【孤独死をめぐるQ&A】Q50 死後事務委任契約について

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【孤独死をめぐるQ&A】Q50 死後事務委任契約についての記事です。

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【Q50】私には一応甥・姪はいるのですが、まったく付き合いはありません。亡くなった後のことで面倒をかけるのは申し訳ないので、葬儀や納骨、諸手続きなどをあらかじめ第三者にお願いしておこうと思います。
死後事務委任契約という契約があると聞いたのですが、どのような契約でしょうか。契約締結に当たり注意する点はありますでしょうか。

【A】死後事務委任契約は、死後も契約が終了せずに葬儀、納骨、埋葬に関する事務等亡くなった後の諸手続等を依頼するという契約です。
ただ、財産の処分に伴うものについては、遺言を作成し、遺言執行者に執行してもらった方が確実なので、あくまで死後の事務に関するものを依頼するようにした方がよいでしょう。

【解説】

1 死後事務委任契約とは
① 死後事務委任契約とは、委任者が第三者に対して、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等亡くなった後の諸手続等に関する代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。
② 生前の委任契約は、委任者の死亡により終了します。また成年後見人も任意後見も被後見人の死亡により終了します。成年後見人は、裁判所の許可を得て、一定の事務を行うことができますが、例えば火葬、埋葬はできますが、葬儀は出来ないなど、制限があります。
③ そこで、委任者が亡くなった後も委任契約が終了しないという特約をつけて、死後の事務を委任するという死後事務委任契約が用いられています。

2 死後事務委任の有効性
① 前述のとおり民法上、委任契約は委任者の死亡によって終了するとされています(民法653条1号)。
② もっとも、民法653条1号の規定は任意規定であり、委任者が死亡しても委託関係が終了しないという特約は有効です。
③ 大判昭和5年5月15日が「自己の手もとにおいて養育することができないため、生後間もなく、幼児の養育を委託した場合には、受任者が幼児を養育する限り、委任者の死亡により委託関係を終了させない特約があるものと認めるのを相当」としており、死後のことを委任するという契約自体は、相当昔から活用されていたことが伺われます。
④ そして、葬儀、法要等について委任するといういわゆる死後事務委任契約についても、最三小判平成4年9月22日において、委任者が、受任者に対し、入院中の諸費用の病院への支払、自己の死後の葬式を含む法要の施行とその費用の支払、入院中に世話になった家政婦や友人に対する応分の謝礼金の支払を依頼する委任契約は、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意を包含しており、民法653条はかかる合意の効力を否定するものではないと判示し、死後事務委任契約の効力を肯定しました。

3 死後事務委任の相続人からの解除
① 死後事務委任契約が死亡によって終了しないとしても、相続は包括承継ですので、相続人は委任者としての地位も相続します。
② 委任者はいつでも委任契約を解除できますので(民法653条1項)、委任者の相続人は、いつでも委任契約を解除できるのではないかとも考えられます。
③ この点、東京高判平成21年12月21日は、死後事務委任契約の「委任者は、自己の死後に契約に従って事務が履行されることを想定して契約を締結しているとして、委任者の地位の承継者が委任契約を解除して終了させることを許さない合意も包含すると判示しています。
④ なお、同判決は「その契約内容が不明確又は実現困難であったり、委任者の地位を承継した者にとって履行負担が加重であるなど契約を履行させることが不合理と認められる特段の事情」がある場合には、解除が認められるとしています。
⑤ ただ、通常の死後事務委任契約において、委任者の履行負担が加重になることは考えづらいので、契約内容が明確で実現可能なものにしておくことだけ気を付けておけばよいのではないかと考えます。
⑥ 相続人からの解除が制限されるという裁判例がある以上、もともと死後事務委任契約において相続人の解除権を制限する特約をすることもできると考えられますので、そのような規定を設けておく方がよいでしょう。

4 死後事務委任契約による預貯金払戻し
① 死後事務委任契約は、納骨、埋葬に関する事務等亡くなった後の諸手続などの事務を主眼にするのが通常ですが、死後事務委任契約により財産の処分はできるのでしょうか。
② 相続人ではない死後事務委任契約の受任者が預金を払い戻した事案(高松高判平成22年8月30日)で、預金払戻しに応じた金融機関の責任について死後事務委任契約の受任者は「被相続人名義の預金の管理処分権を有しており、上記預金の全部について払戻しを受ける権限があるから、被控訴人の要求に応じて被控訴人銀行が上記預金の払戻しをしたことによって、上記預金債権はすべて消滅している。」と判断しており、死後事務委任契約の受任者による預貯金払戻しは有効だと判断しています。
③ ただ、同判決に関する論評として、「委任契約の成立について争いはないとしても、相続人の同意を得て払戻しを行った方が無難」との意見もあります。
④ 死後事務委任契約の解除に制限があるとしても、相続人が解除の意思表示をしていた場合、解除の有効性を金融機関側で判断することはできません。また、当然のことながら、委任者は死亡しているため、本人に確認することもできません。そのような事情からすれば、金融機関として、相続人の同意を求めるという運用にはやむを得ない側面もあります。
⑤ このように死後事務委任契約の受任者の受けた払戻しが有効か無効かと実際に銀行が払戻しに応じてくれるかどうかは別問題であり、金融機関によっては、相続人の同意を求める可能性があります。そうであるとすれば、財産の処分を伴うものについては、遺言書を作成し、遺言執行者として行ってもらう方が確実なのではないかと思います。

5 死後事務委任契約に基づく費用の預かりと信託業法
① 死後事務委任契約に基づく預貯金払戻しは速やかに応じてもらえるかは不安が残ります。そうしますと、死後事務に関する費用は、事前に預かっておくことになります。
② では、死後事務に要する費用は事前に預かっておくことに信託業法免許はいらないのでしょうか。信託法2条1項において、「信託」は「特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきもの」としています。死後事務委任契約の預かり金は、委任者の死後事務に用いるという目的で管理し、委任者の死亡後は目的達成のためにその財産を処分するので、一見「信託」にあたり、それを業として行うには信託業法免許が必要とも思えます。
③ しかし、信託業法2条1項、信託業法施行令1条の2第1号は「弁護士又は弁護士法人がその行う弁護士業務に必要な費用に充てる目的で依頼者から金銭の預託を受ける行為その他の委任契約における受任者がその行う委任事務に必要な費用に充てる目的で委任者から金銭の預託を受ける行為」は信託業法の対象外としています。
④ ここでいう弁護士や弁護士法人は例示であり弁護士以外でも「委任契約における受任者が委任事務に必要な費用に充てる目的で金銭の預託を受ける行為」が信託業法の適用除外とされています。