世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q47 受け取った香典の帰属についての記事です。
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【Q47】父が亡くなった際、家族で相談のうえ、母が喪主になり葬儀を執り行いました。父の会社関係者のみでなく、兄や姉、自分の知人からも多額の香典を受け取りました。
葬儀の際の会計帳簿は母を補助していた兄が作成しましたが、母と兄は「香典は葬儀費用に使用した後、香典返しや法事の費用に使うつもりだ」と、収支を明かにしてくれません。香典の残額は遺産として相続人間で分割すべきではないでしょうか。
【POINT】
① 香典とは、どのような性質を持ているのか
➁ 香典を葬儀費用に充てた残額は、遺産に準じて扱われるべきか
1⃣ 香典の性質
① 香典は、葬儀の際に喪家に送られる金銭や物品などの贈与品を指しますが、現在では金銭による香典が一般化しています。
➁ 元来、香典には社会習俗・慣行に根差したもので、その意味合いも一様ではありませんが、香典には葬儀という不時の出費に対して喪家の負担を軽減し、同時に他日の援助を期待する相互扶助の意味合いもあるようです。
③ 葬儀への参列も死者や遺族との日頃の付き合い関係を表明する重要な機会であり、香典はその際に喪主や家族への見舞いとして贈られる儀礼的な意味合いをもつものです。さらに、忌中明けなどに、香典の半額程度の品物を返礼として贈る香典返しという慣習も存在します。
④ このように、香典は、慣習的に行われてきた一種の贈与と言えますが、誰に対する贈与、つまり受遺者は誰と考えたらよいのでしょうか。
⑤ 香典は直接的には、亡くなった父(被相続人)やあなた方兄弟姉妹との人間関係に基づいて送られたわけですが、死者には権利が帰属することはありませんので、被相続人は受遺者にはなりません。
⑥ また、あなた方と香典の送り主(贈与者)との人間関係は、香典を贈る動機の一つには含まれるでしょうけど、香典を贈る目的は、葬儀費用の一部に充ててもらうことにより、遺族の負担を軽くすることにあります。
⑦ そこで、香典は、葬儀の主宰者として、葬儀の準備や手配を行い、葬儀を実施する責任を負う喪主に対して贈られたものと考えられます。したがって、香典の受贈者は喪主であり、葬儀費用に充当されるべきということになります。
2⃣ 葬儀費用に充当した香典の残額がある場合
① 香典は、葬儀に関連する出費に充当されることを目的に支払われたものであれば、慰霊金といった名称が使用されていても同様に扱われます。
➁ したがって、これらを含む香典を、喪主が葬儀費用に充当すること、さらに、香典返しなど、葬祭に関連する諸費用に充てることも問題はありません。
③ それでも、香典が残った場合は遺産に準じて扱うべきでしょうか。この点については、喪主が葬儀を主宰し、葬儀費用を負担する以上は、香典は喪主に帰属しこれを葬儀費用に充当した余剰があったとしても、香典の残額も喪主に帰属すると考えられています。
④ したがって、香典の残額について、喪主は裁量によって、今後の祭祀費用に用いたり、福祉事業に寄付したり、あるいは、相続人に分配することもできますが、相続人側から遺産として分割を要求することはできません。