただし、令和2年1月吉日のような記載は、日付が特定されないので無効です。
日付の記載場所は、本文を記載して、署名の前に記載されるのが通常です。
裁判例では、遺言の全文、氏名を自書して押印したものを封筒に入れ、封印(遺言書に押印した印鑑と同じもの)し、封筒に年月日を記載した場合も有効と判示されています。
ただ、争いを避けるために、本文の後、署名の前に日付を記載しましょう。

◆5.氏名の記載
氏名は、遺言者と同一性を確認することができれば足りるので、雅号などでもよいです。判例では、名のみの記載であっても、遺言の他の記載内容から遺言者の同一性が分かる場合には、有効と判示されたものがあります。
争いを避けるために、署名は戸籍上の氏名を正確に記載してください。

◆6.押印
押印は、遺言者の同一性及び遺言者の意思に基づくことを担保するためですので、遺言者本人が押印してください。
使用する印に別段制限はありません。判例では指印も有効としています。後々の争いを避けるためには、実印を使用して、印鑑証明書を添付することが望ましいでしょう。

◆7.自筆証書遺言の長所と短所
①長所
他の遺言の様式に比べ簡易であること。
②短所
要式通りに作成するのが困難であり、無効や紛争になりやすい点です。
作成したい自筆証書遺言を如何に保存するか、紛失や偽造、破棄の危険性が高いという点です。

◆8.自筆証書遺言の保管制度の新設
平成30年7月6日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立されました。施行は令和2年7月10日です。
これは自筆証書遺言のみを対象に、遺言書保管所で遺言書保管官が取り扱います。遺言者が自ら遺言書保管官に対して一定の申請書を添付して遺言書の保管を申請します。
申請できる遺言書保管所には定めがあり、遺言者の住所又は本籍又は所有不動産の所在地を管轄する遺言書保管所になります。
遺言者はいつでも遺言書保管官に対して、内容の閲覧や撤回を申し出ることができます。
また、誰でも、特定の死亡している者について、自分が相続人、受遺者等になっている遺言書が、遺言書保管所に保管されているか、保管されている場合には、遺言書保管事実証明書の交付を請求できます。
相続人、受遺者等は遺言書保管ファイルに記載されている事項を証明した書面の交付を請求できます。
この制度により、今まで短所として考えられていた点のうち、所在不明や偽造を防止する仕組みが整ったと言えるでしょう。

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