世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【孤独死をめぐるQ&A】Q46 葬儀等の生前予約の注意点についての記事です。
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【Q46】亡くなった後に親族に迷惑をかけないように、葬儀や遺品整理などについて生前予約をしておこうかと思います。
生前予約に当たって何か気を付ける点はありますでしょうか。
【A】内容が明確になっているかを確認してください。また、実際に費用まで前払いしてしまうときには、その業者の経営が安心か、生前契約の内容、特に契約の見直し、死亡時の連絡、契約の終了などが適切な内容になっているかなどを確認してください。
【解説】
1 生前予約とは
① 葬儀社や遺品整理業者の中には、亡くなった後に備えて、葬儀や遺品整理について生前に契約を締結しておく、生前予約サービスを提供している業者がいます。
② このような生前予約をしておけば、葬儀や遺品整理がいくらくらいかかるかが分かるし、基本的には自身の希望通りの葬儀や遺品整理をしてもらえます。
③ 葬儀は、亡くなった後すぐに手配をしなければならず、検討や準備のための時間があまりありません。そのため、思っていたのと費用や内容が異なり、葬儀社とトラブルになるということもまま生じてしまいます。
④ 国民生活センターが発表している「大切な葬儀で料金トラブル発生!後悔しない葬儀にするために知っておきたいこと」においても、後悔しない葬儀にするために知っておきたいこととして、「事前に相談できる葬儀社を見つけてみましょう。もしもの時に慌てないように、事前に相談をしてみましょう。」
⑤ 「あらかじめご遺体の搬送や葬儀の依頼をする葬儀社を決めておくと安心です。葬儀社を決めていれば、もしもの時に落ち着いて準備をすることができます。」と挙げています。葬儀の事前相談は、国民生活センターもお勧めしています。
2 内容の明確化
① 生前予約をする場合、その内容や金額が明確でないと、結局は後々トラブルの火種が残ってしまいます。
② そのため、しっかりと希望している内容を伝え、費用を見積もってもらうことが重要です。ただ、生前予約の場合、予約をした人がいつ亡くなるか分からず、実際に葬儀や遺品整理などのサービスが提供される時期が生前予約のために見積もった時期からずいぶんと期間が空くということも想定し得ます。
③ その間に物価が急激に変動してしまえば、当時の料金ではサービスの提供ができなくなってしまうという可能性もあります。
④ そのような場合に備えて、生前予約するときには、例えば、長生きをしたらどの程度、料金が変動する可能性があるのかの目安など聞いておいた方がよいでしょう。
3 契約の見直し
① 葬儀や遺品整理の生前予約の場合、いつ亡くなるのかが分からず、生前予約からサービスの提供までに長い期間が空く可能性があるという特殊な事情があります。
② その間に、もともと生前予約を必要としていた理由がなくなることもあり得ます。例えばですが、生前予約した時点では親族と仲違いをしていて親族に依頼ができなかったが、亡くなるまでの間に仲直りをして必要性がなくなるということもあり得ます。
③ そのような場合、生前予約の内容を変更したり、キャンセルしたりする可能性があります。それに備えて、生前契約が生前予約内容の変更やキャンセルができるような規定になっているか確認した方がよいでしょう。
④ なお、サービス提供前にも関わらず、キャンセルができないという内容の契約や多額のキャンセル料がかかるという内容の契約は認められません。
⑤ 消費者契約法9条1号は、事業者と消費者との契約において、違約金が、解除の事由、時期等の区分に応じ、当該事業者に生ずべき平均的な損害を超える額の場合、超える部分は無効としています。
⑥ 葬儀や遺品整理の生前予約の場合、結婚式や旅行などと違い、サービスの提供日があらかじめ決められておりません。そのため、ある客が予約していたことにより、サービス提供日に他の客の予約を受けられずに機会損失となったという損害は発生し得ません。
⑦ そうなると、生前予約の変更やキャンセルによって事業者に生じる損害は、せいぜい事務手数料程度と考えられ、高額なキャンセル料が認められることはないと考えます。
⑧ この点については、大阪高判平成25年1月25日の判例では、会員制の冠婚葬祭業者と会員との間の契約の途中解約における解約返戻金を制限する条項について、月掛金の振替費用、会員向けニュースや入金状況通知の作成・送付費用のみが平均的な損害であり、それを超える部分は消費者契約法9条1号により無効と判断しています。
4 死亡時の連絡確保
① 葬儀や遺品整理の生前予約をしたからといって、葬儀社や遺品整理業者が自ら申込者が亡くなったことを把握して、自主的にサービスを提供するわけではありません。
② 生前予約が実現されるには、生前予約者が亡くなったことを把握して、葬儀社等に連絡する人を確保する必要があります。
③ 通常は親族や友人を想定しますが、協力を求めることができない場合、遺言に記載して遺言執行者に葬儀社等への依頼をしてもらう、葬儀等の手配について死後事務委任契約を締結しておくなどの準備が必要となります。
5 契約の終了
① 生前予約をしていても、実際には、遺族の希望により、生前予約をしていた葬儀や遺品整理が実行されない場合があります。そのような場合も、キャンセルと同様に考えることになります。
② また、遺族が生前予約の存在を知らずに業者に連絡がこないというケースや、遺族が生前予約の存在は知っていても依頼するつもりがなくあえて連絡をしてこないというケースも想定できます。
③ そのような場合に備えて、いつまでに連絡が来ない場合にはキャンセルとして扱うというような条項が定められているのかどうかを確認することが必要です。
④ また、連絡が来ないことによるキャンセルに備えて、あらかじめ返金先口座を指定しておいた方がよいでしょう。もちろん、連絡が来ない場合のキャンセル料についても、平均的な損害額を超えることはできません。
6 生前予約においてお金を支払う場合
① 生前予約は、単なる予約の場合から予約申込金や予約事務手数料として数万円だけ支払っておく場合、見積金額の全てを先に支払っておく場合など様々です。
② 独居の高齢者の中には、お金を先に支払っておいた方が安心するから先に支払いたいと希望する方も一定数います。しかし、先に支払ってしまう場合には注意が必要です。
③ 葬儀は数十万円から数百万円もする高額なサービスです。そのような高額な費用を一民間会社である業者に支払っても、実際にその業者が生前予約者が亡くなるまでの間存続しているとは限りません。もし生前予約した業者が倒産してしまえば、支払ったお金はほとんど戻ってこないことになります。
④ 現に、高齢者から将来の葬儀代として預託金を集めていた公益財団法人が、預託金を流用した結果、破産をしたという事件もありました。破産した法人は、預託金については弁護士ら第三者の事務所で預託金を管理するとうたいながら、実際にはそうした管理をせずに流用していたと報じられています。
⑤ 本当に、前払いしたお金が保全されているかを外から確認することは困難です。特に規制がされていない現状では、生前予約はしても、費用全額の前払いはしない方がよいといわざるを得ません。
⑥ この点、千葉県消費者行政審議会が公表している「前払い型生前契約による葬儀サービスに係る消費者被害防止に向けた提言」においても、「生前契約は、契約当事者の死亡後履行されるものであり、履行の時期が不確定であり、一括前払いによる契約は、消費者のリスクが高いのではないか。」と前払い型の生前予約のリスクの高さを指摘しています。