世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【孤独死をめぐるQ&A】Q39 賃貸物件の明渡しについての記事です。
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【Q39】一人暮らしの高齢者に居室を貸していたところ、亡くなってしまいました。居室内の動産については、どのように処分すればよいでしょうか。
【A】自力救済は禁止されており、貸主が勝手に処分をすることはできません。相続人に処分をしてもらうか、法的手続により明渡しをしてもらうことになります。
【解説】
1 自力救済の禁止
① 貸室内で一人暮らしの方が亡くなった場合、遺族が居室内の動産を処分するまでの間、貸室を貸すことができなくなってしまいます。
② そのような場合、賃貸人が勝手に動産を処分してしまうことはできません。勝手に動産を処分してしまうと、器物損壊罪などの犯罪になりかねません。
③ 自力救済の禁止といい訴訟等の司法手続によらずに実力をもって権利回復を果たすことは認められていないのです。
④ 賃貸人が居室内の動産を処分するためには、動産の所有者となる相続人に動産を処分してもらって、居室を明渡してもらう、相続人から居室を明渡してもらい動産の処分について同意をもって処分をするなど相続人の協力を得るか、それができない場合には、訴訟等の法的手続により解決するしかありません。
⑤ なお、大阪高判令和3年3月5日は「原契約賃借人本人と連絡が取れない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ、かつ、賃借物件を再び占有使用しない原契約賃借人の意志が客観的に看取できる事情が存するときに、現契約賃借人が明示的に意義を述べない限り、賃借物件の明渡しがあったものとみなす権限を…付与する条項」を適法と判断しています。
⑥ 現在上告中のようですが、この判断が維持された場合、高齢者の死亡で相続人が居住しないと明言しているような場合に明渡しとみなす条項を設けることができる可能性はあります。
2 法的な手続
① 居室内の動産も賃貸借契約における賃借人の地位も相続人に相続されます。
② したがって、賃貸人としては、貸主の相続人に対して、賃料の不払いを理由に賃貸借契約を解除し、居室の明渡しを求めて訴訟提起するというのが基本的な手続きになります。
③ そして、訴訟により判決を取得した上で、強制執行により居室の明渡しを実現させることになります。
3 相続人がいない場合の法的手続 特別代理人の選任
① 当初から相続人がいない場合は勿論、相続人が全員相続放棄をした場合も相続人が不存在となり、賃借人の地位も動産の所有権も相続する人がいなくなってしまいます。
② そのような場合、相続財産管理人の選任を申立て、相続財産管理人から引き渡しを受けたり、動産の処分をしてもらうことになります。
③ ただ、相続財産管理人の選任には時間もかかり、また予納金などの費用もかかってしまいます。
④ そのような場合、相続人が誰もいないことを理由に特別代理人を選任してもらい、特別代理人相手に訴訟提起や強制執行申立てをすることができます。
⑤ 民法951条により相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は相続財産法人となります。そして、相続財産法人の代表者となる相続財産管理人が選任されていない場合、民事訴訟法37条、35条により、代表者のない法人たる相続財産に対し訴訟行為をしようとする者は受訴裁判所の裁判長に対し、特別代理人の選任を申請することができるのです。
⑥ 特別代理人選任の方が、相続財産管理人選任よりも費用も時間もかからないことから、単に明渡しを求めるような場合には、特別代理人選任の方がよいと考えられます。